転生したら間桐臓硯だった男の話   作:鯵〆鯖

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感動?の再会

 鶴野が家を出てから数日ほど経った。

 大きな支障もなくなった今の俺にとって出来ることはかなり増えていた。

 真の意味でこの間桐邸は俺の所有物であり、誰も俺を邪魔するやつはいない。

 そんな俺のやる事といえば……。

 

「――で、これらの五つの属性を持つ魔術師も存在している。その魔術師のことをなんと呼ぶ?」

「アベレージ・ワン!」

「正解。ちなみに、五つの属性から外れた二つの属性は?」

「無と虚!!」

「よーしよしよし。桜は物覚えが早いなー」

 

 このように部屋で学校のように魔術の勉強を教えている。

 あれから色々と調べたりはしたが結局虚数魔術のことは分からなかったのだ。

 まあ、間桐の水属性を教える気は全くないから仮に何かで虚数が覚醒しても黒桜のようになることはないだろう。

 あの状態はたしか虚数と間桐の水属性の吸収が組み合わさったことで出来てしまった最悪の代物だったはずだ。

 

 ……と、安心しきっている場合でもない。

 次から次へと厄介事……と言いたいが、今回に関しては本当に俺の、間桐家の運命がかかっている。

 

「……ところで桜、この家にもう一人家族が増えると言ったらどう思う?」

「……この前の人?」

「奴じゃない。その男は遠坂夫妻の知り合いでもあるから信用出来る男だ」

「お父さんとお母さんの!?」

 

 そりゃ自分の親の知り合いとなれば桜の反応も大きく変わるよな。

 ……最も、俺は殴られそうなのだが。

 

 間桐雁夜。本来なら第四次聖杯戦争に参加し、愉悦共に散々弄られて命を落とすことになる可哀想オブ可哀想が急遽、想定外に早くここに来ることになった。

 鶴野から話を聞いたと言っていたが、臓硯案件になると利害一致的な意味で兄弟仲は良くなるとかでもあるのかあの二人。

 

 一度は葵さんのところに寄ってからこっちに来るだろうしこの家に来るのは明日か明後日ぐらいになるだろう。

 

「実はな、訳あって家を出てったバカ息子が帰ってくることになったんだ」

「バカ息子? あの人みたいな人?」

「……中々酷いこと考えてるな」

 

 もしもし? 聞いているかそのバカ息子に育て上げた元凶さんよ。

 あ、今は俺の体になってるんだったな! はっはー!!

 

 ……本気でこの体に刺されそうだからやめておこう。

 刺されなくても夢ぐらいには出てきそうだ。

 

 まあしかし、雁夜が戻るとなるとやはり聖杯戦争は雁夜参加になる。

 同じ歴史を繰り返さないようにしつつ多少は史実通りの動きにさせてから何とかするべき……。

 

 …………あ、待てよ。

 確か雁夜の初期魔術回路って臓硯の蟲がないと雀の涙程度だった気が……。

 

「……出るしか、ないよなぁ」

 

 臓硯のやり方を真っ向から否定する以上は雁夜に無理強いは出来ない。

 となると俺がバーサーカーを召喚するか、先にキャスターを召喚するかになる。

 もはや俺という存在の時点で俺の知る歴史とは大きくズレることが確定した。

 まず英雄王を相手にするならバーサーカーランスロットはかなり強いし、でもそれだと第二可哀想オブ可哀想なセイバーが可哀想だ。

 ヘラクレス……は聖遺物がないから無理でキャスターは俺の呼びかけなんざに応じないだろう。

 真アサシンと俺の願いの波長……は多分合わない。

 残るは……原作無視の英霊召喚。

 

 幸いなことに召喚システムのことはかなりの情報が書物にあった。

 それに加えてあの時得た臓硯の記憶を頼りに反則召喚をすればルーラーの召喚も可能だ。

 

 ただ、この世全ての悪をどうするかっていう難題が残る。

 正直に言うとだ。この問題は俺一人、第四次聖杯戦争のメンバーでは解決できるとは思えない。

 なぜなら冬木の大聖杯の問題に決着がつくのは大人になったウェイバー……ロード・エルメロイII世と遠坂の二人が……。

 

 ………………あ、でもそうか。解体したのはあの二人なんだよな。

 なら、やれないことではないのか。

 これを解決案1として保留しておこう。

 なにせ死ぬ確率の方が高い。相手が悪すぎるからな。

 

「問題は山積みでバカ息子の説得……」

 

