ほのぼのバトスピ伝   作:ヴァーチャル

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勢いで始めてしまいました。作者はアニメは見ていますが、カードは初心者です。更新は不定期です。こんな未熟者ですが、よろしくお願いします。


第1話 覇者の目覚め

 

男は闇の中にいた。深い幻想的な気分に包まれながら、晴れ渡る空の下にいた。男は宙に舞い、人々の喧騒を眺める。男の眼には、好奇心からくる輝き、そして熱い炎があった。

──なんだ…あれは…?

紅く…熱くたぎる龍。白く…冷たく前を見据える機械の軍団。彼らを観察する骸骨の集団。天を優雅に舞う鳥たち。大地を揺るがして行進する巨人。空を覆い尽くす天使。

今、これらの勢力が、男の下でぶつかり合おうとしていた。

 

「一体これは…。」

「そう。あれこそが…この世界の運命を左右する力。」

 

突然の背後からの声。男は驚きを抱き、勢いよく振り向く。そこには、美しい少女がいた。

──誰だ…こいつ。

じっくり観察してみる。きれいに整えられた長い黒髪に、汚れひとつ無い白のワンピース。幼さを少し残した、可愛らしい顔。

──清純──

この言葉がとても似合う女性だった。しかし、その表情は笑みを表すことはなく、憂鬱そうな様子で言葉を発する。

 

「あなたに…頼みがあるのです。とても重要な…。」

「…なんだ?」

「これを…受け取ってくれますか?」

 

少女は懐からカードを取り出し、男に差し出す。

──これはなんなのか…?

普通ならば、こんな問いが口から出るのだろう。しかし男はそれを黙って受け取った。何かに突き動かされたかのように。

 

「…これであなたは…戦いの運命に身を投じることになりました。

…では、健闘を祈ります…。」

 

男の視界は霞み、意識が現実へ引き戻されていく。そして遠退いてゆく意識の彼方、ひとつの単語が頭に浮かんだ。

 

──バトルスピリッツ──

 

 

「ちょっと!邪魔だよお兄さん!」

 

重いまぶたをこすり、彼はイスから飛び起きる。『彼』は14歳ほどの少年。少し大きい、花柄の着物に身を包み、長い茶髪をかく。

──うるっせぇな…。

顔を声の主に向ける。そこには、白い髪の少女がいた。小学生高学年くらいだろう。雪を思わせる純白の白。汚れなき白だ。動きやすそうなライトな服装と、活気あふれる顔は、見ている方まで元気になるような力があった。

 

「…っと…!悪い悪い。」

 

どうやら店のイスで寝込んでいたようだ。急いで席を開ける。彼が寝ていた席に少女が座り、向かいの席にもうひとりの少女が座る。そして気付けば、周りにはたくさんの子どもたちがいた。

──なにやんだろ…?

子どもたちは皆、その大きな眼を輝かせている。一体どんな面白いことが始まるのか。ギャラリーの視線を受け、二人の少女は腰のホルダーから紙の束を取り出す。

──なんだありゃ。

二人は雄々しい表情で紙束をテーブルに置く。視線の交差。今から殺し合いでもするんじゃないかと思わせる程の迫力だ。

 

「さぁさぁ始まるぜぇぇっ!!今日の大会のぉ…注目の一戦!!この店のトップクラス戦魂者の二人の対戦だぁぁぁぁ!!実況はこの俺!!馬神トッパが…正面突破で務めるぜ!!」

 

馬神トッパと名乗る、赤髪の18歳ほどの若い男が凄まじいテンションでシャウトする。彼の叫びに呼応されるかのように、辺り一帯が熱気に包まれる。

──なんなんだろうか…。

少年が呆気にとられていると、赤髪の男が近付いてきた。

 

「なんだよなんだよぉ!?せっかくの戦魂なんだからさ、もっとテンション上げてこーぜ!!」

「…戦魂?」

「…お前…もしかしてバトスピ知らねぇのか!?」

 

少年はうなずく。 男は何やら叫びながらのけぞる。相当ショックだったのだろう。

 

