「ぁぁああ……うっわぁぁぁ!!」
体が天を舞い、砂混じりの風を切る。近づいてくる渇いた大地。足の底に感じられる鉄の感触。聖天 斬(せいてん ざん)は未知の大地にいた。
「どこだよここは……」
辺りを見渡す。白く、ただ白く染まった木々。宙を儚げに舞う雪の結晶。幻想的な、美しい景色がそこにあった。
斬の前の雪が舞い上がる。新たに開けた視界の先、白咲由希はいた。
「……ふふっ。良かった~私好みな場所で」
「ここは?」
「バトルフィールドだぜ!!」
「バシンさん?」
どこからだろうか、バシンの声が聞こえてきた。声の方へ向くと、吹雪の中にバシンと鴉がいた。
「ここは思う存分に戦魂をするための戦場。いろいろ仕掛けがあるんだな~」
「仕掛け?」
「ま、これだけは保証できる。これが最高に楽しい戦魂になる、ってな」
「面白れぇ!!だったら、思いっきり楽しませてもらう!!」
バシンと鴉は、由希と斬のいる場所とは少し隔絶された所にいるらしい。
由希と斬の前にテーブルが出現する。二人はそれぞれのデッキをテーブルに置く。
バトルスピリッツのルールでは、最初にカードを4枚引く。そして先攻と後攻を決め、順番にターンを重ねていく。
「ターンは決められたステップに従って行われる。詳しいルールを知りたかったら、公式サイトをチェックだ!!」
「誰に話してるの?まぁいっか~頑張れお姉ちゃん!!お兄さんも頑張れ~」
弟の声援を受け、由希は拳を突きだしファイティングポーズをとる。
由希と斬の胸元に立体映像の、5つのライフが出現し、今戦魂が始まる。
「先攻は俺だ。行くぜスタートステップ!」
スタートステップは自分のターンが始まったことを示す。
コアステップは使えるコアを1つ増やす。ただし先攻1ターン目は行えない。
リフレッシュステップは前のターンで使った自分のカードたちを回復させる。
「そしてメインステップは、手札のカードを使うことができる。バトスピの展開の始まりのステップだ。
いっけー斬!」
「おう!!俺は、よし!『カメレオプス』を召喚!」
赤のスピリットをテーブルに置く。すると、目の前に赤色の結晶が現れた。
「な、なんだ!?」
結晶が大きな音をたてて砕け散る。そして砂煙の中から、赤い皮膚の生物が咆哮をあげる。
「じ、実体化したぁ!?」
「そう!これがこのバトルフィールドの凄さ。実体化したスピリットたちと共に、よりリアルな戦魂ができるんだ。気に入ったか?」
「あぁ!俺はこれはターン終了だ。」
「私のターン。『エメアントマン』を2体召喚」
由希がカードを引く。後攻1ターン目からはコアステップでコアを増やすことができる。由希の前に緑の結晶が出現し、2体の蟻の兵士が召喚される。さらに由希は、1枚のカードをかざす。
「それは?」
「ふっ。バースト、セット!!」
セットの呼び声と共に、由希はカードをテーブルに置く。それは裏向きのまま、その正体は明かされない。
バーストとは発動条件が満たされた時に発動できるカード。その見えざる罠の威圧感に斬は警戒を強める。
「ちなみに、バースト効果を持たないカードをバーストとしてセットすると、反則負けになっちゃうぞ。ちゃんと注意してバーストを使いこなそう!!」
「だから誰に話してるの?」
由希のターンは不気味な沈黙のまま終わる。そして斬のターンとなる。斬のリザーブ(使用可能なコアを置く所)のコアが燃え上がり、灼熱の龍が雄叫びをあげる。
「行くぜ!!『焔竜魔皇マ・グー』を召喚だぁぁ!!不足コストはカメレオプスから確保する」
地割れが起こり、地獄の炎が天へ昇ってゆく。
「くっ──!!」
