貴方がアクセスを試みているファイルはレベル4/2000クリアランスを持つ人員にのみアクセスが許可されています。このクリアランスは通常のレベル4セキュリティプロトコルに含まれません。
必要なクリアランス無しにこれ以上のアクセスを試みることは財団による雇用の終了、全ての教育上、医療上、退職後、あるいは死亡時の福利厚生を取り消す根拠となります。資格認証のため、貴方はこれをもって既知の情報災害的画像に暴露される事に同意することとなり、貴方が画像に対する予防措置を受けていることを確認します。認証されていないアクセスの場合、このコンソールは操作不能になります。保安要員が派遣され、貴方を蘇生した後に尋問のため留置房へ護送することになります。財団のイントラネットに接続されていないいずれのコンピューターからこのファイルへアクセスを試みることも、クリアランスに関わらず即時終了をもたらすこととなります。
[ログイン資格を提示せよ: 要レベル4/2000クリアランス]
私達は何度同じことを繰り返しているのだろう?
私達が0から始まり1へと至ったのはつい最近のこと。私達は1から次の2へと繋いでいかなければならない、自然界の進化の法則を崩してまでもそれを行うしかない。
人類の命は短い、星より比べて明らかに短すぎる。しかし世界の真理へと。宇宙の果てへと。深海の奇跡へと。人は求め続ける。
命が短い分、先の時代の者たちの遺した物を受け継いで行くのだ。命のバトンは今も続いている。
ーーーーバンッ。
そんな音ともに急激に世界は滅んでいく。唐突になんの拍子もなく、文明は崩壊していく。
地球は、狂気と、快楽と、暴力と、正義と、悪と、悲しみと、増悪と、混沌を、すべてかき混ぜたようにおかしくなって行った。
人々の悲鳴と怒号、銃が乱射される音、木々と人が焼ける匂い、隣の人の腐っていく腐乱臭。そして世界の半分が無くなっている異常性。
命の価値も、倫理の意味も、正義の存在も。どこにもない。
だから残しておく、いや残すべきなのだろう。
『どれだね、選ぶのは?』
どうしょうもなくなりベットの下に震えながら隠れていた俺を見つけた、兵士の人が聞いた。
その人は腹部から血を垂れ流していた、助からない。そういう確信が自分にはあったんだ。
いきなり隠れていたベットを破壊されたので俺はただ口をパクパクさせることしかできなかった。きっと俺はその時恐怖で情けない顔をしてないでいたのだろう。
フッ、と彼が微笑む。少ししゃがみ込む俺の視点に合わせてくれた。そして指を二本突き出した。
『なぁ、少年。選択肢を2つ上げよう、この通り俺はもう直に死ぬ。だから君をどうこうしょうというわけではないんだ、ただ2つの中から選んでほしいんだ』
彼は鬼気迫る声なのにどこか悲しそうに言った。
『これを君に託すのはどうかと思う、けど君にしか頼めない。この世界を《再起動》させるために。』
『………話が長くなってしまってはいけない。では選んでほしいんだ。一つ、《俺の頼み事を断って、命の限りここで隠れる》。そしてもう一つは……………。』
『《俺の代わりに世界を救ってほしい》だ。』
最初俺は彼がイカれているのだと思った。だから笑ってやった、こんな救いない世界をどう救うって?誰も出来なかったことをどうやったら出来るんだ?色んな問題を抱えてたくせに他人行儀のように無視していた『
『…………俺たちにはどうしょうもないほど救いようのない生き物だ。しかし、それでもどうしてもこの世界を、俺達が愛した世界を、バケモンになんかに、恐怖なんかに譲っちゃいけないんだ。』
覚悟。彼の瞳には死にかけとは思えないほどの覚悟を感じた。
『だけど、俺は、もう駄目みたいなんだ。だから君に選んでほしいんだ、救うか。見捨てるか。』
究極の選択、救えるもんなら救いたい。でも俺にはできない祈ることだって諦めてしまった、心はいつかに折れてしまった。枯れてしまったと思っていた涙が溢れる。
それでも、あの人はこんな弱虫な俺の手を熱く優しく握りしめた。
『…………この選択肢は自由なんだ。君はまだ子どもだし、こんな重大なミッション背負う必要もない。断ってもいい、諦めてもいい。だから選んでほしいんだ。』
ーーーほんとに救える?
『すべて、もとに戻るとも。君が望んだ平穏な時間に』
ーーー俺にできるの?
