いんふぃにっと・亀仙流   作:サイデリア

5 / 30
 なんだか亀仙流がどうのこうのじゃなくって、懐かしのネタ大集合になってきた。

 前回でガンダムネタ出たし、もう開き直り出した第4話です。


第四話 彗星はどこへいく

 セシリアマスクと一夏の試合から、一週間が経った。

 

 入院中のセシリアマスクに代わって、正式にクラス代表に選ばれた一夏だったが、今のところは授業の号令を掛けたりプリント配ったりする仕事が増えたぐらいだ。

 

「クラス代表ってつまりは学級委員だな。あと花に水やれば完璧だ」

「おりむー、発想が小学生だね」

 

 小学生みたいな本音に言われ、一夏は本気で凹んだ。

 

 今は昼休み。

 一夏は食堂で、箒や本音を含めたクラスメイト数人と昼食を摂っている。

 入学初日、年上巨乳美人の恋人がいることがクラス中に知れ渡ったことで、彼を攻略可能な異性として見る目は無くなった。

 むしろハイスペックな恋人持ちというのが安心感に繋がるからか、クラスメイトたちは一夏と普通の友人感覚で接するようになった。

 

 特にルームメイトでもある本音は整備士志望ということもあり、豊富な知識でISに不馴れな一夏を何かとサポートしてくれていた。

 

「ま、概ね織斑くんの言う通りだね。行事の時にクラスをまとめたり。あとはクラス対抗試合かな」

「そういや、来週に試合があるんだっけ」

「初の公式戦だね。おりむー専用機の初陣だ」

 

 本音が言う一夏の専用IS。

 白を基調とした西洋騎士のような出で立ちの、近距離戦闘タイプだ。

 

「1年生で専用機持ちだなんてね。やっぱレア物だから優遇されてる?」

「う~ん……」

 

 羨むクラスメイトに対して、一夏は渋い顔を浮かべた。

 

「正直、白式って剣戟主体だから、俺の戦い方と合わないんだよな」

「え、専用機なのに?」

「なんか開発者は千冬先生のイメージで剣を持たせちゃったらしいんだ。俺、剣道はほんのちょっぴりかじっただけなのに」

 

 テスト運用で一回試乗したきり、一夏は自分の専用機に乗っていない。

 現在白式は、一夏に合わせた大幅な改修のため、トーマス・ライト研究所へ送り返されていた。

 戻ってくるのは1週間後。対抗戦に間に合うかはギリギリだった。

 戻ってこなければ、一夏はまた学園から量産機を借りて戦うことになる。

 しかし先日の試合で一夏が使ったラファールはコアと飛行ユニットを残して大破し、セシリアマスクのもう一機も損傷が激しい上に独創的な改造が施されてしまって一般人には扱えなくなってしまった。

 それを理由に貸し出しを渋られ、不戦敗にされる可能性もありえる。

 

「剣道っていえば、しののんは中学時代、全国で優勝したんだよね」

「らしいな。大したもんだよ、俺なんて準優勝だったのに」

「いや、天下一武道会と剣道のインターハイじゃ比較にならんっしょ!?」

 

 すぐ隣にいたのにこれまで会話に入っていなかった箒が、自分の名前に反応して振り向いた。

 

「ん! ど、どうかしたのか、義兄さん!?」

「そりゃこっちのセリフだ。つうか義兄さんはよせって、気が早いな」

 

 満更でもない一夏だった。

 

「くそイケメンはほっといて。篠ノ之さん、そわそわしてない?」

「にゃにゃにゃにゃんのことかにゃ!?」

 

 クラスメイトから指摘され、箒は露骨に取り乱した。

 

「授業中も千冬先生に注意されて……龍巻閃だっけ? 技喰らってたし」

「もしかしてそのダメージが頭に!?」

「いや、あれぐらい慣れてるからどってこと……本当に何でも――あっ!」

 

 泳いでいた箒の目が、食堂の入り口で止まった。

 一夏たちクラスメイトもそちらへ顔を向けた。

 

「広いわね、さすが一流高校の食堂」

 

 腕を組み、食堂を見渡してぶつぶつと感想を口にする、ツインテールの小柄な少女の姿があった。

 

「あれ、あいつ――」

「鈴!」

 

 少女の顔に見覚えがあった一夏は、箒の声で記憶が一気に甦った。

 

「鈴って……凰鈴音か!」

「おりむーの知りあい?」

「小学校の時、俺と箒のクラスメイトだったんだ。なあ、箒――あれ?」

 

 気付けば箒の姿は席になく、食堂の天井近くまで跳躍して鈴へ飛び付いていた。

 

「鈴ーっ!」

「うぎゃあっ!?」

 

 突然抱き付かれた鈴が、乙女にあるまじき悲鳴を上げた。

 

「ああ、鈴! 会いたかった! 本当に君なんだな! 本物だ、すんすんハスハス」

「き、こら! 匂い嗅ぐな! むぎゅ!?」

 

