本が紡ぐ”縁”    作:マヨネーズ撲滅委員長

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今更気づいたけど、恋愛系と戦闘系の描写苦手だ()

後、独自の展開ですがこの作品では『羽丘女子学園』が共学となり、『羽丘学園』となっています。


お姉ちゃんな少女が来店しました

自分が学生である以上、日中は勉学に励まなければならないのは当然の事だ。

平日五日間、朝から夕方直前まで学び舎で同級生に囲まれながら学習に励むことになる。

とは言っても所詮はコミュ障。学校に親しい友人などいるはずも無く、休み時間は専ら読書を行う時間と化していた。

 

自分が通っている『羽丘学園』は意外と過ごしやすい環境だ。

数年前まで女子高だったらしいが、今では男女共学へと変じている。その影響かわからないが、やけに校風が自由な気がする。

噂では髪を染めていたりする生徒もいるらしいが、学校は一切咎めていないらしい。それで良いのか教育機関。

 

まぁ、ボッチに対して謎の熱血理論で矯正させようとする先生が現れない時点で十分ありがたかったが。

いや、入学当初辺りは遠まわしにやんわり言われていた気がするが、二年生になった今それも無くなった。

要は諦められたのだろう。勝手に変な希望を持たれても困るだけなので一向に構わないが。

 

「今日は金曜日か。やっとだな……」

 

そう一人、気だるげに呟く。その一方で口元は自分でも自覚できる程にやけていた。

週末が後僅かまで迫って来ている事実に喜ばない生徒などそうはいまい。

現実として自分は内心ガッツポーズを取る勢いだった。纏った休日というのはとても貴重だ、有効活用せねばならない。

 

長ったらしく感じた最後の授業もようやく終わり、帰りの会までの合間に放課後のプランをあれこれ思案する。

今週の土日にはバイトが無いので、金曜日のうちに必要な品物は準備しておかなくてはならない。

大抵そういった休日は家から一歩も出ずに読書に耽っている。いざと言う時にあれがない、では困るのだ。

 

数分もしないうちにそれなりに若い男性が前の扉から入り込んでくる。うちの担任だ。

教卓の前に到達すると、面倒くさいと言わんばかりに頭をがりがりと引っ掻く。

 

「---連絡事項は特にねぇ。日直、号令しろ」

 

担任のホームルームの迅速さはいつ見ても惚れ惚れする程だ。

ただの手抜きとも呼べるが、帰宅を待ち望む者達からしたら歓迎すべき事だった。

 

椅子から立ち上がり、日直の合図に合わせてだらりと頭を下げる。

そして予め準備しておいたバックを抱え、段々と賑やかさを取り戻しつつある教室から辞する。

今週は掃除当番では無いので、態々この場に残る理由も無かったのだ。

 

「おい、ちょっと待ってくれ」

「……何でしょうか?」

 

廊下へと抜け出た瞬間、何者かに呼び止められた。

声色から察ししぶしぶ振り向けば、若干呆れ気味な視線をこちらに向けた担任の姿があった。

 

「そんな嫌々な態度取らなくてもいいじゃねえか。そんなに美人に声掛けられてぇか?」

「少なくとも、無精髭生やした男性に呼び止められて喜ぶ男子は、そういない筈ですよ」

「言うねぇ」

 

からからと愉快そうに笑うが、自分としては会話の進まなさにイラつきと呆れが半々こみ上げてきていた。

この教師、いろいろと雑すぎて会話してると全く話が進まないのだ。

帰りの会では重宝するが、それ以外では邪魔以外の何物でもなかった。何それただの無能じゃねえか。

 

「おいおい、そんな不機嫌そうな顔すんなよ」

「誰の所為ですか、誰の」

「辛辣過ぎるな、おい。本当に先公と生徒の会話か?」

「いや本人が先公って言うな」

 

この人いい年して精神年齢若くないだろうか。

まぁ、親しみやすくて他の男子生徒からはそこそこ人気らしいが、自分からしたらいろいろと理不尽な事を吹っかけてくるから苦手なのだ。

彼から敬語を撤回したのもそれが理由だ。まぁ最低限丁寧な言葉遣いぐらいは使うが。

 

「実はちょっと荷物運びの人手が足りなくてな。手伝え」

「命令形とか職権乱用もいい所だな、おい」

 

前言撤回。こいつを敬う意義など無かった。

ジト目で暴言を吐いた俺を、担任は涼しい顔でまたにやりと笑った。

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

「あいつ、面倒見が良いのかうざいだけなのかはっきりしろよ……」

 

ご褒美と称して担任から頂戴した缶コーヒーを片手に商店街をねり歩く。品種が自分の好みドストライクである事が尚怒りを燻らせる。

言動と行動は兎も角、教師としての観察眼は確かなのだ、彼は。

 

結局大人しく彼の手伝いを一時間ほどさせられた。

それの対価にしては些か安すぎる気がしたが、これ以上追求するのも億劫だったからそれで妥協することにしたのだ。

無駄に時間を費やしてしまったことは痛いが、それを嘆いていても始まらない。

さっさと目的を果たしてしまう事にしよう。

 

そう結論付け、夕方で混み合い始めた商店街へと足を向けた。

ちょっとした労働の後故に精肉店からする揚げ物の匂いが魅惑的だったが、何とかその誘惑を断ち切って目的の店へと到着する。

 

ガラスの扉を押し開けると、芳ばしい小麦の香りが一気に押し寄せる。

おしゃれに装飾された店内には、疎らに間隔が空きつつも綺麗に整列されたパンが並んでいた。

時間帯が閉店間際なこともあってか、人影は全く見当たらなかった。

扉の音で気づいたのか、会計所で作業していた店員がこちらへと目を向ける。

 