「お前…。じゃあなんでここで寝てたんだよ?」

「居心地いいなぁ…って思って。昨日来たときは静かだったのに…。」

「あのなぁ…。ここは昼寝場所じゃねぇんだぞ?」

男はそれから少し説明を始めた。男の説明によると、今日この店では、カードゲーム『バトルスピリッツ』の大会が行われているらしい。そのゲームは子どもたちの間で大流行していて、この店には大勢の熱いバトスピ好きが集まってくるらしい。そのバトスピの戦いのことを戦魂、バトスピで勝負する者たちのことを戦魂者と呼ぶらしい。

 

「ふぅん…。バトスピねぇ…。」

「おう!!すっげぇ面白いんだぜ~!!」

 

カードゲームの類いを、少年はやったことが無かった。少し興味を抱き、テーブルを見てみる。そして次の瞬間、少年は戦慄する。

──なっ…すげぇ…ッ!!

並べられた、数枚のカードたち。そこに描かれた美麗なイラスト。カードたちの上でぶつかり合う二人の闘志。壮絶な、最高に熱い戦いがそこにあった。

 

「…へへっ。すごいだろバトスピ?」

「あぁ…ッ!!すげぇ…すっげぇ!!」

 

場に出ているカードたちが天と地を駆け回る。その姿が、リアルに目に浮かんでくる。白髪の少女が自分のターン(順番)を終え、相手の少女のターンになる。

 

「ふっふっふ…。白咲 由希(しろさき ゆき)!!今日こそは…この嫣極切 紫牙(えんごくせつ しが)様がお前を倒ーす!!」

「…今日も元気だね紫牙ちゃん。良いカードが来たのかな?」

 

紫牙(しが)と呼ばれた少女はにんまりと笑う。由希と呼ばれた少女と同じくらいの年頃のその少女は、紫の髪をなびかせ、革ジャンを着用している。頭には巨大なサングラス。いわゆるトンデモファッションの持ち主だ。だが少年にとっては、そんなことはどうでもいい。彼はすっかり戦魂に夢中になっていた。

 

「紫牙は前のターンの由希の攻撃で、ライフは残り1つになりスピリットも大量に破壊された…。ここからどう逆転するんだ!?」

「…すみません。専門用語多すぎて意味わからないです。えっと…馬神さん。」

「バシンでいいって!…おっ!鴉くんじゃん!」

 

白髪の小さな少年が、とてとてと歩いてくる。テーブルに座っている、白髪の少女にそっくりな、可愛らしい雰囲気だ。

 

「こんにちは店長~。この人は?」

「なんかバトスピ知らねぇんだって。だから説明してたんだ。あぁ、紹介するよ。こちらは白咲 鴉(しろさき からす)くん。由希の弟だ。」

「よろしくね~。…あなたはなんていうの?」

「…聖天 斬(せいてん ざん)だ。よろしく。」

 

鴉はにっこり微笑む。そして三人の視線は、再びテーブルへ向けられる。

 

「頑張れお姉ちゃん!ファイト~!」

「…鴉…。うん!お姉ちゃん頑張る。」

「頑張る?だがしかぁし!!まったく無駄ぁぁ!!ネクサス─結界─骸の斜塔を配置。そして…マジック『ネクロマンシー』を発動ぉ!!」

 

亡霊たちの叫び声と共に、大気は鳴動する。枯れた大地に紫の結晶が散りばめられ、やがてそれは拡がっていく。地獄の門は開き、今絶望の扉が開こうとしていた。

「ネクロマンシー!!あれはトラッシュ(捨て札)の、系統゛無魔゛を持つスピリット全てを手札に加えるカードだぁ!!…ということは…。」

「…来る!」

「咲き誇れ…紫─スイレン─の華よ!!」

 

骸たちの咆哮。体を底から震えさせる地響き。得体の知れない威圧感を引き連れ、咎人たちの大行進が始まる。紫牙の場に並べられた10体以上のスピリット。対する由希の場にはスピリットはたったの2体。ルールを理解していない斬でも、どちらが有利かは容易に分かる。

 

「ピジョンヘディレスが3体、ダーク・ソードールが3体、ボーン・トプスが3体、骨鹿が3体、か。この総攻撃を喰らったら…。」

「…お姉ちゃんは…負けない!!」

 

紫の亡霊たちが由希を囲む。 今にも襲いかかろうと、鋭い牙を剥いている。

 

「私様の最大のライバル…白咲由希!!私様の華に埋もれ消えなさい!!」

 

骨鹿が由希のスピリットを引き付け、残りのスピリットたちが駆ける。

──もらったぁぁ!!