由希に戦慄がはしる。赤の爆発から伸びる黒い腕。美しく舞う雪を引きちぎり、大地の命は枯れ果てる。絶望の扉は開かれた。
「おっ。良いカードだな」
「マ・グーの攻撃力は凄いもんね。でも不足コストをスピリットから確保するなんて、なんか初心者っぽくないね」
「ふっ。店のバイトがあいつを鍛えたってわけよ」
「バイトで鍛えたって、何したの?」
「ま、あとで話してやるよ」
斬のアタックステップになる。そしてその瞬間、トラッシュ(使用済みのコアを置く所)のコアがマ・グーに吸収される。これがマ・グーの能力。自分のアタックステップ開始時に、トラッシュのコア全てを自身に置くことができる。
そしてスピリットは、自身に置かれたコアの数によってレベルが変わる。マ・グーの最高レベルは3。マ・グーLV3のBPは10000。LV3に必要なコアは5つ。今マ・グーには5つのコアが置かれ、最高火力を叩き出す。
「マ・グーの更なる効果ぁ!!俺のアタックステップ中、系統に竜人か古竜を持つ俺のスピリット全てのBPを3000アップさせる!!」
「合計BP13000か。面白いね」
由希の余裕は崩れない。斬の顔が歪む。
「その余裕、イラっとくるぜぇっ!!行っけぇぇっマ・グー!!地獄の絶望を見せてやれぇっ!!」
爆音を響かせ、マ・グーが白く染まった天を駆ける。銀の光を放ち煌めく槍。BP13000の攻撃が由希の喉元へ突き立てられる。しかしマ・グーの槍は由希の体の寸前で止まる。槍の先には、エメアントマンが突き刺さっていた。
「ブロックしていたわけか」
「そう。そしてエメアントマンの効果。破壊された時、リザーブにコアを1つ増やす!」
「チッ。ターン終りょ…」
「っと!!まだ終わってはいない。《相手による自分のスピリット破壊後》。これが…このバーストの発動条件!!発動せよ『双光気弾』」
バーストは発動条件が満ちた時、バースト効果をコストを払わずに発動できる。双光気弾の効果で、由希は2枚のカードをドローする。由希は可愛らしく、得意気な表情を浮かべる。
「今度こそターン終了!来い!」
「私のターン。エメアントマン、転召の贄となれ!」
エメアントマンが緑の風にのまれ、蟻の女王が地獄の炎を掻き分けて現れる。転召とは、条件を満たしているスピリット上のコアを指定の場所(例:ボイド、トラッシュ)に送ることで、より強力なスピリットを召喚する、というものである。
「出でよ『女王アントレーヌ』!そして効果により、コアを4つ増やす!!」
「一気に4つも!?おっ得ぅぅぅ!!」
「でしょ?そして、増えたコアでこれを使う。
氷の棘が螺旋のように巡らされ、窟の奥の神秘を守護するに獣になる。
ネクサスもスピリットと同じようにLVがあり、LVが上がっていれば、新しい能力を発揮する。
「さ、て、バーストセット。うん、ターンエンド」
由希は少し悩んでターンを終える。今斬の場にブロックできるスピリットはいない。攻撃すれば斬のライフを減らせるが、攻撃して疲労すると、次の斬のターンでブロックに使えない。攻撃するべきか否か。思案の果てに由希はブロッカーを残した。
「慎重だな。だが、俺は攻めるぞ。ネクサス『英雄皇の神剣』を配置するッ!!」
斬の背後に神の剣が突き立てられる。
英雄皇の神剣があれば、斬はバーストをセットした時にドローができる。
「そして当然バーストセットォッ!!神剣の効果でドロォォウッ!!ーさらに『ライト・ブレイドラ』を召喚し、マジック『三札之術』を使用ぉぉっう!!」
