あの場所から逃げた男達は、蜘蛛の巣谷で迷っている。
「しかし腹減ったなぁ」
「言うな。余計腹減るだろうが!」
「減ったもんは減ったんだよ!」
「だから減った減った言うな!」
マカロフ「しっかし…減ったのぅ」
「「だから言うなって!!」」
マカロフ達は、昨日から何も口にしていない。先程から全員の腹の虫が鳴いていた。1人を除いて。
「……」モグモグ
腹減ってる連中を無視して、男は1人パンを食っていた。
「って!食い物持ってんじゃねぇかお前!」
「よこせ!!」
「よさないかナツ!グレイ!」
赤髪の女に止められる2人。
ナツ「だけどよエルザ!」
グレイ「そうだぜ!こっちは腹減ってんのによ!!」
2人は文句を言うが、男は無視してパンを食っていた。
「だけど…お腹すいたぁ」
金髪の女もお腹を抑える。
「……」
すると男は、鞄からパンを取り出した女に渡す。
「えっ?」
「腹…減ってんだろ。食え」
「いいの?」
「ああ。死んだ婆ちゃんからの約束で、年寄と女子供には優しくしてやれってな」
「ありがとう!」
女は嬉しそうにパンを食べ始める。
「お前、名前は?」
「モグモグ…そうだった。まだ名乗ってなかった。私はルーシィ」
「ルーシィか。いい名前だな。俺はツバサだ」
ルーシィ「そっか。よろしくお願いします」
ツバサ「敬語じゃなくていい。マカロフとエルザだっけ?2人も食うか?」
エルザ「いいのか?」
ツバサ「問題ない。エルザは女だしマカロフは老人だ。婆ちゃんの約束を破る訳にはいかねぇしな。それに、女にはどんな相手であれ優しくしてやれって言われてたしな」
エルザ「す、すまない///」
少し頬を赤くするエルザ。今まで自分の事を女と見てくれた事がないため、ツバサの言葉に少し恥ずかしさを覚えていた。
ナツ「エルザ達だけズリィぞ!」
ツバサ「お前らは男だろ。男なら自分の事は自分でしろ。俺もそうやって生きてきたんだ」
マカロフ「相変わらず厳しいの。男に関しては」
マカロフはパンを食いながらツバサに言う。
エルザ「そう言えばマスター。ツバサとは知り合いみたいだったが」
マカロフ「ああ。数年前に助けられたんじゃよ。ツバサにな」
『ええっ!?』
マカロフの言葉に全員が驚く。ルーシィはもちろんだが、マカロフの強さを知ってるエルザやナツ、グレイは特に驚いていた。
マカロフ「前にわしの知り合いの知り合いが、誰かに命を狙われていると聞かされての。無償でわし自身が引き受けたんじゃ。で、その時出会ったのがツバサじゃ」
エルザ「そうなのか?」
ツバサ「ああ。あの時俺は、マカロフの知り合いの知り合いは闇商人をしててな。闇ギルドの連中と繋がってたんだよ」
『!?』
ツバサの言葉に、エルザ達は驚く。
マカロフ「そうじゃ。そして、わしと知り合いはまんまと騙され、助けに行った時にはツバサがその男を殺そうとしておった時じゃ。当然わしは、その男を助けてくれと頼まれておったから、ツバサと戦うこととなった」
ナツ「じっちゃんとツバサが」
グレイ「マジかよ」
ルーシィ「それで…どっちが勝ったんです?」
ルーシィの言葉に、ツバサ以外の連中が息を飲む。
マカロフ「…わしの負けじゃよ。圧倒的なな」
『!!!!』
マカロフの言葉に、全員はツバサを見る。
ナツ「嘘…だろ」
エルザ「マスターが負けた」
グレイ「しかも、一方的にかよ」
ルーシィ「うそ!?」
マカロフ「本当じゃ」
ナツ達は、動揺が隠せなかった。まさか、自分のギルドのマスターが、今隣にいる男に負けたとは思わなかった。しかも一方的に…
ツバサ「で、その後ソイツの事を話して証拠を見せたんだよ。それで納得して勘違いとはいえ怪我させたからな。暫くの間俺が看病したんだよ」
