本が紡ぐ”縁”    作:マヨネーズ撲滅委員長

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リサ回投稿した直後の自分「ふむ、お気に入りは57件で評価は3人か」

リサ回投稿した一週間後の自分「さて、休憩がてらお気に入りを確認す……」

お気に入り157件

自分「……」

評価7人・平均9.29&赤バーに変色

自分「!?」

そしてこの話を投稿する時点では169件。プレッシャーが凄い(笑)
一ヶ月以上時間を置いてすいませんでした。受験生なんで許してください……


読書家な少年が来店しました

初めての何かに怖気づくのは至極真っ当な感情だ。

誰だって無知は怖い。例え先にあるのが光だと知っていても、目前の闇から抜け出す事が出来ない人など大勢いる。知らない事が怖いから、現状と言うぬるま湯に浸かってしまう。

だからこそ、最前線を駆ける人達は一際まばゆく輝くのだろう。

 

そんな人を俺は心から尊敬する。だって、自分には到底真似できない在り方だから。

きっと己では到達できない程の、確固たる信念と経験を持ち合わせているのだろう。

そんな別次元の存在だからこそ、人は羨望の念を抱く。こんな風になれたらと切に願う。

 

けれどこうも思うのだ。日陰こそが己に相応しいのだと。

人間には適正がある。体が貧弱な人間が運動をしようと大した成長が見込めないのと一緒だ。

不向きな事を成し遂げて何の糧となるというのだろうか。至れぬからこそ夢を見るのだと、奥底の闇が囁くのだ。

結局、対極の二つには大きな隔たりが存在するのだ。越える事の叶わない一線が確実に横たわっている。

アスリートの世界が典型的なそれなのではないだろうか。

 

交わる事のない最果てで彼らはどんな景色を識るのだろうか。何を会得するのだろうか。その上で何を為すと言うのだろうか。

わからない。その行動原理の微塵すら理解できない。

それは当然だ。自分がいる世界は影で、彼らの土俵は光なのだから。交錯する日は一生訪れない。

 

けれど、もしも今。届かないと知っていながらも尚、投げかけるとしたら。それは只一つの願望だけだ。

 

「やっぱり、あたしが笑顔にしてあげるわ!」

「君を見てたらるるるんってしてきた!もっとお話しなーい?」

 

お願いします。誰かこの逆境から助けてください。

個性と言う言葉で済ますのが生温い程の尖った包囲網から、何処か遠くへと宛てた心境の吐露を溢した。

 

きっと自分の瞳は現実逃避で霞んで、色彩を失っていたに違いないと確信できるほどの悪夢が、そこにはあった。

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

あの放課後の一幕の後、俺は彼女の提案を承諾した。怠惰な精神よりも彼女への恩義が勝ったのだ。

 

そこから話の移ろいはあっという間で、彼女の連絡先を交換して解散となった。

家に帰宅した頃には既にリサとの個人会話の画面に情報が添付されており、ライブの詳細を知る事となった。

 

できれば直接激励を飛ばしたかったが、相手は交友関係の幅広い彼女だ。

日中いつも友人に囲まれている彼女と会話する機会はボッチの自分に訪れる筈もなく、結局ライブ前日に電子上のやり取りを一つ二つ交わしただけだった。

 

そして来たるべくして到達した、日曜日。休日にしては珍しく規則正しい時間に起床して、目的地であるライブハウスへ向かっていた。

 

その名も『Circle』。ガールズバンドの聖地として名高く、自分にとって未開拓の領域。

そも、活字の世界は音ではなく文字で表現するもの。範囲外なのは当然と言えた。

 

「地図を見る限り、ここか」

 

特に苦戦する事もなく到着し、引き戸を押し込み店内へと足を進める。

店内は和気藹々とした雰囲気が漂っており、活気に満ちていた。ある人は好きなバンドについて語り、またある人は最新の楽器について論じていた。

 

その空気に揉まれながらカウンターの店員の下へと赴き、入場するための手続きを行おうとする。

しかし、ライブが開始する時間まで十分に余裕があったらしく、結局カフェで時間を潰す事にした。

 

「こっちも人の多さに大差がないな」

 

