ありがとうございます。
今回は一夏VS岸波の後半です。
そういや単一能力とか瞬時加速とか、IS側の特殊能力全然出してませんね。絶対防御ぐらいでしょうか。
※6/9 終盤を変更
ゴーレムが複数体登場するのはもっと後の話だったので、ちょっぴり修正しました。
サーヴァントが再び形を変えた。
ヘッドセットが眼鏡に変形。
上半身の装甲は赤と黒を基調とした、外套のような形状となった。長い裾が風にたなびいている。
脚部が剥き出しだったスカートのような装甲が、シャッター状のズボンに変わった。
これまでの2形態が女性的な印象だったのに対し、今度の姿は男性的だ。
円盤が量子化され、代わりに展開されたのは――。
「弓!?」
黒い
サーヴァントが弦を引くと、ビームが集束して矢を形成する。
つがえられた矢が放たれる。
初速から超音速に達した矢が弓から離れた瞬間、すでに次の矢が装填されていた。
この間、0.1秒。
「うぉぉぉぉっ‼」
次々と連射されたサーヴァントのビーム矢が、雨となって一夏へ降り注ぐ。
一夏はアリーナを逃げ回りながら、高速回転させたキンコボウで迎撃する。
一発一発はドレス姿の時の剣戟よりは軽い。
しかし、矢は空中で軌道を変えて、一夏の正面と死角の両方から襲いかかってくるのだ。
そう何度も受け止めていられず、何発かがキントウンを直撃した。
シールドゲージがゴッソリ削られた。
何を隠そう、一夏のISはキントウンが本体なのだ。当然、キントウンが被弾すればシールドが消費される。
逆に一夏自身にはシールドが無いため、普通のISと戦う感覚で一夏を攻撃しても無意味だ。
岸波はすでにセイテンタイセイの特性を見切っているらしく、サーヴァントは攻撃をキントウンへ集中させている。
反撃に出ようにも、岸波に接近するにはビーム矢の弾幕を潜り抜けねばならない。
だが、嵐のようなサーヴァントの猛攻をキントウンが無傷で突き抜けるのは不可能だ。先にシールドが尽きてしまう。
「厄介な相手だな!」
一夏の表情は自然と笑顔になっていた。
サーヴァントからキントウンを守りつつ、岸波に攻撃するにはどうするべきか。
サーヴァントは常に一夏と岸波に間に陣取っている。一夏と岸波は、サーヴァントを中心にして点対象の位置にいた。
(となると、やっぱ直線に突っ込むしかない!)
それにはキントウンが邪魔だ。
セシリアマスクとの試合で使ったかめはめ波を推進力にする方法を考えたが。
先程のサーヴァントの剣技が相手では、すれ違い様に一刀両断される気がしてならない。
覚悟を決めた一夏は、キントウンを飛び降りた。
『!?』
サーヴァントがわずかに戸惑いを見せた。
それも束の間、すぐにキントウンへ向けてビーム矢を連射する。
しかし、キントウンは一夏が降りたことで身軽になったのか、弾幕の隙間をすいすいと軽快にかわしてみせる。
……実際のところ、微妙にビーム矢が掠ってジリジリとシールドが削れているのだが……。
その間にも、一夏は並のISの最高速度を凌駕する勢いで地上を駆け抜け、岸波に迫っている。
岸波はサーヴァントへ一度視線を送り、自分のブースターに点火した。
本体唯一の装備である近接戦闘用のダガーナイフを手に、キントウンへ突撃する。
同時に、再びドレス姿に変身したサーヴァントが、アリーナの壁を垂直に駈け登っていた一夏に突っ込んできた。
「大胆だな、岸波!」
一夏の予想では、岸波はサーヴァントにキントウンを追撃させて逃げ回ると考えていた。
その隙を突くつもりだったが、そう簡単には思い通りに動いてくれないらしい。
むしろ、岸波には一夏の行動も予想の範囲だったようにも思われる。
その証拠に、キントウンへ向かった岸波の動きに迷いがなかった。
「読みの深さじゃ、お前のご主人サマが上手みたいだな!」
迫るサーヴァントに、不敵に笑ってみせる一夏。
サーヴァントの赤いバイザーが、得意気に煌めいた気がした。
一夏はアリーナの壁、さらに防護フィールドを垂直に駈けながら、サーヴァントの剣と拳をぶつける。
音速を超えた攻撃の応酬がフィールドを突き抜け、アリーナ全体を震わせた。