三札之術の効果。斬はデッキから2枚ドローし、その後デッキの一番上のカードをめくる。それが赤のスピリットだった場合、斬はそれを手札に加えることができる。斬は願いをこめてデッキの上のカードを見る。出たカードはカグツチドラグーン。
「あれは赤のスピリット。ってことは……」
「In my hand、センキュウ!!」
「かかった!!」
「え?」
由希のデッキの上から3枚弾け飛び、そのまま由希の手札に加えられる。
「獣の氷窟LV2の効果。相手の手札が相手のスピリット、マジックの効果で増えた時、その枚数分、私はドローできる!」
「ぬぬ。負けるかよ、アタックステップだ!!マ・グーにコア追加ぁ!!そしてマ・グーのアタァァック!!」
「防げアントレーヌ。ブロックだ。」
マ・グーの前に蟻の女王が立ち塞がり、攻撃を阻む。怒り狂った獄龍は女王の首を掴み、頭から地面に叩きつける。緑の光が儚く輝き、女王は戦場から去る。
「ライト・ブレイドラはブロックに残す。ターン終了だ。」
「私の番ね。『機人フィアラル』と『水晶竜シリマナイト』をLV2で召喚。そして…」
黒い炎を消し去り、雪が華麗に舞う。
白く染まる大地の彼方、金色の装甲まといし勇者が降臨する。
「そびえよ、美しき鋼の城。『鉄騎皇イグドラシル』召喚」
ライト・ブレイドラを吹き飛ばし、マ・グーとイグドラシルが対峙する。強者と強者。緊迫感あふれる戦いの幕が開く。
「会いたかったぜイグドラシル!!」
「そんなに喜んでくれるとは嬉しいな~。でも容赦はしない。召喚時効果でライト・ブレイドラは手札に。フィアラルのコアを獣の氷窟に移し、再び氷窟はLV2へ。そして、イグドラシルのアタック!!」
マントをなびかせ、鉄騎皇が雪と共に嵐を起こす。沈黙の果て、雪の壁から数発の弾丸が放たれた。
斬はブロックを試みる。しかしマ・グーは疲労状態。ライト・ブレイドラは、イグドラシルの効果で手札に戻されている。防御不可能。斬に弾丸が直撃する。
「つっ!!ぐぅぅぅあぁぁ──ッ!!」
弾丸は立体映像。しかしその臨場感は痛みを感じさせる。こらえきれず、足が地面から離れる。
「ぐっはぁぁぁぁ!!な、なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!?」
「ダメージもリアルになるんだけど、ちょっと調整が必要かもな」
恨めしそうにバシンを睨みながら、斬はゆっくり立ち上がる。
スピリットの攻撃をライフで受けると、そのスピリットのシンボルの数だけライフを減らすことができる。今の攻撃で斬のライフは残り4。そしてバトルスピリッツは、先にライフが0になった者が敗北する。
「はぁ、はぁ……!!だが、破壊されたライフはリザーブに送られる。次の召喚の力になる……!!」
「いい気迫だね。楽しくなってきたっ!!私はこれでターンエンド」
「俺のターン!カグツチドラグーンをLV2で召喚。そしてアタックステップ。マ・グーにコアを追加。カグツチドラグーン、アタックを頼む」
カグツチドラグーンは系統゛古竜゛を持つ。よってマ・グーの効果を受け、BPは9000になる。そしてカグツチドラグーンが攻撃する時、自分は1枚ドローできる。
「獣の氷窟の効果。私もドローさせてもらうよ」
「だが、マ・グーの更なる効果が発揮される。LV2、3の時、系統゛古竜゛を持つ自分のスピリット全てに、赤のシンボルを1つ追加する。そしてカグツチドラグーンの能力[激突]!!」
激突。それは赤特有の能力であり、相手はそのアタックを可能ならばブロックしなければならない。
「いっけー!!」
「ふっ。シリマナイト、[装甲]シールド展開!!」
「なにッ!?」