席をようやく確保でき、一息つきながらそう呟く。団体席は大概埋まっているが、ちょこちょこと個人席には隙間が空いていた。そのおかげで大した苦労もなく着席できたのだ。

 

正直、自分は少し期待していた。購入した紙コップのコーラを片手にそう思考に耽る。

音楽に人生を費やす彼女達が観客に何を示すのか、興味があったのだ。

 

本は物理的に消失しない限り何度でも繰り返す。同じ物語を延々と繰り返す。

けれどライブは違う。ただ一度一瞬に過ぎ去り、形在る物は残らない。

 

そんな不可視な存在の何処に意味を見出すのだろうか。

別に否定しているわけでは無い。ただ純粋に、疑問に思ったのだ。

何もないのなら、それまでだ。しかし意義があると断言できるのならば。

 

「是非ともご教授願いたいものだ」

 

皮肉染みた口調で今度は口から言葉に変じさせる。それはきっと自分が理解する事を放棄した真理である筈だから。

口内に残る苦々しさと共に炭酸を喉の奥に流しこむ。しゅわしゅわと弾ける泡が陰険な気持ちを発散してくれた、気がした。

 

「あら?何でそんなつまらなそうな顔をしてるのかしら?」

 

不意に真横から投げかけられた問いに一瞬耳を疑った。恐る恐る右側へと振り向けば、そこには金髪の少女の姿があった。

両手を腰に当てて胸を張る姿は自信に溢れかえっていて、それに比例するように瞳は直視するのが億劫な程眩かった。

 

普通なら唐突に話しかけられた所で大した反応も出来ないのだろうが、何故か彼女の言葉はすんなりと胸中に入りこんできた。

 

「……そんなにつまらなさそうな表情だったか?」

「ええ!ここは楽しむための場所なんだから、笑っていなきゃ損よ?」

「初対面の相手に説教とは。中々凄いな、君」

 

彼女の意見を堂々と押し通す姿に一周回って感心してしまっていた。堂々たる振る舞いが常識と言うものをとことん誤魔化していたのだ。

 

「こころちゃんこんな所で何してるの~?」

「あら、日菜じゃない!ちょっと世界を笑顔にしていたところよ」

 

彼女の豪胆さに釣られている所に彼女の友人らしき女子が接近していた。

水色の絵具を溶かし込んだように色彩豊かな髪色をしており、彼女もまた活気に満ちた笑みを浮かべていた。

 

「笑顔~?もしかして君のこと?」

「らしいね。しかめっ面なのは性分だから勘弁願いたいんだがな」

「あはは。面白いこと言うね、君」

 

肩を竦めながらそう嘯いたのが面白かったのか、覗き込むように顔を急接近させる。

まるで品定めするかのような不躾さに、本能からか身構えてしまう。

 

「……ちょっと近すぎないか?このままじゃキスでもしてしまいそうだが」

「ん~、したいならそれでもいいけど?君はあたしとそーゆーこと、したいの?」

「別に?犯罪に触れてまでしようとは思わないな」

 

誘惑しているような問いに対して迷う事無く即答する。別に誇張でも何でもなかった。

だって、そんな事をしたら読書が碌にできないではないか。

女性に飢えているのなら彼女を作るなり正当な努力をするべきだろう。興味は現時点で微塵もないが。

 

返された反応に虚を衝かれたのか、彼女はきょとんとした後にくしゃりと破顔させた。

 

「あはは、やっぱりおもしろーい!るんって来たよ!」

「でしょう?彼はやっぱり面白い人ね!」

「二人で勝手に話を進められても困るんだが……」

 

名も知らぬ二人組が同調しあう姿を見ても、正直困惑するだけだった。

自分はただ常識に則った返答しかしていないはずだが、彼女達のツボに嵌ったらしい。正直、逃げたい。

 

「あら、何でそんな煙たそうな顔してるのかしら?せっかくあたし達があなたを笑顔にしてあげようとしてるのに」

「いやいや。頼んでないし、そんな事」

「あら、重要な事よ?別に遠慮しなくてもいいじゃない!」

「いや、人の話を聞け。まずは」

 

思わず毒気づいた自分は悪くないと信じたい。自分がどうしてそんな表情をしているのか理解して欲しいものだ。

このまま黙っているのも時間の無駄な気がしたのでそろそろ反論をするべきか。

 

