INFINITE・ROGUE   作:鉄の字

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やべぇ、初めて四千文字超えたかも………


十話:奇襲と言う名の襲来

 

 

時はあっという間に過ぎ去り、クラス対抗戦。

初戦から一夏対鈴音である。

 

専用機持ちの二人を一目見ようとアリーナは全員満席で立って見る者もいた。

朝早くから席をとってなかったら幻徳達も立ってこの試合をみていただろう。

 

「うわぁ………流石中国の代表候補生だね………」

 

試合はやや『甲龍』を纏った鈴音が優勢である。

両肩にあるユニットから放つでんじろう先生真っ青な空気砲により一夏を牽制していた。

 

「うむ、だが、パワー型とパワー型。一撃を貰えばエネルギーは直ぐに尽きる。決着がつくのは意外と早い筈だ」

 

スクリーンにアップに映る白式を駆る一夏を見詰める幻徳。

 

あの鈴音との一件の次の日、一夏は『鈴が勝手に怒って出て行ったと思ったら、数分後に何事も無かったみたいに戻ってきて『今度のクラス対抗戦で勝った方が負けた方に何でも命令できる!』って約束してきた。何を言っているか分からねぇと思うが、俺も分からねぇ』とポルナレフ状態になっていた。

 

どうやら完全に立ち直れた様で幻徳は安心していた。

 

今回のこの戦いは鈴音にとっては特別な物なのだろう。

気合いの入れようが違う。

 

だが、一夏とて簡単にはやられない。

スクリーンにいる一夏の刀──雪片を握る手が強くなる。

 

「見ろ。一夏が動くぞ」

 

瞬間、一夏の影がぶれた。

 

この一週間でみっちり叩き込んだ瞬時加速によって一夏は瞬時に鈴音へ間合いを詰める。

振りかざした刃が呆気に取られた鈴音へと降ろされる。

 

 

 

 

 

その時、アリーナに張られたバリアを一筋のビームが突き破った。

 

 

 

 

 

その空いた穴をくぐるように謎の影がアリーナの中央へと降り立った。

遠くから見えるのは黒い何か。

 

「な、何、あれ?」

 

「行くぞ。アレは敵だ」

 

それがISと知った時、幻徳の眉間が険しく寄る。

 

「え?氷室君?」

 

「早くこのアリーナから出るぞ」

 

試合観戦していたクラスメイト達を無理矢理立たせ、アリーナから出ることを促す。

 

ISは最強の兵器だ。

この試合は兵器の影響が出ない安全が保証されているからこそ、一般人がいるのだ。

 

だが、その安全が破壊され、最強の兵器が自分達を殺そうとしていたら。

 

 

 

 

 

その先は地獄だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜♪」

 

突然、現れた未確認のISの乱入により観客が避難し、空っぽになったアリーナの席でその男は寝そべっていた。

 

全身が血のように赤く、宇宙服のような装飾がされていた。

胸には水色のコブラの装甲が付けられており、同色のバイザーもある。

 

ISとは明らかに違う謎のパワースーツを纏った男は横目で戦う一夏達を見る。

 

「ようやく『兎』が動き始めたか………」

 

上半身を起こし、手元にあるライフル銃らしき物を手に取る。

 

「さてと、じゃあ、俺も行くとするか!」

 

赤き蛇はその声に愉悦を混じえながらその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出口へ繋がる扉付近は混雑していた。

どうやら扉が閉まったままで通れないらしい。

 

(これはあのISの影響なのか?)

 

「ヒムヒム〜………大丈夫なのかなぁ………」

 

「織斑君もあのよく分からないISと戦ってるんだよね………心配だよ………」

 

「安心しろ、皆。きっと教師の人も何とかしようとしている。やがて開くだろう。一夏も鈴も助かる筈だ」

 

不安そうな目をするクラスメイト達に幻徳は変わらないトーンで話す。

いつまでも変わらないその声に皆の心は落ち着いていく。

 

だが、その安心は見事崩れ去る。

 

扉を何か強い物で叩く音が向こうから聞こえる。

それを聞いた幻徳は周りの生徒を押しのけ、扉付近にいた生徒達を扉から引きはがす。

 

やがて静かになり何も聞こえなくなるが、代わりに誰かの声が向こうから響いた。

 

『何だ。意外と硬いな』

 

そして、何かを振る音と装填する音。

 

『スチーム・ブレイク!コブラ!』

 

直後、扉が吹き飛び、腕で飛んでくる破片を防ぐ。

 

体が飛びそうになる暴風が止み、目を開けた先にいたのは赤い蛇だった。

 

 

 

 

 