イグドラシル、フィアラル、シリマナイトがバリアに包まれ、カグツチドラグーンの突進を弾き飛ばす。そして攻撃の軌道がずれ、由希へと向かう。
「これが白の能力、[装甲]。指定された色のあらゆる能力を受けない。シリマナイトによって、私のスピリット全てに赤の装甲が与えられていた、ってわけ。ま、シリマナイトのは[重装甲]だけどね。」
「だが、カグツチの攻撃はまだ残っている!!」
シンボルが2つになったことで、ブロックされなかった場合、カグツチドラグーンは一撃で由希のライフを2つ奪う。しかし由希は余裕の笑みを崩さない。
「フラッシュタイミング……」
「はい?」
「マジック、『デストラクションバリア』を使用する。アタックは、ライフで受けるよ」
由希のライフが砕け散る。しかし斬の表情はうかない。そして彼の胸の中の悪い予想は的中することになる。由希の砕けたライフの破片が、鋭利な刃のように空を裂く。そして、その攻撃はカグツチドラグーンを貫いた。
「か、カグツチィィッ!?」
「これがデストラクションバリアの効果。発動ターン、アタックで自分のライフを減らしたスピリットを破壊する」
「うぅ、カグツチィィ……。だが、お前のライフは2つ……あれ?」
「シリマナイトの効果。互いのライフは、シンボルを複数持つスピリット1体からの攻撃では、1つまでしか減らされない。さらにバースト発動!!妖怪吸血爪。デッキから2枚ドローする」
由希の胸に輝くライフは4つ。カグツチドラグーンの決死の攻撃も効き目が弱まってしまった。斬は意気消沈し、ターンを終えた。
鴉とバシンはうなり声をあげる。斬の勢いは、今のデストラクションバリアで弱まった。そしてこれこそが白の常套手段。圧倒的な防御で相手の攻撃をいなし、大型スピリットやマジックで相手を一気に倒す。長引けば長引くほど、白が有利になっていく。斬は由希の必勝パターンにはまったのだ。
「このまま、お姉ちゃんの勝ちになっちゃうのかなぁ」
「なんだ?残念そうだな」
「あの人は、なんか上手く言えないんだけど、頑張ってほしいんだ」
「まだ負けやしねぇよ。ほら……」
斬の眼。黒い炎が燃えている。その闘志は、揺らぐことなく燃え続けている。由希は少し驚く。
「すごいね……!!諦めてなんか全然ないみたい」
「諦める?なぜだ?俺のライフは、まだ生きている」
「……そうだね、その通り。私はミストウィゼルを召喚。アタックするよ」
「防げマグー!!」
紫の猫の攻撃は、マ・グーに阻まれる。しかしミストウィゼルの破壊時効果で、由希の手札は3枚増える。そしてイグドラシルが駆ける。
「これが白の力。さぁ、受けてもらおうかな。イグドラシルのアタック!!」
鉄騎皇が地中に手を突っ込む。地が一瞬揺れ、次の瞬間、その手に白銀の剣が握られる。そしてイグドラシルの剣戟が斬を斬り裂く。
「がっ──ッ!?」
斬に攻撃は直撃する。しかし、斬は笑った。
「俺を、なめるなぁぁぁ!!バースト発動!!絶甲氷盾!!」
「なに!?」
斬の失われたライフが回復し、由希の攻撃が白の壁に阻まれる。絶甲氷盾は《自分のライフ減少時》に発動でき、コアをライフに1つ置くことができる。そしてバーストは、コストを払えば追加の効果を発動できる。斬はコストを払い、絶甲氷盾の、アタックステップを終了させる効果を使った。
「まさか私に白のカードで対抗してくるとは……!!」
「俺に色はない。ありとあらゆる手段を使い勝つ。それが、俺の戦魂だ!!来い『蜂王フォン・ニード』!!」
緑の甲冑まとう蜂の王、フォン・ニードが白の勇者の背後に迫る。伸びる、イグドラシルの抹消の腕。しかし風の如き速度でフォン・ニードは攻撃から免れる。そしてフォン・ニードに、3つのコアの輝きが灯る。
