ロンダルキアの悪魔王 作:刺身798円
???
ーーー▲▲▲▲よ、聞こえていますか?
清浄な庵、黄昏を思わせる色合い、目の前には暖かな光。
私は、理解ができない状況に戸惑った。
「あなたは何者なのですか?」
ーーー▲▲▲▲よ、聞いてください。世界に危機が迫っています。敵は、ロンダルキアの悪魔王です。邪悪で強大な力を持っています。放っておけばますます強大になり、いずれ手を付けられなくなるでしょう。ロトの血脈よ、敵を打ち倒すのです。私は聖霊▼▼▼。私のかわいい子供達よ、私はあなた達を、いつでも見守っています。
光はやがて消え去っていく。
「夢………か。悪魔王、ロンダルキアの首謀者のことか?」
夜中に目を覚ました王は夢の意味を考える。
□□
バズズがハーゴン神殿内部にて作戦の指示を出している頃、三人の英雄達はロンダルキアの洞窟を突き進んでいた。
「つまり、俺達が今ここでこうしていることは敵に筒抜けだってことか。」
「………ああ。」
サマルトリア王がドラゴンの首をはやぶさのけんで切り落としながらローレシア王へと話しかける。ローレシア王はキラーマシンの複数の手足をすべて切り落として達磨にして、強靭なはずの装甲を容易く袈裟に切り捨てる。
ローレシア王は、ロンダルキア洞窟に侵入する際に監視の視線に気付き、監視者がロンダルキア山岳地帯の方角へと向かったことを確認していた。
「ローレシア王国は大丈夫かしら?」
ムーンブルク女王の杖先から巨大な
ボトボトと複数の肉片が飛び散った目玉のモンスター、ダークアイの残骸が天井より落下して来る。
「目の前のことに集中するしかないだろう。可能な限り迅速に行動し、一刻も早くローレシアに帰還する。」
「しかしなぁ。迅速にって言っても敵の罠のことも考えなきゃならんだろ。」
「それでも彼の言う通りにするしかないわ。あなたが見たっていう変な夢のことも気になるし。」
三人の英雄達はどんどんロンダルキアの洞窟を先へ進んでいく。
彼らにとっては既に、最難関のはずのロンダルキアの洞窟すらなんら脅威になっていなかった。
彼らはさほどの苦労をせずに、やがてロンダルキアの洞窟の出口へと到着する。
洞窟を抜けた先は、三人がかつて脅威を感じた雪景色。死の大地ロンダルキア。
「いつ見ても気分の悪くなる土地ね。」
雪に覆われた大地に数多の死霊の怨念を感じ取り、ムーンブルク女王が呟く。
そう呟く彼女の足の下の雪の中には、先に出立して死呪を受けたローレシア先遣隊が眠っている。
「敵が来た。フォローを頼む。」
「ええ。任せて!」
彼らはロンダルキアに着くと同時にギガンテスの群れに襲われる。
サマルトリア王が仲間に
「進むぞ。」
彼らはロンダルキアの吹雪を正面から受け、それでもひたすらに先へと進む。
■■
彼らがギガンテスの群れと戦っている最中、少し離れたハーゴン神殿の吹きさらしになった最上階でバズズは吹雪に晒されながら三人の英雄達とギガンテスの群れの戦いを見ていた。
ーーーやはり強いな。何より三人とも互いのことを理解して当たり前のように補助している。俺達の連携ではとても太刀打ちできない。三対三では勝ち目がない。当初の予定通り一対一を三つに分ける他はないだろう。
バズズは階段を下りていく。
□□
「どう思う?」
「神殿にたくさん集まっているということか、あるいはサマルトリア襲撃の際に全部の兵を使いきってしまったのか?」
「あまり楽観的に考えるべきではないわ。いずれにせよ神殿に侵入してみればわかることだし。」
「神殿内で何らかの作戦をとっていると見るべきではないか?」
「………そうね。」
ロンダルキアを進む彼らは、ロンダルキアに違和感を感じていた。
道中に現れる魔物は、キラーマシンとサイクロプスとギガンテスとアークデーモン。サマルトリア襲撃を担っていたシルバーデビルと悪魔神官とデビルロード、それとブリザードの姿を一切見ないのである。
そして、敵が神殿で何らかの罠を張って待ち受けている可能性が高いと判断した彼らは、一層の気を引き締める。
「到着、だな。」
「ああ。」
「ええ。」
巨大な建造物、ハーゴン神殿を三人は見上げる。
荘厳な神殿は、かつての戦いの影響でボロボロになり各所に穴が空いている。傍目には廃墟だと言ってもおかしくない状況ではあるが、それでもかつての名残か、凶々しさを三人は感じていた。
「以前のように建物に認識を阻害する結界は張られていないわ。」
「そうか。じゃあルビスのまもりやじゃしんのぞうは必要なかったということか。」
辺りを警戒しながら、三人は神殿内部へと進入していく。
「強い魔力を感じるわ。上の方。でも変ね。この建物の中にはおそらく数はほとんどいないわ。」
「どれくらいいるかわかるか?」
「ちょっと距離があって正確にはわからないけど、十くらいだと思うわ。」
「そうか。」
三人は以前に神殿に侵入して数多くの魔物を殺害して回った。しかしそれにしても敵が少な過ぎると神殿内部の魔力を感知した女王は首を傾げる。
三人は、階上へと向かい、荒れ果てた神殿を進んでいく。
□□
「近いわ。強大な魔力を感じる。これはおそらく………かつて感じたアトラスとベリアル?あともう一つ………バズズかしら?」
