ほのぼのバトスピ伝   作:ヴァーチャル

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第5話 開戦直前

黒タイツが黒タイツを押さえ込みそれを黒タイツが眺めているという、子供が見たらトラウマになりそうな光景が、トアル町のかたすみで広がっていた。

 

「ぜ、全さま~!!お許しください~!!」

「許すわけがないだろう。無様に負けて、おめおめと逃げ帰って来たとは情けない」

「申し訳ありませんっ!!あ、あ、でも!有力な情報は手に入れて来ました!!」

「ほう」

 

全と呼ばれた黒タイツは興味を持った様子で、膝をついている黒タイツの前にしゃがみこむ。

 

「で?」

「れ、例のショップで聞き込んだのですが、あそこの大会にどうやら彼女が参加しているようです」

「それは面白い」

 

愉快そうにクックッ、と小さく笑う。倒れている黒タイツから目を離し、彼を押さえつけている黒タイツに離すよう命じる。

 

「もういい。我らトロピカルドレッシング団に仲間割れしている余裕などない。さぁ、究極との戦いの始まりだッ!!」

 

 

 

 

「要するに、この世界がヤバいかもってことだろ?」

「ま、まぁ、かなり大雑把に言うとそうかな……」

 

バシンは戦魂(バトル)の後、アイボウと一緒に家に帰った。帰った後はアイボウとたくさん話をした。話をするにつれて、バシンの頭にはアイボウと過ごした子供の頃の記憶が蘇ってきた。アイボウによると、アイボウがバシンのもとからいなくなったのはバシンが高校生になった頃で、バシンのもとから去る時に自分に関する記憶を消したらしい。アイボウは本来、バシンたちのいる世界とは別の世界の住人であり、そっちの世界が危機に陥ったので、一時的にバシンの記憶を消した。自分が帰らない時にバシンを落ち込ませないようにという、アイボウなりの気遣いである。

 

アイボウの世界に訪れた危機というのは、2つの大きな勢力の争いによるものであり、それを鎮めるためにアイボウは2つの内の片方の勢力に属し、戦いを終わらせるための力を求めて、この世界に戻ってきた。アイボウが属する勢力が誇る力。それこそが究極(アルティメット)であり、アイボウはそれを覚醒させるため、この世界の戦魂者(カードバトラー)に協力を求めるために来たのだ。戦いの影響はこの世界にも及ぶ可能性があるらしい。

 

「つまり、俺みたいな究極使いを何人か見つければいいわけだ」

「あぁ。けど敵の勢力の刺客も、バシンの前に現れるだろう」

「『新ナゾオトナ』ってわけだな」

「ん、ま、まぁ。あ、バシン」

「ん?」

 

アイボウはまじまじと、デッキケースから究極を取り出して眺めているバシンの手元を覗きこむ。アイボウの視線の先にはゴラドンやロクケラトプスなど、さっきの戦魂で使ったカードたちがあった。

 

「……そいつら、ずっと使ってるのか?こんなこと言うのもなんだけど、ずいぶん古いカードだよな」

「これとは別に新しいデッキもあるよ。けど、やっぱこいつらが大好きなんだよなッ!!!」

 

満面の笑み。アイボウは帰ってきた、と実感した。胸に暖かい波が押し寄せてくる。バシンに何か言おうと口をモゴモゴさせていると、バシンはしまった、という顔になり、慌てて支度を始めた。

 

「ど、どうしたバシン!?」

「やや、やッべェ!!!話してたら朝になっちまったぁ!!!仕事に行かねぇとッ!!!」

「え、いくらなんでも早く……」

「今日はやることあってさッ!!!悪いアイボウ、お前今日留守番なッ!!!」

 

靴を何足か吹き飛ばし、バシンは玄関から飛び出した。アイボウは吹き飛んだ靴を元の場所に戻しながら、刑事ドラマか何かで見たハードボイルドな中年男性の真似をして、変わらねぇな、と呟いてみた。言ってみた後、しばらく一人で照れ笑いしていた。

 

 

 

「つーわけで、おっはよォございまァァす!」

 