「よぉ、久しぶりだな。今は氷室幻徳だったか?」

 

「お前は………蛇男」

 

 

 

 

 

 

そう、その男はかつて水槽の中にいる幻徳を面白そうに見つめていた者だ。

 

「そんなチンケな名前で呼ぶんじゃねぇよ。俺の名はブラッドスターク。よろしくな」

 

「あまり、よろしくしたくないな。貴様には聞きたい事が山程あるからな」

 

蛇男──ブラッドスタークは肩にかついだライフル銃を持ち直しながら『つれないねぇ』と口から笑いを零しながら答える。

 

「悪いがそれは出来ないな。まだまだお前には成長してもらいたいからだ。今日来たのはお前が本当にIS学園にいるかどうかの確認でな」

 

飄々とした態度でそう言うと、ビシッと幻徳を指さした。

 

「代わりと言っては何だが………久々の再会のプレゼントをくれてやるよ」

 

直後、幻徳の視界の端に何かが映る。

 

反射的に後ろへと倒れ込む。

幻徳の頭があった場所に黒い拳が風を切るように通った。

 

視線を上げると、そこにいたのはISよりもスマートなパワースーツを纏った人型が。

赤く光る双眼が幻徳を睨みつける。

 

「やれ、バイカイザー」

 

ブラッドスタークは黒いアーマーを纏った人型に短く命令を出すと、背中を向けて歩き始めた。

 

バイカイザーと呼ばれた人型はその左手に握られた紫色の拳銃の銃口幻徳へと向ける。

 

その瞬間、幻徳は頭の中で考える。

今、ここで自分が避ければ後ろにいる生徒に当たるかもしれない。

だが、避けなければ自分が死ぬ。

 

ならば──

 

幻徳は引き金を引く前に走り出し、バイカイザーの腹へとタックルした。

バランスを崩し、狙いが定まらないまま撃った拳銃の弾は天井へ当たった。

 

そのまま押し倒し、拳銃を持った手を押さえつける。

 

生徒達は拳銃の発砲により悲鳴をあげ、元来た道へ逃げ始めた。

 

「あー、そうだ。お前が持っている容器──フルボトルのキャップを合わせて振ってみろ。そうしたら面白い事が起こるぞ」

 

何かを思い出したかのように背中越しにそう言うブラッドスターク。

 

「じゃあまた会おうぜ。生きてたらな………Ciao!」

 

「待て。あの時、俺に何を──」

 

直後、バイカイザーの拳が幻徳の腹へ目掛け飛んでくる。

その衝撃に馬乗りになっていた状態から吹き飛ばされた。

 

咄嗟に腕を使ってガードしてなかったら内臓がミンチになっていただろう。

 

バイカイザーの奥にいた筈のブラッドスタークはいつの間にか消えていた。

この先はピットに出口の他にピットへと続いている。

逃げたか、それとも一夏の方へ行ったのか。

 

立ち上がるバイカイザーの右手にはいつの間にかバルブが付いた機械的な剣が握られている。

 

右手には剣、左手には拳銃。

遠近共に備え、幻徳は逃げようにも逃げられない。

 

その絶体絶命な状況の中、幻徳はポケットからあの容器を取り出した。

 

「フルボトル………か」

 

ダイヤモンドの容器──ダイヤモンドフルボトルのキャップを合わせると炭酸の抜ける音がする。

そして、勢いよく何度も振る。

キャップの先端から何かの成分が粒子となって散り、幻徳の腕にまとわりつく。

 

「これは………」

 

粒子が付いた右手を見つめる幻徳へバイカイザーは一気に間合いを詰め、剣を振り下ろして来た。

 

「………っ」

 

思わず斜めへ転がり何とか躱す。

しかし、バイカイザーの剣はそれでも止まらない。

 

横凪に切り払ったと思ったら、滑らかな動きで袈裟斬り。

そこから逆袈裟斬り、そこから突きへ。

 

絶え間ない剣の軌跡に幻徳は体を逸らし、掻い潜り、転がり、ギリギリながら躱していた。

 

しかし、それもすぐに終わる。

 

「………!」

 

背中に伝わる硬い感触。

それが壁であると分かった時、バイカイザーは剣を振り上げていた。

 

咄嗟にダイヤモンドフルボトルを持った右手を上げ、防御の構えをとる。

 

直後、ありえない音がした。

それは金属と金属がぶつかりあったような甲高い音だった。

 

何故か幻徳の右腕がバイカイザーの鋭利な剣を受け止めているのだ。

幻徳の右腕は鋼鉄の義手とかそう言う設定はない。

 

じゃあ何がこの状況を生んだのか?