「奴らか。しかし確かに以前俺達は奴らを倒したはずだ………。」
「俺達が詰めを誤ったということだろう。」
サマルトリア王は自身達の詰めの甘さが惨劇を引き起こしたと理解し、ほぞをかむ。
「気を付けて。敵はすぐ上の階にいるわ。それと他のモンスターもいるみたい。総攻撃をかけて来るかもしれない。」
ここはハーゴン神殿の4階層。既に地上から五十メートルほど離れた摩天である。なぜたった4階でこれほどの高度なのか補足を付け足しておこう。ハーゴン神殿にはアトラスやベリアルのような大型の魔物が多数存在していたため、一つの階層の高さがおよそ十五メートルにも及ぶのである。
かつて三人がアトラスと激闘を行ったそこは、そこかしこの床や壁に穴が開いている。
いつ敵が襲い来るかわからない状況に、三人は最大限の警戒をしながら進んでいく。
■■
【奴らが来た。やれ、アトラス。】
【ウガ………。】
□■
唐突に上層より飛び降りて来る巨体、力の悪魔アトラス。
彼は、上の階層から十メートルを超える巨体で階下に繋がる穴に向かって、飛び降りる。
落下する巨大な質量、彼は手に持つこん棒を振り上げ、落下のエネルギーとともに階下の敵に向かい力任せに振り下ろす。
「来たぞ!!避けろ!!」
叫ぶローレシア王、三人はアトラスの奇襲を感じ取る。こん棒の強烈な一撃に神殿の床に穴が開く。三人とも避けたことをローレシア王が確認した刹那。
「馬鹿な!?●●●!!」
「●●●!!」
ローレシア王とムーンブルク女王の悲鳴が上がる。
巨体のアトラスの背中より、密かに張り付いて隠れていたバズズがサマルトリア王に奇襲する。サマルトリア王は敵の爪を剣で受け止めるが、バズズはそのままサマルトリア王を掴んで背中の羽を広げて神殿の崩壊した壁より外へと飛び立っていく。
さらに立て続けに仲間が攫われて動揺したローレシア王の足元にベリアルの
取り残されたムーンブルク女王は仲間との合流を判断するが、目の前にはアトラス、さらに上層よりデビルロードのシモンが五体の悪魔神官達を率いて階段を下りて来る。
ーーーこれは………まずい!!
専門後衛のムーンブルク女王は力の悪魔との対峙に状況の悪さを理解する。非力な(あくまでも彼らの中ではの話だが)彼女はローレシア王というあまりにも信頼性の高い盾無しに、力の悪魔を相手取らなければならない。
【敵を階下に行かせるな!悪魔神官は俺の指示通りに動け!】
局面は三つ。ローレシア王対ベリアル、サマルトリア王対バズズ、ムーンブルク女王対アトラス。その中でも確実に勝利したい戦局に、シモンは声を張り上げ指示を出す。
アトラスはこん棒を振り回し、ムーンブルク女王に向かって振り下ろす。
□■
ロンダルキア山岳地帯大森林。周囲は針葉樹林と積雪に囲まれている。
サマルトリア王はバズズに攫われ上空から落とされ、今ここでバズズと対峙していた。
五十メートルの高さより雪原に墜落させられたサマルトリア王は、ちからのたてを掲げて落下時の傷の回復を図る。
【やはりたいして傷を負わんか。結構な高さから落としたはずなのだがな。】
「貴様………。」
サマルトリア王の目前には猿怪王バズズ。彼らは距離を取って対峙する。
「貴様!言え!なぜ貴様は生きている?サマルトリア王国を滅ぼしたのは誰の命令だ!!!」
【さあな。そういうことは自分で考えろ。目の前の敵の質問に馬鹿正直に答える意味はない。】
にやけるバズズに苛立つサマルトリア王。
しかし、戦いの経験を積み上げたサマルトリア王は戦闘中に他のことを考えて集中を切らすことの愚かさや危険さを身に染みて理解している。そしてバズズは極めて戦闘力の高い危険な個体。一瞬でサマルトリア王は冷静になる。
【なんだなんだ?急に静かになってどうしたんだ?】
「黙れ!」
サマルトリア王は剣を振りかぶり、バズズへと突進する。
□■
「うおおおおおおお!!!」
ベリアルに押されて落下しつづけるローレシア王。ベリアルは羽を上手く使い、空中で上手く身動きの取れないローレシア王を各階層に開いた穴へと上手く誘導してどこまでも落としつづける。
ーーードガアアァァァッッ!!
ローレシア王はハーゴン神殿の瓦礫に、落下の勢いのまま突っ込むことになる。羽を使い着地するベリアル。
ローレシア王は四階から落とされつづけて、一階まで押し戻されてしまった。
そして、彼を追撃で襲うベリアルの
「ぐっっ!」
ローレシア王は被弾して、ダメージを受けながらも立ち上がり、仲間と合流しようと階段へと向かおうとする。
【フン。やはり馬鹿げた頑丈さだ。】
五十メートル近い上空から瓦礫に落下し、イオナズンの直撃を喰らったにも関わらず、多少の怪我のみで平気で立ち上がるローレシア王にベリアルは呆れる。
ベリアルは階段の前に陣取り、両手で槍を振り下ろす。頭上で剣を横にして、片手で易々と受け止めるローレシア王。
「どけっっ!!」
【お断りだ。貴様には以前の恨みをはらさせてもらおうか。】
ローレシア王の前に静かに槍を構える牛鬼。
ローレシア王は、目の前の敵を倒さない限り仲間と合流は不可能だと理解した。
ハーゴン神殿一階で、雷神が必殺の横薙ぎを放った。