嵐の向こうはきっと晴れ   作:華留奈羽流

5 / 16
導入部はなるべく一気に書こうと頑張りました。


私に勝負を挑む艦娘は何奴だぁ?

鎮守府の正門前。

外出届も出さずに飛び出していった晴海が

戻ってきたところでコソコソと中の様子を伺っていると

 

「何やってんのよ」

 

反対側の門柱の陰にいた誰かが声をかけてくる。

慌てて晴海が目を向けると、そこには見覚えのある顔があった。

 

「叢……雲……?」

 

思わず口走った名前に相手も反応して柱の陰から姿を現す。

駆逐艦・叢雲。

この鎮守府の最古参の艦娘だった。

不機嫌そうな顔で晴海を見ながら

 

「幹部と会食の後、飛び出してったって聞いたからここで待ってたのよ。

 けど、ちゃんと私のこと覚えてたのね?だったら挨拶にぐらい来なさいよ。

 まったく、あんたときたらうわあぁぁっ!?」

 

「ムラちゃーん!久しぶりー!!」

 

話している途中で、晴海が叫びながら飛びついて

華奢な叢雲の体を抱きしめた。

 

「ちょ、こら、離れなさい!」

 

叢雲がポカポカと晴海の頭を殴るが、いっこうに離れようとしない。

 

「ムラちゃーん、会いたかったよー!」

 

やがて叢雲の胸元にグリグリと頬ずりしはじめる。

 

「や、ちょ……は、離れろって……言ってるでしょうがッ!」

 

ガン!と後頭部にフルパワーのチョップが打ち下ろされ

流石の晴海も地べたに叩きつけられた。

 

(あ……やりすぎたかしら?)

 

叢雲も一瞬ちょっとだけ後悔したが

晴海はすぐにガバと顔をもたげた。

 

「相変わらずだなぁムラちゃん」

 

「あんたも相変わらず……と言いたいところだけど」

 

ポンポンと埃を払いながらゆっくりと立ち上がる晴海の顔を

見つめる叢雲の顔が

見下ろす姿勢からだんだん上がっていって

晴海がすっかり立ち上がると見上げる格好になっていた。

 

「あんた、ずいぶん育ったわねー……特に……」

 

そう言って叢雲の視線は今度は晴海の胸元に注がれる。

 

「何なのその胸。ケンカ売ってんの?」

 

ツンツンと晴海の胸を指で突くと、ぷよんぷよんと膨らみが揺れる。

晴海は苦笑いしながらもされるがままだ。

 

「いやー、ムラちゃんもちょっと育ったんじゃ……ない?」

 

「ん……改二になったからね」

 

「ほほう。どれどれ……」

 

お返しとばかりに晴海も叢雲のささやかな胸の膨らみを突こうとするが

パッと体を引かれ指は届かない。

 

「そんなに私の胸は安くないわよ?」

 

「えー。じゃあ私の胸が安いみたいじゃない」

 

「そんだけあったら余ってるでしょ」

 

「余ってないよ!2つしかないよ!」

 

「はいはい」

 

プッと吹きだし、笑いあう二人。

 

「そういや、着任を出迎えてくれたときムラちゃんいなかったよね?」

 

「あ、ゴメン。遠征から戻るの遅れちゃってさ」

 

「そうなんだー。見回しても見つからなくてアレー?って思ってたんだー」

 

「私も、新任提督の名前聞いたとき、ひょっとしてとは思ってたんだけど……

 ほら、苗字が違ったからわかんなくて」

 

「あー……藤村は、母方の苗字なのよ」

 

「そっか……まだ皆には話してないの?」

 

「うん。何か、余計な気を使わせちゃいそうだからさ」

 

「黙っててもいつかはバレるわよ?」

 

「まあ……言うべきかな、と思ったら話すよ……」

 

ちょっとしんみりしかけた空気を振り払うように、叢雲が声を張る。

 

「ま、とにかく提督着任おめでと!このあと歓迎会でしょ?」

 

