翌日、間桐邸ではガウェインの歓迎会が行われた。
最初こそガウェインは不要だと拒んでいたが、桜の押しに負けて……というより子供の笑顔を無下にできなかったのだろう。
こうしてみるとやはりガウェインなのだなと安堵する。
「マッシュ〜マッシュ〜なんでもマッシュ〜♪」
「いいですよサクラ。もっと力を加えましょう」
…………やはり
「……あれがサーヴァントなのか?」
「真名は言えないが、有名な英雄だとは言っておこう」
「英雄か。……こうして見てみると俺たちとあまり変わらないんだな」
さすがに戦い以外で鎧はどうかということでガウェインに合いそうなサイズの私服を用意してみたが、これが案外似合っていた。
顔がいいから何でも似合う系なのだろうか。
そうしているうちに出来上がった潰して茹でたじゃがいもをガウェインは美味しく頂き、俺たちは唐揚げを食べている。
「どう?バーサーカーさん」
「完璧です。サクラは覚えるのが早いですね」
桜にはそう笑顔で答え、相変わらず少食の雁夜がすぐに「ごちそうさまでした」と言うとその首根っこを掴み
「カリヤはもう少し食べなさい。その軟弱な体を鍛えれば少しはマシな顔になるのでは?」
そう言って皿にマッシュと唐揚げを盛った。
「……前言撤回だ。バーサーカーは俺の兄貴かなんかか!?」
「私も不思議なのですが、カリヤを見ていると無性にあの男を思い出してしまうのです」
バーサーカーのガウェインは怒りの感情が上手く制御出来ていないというか、ランスロットの件を割り切れていないように見える。
となると今後円卓関連の話をする時があった場合は細心の注意を払っておくべきか。
「ですので、貴方のその暗い顔がどうにかなるまで私は盛りましょう。大量のマッシュを」
「せめて他の食べ物も頼む。じゃがいもだけは俺じゃなくても辛いものがある」
渋々といった感じで大人しく食べ始める雁夜。
ダメ男という点だけ見ればランスロットと雁夜は同類だが、それを見ても即座に怒り狂わずに自身を律しあのガウェインでいようとする姿はやはりガウェインなのだなと思わせる。
「ふむ。ですが私は菜食主義ですので肉や油を使った料理は不得手です」
「そうなのか?それは今後の食事において大事な話だな」
所謂ベジタリアンというやつか。メモメモと…………
…………ベジタリアン?
「…………待て、その体格でか?」
「肉を食べればいいというものではありません。しっかりとした食事と運動、そして適度な睡眠さえあれば肉体は応えてくれます」
「そういう、ものなのか?」
たしかに全世界のマッチョの中にはベジタリアンもいるだろうが、こいつの場合別格では?
お前のような筋肉を手に入れられたベジタリアンとかゴリラしか見たことねえぞ。
てことはゴリラかこいつ。
「今なにか変なこと考えましたか?」
「いや全然」
言ったら殺されるくらいの気迫で迫られたためもう首が一回転するかという勢いで横に振る。
それに気付いていた雁夜も怒らせないでおこうと思ったのか少し早いペースで唐揚げとマッシュを食べる。
「マッシュ〜マッシュ〜なんでもマッシュ〜♪」
桜は可愛いなー。追加のマッシュをガウェインと作っている姿を見る日が来るとは思わなかったが。
俺の知ってる間桐桜と違いすぎてもうこの世界だけでも魔術とは無縁の世界で穏やかに生きてほしいと願ってしまう。
俺が決めることではないし、そこを怠って時臣が見限って別の魔術師の家に連れていくなんてことがないようそれなりの訓練はさせているが。
「バーサーカーはここで二人を護っていてくれ。俺は今から重要な仕事をしてくる」
「仕事ということでしたら私も同行しましょう」
「悪いがこればかりは一人でやらなければならないことなんだ。それに一時間も掛からんから気にするな」
三人を置いて俺は自身の部屋へと戻った。
かつての間桐臓硯を連想させるものは殆どなく、様々なコネを使って買い漁った魔術に関する本ばかりが残っていた。
そんな書斎と化したこの部屋に一際大きい棚に置かれた防弾チョッキと一部銃器、そして宝石魔術を駆使して作り上げた杖。
時臣の真似事だと笑われるかもしれないが、こういう武器は作っておいて損は無い。
「さて、やるか」
頭の中を掻き回されるような感覚に陥りながら、俺は勝つための作業を進めた。
――
「──この我が出向いたというのに、未だ姿を見せぬ雑種がいるではないか」
アーチャーが誰もいないコンテナを睨む。
それに合わせてセイバー、ライダー、ランサーがその方向を凝視する。
「……真名を知られる訳にはいかないと今夜は身を潜めるつもりでしたが、それだけの強いオーラを放たれては出るしかありませんか」
「!貴公は……」
闇の中から現れたのは黒き鎧を纏った騎士。
今にも溢れ出しそうな魔力を抑え、そこに立っていた。
「この場に騎士王がいるのであれば真名を知られるのは時間の問題」
「円卓の騎士ガウェイン。バーサーカーのクラスとして馳せ参じました」
バーサーカーの名乗りに戦場は再び緊張に包まれる。
しかしそんな中でもライダーは満面の笑みでバーサーカーと向き合った。
「バーサーカーとはいえ話の分かる男なら問題はあるまい。アーサー王ではなく我が軍門に降る気はないか?」
ライダーからの勧誘に対してバーサーカーは怒気を放ちながら一歩近づく。
「我が忠義は騎士王のためのもの。二度はない」
「……ふむ、やはりダメか」
「当たり前だろうが!? いきなり怒らせてどうするんだよこのバカ!」
「もしやという可能性もあるだろ。まあ結果が最悪なのは認めるしかあるまい」
二人の問答が終わると、今度はアーチャーが無表情でバーサーカーを見下ろした。
「我以外の王、英雄など全て有象無象の雑種に過ぎぬが……狂犬ではなく、騎士として姿を現したのなら、その忠義を以て余興とするか」
アーチャーの背後から無数の宝具が出現する。
その一つ一つの宝具全てがセイバーに狙いを定め、射出される。
「……これが英雄王と呼ばれる者の器か」
数にして凡そ十の宝具。
その全てをセイバーの前に立ったバーサーカーが傷一つなく防ぎ切る。
「よく守り抜いた。だが次は……む」
その動きに微かに笑みを浮かべたアーチャーだったが、バーサーカーの隣に現れた青い髪の男を見た途端、また無表情へと変わる。
「バーサーカー、待たせてすまない」
「ご無事でしたかマスター」
「ユーブスタクハイトの兵とはいえ、あの程度のホムンクルスに遅れをとるほど半端な鍛え方はしていない」
突如現れた間桐臓硯は英霊たちのいる戦場の真ん中に立ち、一度アーチャーを見上げるとセイバーやライダーのいる場所へと向き直る。
そして、その場にいる英霊や離れた場所にいるマスターたちに聞こえるように叫んだ。
「この場に集いし英霊と、そのマスターに告げる! 私の名はマキリ・ゾォルケン。現在は間桐臓硯と名乗っている!」
「アインツベルンの行った不正を正すために、この聖杯戦争を止めに来た!!」