「フォン・ニードは召喚時にコアを3つ増やせるんだよね」
「そうそう。セイリュービと一緒に無双してたのも、今やいい思い出に……」
「ならない」
「そっか……」
鴉とバシンのほのぼの会話をよそに、由希と斬の壮絶な戦魂は続く。
「相手の《召喚時効果発揮》により、バースト発動!!双翼乱舞。デッキから2枚ドロー」
バーストの効果で、由希は手札をさらに2枚増やす。斬はカグツチドラグーンを召喚し、バーストをセット。神剣の効果でドローし、由希もドローした。
「アタックステップ。マ・グーにコアをのせ、カグツチドラグーンのアタック」
カグツチの効果で斬はドロー。由希もドローする。そしてカグツチの前にシリマナイトが立ちはだかる。
「シリマナイトでブロック」
赤き竜の攻撃がシリマナイトにダメージを与える。カグツチの口が開かれ、トドメの一撃が放たれようとしていた時、シリマナイトの周りに緑の光が現れる。
「フラッシュタイミング、マジック『ライフチャージ』を使用。コスト3以上のスピリットを破壊することで、ボイドからコア3つを増やす。シリマナイトを破壊」
緑の爆発と共にシリマナイトは消滅。続けてフォン・ニードが攻撃する。
「ライフで受ける」
由希のライフが残り3となる。斬はターンを終了する。
「シリマナイトはダブルシンボルの攻撃を弱体化させる。このタイミングで、あえてそれを破壊したってことは……」
「来るね。お姉ちゃんの、あのカードが!!」
由希は冥機グングニルを2体と、ソードールを召喚する。風が吹き、グングニルが天の城へ昇っていく。
「グングニルを転召。天空をゆく、誇り高き純白の翼!!『翼神機グラン・ウォーデン』LV3で召喚!!」
白の騎士たちの頭上、これまでのスピリットを越える威光を放つ、純白の翼が降臨する。BPは10000。マ・グーと互角。しかし由希の顔に躊躇はない。
「フィアラルをLV3へ。そして、羽ばたけ、グラン・ウォーデンの攻撃!!」
「なに!?相打ちねらいか!?」
「違うよ。フィアラルの効果。フィアラルを疲労させ、そのBPを゛武装゛に与える。」
フィアラルのBPは5000。それがグラン・ウォーデンに加えられ、グラン・ウォーデンのBPは15000となる。そしてグラン・ウォーデンはダブルシンボル。この攻撃は、一撃で斬のライフを2つ奪う。そしてグラン・ウォーデンは羽を再び広げる。
「回復した!?」
「グラン・ウォーデンの効果。゛武装゛が疲労した時、回復する。」
つまり、この後グラン・ウォーデンはもう一度攻撃してくる。しかし斬は楽しそうに笑う。そして、その手から雷が放たれる。
「面白れぇ、俺の答えは……これだぁぁッ!!」
マ・グーの体を雷が包み、グラン・ウォーデンに突っ込んでいく。
「これが、俺たちの力だ」
グラン・ウォーデンとマ・グーが硬直する。そして、2体は大爆発と共に消え去る。
「な、これは!?」
「マジック、『ライトニングバリスタ』を使用した。シンボル2つ以上を持つスピリットのBPを5000上げる」
マ・グーのBPは上がり、グラン・ウォーデンと互角になっていたのだ。由希の表情が始めて歪む。
「くっ!!だが、まだ私の攻撃は……」
「残っている?とんだロマンチストだなぁぁっ!!バースト発動!!『風の覇王ドルクス・ウシワカ』をバースト召喚!!」
緑の風が起こる。イグドラシルとグングニルが膝をつき、風の覇王が雪を裂き駆ける。
バースト召喚。それはバーストによる、コストを払わない召喚。ドルクス・ウシワカは相手のスピリット2体を疲労させてバースト召喚されるのだ。