 身長差により、鈴の顔が箒の巨乳に埋もれた。

 男でも同性愛者でもなく、まして自分の平たい胸にコンプレックスがある鈴にとって、物理的にも精神的にも耐え難い状態だ。

 

 しかし箒は、鈴の髪に顔を埋めて香りを堪能するのに夢中らしい。おまけに異様な怪力で、いくら鈴が力を込めてもビクともしなかった。

 

「鈴、このまま食べてもいいか?」

「ひぃぃっ!?」

 

 耳元で甘く囁くような箒の声色で、鈴の中で何かが弾けた。

 

「箒、その辺で――」

 

 一夏が止めに入ったが、すでに手遅れだった。

 鈴の拳が青白い光をまとって輝いた。

 

「なっ!?」

「へ?」

 

 一夏が驚愕し、箒も視線を落とす。

 

「れ、霊光弾‼」

 

 鈴は光を叩きつけるように箒の腹に全力のショートアッパーを打ち込んだ。

 

 腹で爆発でも起きたような衝撃で、箒の体はくの字に曲がり、食堂の天井を突き破って屋外まで吹っ飛んでいった。

 

「はあ、はあ、はあ……あ、あたし、ノーマルだから……」

 

 真っ青な顔で息を切らせながら、鈴は誰にともなく呟いた。

 その後、吹っ飛ばされた箒は学園の外れで発見され、保健室へ担ぎ込まれたのだった。

 

 

 放課後。

 

「お邪魔するわよ」

 

 帰りのHRが終わった1ー1の教室に、鈴がやって来た。

 当然のように駆け寄っていくのは、授業が終わってから復活してきた箒であった。

「鈴! そっちから来てくれたのか!?」

「ごめん箒、今は一夏と話をさせて」

「!?」

「いや、そんなこの世の終わりみたいな顔しないでよ……」

 

 鈴に制された箒はシュンと項垂れ、ジト目を向けながら引き下がった。もし箒に獣耳と尻尾が着いていたなら、おおいに垂れていたことだろう。

 以来、一部で箒のあだ名は「ワンコ」に決まった。

 

 一夏は席を立ち、鈴を出迎えた。

 

「久し振りだな、鈴」

「ええ。あんたが亀を背負って海まで走っていった日以来ね」

「連絡しなくて悪かったよ。箒にも言われた」

「本当にね‼」

 

 突然いなくなった一夏への恋慕が、回り回って今の箒が鈴に過度な好意を寄せる原因である。思わず鈴は、一夏を八つ当たり気味に怒鳴ってしまった。

 

「は、ははは……で、でも元気そうで何よりだよ、鈴」

 

 多少の自覚がある一夏は、苦笑いを浮かべて露骨に話題を逸らせた。

 

「もう元気も元気よ。中国の代表候補生なんてやってるし」

「そうなのか! すごいじゃないか!」

「そっちもね。かの武天老師の弟子で、天下一武道会でも準優勝」

「鈴もそれ知ってたのか!?」

「私が話した!」

 

 何故か箒が割り込んできた。

 

「あのさ、箒?」

「いいじゃないか、鈴。せっかく幼馴染みが3人揃ったんだし」

「幼馴染みって……まあ、そうか」

 

 幼馴染みと言っても、鈴と一夏が同じクラスだったのは1年程度だ。

 小学5年の時に一夏たちのクラスに転入してきた鈴は、なかなかクラスに馴染めなかったところを一夏に話し掛けられ、一緒に遊ぶようになった。

 一応、鈴にとっても一夏は初恋の相手だ。

 しかし自分以上に好意を寄せているのが丸分かりなのに、全く素直になれない箒を見ているうちに、気付けば応援する方に回っていた。

 なので、一夏のことは仲の良かった男友達以上の思い入れはなかった。

 

「なあ、鈴。一夏の用は済んだか? なら遊びに行こう! 二人で!」

「うん、分かったからもう少し待ってて。ね?」

 

 箒をなだめながら、鈴は思った。この積極性を一夏に向けたら、今の状態も少し違ったのかもしれない。

 

「一夏」

 

 不適な笑みを作った鈴は、右手で指鉄砲を作って一夏へ向けた。

 

「あたしは1ー2のクラス代表になった。つまり来週の試合、あんたと戦うことになるわ」

 

 鈴が一夏へ明確な敵意を浴びせたことで、教室に緊張が走った。

 

「宣戦布告ってことか?」

 

 一夏も鈴を真っ直ぐ見据える。

 

「そんなところよ。もしあんたとやり合うことになったら、あたしは全力で迎え撃つつもり」

 

 一夏を真っ直ぐに見据えた鈴。右手で作った指鉄砲をゆっくりと一夏へ向けた。

 

「師範から言われてるのよ。スケベジジイの弟子に負けたら承知しないって」

 

 鈴の指先がチカリと光った。

 

 その瞬間、全身の毛穴が開くのを感じた一夏は、その場で膝を折って思いきり仰け反った。

 

