嵐の向こうはきっと晴れ   作:華留奈羽流

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歓迎会始末記。とりとめのない話。


あまり火遊びはしないでね?

歓迎会の翌朝。

あれほどの惨事のあとでも朝6時には総員起こしがかかり

7時になれば、惨劇の舞台でもあった食堂に皆が朝食をとりにやってくる。

 

カウンターで朝の和定食を受け取った戦艦・日向は周囲を見回す。

テーブルの一角に、同じ戦艦の陸奥と榛名の姿を認め、そこに歩み寄っていく。

他には駆逐艦の集まった場所や空母の固まってる所も見受けられる。

どうも不思議と同じ艦種で集まってしまう傾向があるようだ。

 

「やあ、おはよう」「おはよう、日向」「おはようございます」

 

軽く挨拶を交わしたあと、席に座る前にまた日向が周りを見る。

 

「どうしたの?」

 

「いや、気のせいか皆に避けられているようなのだが」

 

「そりゃあね……昨晩の自分の行動、思い起こしてごらんなさい」

 

陸奥がため息交じりに日向の疑念に答えるが

日向は得心がいかないようだ。

 

「む?……暴走した提督を、身を挺して押しとどめたのに

 なぜ避けられなければならんのだ?」

 

榛名がボソッとつぶやく。

 

「……自分から脱いでハダカになって、提督と肩組んで歌って踊ってただけじゃないですか」

 

ナニソレ見たい。

 

「いや、ああいうときは無理に止めようとしても火に油だからな。

 あえて同調して、相手の気持ちをやわらげることが必要なのだ。

 そうか、私の美しい裸身を見てしまって、皆少し照れているのだな?」

 

陸奥が手をヒラヒラと横に振る。

 

「違うわよ。単に貴女、あの騒動の共犯者扱いされてるのよ」

 

「それは心外だ。だいたい、ハダカを見たり見られたりは日常あることなのに

 ちょっと脱がされたぐらいで恥ずかしがりすぎだろう。

 中破でもすれば服はボロボロだし、風呂だって一緒に入るじゃないか」

 

うつむいた榛名が顔を赤く染めて否定する。

 

「お風呂でハダカ見られるのと、昨日の状況は違いますよ……」

 

小首を捻る日向。

 

「そういうものだろうか。別に女同士、そう気にすることもないだろう。

 ……榛名も、別に生えていなくても恥ずかしがることはないのだぞ?」

 

すでに食べ終えて麦茶の入ったグラスだけ置かれたテーブルに

ガンッ!と音が出るほど額を打ち付けて榛名が突っ伏し、叫ぶ。

 

「ああああああ!お風呂でもなるべく隠してたのにいいいいいい!」

 

「そうだったのか。それはすまなかった。

 陸奥は脱がされたことはあまり気にしていないようだな」

 

「私は脱がされただけだもの。

 間宮さんとか雲龍とか愛宕とか脱がされた後も……

 その、色々されちゃってすごかったじゃない?アレに比べれば、ね」

 

少し頬を染める陸奥に対し、日向はまったく顔色を変えない。

 

「ああ、あれはちょっと駆逐艦とかには目の毒だったな。

 しかし……ふむ……ひょっとすると……」

 

「何よ」

 

「いや、色々された人物のカラダを思い起こすに

 提督はいわゆるオッパイ星人というものなのではないか?」

 

確かに、間宮、雲龍、愛宕とくると

鎮守府でもトップクラスの巨乳である。

 

「いらないわよそんな性癖。だいたい、なんで16歳の女の子がオッパイ星人なのよ」

 

「そこまでは私にもわからんな。

 だがまあ、久しぶりに羽目を外せて私は楽しかったぞ」

 

(久しぶりって……)(いつも羽目外れてるわよ貴女……)

 

と、入り口の人の気配に日向が目線を向ける。

 

「おや、当の提督もお出ましのようだ」

 

と晴海に向かって手を振ると、向こうも手を振り返してくる。

カウンターで料理を受け取ると、まっすぐ日向たちのほうにやってきた。

 

「おはよーみんなー!」「ああ、おはよう」「おはよう」「……おはようございます」

 

着席前に、日向と同じように辺りを見回す。

 

「どうしたの?」

 

「いや……なんかちょっと皆に避けられてるような気ぃするんだけど、何でだろ?」

 

(あー……酔っ払っててご乱行を覚えてないパターンね)(まあ……忘れてほしいです……)

 

「それはたぶん、提督の美しい裸身を見てしまって、照れくさいのだ。

 ちなみに、私もちょっと避けられている(ドヤァ)」

 

(だから違うわよ!)(違います!)

 

「そっかー。でも、昨日は楽しかったね!また一緒に歌おうね!」

 

(覚えてる!?)(覚えてるのに全然悪びれない!?)