「ターンエンド……」
「お姉ちゃんのブロッカーはヴァルハランスだけ……!!」
「チャンスだぜ斬ッ!!正面突破だー!!」
「おう!!俺はライト・ブレイドラを再び召喚。そして、ウシワカ、フォン・ニード、カグツチをLV2へ。そしてバーストセット」
フォン・ニードが駆ける。
「っ、『ムシャツバメ』来い!!」
カグツチの前に、突然緑の鳥が現れる。カグツチの爪がムシャツバメへ伸びる。しかし、その一撃は空を裂く。
「その速さ…まさか!?ターンを無力化する[神速]かぁ!?」
「そう。[神速]はフラッシュタイミングで召喚することが可能。」
由希はムシャツバメでブロックしていた。そしてムシャツバメが消える寸前、斬の前に白いカーテンが出現する。
「フラッシュタイミング、マジック『サイレントウォール』を使用。このバトルの終わりが、このアタックステップの終わりとなる」
「やるな。ターン終了」
鴉とバシンがため息をつく。
「せっかくのチャンスだったんだけどなぁ……」
「うん。そして、そろそろお姉ちゃんの切り札が来る。もう終わりかな」
「……そうかな?」
バシンと鴉の眼は斬へ向けられる。斬はまだ、諦めてなどいない様子だった。バシンと鴉は笑う。
「私のターン、ネクサス『隠されたる賢者の木』をLV2で配置。獣の氷窟はLV1へ」
少女の微笑みが雪に映える。美しく、艶やかな輝き。雪の中、強く太い大樹が、空をめがけて生える。
「降り積もる雪の中に根を張る木か。趣があるな」
「ずいぶん余裕なんだね」
「俺はただ楽しんでいるだけだ。お前の切り札、そろそろ見せてもらおうか」
由希は苦笑いする。自分が今握っているカード。由希のデッキ最強のスピリット、いわゆる切り札というやつだ。どうやら力んでしまっていたらしい。保っていた余裕も、いつの間にかどこかに消えてしまっていた。実際、この状況は由希にとって有利ではない。由希は眼を見開く。
「私も、楽しむとしようかな」
「来い……!!」
大樹と白の城が交わっていく。大地が震え、新たな勇者の誕生が告げられる。
「イグドラシルよ、転召の糧となれ。緑の力!白の力!溶け合い雄々しく奮い立て!!『終焉の騎神ラグナ・ロック』召喚!!」
緑のコアと白のコアがひとつになり、蝶の羽が開く。イグドラシルの装甲が弾け飛び、蝶の羽と交わっていく。それらは完全な融合を果たし、金色の、最強の勇者となる。
「すげぇ……!!」
「これが私の切り札。その能力、見るがいい!!ボイドからコアを6つラグナ・ロックにのせ、相手スピリット全てを疲労させる!!」
斬の仲間たちが静寂に沈む。そしてラグナ・ロックが羽を広げ、その姿が露になる。イグドラシルの肉体を受け継いだ、騎士の姿。BPは15000。より強化された金色の装甲が輝き、誇りの眼光が斬を見据える。
「カッコいいじゃねぇか」
「ありがと。でも、まだ終わらない。グングニルよ、その身を捧げよ。転召の渦より来たれ、白銀の翼!その牙をむき、力を奮え!!『翼神機グラン・ウォーデン』LV2で召喚!!」
再び白銀の翼が降臨する。そして白の騎士たちの、最後の突撃が始まる。
「さぁ、決めさせてもらうよ」
「やってみるがいい」
斬の眼光は死なない。由希は嬉しそうに笑い、雪の上を駆け出した。息をきらして走る姿は必死そのもの。今にも殴りかかってきそうな勢いで由希が走る。
「はあぁぁぁぁ!!グラン・ウォーデン、ファイアァァァッ!!」
「熱くなってきたな……受けてたつぜェッ!!バースト発動。『刀の覇王ムサシード・アシュライガー』をバースト召喚!!」