「霊丸!」

 

 鈴の腕が勢いよく跳ね上がった。

 指先から放たれた気弾の反動だ。

 

 鈴が撃った青白い気弾は教室中に突風を巻き起こし、開いていた窓から空の彼方へ飛んでいった。

 

「あっぶねえな! どういうつもりだ!?」

 

 上体を起こした一夏が抗議すると、鈴は得意気に両手を腰に当て、鼻を膨らませた。

 

「こっちだけ手の内が分かってるのはフェアじゃないからね。気を放出する技を持ってるのは、あんただけじゃないってこと」

 

 鈴は右手の指先に、硝煙を消すように息を吹き掛けた。

 

「改めて名乗るわ。中国の代表候補生、そして霊光波動拳継承者、幻海が門弟……凰鈴音よ」

 

 

 

 その日の夜。

 一夏は千冬とともに、トーマス・ライト研究所を訪れていた。

 

「やあ、千冬くんに一夏くん。いらっしゃい」

 もこもこした白い髭を蓄えた白衣の老人が二人を出迎えた。当研究所の主任、トーマス・ライトその人だ。

 

「急に尋ねてすみません」

「構わないよ。元々、君に合わせた調整を怠った、こちらの不手際なんだ。それに、やはり君からも改修に関する意見が欲しいからね」

 

 ありがとうございます、と一夏は頭を下げた。

 

「それで、相談事というのは――」

 

 一夏はライト博士に、自分の考える改造プランを伝えた。

 ライト博士にみるみる子供のような無邪気な笑顔が浮かぶ。

 一方、成り行きを見守っていた千冬は怪訝そうに眉を潜めた。

 

「面白い意見だ。早速取りかかろう!」

「待ってください、ライト博士。今のは完全な素人の意見だ。それに……」

「千冬ねえ、黙っててくれ。これは俺の機体の話だ」

「なんだと!?」

「まあまあ」

 

 剣呑な空気になりかけた姉弟を、ライト博士が穏やかに宥めた。

 

「千冬くん、確かに一夏くんはISに関してはまだ素人だ。しかし、武術家としては充分に達人の領域に達している。ならば彼専用のISは、彼の持ち味を活かしたものにするべきではないかな」

「それは……」

「第一、ISとしての性能だけを求めるなら、君たちの近くに適任者がいるだろう?」

 

 一夏の視線が照れ臭そうに泳ぎ、千冬がますます顔を渋くした。

 

「確かに束なら高性能なISを造れるけど、あんな『誰が乗っても強い機体』じゃ修行にならないし、何より。戦っててつまらないだろ」

「と、いうことだよ、千冬くん」

「はあ……」

 

 まだ腑に落ちない様子の千冬だが、一応の理解は示した。

 

「それにだ。鈴とまともに戦おうと思ったら、やっぱり準備は入念にしておかないとな」

「凰か……」

「千冬ねえも分かるだろ? 今のあいつは恐ろしく強い。あいつが撃った気弾がその証拠だ」

「どういうことかな?」

 

 質問したのはライト博士だ。機械工学の権威とはいえ、気の扱いについては門外漢だ。

 

「あいつが食堂で放った一撃。教室で撃った一発。どっちもあの場にいたほとんどの奴から見えていなかった。多分、カメラにも映っていないはずだ」

「……なるほどな」

 

 千冬が一夏の言いたいことを察して、ライト博士に説明した。

 

「気とは洗練することで、他者から限りなく見えにくい状態にすることが出来るのです」

「なんと!」

「かめはめ波みたいに全力で気を放出するタイプの技じゃそんなことする余地がありませんけど、鈴が使った技は俺以外じゃ箒にしか見えていなかった」

「そしてそれだけの技量があるなら、本気を出せばもっと強力な技も使え……そして代表候補生に選出されるだけのISの操縦技術がある」

「ああ。そして俺にはISの技術が圧倒的に足りない。不利を覆すなら、こっちも仕込みの3つや4つは必要なんだ」

 

 千冬がため息を吐く。今度は完全に折れたようだ。

 

「分かった。ライト博士、こいつの言うようにしてやってくれ」

「ああ。応えてみせるよ」

「お願いします」

 

 織斑姉弟が、そろって頭を下げた。




 前回と比べて大人しい今回。
 本格登場の鈴よりも箒も方がぶっ壊れてしまった……。今後もリンリンにはツッコミ役として頑張ってもらいます。


今回のネタ
※このコーナーも今後は続けますが、細かすぎるのはスルーしていきます。

霊光波動拳
 漫画「幽☆遊☆白書」の主人公が修得した、霊気を操る術。戦闘以外にも傷の治療だとか色々応用が幅広い。

トーマス・ライト
 CAPCOMの名作「ロックマン」シリーズの登場人物。主人公ロックマンの開発・改造を行っただけでなく、後のシリーズにも影響を残したキーパーソン。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。