そう考えた矢先、誰かの携帯の音が鳴り響いた。聞き覚えのない音楽である以上、自分の端末ではないはずだ。

事実、ポケットからスマートフォンを取り出したのは金髪の少女の方だった。

通話の相手を確認するや否や、直に意識をそちらへと傾けた。

 

「あら、美咲じゃない。何の用かしら?……時間?ライブの?そういえばそうだったわね!」

「……もしかして君達、ライブの出演者?」

「あれ、知らなかったの?てっきりあたしの事とかは知ってると思ってたんだけどな~」

「知ってるも何も初対面だろ、俺達は?」

 

傲慢な物言いに苦笑する。流石に全ての面々を把握している筈もないだろうに。

しかし自分の返事に納得がいかなかったのか、彼女は整った眉を顰めた。

 

「そーゆー意味じゃないんだけどなぁ。あたし達のバンドもまだまだってことか~」

「自信ありげだな。そんなに人気のバンドなのか?」

 

ひょっとしたら彼女の所属するバンドは有名所なのかもしれない。

その可能性も踏まえて彼女に問いかけるが、返されたのは不敵な笑みのみだった。

 

「凄いかどうかなんて、そんなの見てみればわかるよ!」

「……それもそうだな。うん、間違いない」

 

言い切った彼女の豪胆さに思わず同調する。論より証拠とはよく言ったものだ。

そしてそれは自信から裏づけされた証でもある。想像以上にこのライブは期待できるのかもしれない。

 

電話が終わったのかいつの間にか会話に戻っていた金髪の彼女は、満足げな笑みを浮かべた。

 

「あら、あなた。ちょっとだけどやっと笑ったわね!」

「……まぁ、ライブに興味が出たからな」

「楽しむのはいい事よ。でも、これで終わりじゃないわ。あたし達のバンドがもっと笑顔にしてあげるわ!」

 

自分を指差してそう高らかに宣言する。彼女もまた己の力を信じて疑っていないようだった。やはり自分とは違った部類の人なのだと再実感する。

 

今井さんの誇り、金髪の少女の信念、そして水色髪の少女の自信。それらを軸にして奏でる音楽とは如何なるものか。

時間潰しの筈がいつの間にか注目すべきバンドが増えていた。しかし為す事は変わらない。

 

全てはそこから意義を見出すために、信じれるようになるために自分は此処に来たのだ。

 

「それじゃあ、俺は先にライブ会場に向かうよ。頑張ってくれ」

「ええ!行くわよ、日菜。ファンの皆があたし達を待っているわ!」

「うんっ!ズババーンって行っちゃうよ~!」

 

彼女達と一度の別れを告げ、ライブ会場へと再び向かう。

最初の時よりも賑わいは増しており、これから始まるのだと言う高揚感を感じ取れた。

 

「大胆は勇気を、臆病は恐怖をもたらす、か」

 

とある人物の格言を引用して呟く。中二病も卒業したつもりだったが、案外まだ抜け切っていなかったのかもしれない。

 

それはさておき、今の自分はどちらだろうか。これまでは、きっと後者だったに違いない。

しかしいつまでも恐れていてはきりがない。一歩ぐらい、前に進むとしようか。

 

そう決意して会場へと入場する。既に客でいっぱいになっており、今か今かと皆が待ち侘びている状態だった。

 

……あれ?もしかしなくても、ここコミュ障が生存できる場所じゃなくね?

何か致命的な部分に気づいた気がしたが、時は既に遅かった。




主人公→人生初ライブなのに破天荒コンビに遭遇してしまった模様。僅かながら主人公の『闇』が見えてきて……?

弦巻こころ→主人公を新たなターゲットに定めた。果たして仏頂面の主人公を笑顔に出来るのか……

氷川日菜→主人公に対して「るるるんっ」と感じ取ったらしい。理由は作者にもよくわからん(すっとぼけ)

前回この話で序章が終わると言いましたが、すいません。分割です。
投稿期間開きすぎた上に遅筆なので生存報告も兼ねてこうなりました。
次回はちゃんと合同ライブ回ですぜ。果たして主人公は人混みの中生き残れるのか……!
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