誰もいない店内にバシンの高らかな挨拶が響き渡る。まだ暗い外の様子に反してバシンの顔は明るく、楽しげに何やら準備している。しばらくガチャガチャやっていると、最初の客が訪れてきた。

 

「バシンさん、おはようございます」

「おぉ、斬じゃねぇか!よし、お前も手伝えッ!!!」

「よく分かんないけど、分っかりましたァッ!!」

 

開店時間が訪れた。仕事を終わらせてバシンと斬が休んでいると、最初の客がやって来た。

 

「おはよーございます。あ、斬さん早~い」

「よぉ鴉に由希。俺、一応バイトつーか手伝いだから、早く来るように言われてるんだよ」

 

鴉に続いて姉の由希も入ってくる。彼女の目が素早く店内に貼られたポスターをとらえる。

 

「……大会ですか?」

「そうッ!!!いやぁ~今回は斬も出るし、いつも以上に盛り上がるぜッ!!!」

「おぉ!!そういえば俺No1にもNo2にも会ったことないし、楽しみだぜ~!!」

 

斬の言葉に、由希はクスクス笑う。鴉とバシンも同調し笑いだす。斬は頬をふくらませて眉をひそめる。

 

「なんだよ!?俺なんも変なこと言ってないぞ!?」

「そうだけど……ふふっ」

「なんだよ~?」

 

今、店内に客は由希と鴉しかいない。なので二人を斬に任せ、バシンは外の空気を吸いに行こうとした。店の入り口から足を踏み出すと、誰かの足に軽く当たった。

 

「あ、すいません」

 

足を引っ込め、頭を少し下げる。少ししてから顔を上げると、そこには地味な緑の帽子をかぶった中年の男性がいた。ひげを生やし、丸い眼鏡をかけているその男性は、バシンの向こうの、店内の様子を観察しているようだ。

 

「あ、もしかして頼んでた業者さん?」

「はい。掃除しに来ました」

「そうでしたか!どうぞ、入ってください!」

 

町の清掃キャンペーンで、今日だけ業者さんが無料で掃除してくれるのだ。バシンも自分が店の掃除を怠っているとは思ってはいないが、なにしろ無料だ。どうせなら、というわけで頼むことにしたのだ。

 

「あ、バトスピのお店でしたか」

「はい。バトスピ知ってんですか?」

「うちの子供がやってまして。それに付き合う感じで、あっ!?」

「どうしました?」

 

驚いて飛び上がった男性の視線を追ってみると、その先には鴉がいた。バシンが言葉をかける間もなく、男性は鴉につめよる。戸惑っている鴉の手を握る男性の顔は輝いていた。

 

「きみ、白咲鴉くんだろ!?』

「あ、はい」

「いやぁ、息子が君の大ファンなんですよ~!!僕もあんな白使いになるんだー、っていつも言っていて」

「え、え?あ、あはは」

 

照れ笑いし顔を赤くして鴉はうつむく。状況を理解できていない斬に、クスクス笑いながら由希が説明する。

 

「え?じゃあこの店のNo2って……」

「そう鴉。『漆黒に染まりし氷結の翼(ブリザード・ダークウィング)』とは、鴉のことなのだ。えっへん」

「えぇーッ!?っていうかそんなイタいあだ名初耳なんだけどー」

 

男性は鴉から手を離し、デッキを取り出す。

 

「実は私もファンなんです。お願いします、一回でいいから戦魂してください!!」

「僕はオッケーですけど、バシンさんは大丈夫ですか?」

「ん?あぁ、掃除がちょっと遅れるくらい気にしねぇから、存分にやれよ」

「じゃ、決まりですね」

 

鴉の目に獣のような力強い光がはしり、その手にデッキという名の剣が握られる。両雄揃い、今、戦魂の扉が開く。

 

「「ゲートオープン界放っ!!!!」」

 

 




どうも。アルティメットノヴァが欲しくてたまらないヴァーチャルです。前書きとか後書きの使い方がイマイチ分からなかったのですが、これからはボチボチ使っていきます。
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