『君しかいないんだ、きっともう人類は全滅しただろう君と俺を残して。』
ーーー俺は、弱いよ。きっと失敗する。
『弱くてもいいんだよ、失敗したっていいんだ、誰も君を責めない。すこし強い振りぐらいがいいんだ。ーーーそれに俺は信じているんだ、《人間の可能性》って奴を。』
少しの沈黙、ふとタンスの上の家族の写真が目に写った。俺は立ち上がりそれを掴む、自然に思い出の海に浸かる。春の日、父と母と妹と俺とたんぽぽの生い茂る草原で母特製サンドイッチを頬張る。優しい春風とたんぽぽの青臭さが鮮明に思い出せる。
ーーー『Stand by me』
父が好きだった曲、ずっと聞かされてきた俺が大好きなフレーズ。意味は『貴方の側に立つ』今でもこれを口ずさんで勇気を貰っている。
妹のくれた最初の誕生日プレゼント、安っぽい百円時計。未だに時を刻んでくれている。
ーーーやるよ。
『ありがとう。』
どうやら世界を救うその手段はアメリカのイエローストーン国立公園というところにあるらしい、そこにあるとある施設を再起動させると長い時間は掛かるが文明を復興させることができる、その施設は人間を作り出すことができるらしい。
『人間ってのは案外簡単に作れるんだぜ』
聞けば聞くほどオカルトじみている。いやこの場合SFチックと行ったところか、だから俺はこんな質問をしてみた。
『ほんとにそんな事できるのか?』
『なぜ、不可能だと?【前にも】やったんだぞ』
それだけで俺は疑うのをやめた。すこし質問をし、旅の準備を始めた。一本道の旅だ、少しの食料と水と家族写真だけで良い。
すると彼が俺に《武器》をくれた。それは機関銃、AKMとかなんとかとりあえず弾薬と爆薬とか。
自分にはもう不必要だと、『英雄』の門出には十分なはずだと皮肉った。それでも彼は満足したようだった。
去り際、倒れた彼の横を通り過ぎると。
『幸運を。死にゆく貴方に、敬礼を。』
それはオレが十二のときだった。
そして、ここに至る。俺はここに来るのに五年は掛かった、色んなことやバケモンに襲われた。それでも俺は彼の言葉を希望にここまでやってきた。
今まで信じてきて、良かったと思ってる。
しかし、どうやら簡単に事はすまないようだ。施設の制御室にバケモンが大量にいやがった。ここに来るまでに負った傷が今更になって開いてきやがった。
きっと、俺は、死ぬだろう。失敗するだろう。だからこれを残していこうと思う、今読んでるアンタにだ。
きっとこれを読んでるアンタはオレより強い、だから、もし、オレが失敗したら。
決心したら、隣にあるボックスから有りたっけの武器をもって、制御室に向かってほしい。
アンタも死ぬだろう。
でも、世界がこんなんじゃ何してもいつかは死ぬだろう?だから問題ないわけだ。
これが、アンタに見つかることを祈ってる。
オレは、俺はこれから制御室に向かう。
ただで死んでやるつもりはない、できるだけバケモンは始末しとくよ。次のために。
アンタの成功を祈るよ。
そんなアンタに彼と同じ言葉を贈ろうと思う。
『幸運を。
死にゆく貴方へ、
敬礼を。』
from·■■■■
for·勇気ある貴方へ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
手紙は書き終えた、後はやりきるだけだ。
好きな曲を口ずさみながら装備を整える、最後の晩餐はビスケット。
ふとブーツの紐が解かれていたことに気づく、しゃがんでブーツを履き直す。
決着を付けよう。誰からも忘れ去られる、この出来事を誰かに知ってほしいのが最後の心残りだが、でも覚えてなくてもいい。三回も間違いを起こしてしまったことなんて。ただ虚しいだけだ。
これが最後の『再起動』だと信じて、銃を構えた。
「勇気を、ありがとう。」
『…………SCP-2000《機械仕掛けの神》の起動コードを確認。…………、』
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
「……………、……………………。ハッ!?ここは!?」
オレが次に気がついたのはどこかの路地裏だった。夜の帳が降りていたことから路地裏は薄暗かった。
「《再起動》、したのか?いやそんなわけがないな。再興には時間がかかるし、それに記憶が消されるのなら《機械仕掛けの神》について覚えてるわけないし、財団がそんなヘマをするわけがない。それに装備がそのままってのも可笑しいな」
そうやってブツクサ独り言を言ってるとようやくそれに気づいた。
ーーー人の声だ。それも大勢の。
それに気づけば行動は早い。旅をしたときより早く、速く、疾く路地裏を駆けていく。
そして、路地裏の出口へと差し掛かった。
「………。………………、ぁああああ嗚呼ああ!!」
それはいつか失った二十世紀の文明の光、日本の輝かしい繁華街の電灯とそれを行き交う人々があった。
取り戻したのだ、彼は、彼らは。
人の希望を、忘れ去られた記憶のなかで。
人類の悲願を、《機械仕掛けの神》は再び果たしたのだ。
少年、十七の8月13日の出来事だった。
しかし、彼はまだしらない。
この世界は『終わらない』ことを、戦いは始まったばかりだということに。
十人の少年少女と目が廻るような青い夏の出来事を。
さあ、もう一度『救い』に行こう。この救いようない世界を。