亡霊たちの最後の咆哮。勝利へ向け、決死の突進が由希を襲う。

絶対絶命の状況の中、由希は…笑った。

 

「…!?何を笑って…まさか!?」

「フラッシュタイミング。マジック『サイレントウォール』を使用。残念だけど、紫牙ちゃんの攻撃はこれで終わってもらう!!」

 

亡霊たちの突進は見えざる壁に弾かれ、攻撃は沈黙に終わる。紫牙は歯ぎしりし、悔しそうにターン終了を告げる。

 

「…でも、この数のスピリットを突破するなんて…できるわけない!!」

「どうかな?私のターン!」

 

由希のターン、由希の前に炎をまとった槍が舞い降りる。由希はそれを掴み、紫牙の後ろにそびえる塔へと投げつける。

 

「はぁぁぁぁぁ…ッ!!っ…だぁぁ!!」

 

天へ向けそびえ立つ斜塔が、赤き槍の一撃で砕け散る。

 

「あれは…ネクサスを破壊する、マジック『バスタースピア』!?そしてその効果は…相手のネクサスを破壊した時ドローができる…はっ!!」

 

紫牙は眼を見開く。亡霊たちを吹き飛ばし、新たに巻き起こる白の嵐。その中で雪の結晶が美しく舞う。

──これは…!?

大地の彼方、紫の大地を白く染め、巨大な城が降臨する。

 

「そびえよ…美しき鋼の城。『鉄騎皇イグドラシル』召喚。」

 

黄金の装甲をまとう白い勇者。はためくマントに、煌めく透明な雪。その力強く差し出された右腕に、亡霊の反撃は打ち消される。そして亡霊たちは消え去る。

 

「…くっ!!私様のスピリットが…!?」

「イグドラシルの効果。BP(バトルポイント)3000以下のスピリット全てを手札に戻す。」

「これで紫牙を守るスピリットはいなくなったぁぁ!!」

「いっけーお姉ちゃん!」

 

由希と紫牙の視線が交差する。そして二人は、静かに笑った。

 

「行けイグドラシル!!ラストアタック!!」

「…この戦魂に一片の悔いなし!!ライフで受ける!!」

 

最後のライフが砕け散り、勝負が決する。その瞬間、店中が大歓声にのまれる。

 

「決まったぁぁ!!勝者は白咲由希!!当ショップのトップクラス戦魂者がその強さを見せたぁ!!おめでとう!!」

 

大きな拍手が起こる。由希は照れくさそうに笑い、紫牙に微笑みかける。しかし紫牙は不機嫌そうな顔をしていた。

 

「…また負けた…。特訓したのに~。」

「でも紫牙ちゃんはすごく強くなってた。…ねぇ、良かったら…」

「ぐやじぃぃぃ!!覚えてろ!!次会ったときがお前の最期だ!!ワハハハハー!!」

 

紫牙は風のような速さで走り去っていった。由希は少し残念そうな表情を浮かべ、弟の方へ眼を向ける。

 

「さすがお姉ちゃん!!良いバトルだったよ!!」

「ふふ。ありがと。…あ、さっきの人。」

由希が斬に目を留める。鴉とバシン が斬のことを紹介しようとした時、三人は斬の異変に気付いた。斬は放心状態になっていたのだ。

 

「お…おーい斬~。」

 

バシンが呼び掛けると、斬はハッと覚醒する。斬はしばらく目を瞬いていたが、やがて笑みを浮かべ、由希を見据える。

 