 

「そうか、喜んでもらえて何よりだ。歓迎会を開いた甲斐があるというものだな」

 

と、晴海は榛名の様子が少しおかしいことに気づく。

 

「……榛名さんは何でプルプルしてるの?」

 

陸奥も心配そうに声をかける。

 

「……大丈夫榛名?」

 

「はい……榛名はまだ大丈夫、です……」

 

しかし、そんな健気な榛名に晴海が追い討ち。

 

「いやー、しかしみんなキレイな体してたねー!

 榛名さんとか、ツルツルで羨ましいみたいなー」

 

ガンッ!ガンッ!ガンガンガンッ!!

テーブルに頭を打ち付ける榛名。

 

「わ、なに、どしたの!?」

 

「褒められて喜んでいるのだろう。

 よかったな榛名。提督が羨んでいるぞ。

 だがテーブルに頭突きをするのはやめておけ。テーブルが揺れて味噌汁がこぼれる」

 

「ホント、水着のときとかでもVゾーン気にしないでいいって羨ましいよねー」

 

「まあ……そういう見方もあるわね」

 

陸奥もこれでフォローになるのかいま一つ自信はなかったが否定はしなかった。

 

(Vゾーン……なんだそれは。何か勝利に貢献できるようなことなのか)

 

そして日向はVゾーンを知らなかった。

 

「あれ、どしたの榛名さん!?具合悪いの!?頭打ち過ぎた!?」

 

「……はい……榛名はもう大丈夫じゃありません……」

 

その言葉を最後に、榛名は突っ伏したまま動かなくなった。

なおもかまおうとする晴海を、陸奥が半ば諦めたような表情で止める。

 

「提督、榛名は放っておいてあげて」

 

「え、いいの?」

 

「いいから」

 

ぐったりした榛名を放置して、朝食は進む。

 

「ところで、提督にちょっと確かめておきたいことがあるのだが」

 

「ん?何ですか日向さん?」

 

「キミはいわゆるオッパイ星人なのかね?」

 

「日向、ストレート過ぎよ……」

 

「えー?そんなんじゃないよぅ……でもほら、胸のおっきな娘とか見ると

 つい触ったり揉んだりしたくなるじゃない?」

 

「うん、キミは立派なオッパイ星人だ」

 

「いやー、それほどでも?」

 

「別に褒めたわけではない」

 

「?……ところで、大和さんは?姿が見えないけど」

 

食堂を見回している晴海に日向が答える。

 

「大和なら、まだ部屋にいたが」

 

「誘いなさいよ同室なんだから」

 

呆れたように陸奥がたしなめる。

この鎮守府では、艦娘は二人で一つの部屋を使っている。

陸奥は榛名と、日向が大和と相部屋になっていた。

 

「いや、誘ったがなんだかグズグズしていたので置いてきた」

 

「冷たいわねぇ……まあ、あの子も恥ずかしがり屋だからしょうがないけど」

 

「恥ずかしがり?大和は生えていたぞ?」

 

榛名がピクンと反応する。

 

「別に生えてたら恥ずかしくないってわけじゃないでしょ。

 むしろボーボーな貴女のほうが恥ずかしがるべきよ。手入れとかしてないの?」

 

……男性がこの場にいたらむしろ居たたまれなくなりそうな会話だが

女子ばかりだとこんなものである。

 

「いや、手入れが必要な場所だとは知らなかった。陸奥は手入れをしているのか?」

 

「まあ……その、一応は?」

 

「ふむ……だとすると、提督が榛名を羨ましがるのも納得できるな」

 

榛名がさらにビクンビクンと身を振るわせ始めたので

陸奥はそれ以上ツッコミはしなかった。

晴海が思い返しながらニヘラとしてつぶやく。

 

「大和さん、いいカラダしてたなぁ」

 

「何オッサン臭いこと言ってるの……

 でもまあ、そういう提督も鍛えられてるって意味でいいカラダだったわ。

 何か格闘技でもやってたの?」

 

「あ、うん。柔術と剣術を、ちょっとね」

 

「あれは、ちょっとというレベルの鍛え方ではあるまい。

 あちこちに刀傷も見受けられたが、真剣での稽古もこなすのか?」

 

「うん、島田さん相手で」

 

「島田さんって提督の家のメイドだったんでしょ……何者なのよ」

 

「ほほう、島田女史が剣の師か。一度、二人とは手合わせしてみたいものだ」

 

「まあ、そのうちね」

 

話題が途切れたところで、陸奥が晴海に話しかける。

 

「ところで、提督?ちょっと提案があるんだけど」

 

「はい?」

 

「私たち艦娘は貴女の部下なんだし、名前にさん付けは必要ないんじゃないかしら?」

 

「んー……でもほら、みんなお姉さんっぽいし」

 

ためらう晴海に、日向が微笑む。

 

「年上っぽく見えるとしても、それは見た目だけのことだからな。

 まあ好きにしてもらってかまわんのだが

 気を使う必要はない、とだけ言っておこう」

 

「そっか……じゃあ、陸奥、日向、榛名……おーい、榛名ー?」

 

「え……あ、は、はい!?」

 

「今日も一日、よろしくね!」

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