マカロフ「それ以来、わしらはお互い連絡先を交換したんじゃよ。お前らは知らんかも知れんが、ウチのギルドの何人かはコイツの事は知っとるぞ」
ツバサ「ま、流石に同じ話したら全員が驚いてたがな♪」
マカロフ「じゃが、それ以降お前が来た時だけは、どっちがギルドマスターか分からんくらいウチの女連中に詰め寄られとるがの。羨ましいのぅ♪」
そう、ツバサはマカロフとの話をギルドの連中も聞いており、その強さやクールさにほとんどの女達が惚れたのだ。
ナツ「すげ~なツバサ!」
グレイ「まさか、じいさんより強いとはな」
マカロフ「当然話だけじゃ納得のいかん奴もいたがの」
ルーシィ「誰なんですか?」
マカロフ「ギルダーツやラクサスじゃの」
エルザ「ああ。あの2人なら納得だな。現に私だってまだ半信半疑なところがあるからな」
ナツ「それで、ラクサス達は勝ったのか?」
ナツはワクワクしながら話を聞いている。ってかあんたら、腹減りじゃないのかよ。
マカロフ「当然あいつらが勝てるはずもない。2人とも瞬殺じゃよ」
グレイ「マジかよ…」
エルザ「……」
マカロフの言葉に、エルザは黙ってツバサを見る。
ナツ「なぁツバサ!帰ったら俺と戦ってくれ!」
ツバサ「面倒だ」
ナツのお願いをあっさり断った。
ナツ「頼むよ~!!」
エルザ「ツバサ…私もお願いできないだろうか」
ツバサ「お前もかよ」
ナツに続きエルザまでもが、ツバサと勝負したいと言い出した。
エルザ「マスターやラクサス達をも倒す強者だ。1度手合わせしたいと思うのは当然だ。どうかお願いしたい」
そう言いながらツバサに向けて頭を下げるエルザ。
ツバサ「……」
それを黙って見つめるツバサ。
ツバサ「…ふぅ、分かった」
エルザ「!!」
ツバサ「その勝負引き受けてやる。万全の準備をしてから挑んでこい」
エルザ「お、恩に着る!」
勝負を受けてくれると言われ、エルザは嬉しそうにお礼を言ったのだった。休憩も終わり再び歩き出す。ナツとグレイ、そして猫のハッピーだけは未だに腹の虫が鳴っていた。
ハッピー「ん?」
するとハッピーが何かに気がついたのか、崖の方に走り出す。
ハッピー「こ、これは…ナツ~!!」
するとハッピーがナツを呼ぶ。
ナツ「どしたハッピー?」
ハッピー「あれ!あれ見て!!」
ハッピーに言われ、全員が崖下を見る。そこには羽の生えた魚が優雅に泳いで…もとい飛んでいた。
「I can fly!」
「You can fly!」
「Can you fly?」
ハッピー「幻の珍味、羽根魚だ!あれメチャクチャ美味しいんだ!旨!旨!旨!旨!旨!」
グレイ「幻の珍味…」
エルザ「羽根魚…」
ナツ「旨そうだな♪」
マカロフ「でかしたハッピー。よく見つけたのぅ」
マカロフは泣きながら羽根魚を見つけたハッピーを褒めている。それと同時に、ツバサ以外の全員の腹が鳴る。
ルーシィ「皆お腹空きすぎです…」
と言うが、ルーシィのお腹も鳴る。
グレイ「お前もな」
ルーシィ「…あい///」
恥ずかしそうに顔を赤くするルーシィ。流石にツバサから貰ったパンだけでは腹は満たされなかったようだ。
ハッピー「よぉし!釣るぞぉ!!」
そしてツバサ以外の全員が釣りを始めた。
ツバサ(羽根魚か。昔食ったが、食い方をミスると凄く不味くなんだよな)
それから30分後、結局釣れたのは一匹だけだった。
ルーシィ「結構難しいのね」
エルザ「結局一匹だけか」
ツバサ(一匹は釣れたみたいだな。しゃあない、調理してやるか)
そう思ったツバサは立ち上がるが、ナツが釣った羽根魚を炎で焼いてしまった。
ツバサ(あ~あ~。羽根魚は火の通し方をミスると、凄く不味くなんのによ。色が変色してるじゃねぇか)
釣られた羽根魚を見て、ツバサは頭を抱えたのだった。
ナツ「ハッピー食えよ」
ハッピー「でもオイラ1人だけじゃ」