 でも……雁夜になら臓硯を演じる必要はない、だろうな、多分。

 

 

 

ー視点 間桐雁夜ー

 

 電話なんて初めてだった。

 あの家から逃げた俺を恨んで当然のはずなのに、第一声は

 声はとても穏やかで、それでいて困っているようにも聞こえた。

 

『間桐臓硯が遠坂家の娘を養子にした途端人が変わった』

 

 他にも色々話した気がしたが、俺にはその一言が忘れられなかった。

 何故。どうして。裏切った。助けなくてはいけない。

 そんな感情を抱えたまま俺は冬木に戻ってきた。

 

「臓硯おじさん、今日はどこ行くの?」

「間桐のグルメ第二弾はジャンクフードだ」

 

 ジジイから桜ちゃんを助けるために……。

 

 

「…………」

 

 聞き間違いか?

 今、「臓硯おじさん」、「間桐のグルメ」なんて言葉が出てきたような……。

 

 恐る恐る声のした方に振り向く。

 

「ハンバーガー四個分くらい食べるぞー!」

「おー!」

 

 なんだ。気の所為か。

 あそこにいるのは髪型が少しだけ兄の鶴野に似た男性と桜ちゃんだけじゃないか。

 全く、驚かせる……。

 

「…………じゃない!!!」

 

 桜ちゃんということはあれはジジイの関係者か何かに違いない。

 

 助けなくては。その思いだけで近付いた。

 

「待てッ!」

 

 

「……この声は、雁夜か」

 

 自分の名前と、声を知っている。

 やはりジジイの仲間か。

 声がどことなくジジイに似ているということは影武者か?

 

「桜、こいつがバカ息子の間桐雁夜だ」

「初めまして雁夜おじさん!」

「え? あ、うん。久しぶりだね、桜ちゃん」

「……私、雁夜おじさんと会ったことないよ?」

 

 かなり心にくるが仕方ない。

 今より小さい時だったから覚えてないのも……そう考えよう……。

 

 …………じゃなくてだ。

 おかしい。何だこの感覚は。

 これじゃあまるで厄介な嫁姑みたいになっていないか俺?

 ただ桜ちゃんを間桐のおぞましい魔術から救い出す為に……。

 

 一度冷静になれ。考えろ。

 ジジイは昔から魔術師としての素質を俺たちや俺たちの子供から求めていた。

 その事実を知っていたからこそ俺は葵さんを巻き込んではいけないと手を引いたのだ。

 そして、今回の養子の件もそれが目的だったに違いない

 

 なら、その養子となった桜ちゃんが今も元気にしているのは、桜ちゃんにも素質がなかったからなのでは?

 しかし、養子として来た桜ちゃんを俺たちみたいに扱えば時臣たちに見つかった時に面倒になる。

 だから普段通りに動けない。

 

 ……これなら、理由にも納得がいく。

 そして、俺が逃げてしまった時のように、助ける方法がゼロではない。

 

「……大体予想はつく。故に、俺の条件を受け入れるなら考えてやろう」

「なっ……!?」

 

 それは、願ってもいない言葉ではある。

 だが、間桐臓硯という男の考えにしてはあっさりしすぎている。

 何のつもりだ……。これもジジイの思惑通りなのか、それともこの男の意思なのか。

 …………だとしても。

 

「……分かった。まずはその要求を聞こう」

「そうだな。だがまずは……」

 

 男がポケットから何かを取り出している。

 まさか、俺が来ることを想定して手紙でも……?

 

「ほら」

「なにを……なに……?」

 

 取り出したのは俺もよく目にするバーガーショップのクーポンだ。

 特に魔術がどうとかいうことはない。

 ………………ただのクーポン??

 

「これから桜とハンバーガーを食べに行くつもりだったんだ。残りのクーポンはくれてやるから一緒に食べに行くぞ」

「え? あ、いや……」

「桜、難しい話ばかりですまないな。こいつも連れて行っていいな?」

「うん! 雁夜おじさんは悪い人じゃなさそうだから大丈夫!!」

 

 ……そんな笑顔を、葵さんの子供の桜ちゃんからそんな満面な笑みを向けられたら断れないじゃないか!!

 でも、聞きたいことは……あーもう!!

 

「……話のために行くだけだからな!」

「カッカッカッ。楽しい昼食だ」

 

 そのまま俺は色々とモヤモヤを抱えつつも仕方なく、本当に仕方なく二人とハンバーガーショップに向かうことになった。

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