「うん。ムラちゃんも出るでしょ?」

 

「そりゃあね……じゃ、私ちょっとお風呂入ってくるから、また後でね。

 それと……」

 

立ち去りかけた叢雲が、立ち止まり振り替える。

 

「ん、何?」

 

「ムラちゃん言うな」

 

 

島田は早くも秘書艦業務の引継ぎのため

大和からレクチャーを受けていた。

 

「……1日の流れは、だいたいこんな感じです。

 後は週単位、月単位で処理しなければならない任務や

 単発で大本営から回ってくる任務とか、ですね」

 

「なるほど。これを提督と秘書艦の二人で処理するとなると、なかなかの作業量ですね」

 

そう言って島田がデスクの上の書類の山を見つめる。

 

(無駄な書類が多い……ほとんどの決裁権限が提督に集中しているのも問題ね)

 

「とりあえず、今日の分の処理を済ませてしまいましょう。

 今から始めれば、歓迎会までには終わらせられるでしょう」

 

そう言って島田が1枚の書類を手に取る。

 

「じゃあ私も……島田さんも、歓迎会には出られますよね?」

 

「ええ、まあ……私は歓迎していただくためというより

 お嬢さ……提督の監視のために参加するようなものですけど」

 

不穏当な発言に大和が眉をひそめる。

 

「監視って……何か、監視しなければならないような理由でも?」

 

「そうですね。あらかじめ申し上げておきますが……

 提督には、決してアルコール類を摂取させないでください」

 

「?それはまあ……お酒は20歳になってから、ですし……」

 

「法律的な面でもそうですが、何より危険ですので」

 

「危険!?」

 

「危険です。まあ、飲ませさえしなければ問題ないのですが

 本人が飲みたがるので、監視が必要なのです。

 繰り返しますが……

 

 絶 対 に 飲 ま せ な い よ う に 」

 

「は、はい」

 

島田の圧力に怯む大和。だがその胸の奥では

 

(飲ませたらどうなるんだろう?よっぽど酒癖が悪いとか?)

 

抑えきれない好奇心が渦巻いていた。

 

 

「それでは、ただいまより藤村提督の着任歓迎会を始めます!提督、どうぞ!」

 

食堂の大テーブルを片付けて

代わりに小さな丸テーブルをいくつも並べた急ごしらえのパーティ会場。

テーブルの上には料理を盛ったいくつもの皿が並べられ

またシャンパンやらワインやらが注がれたグラスも大量に置かれている。

奥には小さな壇が置かれ、その脇でマイクを持った大淀が呼びかけると

 

「や、どーもどーも」

 

と少し照れながらシャンパングラスを手にした晴海が壇に上がる。

 

「えー、今日は私の着任を祝ってくれてありがとー!

 これから目一杯頑張るけど、とりあえず今日は!楽しんで!いきましょう!以上!

 みんな、グラス持った?いい?じゃあ……今日は無礼講よー!カンパーイ!!」

 

「「「カンパーイ!!」」」

 

皆がグラスを空け、その後盛大に拍手をして歓迎会は始まった。

 

「……これ、ジュースじゃん」

 

グラスを空けた晴海が壇を下りてぼやく。傍らに立つ島田が

 

「当然です。わきまえてください」

 

「えー……いいじゃない、歓迎パーティーぐらいさぁ……」

 

「歓迎会を追放会にしたいのですか」

 

「……そんなにヒドイかな、私」

 

ぼやきながらも、会場の艦娘の集団に歩み寄っていく。

所属する艦娘たちをここで挙げていくと

 

戦艦 大和 陸奥 榛名 

航空戦艦 日向

正規空母 飛龍 雲龍

装甲空母 翔鶴

軽空母 祥鳳 千歳 龍鳳

重巡洋艦 羽黒 愛宕 鳥海

航空巡洋艦 鈴谷 筑摩

軽巡洋艦 神通 五十鈴 矢矧 大淀

重雷装巡洋艦 木曾

駆逐艦 如月 叢雲 朧 初春 村雨 海風 荒潮 浦風 浜風 長波 秋月 島風

工作艦 明石 水上機母艦 瑞穂 潜水艦 伊19 伊8 給糧艦 間宮

 

