嵐の向こうはきっと晴れ   作:華留奈羽流

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書き終わったら梅雨入りしてました。


どうする?ナニする?

昼少し前。鎮守府の廊下を航空巡洋艦・鈴谷が歩いている。

彼女にとって今日は久しぶりのオフなのだが、特に何をするでもなく

鎮守府内をブラついていた。

 

と、私室から提督が出てくるところに出くわした。

 

「提督じゃん。チーッス!……なに、どしたのその格好?」

 

目を丸くして鈴谷が尋ねるのも無理はない。

頭には麦藁帽子。着ているのは白のTシャツにデニムのホットパンツ。素足にはビーチサンダル。

左肩から大きなクーラーバッグを提げ、右腕で何か長い布を丸めたものを抱えている。

 

「何って……海水浴だよ。ほら、今日ミョーに暑いじゃん?」

 

言われてみれば確かにそういう格好ではある。

 

「あー……確かに6月にしちゃ暑いねー。つーか何、ヒマなわけ?」

 

「もう今日は仕事ないからさー、午後は浜辺でノンビリしようかと思って」

 

「ああ、あの鎮守府の端っこ?」

 

「そそ。人目もないし、ちょっとプライベートビーチっぽいじゃん?」

 

鎮守府敷地の西端は30メートルほどの小さな砂浜になっており

そこで海水浴としゃれ込もう、ということなのだろう。

他の施設から離れているうえ、施設のある側は突堤が突き出しているし

反対側はせり上がった岩場になっていて、人目にはつきにくい場所だ。

 

鈴谷はちょっと考えてから

 

「……ね、鈴谷も一緒していい?」

 

「ん?今日オフ?」

 

「うん。ヒマしてたからちょうどいいかなーって」

 

「じゃ、一緒に行こっか。あ、お昼持ってって向こうで食べるつもりだけど、鈴谷どうする?」

 

「あ、なら売店で何か買ってくるかな。先行っててよ、着替えて食事調達して追っかける」

 

「オッケー」

 

そのまま出口に向かおうとする晴海を呼び止める。

 

「あ、荷物どっちか置いてっていいよ、鈴谷持ってくから」

 

「お、サンキュ!じゃ、クーラーボックスのほうお願い。

 まだ入るから鈴谷の分も入れればいいよ」

 

「ほーい。じゃ、また後でねー!」

 

 

昼食と飲み物を買って、軽装に着替えた鈴谷が砂浜につくと

すでに晴海が広げたビーチパラソルを立て、その影にレジャーシートを広げて

グデーッと横たわっていた。Tシャツもデニムのボトムも脱ぎ散らかして

オレンジ色のビキニの水着姿になっている。

 

「到着ー!いやー、暑いねー!」

 

そう言って鈴谷も服を脱ぎ捨てる。

ぶるん、と揺れる豊かなバストを包んでいるのは下に着ていた水色のビキニ。

見ていた晴海が首をかしげる。

 

「あれ……歓迎会のとき……見てないような?」

 

「あー。提督がセクハラ始めた時点で、鈴谷は厨房に避難したんだよー。へへーん」

 

「それでか……このナイスバディを逃すとは不覚!あとアレはセクハラじゃないですー」

 

「あれがセクハラじゃなくて何なの」

 

「親睦を図るためのスキンシップですー」

 

「じゃ、もう十分親睦は深まってるからスキンシップはナシでね」

 

そう言いながらも、鈴谷は晴海のすぐ横に寝転がる。

 

「ふー……風が気持ちいいねー」

 

昼が近くなって、日差しはますます強くなってきているが

海から吹きつける風が身体を冷やしてくれる。

しばらくはそのまま二人で寝転がっていた。

 

が、やはり暑さに耐えられなくなってくる。

 

「あっちー!」

 

晴海が一声叫ぶと、ガバッと跳ね起きて海に走り出す。

 

「アチッ!砂、砂がアハハハハ!」

 

何がおかしいのか笑い出し、そのまま波打ち際まで駆けていく。

 

「ぅひゃーっ!冷たーッ!」

 

まるっきり元気な子供である。

 

「鈴谷もおいでよー!気持ちいいよー!」

 

そう言いながら沖のほうへ歩いていく晴海。

 

よーし、と鈴谷も砂浜を歩いて波打ち際まで走る。

そして、そこで止まった。

すでに腰の辺りまで水に浸かった晴海が振り返る。

 

「どしたのー?」

 

「え?あー……うん。ほら、艤装なしで海に入るのって、初めてだから」

 

そう言いながら、打ち寄せる波を見つめる鈴谷。

 

「へー……あれ、じゃひょっとして泳げない?」

 

「たぶん。泳いだことないし、艦娘って水に浮かないらしいから」

 

言われて晴海も思い出した。

艦娘は艤装の力で水面上に立つことができるが

逆に艤装がなかったり機能しなくなったりすると

その体は水に浮くことができないのだ。

 

「でもほら、せっかく来たんだし、足のつくところなら大丈夫でしょ?」

 

そう言いながら、鈴谷のほうに戻ってきて

 

「私も、そばにいるから、ね?」

 

手を差し出す。

鈴谷がその手を見つめ、意を決して差し出された手を掴むと――海に足を踏み入れた。

 

「ほぉう!つっめたーい!気持ちいー!あはははは!」

 

手を繋いだまま、膝下ぐらいの深さのところをザバザバと水を蹴立てて歩く晴海と鈴谷。

 

「うわー艤装つけてるときと全然違うー!なんか新鮮ー!」

 

はしゃぎながらなおも歩き続け

 

「うわっ!?」

 

足を滑らせて、バランスを崩す。

手を繋いでいた晴海が慌てて支えようとするが

踏ん張りの利かないところで引きずられて、結果

 

「お、お、お……おおおっ!?」「ギャー!?」

 

バシャーン!!