 

「これが………フルボトルの能力か」

 

そう、ダイヤモンドフルボトルから出たダイヤモンドの成分により幻徳の右腕はダイヤモンドのように硬くなったのだ。

 

「これなら………」

 

バイカイザーを壁を使って押し返す。

 

よろめくバイカイザーへ三歩進み、抉り込むように拳を叩き付けた。

キュッと足を鳴らしながら軽快な足運びで左側面へと回り込み、何度も最速の拳を打つ。

 

バイカイザーは鋼鉄を超えた硬度を持つ拳を顔面に何度も受け、たたらを踏む。

そして、幻徳の猛反撃に遂に膝をつく。

 

これをチャンスと幻徳は大振りの一撃をまたも顔面へと打ち込もうとする。

 

 

 

しかし、相手はそれを待っていたのだ。

 

 

 

『エレキスチーム!』

 

 

 

突如、バイカイザーが剣に付いたバルブを回したかと思うと剣の刃に雷が宿り、幻徳へと放たれた。

 

「グ……ァ………!」

 

蒸気を纏った電気を幻徳の体を走り、意思してないのに体が震える様にビクビクと動く。

 

雷が止まる。

しかし、体が雷により硬直し動けない。

 

バイカイザーはお返しとばかりに握りしめた拳を幻徳の腹へと突き刺さった。

 

「………ッァ………!」

 

軽々と幻徳の体は吹き飛び、壁へと叩き付けられた。

壁は蜂の巣のように割れ、その威力が伺える。

 

壁から剥がれる様に崩れ落ちる幻徳。

 

地面に横になる幻徳の腹をバイカイザーは蹴りあげる。

 

「ガハッ」

 

短く息を吐き出す幻徳。

気絶したのか死んだのか、やがて動かなくなった。

 

それを確認したバイカイザーはアリーナで未だ戦っているだろう一夏の方へと歩き出した。

 

すると後頭部に何らかの衝撃が走る。

 

バイカイザーが振り返るとそこには瓦礫を持ち、左足を引きずるようにして立つ幻徳の姿が。

 

「どこに行く?お前の相手は俺じゃなかったのか?」

 

ゆっくりと歩き出す幻徳。

左脚を引きずっているため、上手く歩けていない。

体に電気をくらい、更に直接腹にパワースーツの拳がめり込んでいたのだ。

直ぐに病院に連れていかなければ命に関わる重症だ。

 

バイカイザーはもはや死にかけの幻徳へ拳を振り上げる。

そして、幻徳の顔面目掛けて放つ。

 

一撃一撃が必殺の拳が顔面を消し飛ばす──

 

「………」

 

──筈だった。

 

その拳が届く事は無かった。

幻徳は突き出した腕の肘を曲げることで、相手の拳の軌道を無理矢理変えたのだ。

 

そして、バイカイザーは気づく。

 

さっきまで脚を引きずっていた男が急に二本足でしっかりと立っている。

 

そう、左脚を引きずるのはフェイクだった。

 

理由は二つ。

相手に自分は死に体だと思わせる為。

そうすることにより相手はきっとスキの大きい一撃を放つ筈だ。

 

そして、もう一つは──

 

「フッ」

 

──半身になる事でフルボトルを持った左腕を隠す為。

 

短く息を吐き、相手の懐へ入り込む。

 

狙うは相手の右横腹。

 

手に持つのは赤いフルボトル──フェニックスフルボトル。

 

既にキャップは合わせ振っている。

握り締めた力に呼応するように幻徳の左腕に不死の炎が宿る。

 

「ッッッァア!」

 

最速にて最短に鋭い一撃を。

灼熱のボディブローがバイカイザーの横腹を入った。

 

バイカイザーの鉄でできた横腹を溶かさんとばかりに炎が燃え上がる。

黒いボディは赤化し、ズブズブと幻徳の拳がめり込んでいく。

 

苦しむ様にバイカイザーの瞳は点滅し、爛々と光っていた赤い眼は沈黙するように消えた。

幻徳が拳を抜くとバイカイザーは膝から落ちる事もなく、全身から地面に伏せた。

 

「何だ……ロボットだったのか………」

 

体の断面からは何かの機械や配線が覗いている。

今まで人間かと思っていた幻徳は拍子抜けしていた。

 

「………ハァ………ハァ………」

 

幻徳は急に怠惰感が体を襲い、膝を付いた。

体は既にボロボロだ。

息をするのも辛い。

 

「…………」

 

だが、幻徳はバイカイザーが持っていた拳銃と剣を拾うと一夏達が戦っているだろう場所へ歩き始めた。

 

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