百回近いぶつかり合いの末。
一夏がわずかに攻め損ねた隙を逃さず、サーヴァントの剣が一夏の拳を弾き飛ばす。
そうして無防備になった一夏の首筋を狙い、サーヴァントは一刀を振り下ろした。
その威力、まさに断頭台。
ISの絶対防御もろとも切り裂かんとする気迫のこもった一撃を、
織斑一夏は噛んで受け止めた。
『!?』
サーヴァントに動揺が走る――より、さらに速く。
一夏の拳が胸部の中心を捉え、サーヴァントの機体を豪快にぶっ飛ばした。
観客席の一部――主にセシリアマスクから歓声が上がる。
「伸びろ、キンコボウ!!」
一夏の命令に応え、キンコボウの先端から高密度のシールドエネルギーが飛び出す。言葉通り、棒自体が猛スピードで伸長したかのようだ。
しかしサーヴァントもさるもの。
バランスを崩した状態にも関わらず、超音速で向かってきたキンコボウの先端を正確に剣先で弾いて防御した。
と思われた、次の瞬間。
突如グニャリと曲がったシールドエネルギーが、サーヴァントの体に巻き付いて絡めとった。
「知らねえの? 延び縮みするだけが如意棒じゃないんだぜ!」
腕力で強引にサーヴァントを引き寄せ、赤いバイザーに頭突きをかます。
続けて地面へ向けて殴り飛ばし、吹っ飛んだサーヴァントを追って一夏も防護フィールドを蹴った。
地面にクレーターを作って叩きつけられたサーヴァント。
刹那の時間差で、一夏が頭からサーヴァントの胴体に突っ込んだ。
サーヴァントの胸部装甲に亀裂が走り、岸波のシールドエネルギーが大きく削れた。
一夏はサーヴァントに馬乗りになり、さらなる追撃を加えようと拳を振り上げ、
「shock(64)!!」
岸波の叫び声と同時に襲ってきた衝撃に阻まれた。
物理的な衝撃はない。だが、まるでIS自体が軋んだような痛みが走る。
キントウンと取っ組み合っていた岸波は、サーヴァントを押さえつけた一夏へ左手を向けている。
「shock(64)! shock(64)!」
全身にまとわりついたキントウンによってシールドエネルギーをジワジワと奪われるのも構わず、寸分の狂いもなく攻撃を加え続ける岸波。
どうやらあの位置からセイテンタイセイをクッキングしているらしい。
「くっ! うおぉぉぉっ!!」
全身が痺れるような衝撃を食いしばって堪え、一夏は拳を振り下ろした。
しかし、岸波の攻撃はセイテンタイセイのシステムにも及ぶ。
姿勢制御ユニットと共にキンコボウの機能も一時ダウンし、サーヴァントの拘束を解いてしまった。
サーヴァントは姿が青と黒の和装風に変貌させ、一夏の拳を円盤で受け止めた。
同時に強引にブースターを吹かし、一夏の元から無理矢理離脱しようとする。
「逃がすかァ!!」
「shock(64)!」
サーヴァントを逃がすまいと組み付こうとした一夏を、岸波がなおも妨害した。
キントウンが岸波の体を防護フィールドに叩きつけ、彼女のシールドエネルギーは残り2割を切っていた。
「shock(64)!」
岸波の狙いは正確無比だ。ブレることがない。
一夏はとうとう、サーヴァントの離脱を許してしまった。
サーヴァントはすぐさま外套形態に変形。
岸波に取り付いたキントウンに狙いを定めて弓を引く。
「かめはめ波っ!!」
それに先んじて、一夏はかめはめ波で岸波を狙った。
『!?』
無表情の岸波に代わり、サーヴァントが動揺を見せた。
攻撃を中断し、すぐさま岸波の元へ最高速度で向かう。
キントウンがダメ押しに岸波もう一発叩きつけ、かめはめ波の射線から退避。
離脱が出来ない岸波を庇って、サーヴァントはかめはめ波にその身をさらした。
サーヴァントは外套姿のままで、先ほど攻撃を防いだ円盤を持っていない。
その身を主の盾にした。
「add_invalid()」
岸波の呟き。彼女の左手が光る。
直後。かめはめ波はサーヴァントを覆った大出力のバリヤーに阻まれた。
「おいおい……」
一夏も思わず苦笑を漏らす。
バリヤーの出現はサーヴァントにとっても予想外らしく、何事かと岸波へ視線を向けた。
それも刹那の間。
岸波の、残り僅かだったシールドエネルギーが急速に消耗しているのに気付いたサーヴァントは、一夏に向けて矢をつがえた。