「!?」
巻物が宙を舞い、日本刀が斬の腰から抜かれる。無数の刃がぶつかり合い、4足の獣が時空の狭間から召喚される。LV3BPは11000。
「BP5000以上のスピリットの攻撃がバーストのトリガーか……!!味な真似を──ッ!!」
「アシュライガーはバースト召喚された場合、BP3000アップ!グラン・ウォーデンをブロックするッ!!」
グラン・ウォーデンの剣とアシュライガーの刃がぶつかり合い、火花を放つ。アシュライガーの刃が白の剣を弾き、前足が騎士の腹部を蹴る。ひるんだ騎士にアシュライガーの刃が伸びる。最後の抵抗とばかりにグラン・ウォーデンの剣がアシュライガーへ伸びる。剣は交差し、2体は動きを止める。
「……」
倒れたのはグラン・ウォーデン。フィールドから消滅する。由希は歯ぎしりする。
「だが、まだ私の攻撃は終わらない!!ソードールの攻撃」
「フラッシュタイミング、マジック『スタークレイドル』を使用。ラグナ・ロックを疲労させ、ウシワカを手札に戻す。これでお前の切り札は……」
「フラッシュタイミング、マジック『ホワイトポーション』を使用!ラグナ・ロックは回復する」
「ガクッ」
ラグナ・ロックを封じようと試みたものの、由希のカウンターが見事に決まる。そしてソードールの攻撃が斬のライフを砕く。
「続けフィアラル!」
「ライフで受ける」
斬のライフは残り2つとなる。そして、騎士のダブルシンボルの攻撃が斬を襲う。
「フラッシュタイミング!アシュライガーのコアを使い、マジック『ライフチャージ』を使用。フォン・ニードを破壊し、コアを増やす。そしてウシワカを[神速]召喚。」
緑の風と共にウシワカが現れ、騎士の剣を受け止める。しかしBPはラグナ・ロックが遥かに上。ウシワカは破壊されてしまう。
「だが、攻撃はしのいだ」
「いや、終わらないよ」
「なに!?」
斬は眼を見張る。視線の先には、回復したフィアラルとソードールの姿があった。
「ラグナ・ロックの効果。バトル後、コスト8以下のスピリットを3体まで回復させる」
「なん……だとぉ……!!」
「フィアラルの攻撃!」
白の戦士の剣が斬を切り、斬のライフは残り1となる。あと一撃で斬の敗北が決まる。そして回復状態のソードールが駆ける。
「よく頑張ったね。でもこれで終わる、ソードールの攻撃!」
ソードールが斬の前に立ち、トドメの攻撃を放つ。勝利を確信した由希。しかしその眼に映ったのは、笑みを浮かべた斬の姿だった。
緑の風が吹き、ソードールの攻撃が止められる。
「まさか、神速のスピリット!?」
「そう。『クイック・モスキー』を神速召喚していた。」
「……賢者の木の効果で、私のスピリットたちは回復。ターンエンドだよ」
由希の残念そうな声が響く。そして斬のターン。
「そういや、さっきから召喚の時に言ってるやつ。なんなんだあれ?」
「召喚セリフのことかな?戦魂を盛り上げるための演出だよ」
「そうか。なら……」
斬は1枚のカードをかざす。
「……俺も言ってみるとしよう」
斬の手が燃え、光を放つ。光を越えた龍が、今現れる。
「神の頂きを越え、光と闇を束ねし龍よ!!その剣を以て、混沌を御する覇者となれ!!『龍輝神シャイニング・ドラゴン・オーバーレイ』、天駆ける聖天よりLV3で降臨!!」
赤い、熱い炎が渦を巻く。大地は新しい色を染め、舞い散る雪は全て消し飛ぶ。光を越えし神の龍、龍輝神が終焉の運命と対峙する。
「それ、自分で考えたの?」
「おう」
「……フフ、アハハハハ!!ダッサ~イ!!」
「なぁっ!?」
斬は大声を出して驚く。鴉とバシンの方を見ると、二人も由希と同じように笑っている。