「…決めたぜ!!」

「?」

「俺は…バトスピをやる!!そしてお前に勝ぁぁッつ!!」

 

斬の叫びが響き、人が集まってくる。呆気にとられている由希をよそに、バシンと斬は意気投合している。

 

「そうかそうかぁ!!よし…お前は俺が鍛えてやる!!」

「はい!!お願いしますバシンさん!!」

「なんか話進んでるね…。」

「ふふっ…。面白そう。」

 

周りの人たちがざわつく。トップクラス戦魂者に初心者が挑むなど、無謀でしかない。しかし斬は楽しそうな笑みを崩さない。その眼には熱い獄炎が燃え上がっていた。

 

「お前の戦魂が…俺の魂に火をつけた!!だからこそ…俺はお前と戦魂したい!!」

「…わかった。受けてたつよ。でもどうしょうか…。デッキは無いでしょ?」

「デッキ…?よく分からんが、すぐに用意する!!すべからく待て!!待ってください!!」

 

バシンによると、デッキとはカードの束(山札)のことらしい。それがなければ戦魂はできず、デッキを作るには40枚以上のカードが必要である。

 

「そのカードはどこに!?」

「ここで売ってるぜ~。ほら!」

 

バシンの指差す方向には、積まれたパックがあった。値札に書かれた値段は…210円。

 

「そんな金は…ねぇぇぇぇ!!」

「えぇ…。」

「頼むバシンさん!!俺を…ここで使ってくれ!!そして金をくれ!!」

「バイトってわけか…。わかった!!正面突破でこき使ってやるぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

─翌日─

 

斬はバシンから賃金を受け取った。斬から歓喜の叫びがあがる。

 

「うぉぉぉ!!バシンさん!!早速カードを買うぜ!!」

「おう!!どれにする?」

「じゃあ…これとこれを箱で!!」

 

斬が指差したのは、バトルスピリッツ覇王編のパック。斬は『覇王』という単語になんとなく格好よさを感じ、それを選んだ。そして剣刃編と星座編のパックも数パック買った。

 

「ふぅん…。新しいやつを選ぶんだな。」

「…あぁ。なんか良いの…来い!!」

 

箱を開ける前に、剣刃編のパックを開けてみる。

──なんだろうな…。

引き寄せられるような、不思議な感覚。そこに昔からの大切な友が待っているかのような感覚。斬はパックを開き、出てきたカードに見入る。

 

「…」

「それは…。おぉっ!!Xレアじゃん!!バトスピで最高のレア度なんだぜ~。」

「…良い。これ凄くいい!これが…俺の切り札だぁ!!」

 

お気に入りになったカードを天にかざし、斬の笑顔が輝く。

斬が箱を開けていると、由希と鴉が店に入ってきた。

 

「おぉ由希に鴉。開店したばっかなのに…。早いねぇ。」

「はい。楽しみでしたから。あの人は…」

「…なんか派手に買ってるね。」

 

斬はパックのゴミをバケツに叩き込み、勢いよく立ち上がる。

その手には、40枚のデッキが握られていた。

 

「…準備オッケーってわけか…。じゃあ早速…。」

「はい待ったー。どうせなら…あれでやろうぜ。」

「「あれ?」」

 

バシンが微笑みながら手を振る。

その場にいた全員が店の奥へ顔を向ける。そこには小さなステージのようなものがあった。由希と鴉は驚きの表情を浮かべる。

 

「まさか…あれは!?」

「そう…。最新技術を導入して、正面突破で開発されたスーパーマシーン!!」

「おぉ!一体これで何が!?」

「それは使えばわかるさ…。行ってこーい!!」

 

由希と斬はうなずき、ステージに登る。

──俺の初戦魂…。

斬は胸に手をかざす。

──全力で…楽しんでやる!!

視界からバシンと鴉が消える。店の景色も消える。体が何処かに吸い込まれていくような感覚。その果てに、斬は渇いた大地へと羽ばたく。

 

「ゲートオープン…界放!!」

 

 

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