 

二人仲良く、浅瀬で転んだ。

深さ30センチもないところなので二人ともすぐ起き上がる。

 

「ちょっとー、転ぶんなら一人で転んでよー!」

 

「提督こそ、そばにいるからー、とか言ったじゃーん!」

 

二人で、むーとふくれた後

 

「うりゃあ!」「うわっプッ!この……やるかー!?」

 

定番の水かけっこを始めるのだった。

 

「この!このこのこのこの!「うりゃ!うりゃうりゃうりゃうりゃ!」

 

しかしこの勝負、明確な勝敗というものはつかない。

やがて業を煮やしたのか単に水をかけるだけなのに飽きたのか

 

「スキありぃ!」「ぎゃ!?ちょ、こらぁ!」

 

晴海が鈴谷の水着のブラをむしりとる。

鈴谷は慌てて左腕で胸を隠すと

 

「反撃じゃー!」

 

と晴海に襲い掛かる。

が、片腕を胸のカバーに使っているので分が悪い。

 

「ぐぬぬ……えーいもう、このぉ!」

 

どうせこの場には二人しかおらず

晴海に見られることは諦めたのか、鈴谷は両手で晴海に掴みかかる。

 

「おぉー……これは……なかなか……」

 

思わず見とれる晴海。だが自分の胸はしっかりガードしている……

 

「と見せかけてぇ!」「ひゃ!?ちょ、下ぁ!?」

 

鈴谷はブラに掴みかかると見せて、直前でその標的をボトムに変更し

膝の辺りまでずり下ろした。

 

「あ、ちょ、待って転ぶ転ぶ!」

 

いったん逃げてボトムを直そうとするが

そのボトムが邪魔になってうまく歩けない。

しかも両手がそのボトムにかかっていて、ブラのほうは無防備になっていた。

 

「うりゃあ!」「あっ……やーらーれーたー!」

 

ブラをはぎとられ、ザバーンとその場に倒れこむ晴海。

 

「そしてトドメー!」

 

浅瀬に浮かんでいる晴海のボトムもスルリとはぎとってしまう。

 

「いぇーい、鈴谷の勝ちぃー!」

 

「むー……ま、今日のところはそういうことにしておこう」

 

そう言うと、立ち上がった晴海は全裸のまま砂浜に戻っていく。

水滴がキラキラと輝き、その引き締まった裸身を流れ落ちる。

見ている鈴谷のほうが恥ずかしくなって

 

「ほら、返すからちゃんと着なよ」

 

と奪い取った水着を差し出す。が

 

「どーせ鈴谷しかいないんだし、別にいいよ。

 それに、日焼けで水着の跡が残らないからちょうどいいじゃん」

 

そう言われて、鈴谷もちょっと考えて

 

「んー……じゃ、つきあおっかな」

 

と、自分から残っていたボトムのほうも脱ぎ捨てた。

そのまま波打ち際にゴロンと寝転がると

 

「あー……なんていうか、開放感?気持ちいいねー」

 

大きく息をついて満足げに目をつぶった。

晴海もその隣に寝転がって、打ち寄せる波に体を任せていた。

 

どれくらい時間がたっただろうか。

 

「おーい、そこの二人ー」

 

不意に突堤のほうから声をかけられ

二人慌てて跳ね起きる。

 

日向だった。

 

「大自然を満喫しているところ申し訳ないが

 沖のほうをちょっと見てみるといいぞ」

 

「え?」「……沖?」

 

二人揃って沖のほうに目をやる。

 

数隻の小型の漁船が、100メートルほど沖に止まっていた。

中にはこちらに手を振っている人影も見える。

 

「ギャー!?」「ちょ、なんで!?」

 

「この岩場の向こうは漁港なのは知っていると思ったが。

 帰港する漁船から鎮守府に連絡があってな。

 もう十分楽しませてもらったからそろそろ水着を着られたらどうですか、だそうだ」

 

そう言うと、日向がバスタオルを放り投げてくる。

それを引っつかんで体に巻きつけると

レジャーシートやらクーラーボックスも放ったらかしで

その場を逃げ出す二人だった。

 

「おーい、ちゃんと片付けて帰らなきゃダメだぞー」

 

 

その後

執務室で大和と大淀にこっぴどく叱られ、島田には散々いやみを言われ

二人は食堂でぐったりしていた。

 

「……もー提督とは泳ぎにいかない」

 

「……悪かったわよ」

 

と、間宮が嬉しそうな顔で近づいてくる。

 

「提督?さきほど、隣の漁港の漁業組合の方から

 たくさん差し入れを頂いたんですよ」

 

ビクリと反応する二人。

 

「隣の……?」「漁港……?」

 

「ええ、なんでも『見物料』とか仰ってましたけど」

 

「あああぁぁぁー!」「もう海水浴はこりごりー!!」




水着姿その他モロモロは脳内で補完してください。
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