「や、やめろぉぉ!!一生懸命考えたんだぞー!!」
「アハハ。あ、ごめん続けて」
「行くぞおらぁぁ!!『告死蛇ブームスネーク』をLV2、さらに『イグアバギー』を召喚」
ブームスネークは紫のスピリット。意外なスピリットの登場に、由希は目を疑う。
「な、それは……!!」
「ブームスネークの召喚時効果。フィアラルのコアをリザーブへ」
スピリットはLVを維持するために、コアが必要である。基本的にLV1を保つためには、コアは1つ必要。そしてスピリット上のコアが、LV1を保つのに必要な数より少なくなった時、そのスピリットは『消滅』してしまう。フィアラルはコアが無くなり消滅する。
「アタックステップ!!ブームスネークの能力。自身を疲労させ、オーバーレイをこのターン、無色のスピリットとする!!」
龍輝神を紫の霧が包み、その姿を覆い隠す。そしてオーバーレイの赤の波動が、斬のスピリットたちに浴びせられる。
「オーバーレイLV3の能力。自分の赤のスピリット全てに[強化]を与える」
強化は、カードの効果を強化する能力。赤の強化は、発動したスピリット破壊能力の、破壊できるBPの上限を1000上げる。
「お前の[装甲]は、特定の色の効果を受け付けない、というもの。だが、今のオーバーレイに色はない。防ぐことはできない!!」
「…くっ!!」
ライト・ブレイドラ、イグアバギー、カグツチ、アシュライガーの力がオーバーレイへ集う。ライト・ブレイドラは元々強化を持っているので、二重に強化ができる。
「オーバーレイの効果。シンボル1つにつき、BP5000以下のスピリットを破壊。さらに、BP10000以下のスピリットを破壊する。5チャージ完了!!BP10000以下のスピリット1体と、15000以下のスピリット1体を破壊するっ!!」
天から炎の輪が舞い降り、終焉の騎神と鎧神機に注ぐ。
──行けッ!!
張り巡らされる白の結界。破壊の炎とぶつかり合う。炎の勢いが弱まっていく。
──まだだ……!!
斬の赤の仲間たちの想いが、一筋の火になって、炎と混ざり合う。炎の力は蘇り、結界はひび割れていく。
──届け……。
結界が砕け散り、白の騎士の姿が露になる。そして騎士たちの頭上へ、剣を掲げた龍輝神が飛ぶ。
「届けぇぇぇッ!!」
剣がヴァルハランスを切る。そして龍輝神と終焉の騎神が対峙する。交わされる剣と剣。そして…龍輝神の剣が届いた。爆発をあげ、終焉の力は終わりを告げる。
「私の……ラグナ・ロックが……!!」
ラグナ・ロックは破壊された。そして、龍輝神の剣が由希のライフを砕く。
「くっ!!」
由希のライフは残り2。由希は、自分の敗北を悟った。
そして、斬が口を開く。
「お前に言いたいことがある」
「……なにかな?」
斬は歯をむき出しにし、満面の笑みを浮かべる。そして、その笑みを由希へ向ける。
「ありがとうございました。いいバトルでした」
由希は一瞬、ポカンとする。そして、フィールドは優しい笑い声に包まれた。
「うん。またやろうね」
「あぁ。……さぁ、終わらせるとするぜ!!イグアバギー、ライト・ブレイドラ、アタックだ!!」
イグアバギーとライト・ブレイドラが地を駆ける。由希は微笑み、手を広げる。
「ライフで……受ける」
由希のライフは全て砕け、斬の勝利が決まる。斬が龍輝神を背に、拳を握りガッツポーズをとる。
「いい夢を……Good-Bye!!」
初バトル、なんとか書ききりました。正直疲れました。作者は遅筆ですので、1週間に1回更新できればいい方だと思ってください。
間違いがあったので修正しました。