本が紡ぐ”縁”    作:マヨネーズ撲滅委員長

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何となく察してた方いるかもしれないですが、次はRoseliaからですぜ


ギャルな少女が来店しました

人間、初めて出会った人物は大抵外見で性格を判断する。一部の人はこれを一方的に決め付けているだけだと批判するが、自分はあながち的外れな考えではないと思う。

 

礼儀正しい人ならば身なりに気を遣うだろうし、性格が暴力的ならば乱雑な服の着付け方しかしないだろう。

要は物を活かすも殺すも本人次第なのだから、その人の特色が出て当然なのだ。

 

勿論それが全てと主張する気もないし、何事も例外があってしかるべきだ。

しかし、大体がそれで事足りてしまうのもまた事実。だからこそ人間は見た目で内情を判断するのをやめないのかもしれない。

 

例えば、今自分の前に佇んでいる教師。この学校でも一、二を争う程のご高齢だが、物腰が柔らかく授業も分かりやすいと評判の人物だ。

その噂に違わず、常に柔和に微笑んでいて好感の持てる相手だった。まさに先程の理論の典型と呼べるだろう。

 

「君はこれを。そっちの君には……、こっちのプリントをお願いしようかな」

「わかりました」

「了解でーす」

 

白髪の目立つ教師に促され、数日前に課題として提出していたノートの山を持ち上げる。クラス全員分ともなると重量の負荷がすさまじかったが、何とか堪える。

 

同じく呼ばれていた女子が頼まれたのは授業中に解いた小テストの束だったが、流石に非力な女子に自分の負担を分散させようとは思えなかった。

幸い、バイトで数多の本を運んで鍛えた足腰が役に立ってくれていた。

 

こうして雑用をこなしているが、決して何処ぞの担任に命じられた訳ではない。れっきとした仕事だ。

学生なら一度は経験した事があるであろうクラスの係。毎年各々クラスで割り当てられるわけだが、自分は数学担当と言う訳だ。

 

基本、授業系統の係は先生の補佐を担当していて、中でも数学の教師は雑用で扱き使うことで有名だ。まぁ、ぎっくり腰になられても困るので仕方ないと言えばそこまでだが。

 

故に人気は一番無いわけで。たらい回しされまくった結果、ボッチの自分にお鉢が回ってきた訳だ。

 

「それでは、後はよろしく。次の提出課題は追って連絡するからね」

「了解です。それでは」

「失礼しましたー」

 

バランスを取りながら荷物を抱え、職員室から退出する。ここから教室までやや距離があるが、放課後であることも相まって人影も少なく、衝突の心配はなさそうだった。

 

しかしそれよりも気になるのは彼女だ。自然に背後へと回りながら彼女の後ろ姿をじっくり眺める。

 

やや派手めの茶髪を一束に結えてゆらゆらと揺らし、何かの曲を景気良く口ずさんでいた。

外見を一言で表現すればギャル、と言ったところか。とにかく会話をしづらそうな相手だった。

 

しかし、どうしても自分から言葉を投げかける必要があるのだ。

何故なら彼女もまた数学係、という訳ではないのだから。

 

「ん~?そんなこっちをじっと見て、何かおかしな事でもあった?」

「……あぁ、いや。どうして手伝いを請け負ってくれたのか、と思ってな。別に面識ないよな?」

 

ぼんやりとしている間に振り返っていたらしい。彼女は口元を緩めながらこちらの様子を窺っていた。

そんな態度につい胸中に抱えていた疑問をぶつけてしまう。

 

本来の数学係の片割れは部活がどうのこうのと、言い訳をつけて立ち去ってしまったのだ。

元よりじゃんけんに負けて任命された故か意欲もさほど感じられず、こうした事は日常茶飯事ではあった。

 

是非も無しと一人職員室へ向かおうとした矢先に、一部始終を見かけた彼女が代役を買って出たのだ。

 

「……まぁ、確かにこうしてまともに会話するのは初めてだね。でも今日は放課後特に用事も無かったし、スルーするのも気が引けたしねー」

「今井さん、だったか?正直助かった、ありがとう」

「いいってことよー。それにいろんな人と触れ合う事は嫌いじゃないしね」

 

そう言って愉快そうに彼女は笑う。どうやら、外見からは想像できないほどのお人好しなようだ。

やっぱり見た目だけで判断するのはよくない事だ、などと掌を返したような事を考える。

 

会話の流れを途切れさせないように彼女は続けて自分に問いかけてきた。

 

「そういえばさ。何でアタシの名前知ってたの?さっき面識ないとか言ってたじゃん」

「バンドの噂を聞いたのさ。この学校じゃあちょっとした有名人だからな」

「友希那の事か~。それだけアタシ達も大きくなったってことかな……」

 

感慨深そうに何処か遠い場所を見つめる彼女。これまでの活動に苦難があり、乗り越えてきたからこその反応だろう。

興味はあったが、無暗に詮索するのは無粋だろう。

数秒ほどの回想を終えた彼女は唐突に自分に問うてきた。

 

「そういえば、君ってライブとかには来たことがあるの?」

「いや、ないな。自分は昔から本にしか興味が無くてな。バイトでも古本屋を選んでるくらいだ」

 

肩を竦めながら否定する。全く興味が無いわけではないが、最優先事項が明確化されていて尚且つ単独でそのような場所に行く勇気など持ち合わせていなかった。

 

自分の応答に思う所があったのか、彼女は細い人差し指を口元に添えて何かを思案し始めた。

やがて名案を思いついたと言わんばかりに顔を輝かせた。

 

「じゃあさ!よかったらうちのバンドのライブ見に来ない?」

「……今井さんの所のか?」

「そうそう。今度、人気のバンドが揃って合同ライブを開くから、見応えは十分だと思うよ」

 

自信に溢れた表情で彼女は力説する。その瞳には一片の曇りも無く、自らの技術への自信と共に肩を並べる仲間への信頼が十二分に察せられた。

しかし、それではわからない事が一つあった。

 

「なんで自分を誘うんだ?今井さんぐらいなら、幾らでも呼べそうな友達ぐらいいるだろうに」

「……えっと。何となく、じゃ駄目かな?」

「本当に適当だな、今井さんは……」

 

あまりの曖昧さについ苦笑してしまう。きっと彼女なりにぼっちの自分に対して気を遣ってくれているのだろう。

己のコミュ障の疑い深さを恨むべきか、彼女のフレンドリーさを羨むべきか、非常に判断に困った。

 

どう返事するか悩んでいる内に気がつけば目的地である教室へと到達した。そのまま室内へと入り、教卓の上に運んでいたものをやや雑に置いた。

後は明日にでもなれば適当に見つけた生徒が配布してくれるだろう。流石に個人まで届ける気力は無かった。

 

「それで?結局来てくれるの?」

「む、そうだな……」

 

彼女の提案への返答だが、正直五分五分と言ったところだった。休みは読書に費やしたいという気持ちもあれば、そこまで言うならば一度見に行ってみてはどうかという考えもあった。

そうやってあれこれ思案して、やがてひとつの結論に至った。

 

「なら俺は---」

 

早くも次の土日の予定が決まった瞬間だった。




主人公→自分で書いといてあれだが意外とちょろい()リサと同学年、つまりは高校二年生である。

今井リサ→健気系同級生。やけに主人公をライブに誘っていたがその真意は……?


次回は定期テストの影響で遅れる予定です。一応次の話で序章は終わる予定。
話がやや少なくて申し訳ないですが次話をぎっしり詰める予定。
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