総勢37名の艦娘たちが、いくつかの輪になって談笑し

その輪の中に晴海が進んでいく。

 

島田は晴海の後を影のようにつき従っていくのだが――

歓迎の言葉へ応対するなどしているうちに

いつしか晴海と離れてしまっていた。

 

マズイ、と必死に晴海を探す島田。が、それも空しく

再び壇上にフラリと晴海が上がり、叫ぶ。

 

「なんか……暑くねーッ!?」

 

言うなり、バババッとスゴイ勢いで服を脱ぎ始め

あっという間に下着だけになる。顔だけでなく、全身が朱に染まっていた。

会場に湧き上がるオーッという歓声。

 

「誰!?誰が飲ませたの!?」

 

悲痛な声で島田が叫ぶ。

 

「あれ……マズかったか?」

 

とぼけた様子で、近くにいた雷巡の木曾がニヤリと笑う。

 

「……そうですね。大変マズイです。ちなみに、どれくらい飲みました?」

 

「そうだなー、駆けつけ3杯っつって、ウィスキー3杯飲んでから

 シャンパンのボトルをラッパ飲みして……その後別のテーブル行っちまったけど」

 

「……そうですか」

 

「しかし、いいカラダしてんねー提督。

 いや、愛宕顔負けにグラマーってのもあるけどさ。

 あの筋肉……よほど鍛えないとああはならねえ。たいしたもんだ。

 ただの頭でっかちじゃねえみたいだな」

 

そう木曾が感嘆するほどに、晴海の体は女性らしい美しさを保ちつつ

鍛えられたアスリートのような筋肉をまとっていた。

壇上でその体をくねらせ、ストリッパーのように踊る晴海。

やんややんやと囃す艦娘たち。

が、晴海に近い場所で見ていた艦娘たちはやがて黙り込む。

 

その体にいくつも刻まれた大小の傷跡に気づいたからだった。

 

(普通に鍛えてるってだけじゃない……)(16歳の女の子の体じゃないわ……)

 

やがて、踊っていた晴海が動きを止めて自分の姿を見る。

 

「ふーっ……んー?なんで……私……ハダカなん……?」

 

「いや自分で脱いだのよ提督?」

 

苦笑いしながら答える大和に

 

「お前も……脱げーッ!!」

 

晴海が壇上から飛び掛る。

 

「へっ?」

 

ポカンとしている大和の周りを

姿がはっきり見えないほどのスピードで晴海が動き……

数秒後には、大和は下着まで剥ぎ取られた全裸にされていた。

 

「……い……いやあああぁぁぁッ!?」

 

「あははははははは!……次ィッ!」

 

ペタンとその場に座り込む大和を残して

肌色の旋風が次々と艦娘たちにまといついては全裸にひん剥いていく。

 

「……それでは、私はこれで失礼いたします」

 

いつの間にか出口に立っていた島田がペコリと頭を下げて退出しようとする。

木曾がそれに気づき、怒鳴り声をあげる。

 

「お、おい!アンタ、提督の秘書なんだろ!?止めてくれよ!?」

 

「無駄です。酔ったあの方には私でも敵いませんので。

 それと、被害を鎮守府内で収めるため

 しばらくこの出口は施錠させていただきますので悪しからず」

 

「オイーッ!?」

 

無情にも扉が閉まり、ガチャリという音と共に外から鍵がかけられる。

艦娘たちの悲鳴が上がり続ける会場の中、ひときわ大きな晴海の叫びが響く。

 

「次は何奴だぁーッ!……叢雲ォーッ!叢雲は何処だァーッ!!」

 

後に、「全裸歓迎会」と呼ばれたこの宴は

悲鳴と怒号と笑い声の嵐の中なおも続くのであった。




頑張った結果がコレだよ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。