そして今更ですがこれだけ読んでくださる人がいて驚きつつ「臓硯よかったな。大人気だぞ」とHF見返していました。本当にありがとうございます。大変長らくお待たせしました。
またボチボチ上げていくのでよろしくお願いします。
雁夜から協力を得て早数ヶ月。
現在、間桐邸には俺と雁夜の二人が冬木の地図を眺めていた。
雁夜に桜のことは任せると言ったが、せめて通う学校の学費や評判というのは知っておいて損は無いだろう。
「……ここはダメだな。昔のイメージだがイジメとか多かった記憶がある」
「なら反対側のこの学校はどうなんだ」
「そこか……。確か取材で一度来たことがあったが、中々のお嬢様学校だぞ? こういう所って虐めとか多いって聞くが……」
蟲の制御やらで神経がやられていないことや、俺に対しての警戒心が薄くなっているためか思考も原作ほどはぶっ壊れていないように見える。
「学費なんぞは気にするな。この家にいる間は家主の俺が責任もって面倒を見る」
「……そう、か」
まだわだかまりはあるが、俺を味方だと信じてくれてはいるのだろう。
そんな雁夜が意を決したように真剣な表情で俺を見た。
「……結局、ジジイが聖杯を使って叶えたかった望みっていうのは何だったんだ?」
この辺の話は俺がするべきではないんだろうが、マキリ・ゾォルケンの名誉のためにも多少事実を知る俺が話すしかないか。
「俺の願いは、この世全ての悪の廃絶。
……だった」
「だった?」
「うむ。事の発端は魔術師としての間桐が俺の代で限界だと分かったところからだ。その事実を知っても抗おうとして、我が宿願のために延命を繰り返していたんだ」
「……それが、マキリ・ゾォルケンの話か」
雁夜には過去の資料を全て読ませたこともあって間桐臓硯の過去を理解している。
だからこそマキリ・ゾォルケンの話として聞いたのだろう。
「だが延命を繰り返しているうちに宿願も忘れてしまい、「生きたい。死にたくない。」というものに置き換わっていたのさ」
「……つまり、間桐臓硯が聖杯に願ったことっていうのは…………」
「ああ。不老不死だ」
雁夜の拳が俺の顔を的確に狙った。
かなり力の籠った一撃だったのか、まだ痛みは引きそうにない。
「……分かっている。ここにいるのはマキリ・ゾォルケンだってことは……!!」
「だがそれでも!俺の親を、兄弟を、大切な人まで滅茶苦茶にしようとして願ったのがそんなことだと知って殴らずにはいられなかった……ッ!!」
それからもう一発は殴られる覚悟をしていたが、雁夜は諦めたように力を緩め、再び学校のパンフレットを読み漁る。
「……失ったものは二度と返ってこないし、「間桐臓硯」はもう俺の中では死んだ」
「だからこれは俺なりの決別だ。爺さん」
「……カッカッカッ、そうか」
夜、雁夜たちも寝静まった頃に部屋を出てかつて虫蔵があった地下へと足を運ぶ。
そこには頼んでいたものが一つと木箱が一つ、指定の場所へと置かれていた。
「……これがあるということは」
木箱の中を開けると目当て通りであって出来ればそうなって欲しくなかったものがそこにはあった。
無惨な姿になった鳩の姿。
使い魔として使用し、アインツベルン家の不正を言峰と遠坂に伝えようとしたが撃ち落とされている。
大聖杯周りを探りすぎたとはいえ、こうもアインツベルンからの指示が早いのを見るに奴らは意地でも聖杯戦争は続けるつもりだな。
俺とアインツベルンの情報戦は向こうが一枚も二枚も上手。
となるとやはり聖杯戦争は一応開始させて、上手い具合に龍之介が脱落したのを機に俺も行動を起こすべきかもしれない。
間桐の魔術師としての力が俺以外弱いのが恨めしい。
その雨生龍之介は現在消息不明。
遠坂と言峰への連絡は出来なかったが、奴らだって聖杯の現状を全く知らないということはまずないだろうから、アンリマユによる汚染を甘く見積っている可能性がある。
衛宮切嗣は……アインツベルンの邪魔のせいで接触すら困難。
だが衛宮切嗣は今の聖杯の仕組みを理解すれば俺に協力してくれるだろうから時を待つ。
最初に利用するのはやはり名前もあって実力もピカイチ、戦う相手が悪すぎたことで定評のあるケイネスか。
「ディルムッドを選んだ時点で相性や信頼関係の面でも聖杯戦争で敗北は必至だった男だが、あのロード・エルメロイII世が敬意を表した相手なのだから期待しないほうがおかしいというものだ」
どれだけ考えてもアイリスフィールを救う方法だけは考えつかなかったが、第四次聖杯戦争での動きは決まった。
もう一つの重箱には一番重要なアイテム。
円卓に関係した聖遺物の入った箱。
「
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝、狂乱の檻に囚われし者
我はその鎖を
汝 三大の
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
バーサーカーに限定した英霊召喚は通常詠唱に分を加えることで可能だが、陣に少しだけ細工し、ここにある上一文だけを省略して使えば燃費はかなり悪いが一段階狂化のランクを下げることが出来る。
「ぐ、ぅ……!?」
だがこれだけの魔力を根こそぎ持っていかれるとはさすがバーサーカー。
マキリの魔力を持ってしても痛みが伴うか。
だが円卓の関連したものを使ったのだ。
これでランスロットを召喚できる。
この時、俺は召喚をもっと限定しなかったことを悔いた。
なぜもっとランスロットに関係したものを用意しなかったのか。
なぜ、万全を期して挑まなかったのか。
「……なん、だと?」
現れたのは漆黒の騎士。
しかしその姿は「裏切りの騎士」ではなく「忠義の騎士」。
本来であればこのような姿になることはない「太陽の騎士」。
「──召喚に応じ、馳せ参じました」
円卓の騎士、ガウェイン。
月の聖杯戦争で見たよりも禍々しいその姿は見ているだけで心を抉る。
「まずはこのような形で貴公を召喚したことを詫びさせて欲しい」
「その上で、どうかこの街を救うための力を貸してほしい」
ピクっと鎧が動き、少しでもその目を見れば足が竦むほどの恐怖に襲われる。
だがここで怯んではダメだ。
呑まれれば、この聖杯戦争には生き残れない。
「……いいでしょう、我がマスター」
「ああ、頼りにしているぞ」
いくらかの不安要素が生まれてしまったが、これで舞台は整ってしまった。
あとはいかにして誰も死なずにこの戦いを終わらせるかだけだ。