グレイ「そんなのちょびっとずつ分けて食ったら、余計腹減るわ!」
マカロフ「遠慮するな!食え食え!」
ハッピー「そう?じゃあいただきま~す♪」
そしてハッピーは、焼かれた羽根魚を頬張り始めた。後ろの3人は、旨そうに食べるのを泣きながら、イラつきながら見ている。エルザに限っては、見ないように崖の方を見ている。
ルーシィ「こんな魚を美味しそうに食べられるなんて、アンタ本当に幸せね」
ハッピー「……マズゥ!!!!」
ルーシィ「不味いんかい!」
ツバサ「だろうな」
ハッピーの感想に、ルーシィはツッコミをせずにはいられなかった。で、ツバサの言葉に全員が振り向く。
エルザ「ツバサは、あの羽根魚が不味い事を知っていたのか?」
ツバサ「まぁな。調理の仕方で、あの魚は旨くも不味くもなる。ただ焼けばいいって訳にはいかないんだよ」
ルーシィ「そうなんだ」
ツバサ「ああ。掴まえた時の色と焼いた時の色が違っただろ?あの時に既にあの魚は不味くなったんだよ」
エルザ「なるほど」
マカロフ「仕方ないのぅ。とにかく進むとするかの」
そしてツバサ達は再び歩き出す。
ナツ「それにしても…」
グレイ「腹減ったなぁ」
ナツとグレイだけは、他の連中と違って何も口にしていない。そしてようやく村が見えたのである。
エルザ「村だ」
グレイ「家だ」
ハッピー「だったら多分!」
ナツ「食いもんだ~!!」
ツバサ以外の連中は、村に向かって走っていった。
ツバサ「やれやれ」
ツバサも呆れながらも、ルーシィ達の後を追い掛けた。村の中に入るが、人が誰もいない。
グレイ「誰もいねぇぞ?」
ルーシィ「なんか、静かな村ねぇ」
ナツ「昼寝でもしてんじゃねぇのか?お~い!誰かいねぇか!!」
ハッピー「お腹減り減りです~!!誰か食べ物下さ~い!!」
ルーシィ「そこの腹減りネコ!露骨すぎだから」
ツバサ「……」
ナツとハッピーが大声を出すが、何処からも反応がない。
グレイ「ホントに昼寝か?」
マカロフ「さもなきゃ、村中酔っぱらって寝とるかなぁ?」
ルーシィ「それはフェアリーテイルですから」
マカロフ「ガハハ!そうとも言うのぉ♪」
ツバサ(…人の気配が全くしねぇ。本当に何処にいるんだ?)
ツバサがそんな事を考えてると、ナツとグレイが何処かに走っていった。その後をツバサ達も追い掛けていく。そして1軒の家に入ると、テーブルの上にパンとスープが置かれている。
グレイ「やっぱ誰もいねぇな」
ナツ「とにかく食い物だ!クンクン」
ナツは、テーブルに置いてあるパンの臭いを嗅ぐ。
ナツ「よし、まだ食える!いっただっきま~す!」
エルザ「待て」
パンを食べようとするナツをエルザが止める。
ナツ「なんだよ!」
エルザ「様子がおかしい」
ツバサ「そうだな。よく見てみろ、テーブルに置いてるスープから湯気が出てるだろ。今さっきまで普通に食事してたと考えるのが普通だ」
グレイ「ああ。ついさっきまで飯食ってた感じだ。この家の連中、何処に消えたんだ?」
ナツ「知るかよ!取り合えず食おうぜハッピー」
ハッピー「あい!」
ナツとハッピーは、置いてあったパンを食べようとする。
エルザ「待て!」
ナツ「は、はい!」
エルザに睨まれ、ナツはビビりながらパンを置く。
エルザ「先に村の様子を調べる必要がある。今まで我慢してたんだ。もう少し我慢…」
グ~グ~
するとエルザの腹の音が連呼して鳴る。
ルーシィ「エルザ、お腹鳴りすぎ」
マカロフ「ふむ…説得力0じゃな」
エルザ「ナツ達はキノコか何かを探してこい。村の食べ物には触るな。私とマスターとツバサは、その間に村の中を調べる!」
未だに腹の音が連呼してるが、エルザは気にせずナツ達に指示した。
ナツ「あ~あ~分かったよ。行くぞハッピー」
ハッピー「あい!」
ルーシィ「…何故キノコ」