「お、いらっしゃい。久しぶりだね~」

「山吹さんか。確かに、最近会ってなかったな」

「そうだよ?全く、全然会えないからちょっと心配してたんだよ?」

「そ、それはすまなかったな……」

 

ぐいぐい押してくる彼女の営業スマイルに若干気圧されつつも、何とか会話を繋げる。悪気は無いのだろうが、友達がいない身からしたら、彼女の笑顔は眩しすぎた。

 

彼女---山吹沙綾は『山吹ベーカリー』を営業している店長の娘だ。

よく親の店の手伝いをしており、客からは専ら評判の看板娘らしい。

 

一応、定期的にこの店は利用しているのだが、如何せん下校してすぐ直行するので彼女と遭遇すること自体難しいのだ。

俺と違って彼女には沢山友達がいるから入れ違うのだ、ちくしょう。

 

「今日は何を買っていく?夕方だから数は少ないけど、まだある程度種類は残ってるよ」

「ふむ。なら、まずはこれと……」

 

備え付けられたトレーとトングを手に持ち、好みに合いそうなパンを次々と乗せていく。

これは土日の朝食として消費される予定だから、それも計算の上で選び取る。

いつのまにか隣に移動してきていた彼女がトレーの現状を見てぎょっとした。

 

「これ全部食べるの!?これもうモカと同じレベルだよ!?」

「いや、流石に一日で食べきるわけじゃないよ。休日は家を出る予定がないからね、まとめ買いしておこうかなって思ったのさ」

 

思い留まらせようと、心配そうな眼で諭してくる彼女に諭すように説明する。

別に纏めて買っておくこと自体珍しくないだろうに。存外彼女には天然な所があるのかもしれない。

何を考えているのかを表情から察したのか、彼女はジト目で睨みつける。

 

「土日の間、ずっとパンだけで済ませようとしてる人に呆れられたくないんだけどなぁ……」

「そこまで言わなくてもいいじゃないか。こんなに客が買ってくれるなんて、パン屋冥利に尽きるだろ?」

「何処かの誰かさんの所為だよ、全く」

 

拗ねて頬を微妙に膨らませながら自分とは逆方向を向く彼女。

美人がやるとこうした仕草一つでも、妙に様になるものだ。思わず感心してしまう。

 

「これで全部かな。それじゃ、会計よろしく」

「はいはい、お預かりしまーす」

 

やや問題のありそうな接客態度だが、何だかんだで彼女はしっかり者でそこら辺の線引きはしっかり出来るはずだから、きっと大丈夫だろう。

 

購入するパンの金額がレジに表示されたのを確認して、財布の中から一万円札を取り出す。あいにく細かいのは持ち合わせていなかった。

 

「はい、これがお釣りと新しいポイントカードね。流石にあれだけ買ったら一枚貯まっちゃうか~」

「お、じゃあ今度来た時に使わせてもらおうか」

「はいはい。今後もどうぞ山吹ベーカリーをご贔屓に」

 

そう茶化しながら、彼女は山盛りのパンで一杯になった袋を手渡してくる。

一気に小麦粉の匂いが周囲に充満したが、やがて直ぐに鼻が慣れた。

 

「あぁ、後これも」

「……?何だ?」

 

ついでのように彼女から差し出されたのは一枚のメモ用紙。そこには何かの文字列が並んでいた。

 

「……これは、メールアドレスか?」

「実は、純と沙南が読む絵本が足りなくなってきちゃってね。確か古本屋でバイトしてたでしょ?それで何かおすすめの本を紹介して欲しくて」

「それでいつ働いているかわからないから、連絡先を交換しておこうって訳か。……了解した」

 

恋愛小説で見るような展開に内心興奮が収まりきらなかった。まるでドラマの撮影現場を覗き込んだような背徳感がそこにはあった。

 

しかしよくよく考えれば、これも兄弟のために止むを得なかったのだろう。

でなければ、こんな根暗と連絡先を交換しようとなんて思いつきもしない筈だ。

 

そう考えた途端、一気に思考が冷静になった。

一人で勝手にはしゃいだ事実に羞恥を覚えたが、相変わらずの鉄面皮は表情を一切映し出さなかった。

 

「流石に絵本は守備範囲外だが、まぁ見繕っておこう」

「ありがとう。取りに行けそうな日が分かったら連絡よろしくね」

「出来るだけ早めにしよう。それでは、長居しても邪魔なだけだろう。さっさと退散するとしよう」

 

店内に設置された時計を見れば、針がとっくに閉店時間を通り過ぎていた。

これから片付けもあるだろうし、自分はいない方がいいだろう。

 

「じゃあ、また今度」

「ふふ。楽しみにしてるね~」

 

彼女の期待に答えられるか不安だったが、まぁ最善を尽くすとしよう。

そんな自分にしてはやや前向きな事を考えながら、扉を開けた。

 

来た時には夕焼けだった空も彼方からやってきた闇に飲み込まれていて、時間の流れをありのままに伝える。

今後は時間を有効に費やすべく、やや早足で商店街を抜け出した。




主人公→基本、表情が真顔。ある程度付き合いが長くなれば、喜怒哀楽の判断できるらしい。
本でよく見る展開に遭遇すると極度の興奮を覚える模様。名前?もういらんだろ()

担任→沙綾と遭遇させるための時間稼ぎ要因として誕生した。今後出現するかは不明。意外とこのキャラ気に入ってる。

山吹沙綾→主人公が店の常連客な事もあり、面識がある。彼にもお姉ちゃん気質な所を遺憾なく発揮している模様。ちなみに作者の推しナンバーワンである。


来店したの沙綾じゃなくて主人公じゃね?→気にするな、タイトル統一したかったんだ()
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