これまで放ったビーム矢よりも、明らかに大きい。
例えるならそれは、先端がドリルになった剣だ。
つがえてから射るまで0.1秒。
放たれたドリル剣は、かめはめ波のエネルギーの中を一直線に一夏へ突き進む。
「うらぁっ‼」
一夏がキンコボウを、サーヴァント背後の岸波目掛けて全力で投擲した。
ドリル剣を射った直後のサーヴァントは対処が間に合わなかった。
「でりゃあっ‼」
続けて、一夏は迫り来るドリル剣が自身に直撃する寸前、力任せに裏拳を叩きつけてその軌道を強引にねじ曲げた。
瞬間――。
ドリル剣が爆発し、一夏は閃光と爆炎に包まれた。吹き飛ばされたコンマ数秒だが意識を失い、ダウンを取られる。
一方の岸波は、投擲されたキンコボウを紙一重で回避に成功していた。
かわされたキンコボウは防護フィールドに突き刺さり、空中で固定されている。
岸波はまだ立ち直っていない一夏から、キントウンへ狙いを変えた。
ドリル剣の爆風に煽られていたキントウンへ、サーヴァントが弓矢の照準を合わせ――。
「伸びろ、キンコボウ‼」
岸波が、一夏の叫びにはっとなって頭上に突き刺さったキンコボウを見上げた。
キンコボウから伸びたシールドエネルギーが、攻撃動作に入ったサーヴァントへと伸長する。
「‼」
終始無表情だった岸波が、始めて目を見開いた。
まさに必殺のタイミングだ。キンコボウはサーヴァントが気付くより前に装甲を貫く。
そう判断した岸波は、サーヴァントを背中に庇って身を投げ出した。
数秒後。
アリーナに響いたブザーが、試合の決着を告げた。
セシリアマスクは空になったポップコーンの容器を潰しながら、モニタースクリーンへ目を向けた。
残存シールドエネルギー、織斑一夏19%――。
岸波白野、0%――。
「うふふっ、それでこそクラス代表を譲った甲斐があるというものですわ」
「すっごい上から目線だね、せっしー」
「伊達に鉄仮面してませんもの」
観客席のあちこちからは、二人の健闘を讃える拍手が沸き上がっていた。
10分にも満たない試合時間で、一夏と岸波は観客の心をガッチリ掴んだようだ。
試合場の地面で大の字でぶっ倒れている一夏の元へキントウンがやってくる。
キントウンにはぐったりした岸波がうつ伏せに寝ており、ドレス姿でサーヴァントが横に付き添っていた。
箒はライブカメラを最大望遠で二人に向けた。
一夏の顔には、幼い頃と変わらない無邪気な笑顔が浮かんでいた。
一方の岸波も、無表情ながら一夏に対してサムズアップしてみせる。
試合を通じて、お互いの間に芽生えたものがあったらしい。
箒の胸の奥で、無視できない何かがチリチリと痛んだ。
「しののん?」
雰囲気が変わった箒に、本音が気遣うように声を掛けた。
本音に振り向いた箒は、何でもないと答えようとして――。
視界の遥か遠く。
アリーナの上空数千メートルから落下してくる物体に気付いた。
「あら?」
セシリアマスクも迫り来る殺気に気付き、上空へ顔を向けた。
風を切る甲高い音がみるみる大きくなる。
一般生徒が異常に気付いたときには、謎の物体はアリーナの防護フィールドを突き破って試合場に着弾していた。
凄まじい衝撃にアリーナ全体が揺れた。
「……なんですの、あれ?」
平然とコーラをすすりながら、セシリアマスクが誰にともなく訊ねた。
天空から試合場に現れたのは黒いロボットだった。
全長3メートル、なだらかな曲線を描く装甲に、頭部に二本の角を持った漆黒のボディ。
その姿は、さながら黒い鬼である。
会場で、古今東西のロボットに詳しいとある少女が、全身全霊のツッコミを入れた。
「ブラックオックスじゃねーかっ‼」
次回、VS謎のロボット・ブラックオックスです。
強さ的には人造人間8号ぐらいでしょう。
一体、どこの束の差し金なんだ……。
※ネタバレ:束は無関係です。
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今回のネタ
ブラックオックス
出典は「鉄人28号」から。
鉄人のライバルで、鉄人同様に良いも悪いもリモコン次第。