さぁ、おジャ〇女ゲイツを踊るぞ幻徳!
幻徳「文でどう表す気だ?」
……………………というわけでありがとうございます!
「一夏っ!離れて!」
「おう!」
何度目かになる攻撃。
しかし、敵は全てありえない体勢で避け、その長い腕を振り回しながら反撃して来る。
オマケにレーザーを乱発するから腹立たしい。
「鈴!エネルギーは!?」
「180ってところ!流石に厳しいわね………」
因みに一夏は鈴音よりも下回っている。
お互いエネルギーが枯渇間近となっていた。
早く、何か決定打を与えなければ。
その思いが焦りを生み出す。
「おーおー、苦戦してるようだな?なら、手伝ってやるよ」
『スチーム・ショット!コブラ!』
突如、二人の間を紫のエネルギー弾が駆け抜けた。
弾丸は高速でアリーナを走り、未確認のISへと向かう。
未確認のISは咄嗟に腕で防御するが、着弾と同時に爆発。
鈴音の衝撃砲でも破壊できなかった腕がいとも容易く破壊された。
突然の事に目を見開く二人の間を赤い影が走る。
赤い影はまるで滑るかのような動きで怯む未確認のISの肩に乗ると、頭部にライフル銃の銃口を突き付けた。
「ほらもう一発くれてやるよ!」
『スチーム・ショット!コブラ!』
至近距離からの射撃により頭部は吹き飛ばされ、未確認のISは沈黙する。
土煙が落ち着き、二人が目にしたのは血に染まった様に赤く、コブラの意匠が随所に見られる宇宙服のようなスーツを着た男──ブラッドスタークだった。
「〜〜♪お、やっぱり『兎』のISだったか」
鼻歌を歌いながら貫手で軽々と装甲に突き刺す。
まるで何かを探すように手をほじくり回している。
その様子に一夏と鈴音は警戒していた。
「新たなIS………なのか?」
「いえ、コイツ、ISの反応が無いわ。ISとは別のパワースーツ………それもISを破壊する程の………!」
慄く二人にブラッドスタークは顔を向ける。
二人は反射的に武器を構えた。
「ん?あぁ、このコアか?欲しければくれてやるよ。特に興味は無い」
ブラッドスタークは未確認のISから取った結晶を地面に投げ捨てる。
頭を掻く動作をすると一夏を指差した。
「だが、織斑一夏、お前のその刀にはちょっと興味があってな。少しばかしその刀を貸してくれねぇかな?」
飄々と喋るブラッドスタークの言葉に一夏は頭に血が上る感覚がした。
「そんなの渡せるわけねぇだろ!これは………雪片は、千冬姉の名なんだよ!」
かつて姉である千冬が使っていた刀の後継でもある雪片弍型。
それは姉の魂を受け継いだことになる。
決して易々と渡していい物ではないのだ。
一夏はスラスターを吹かせ鈴音の静止を振り切って突撃する。
ISの速度を見切ったブラッドスタークは雪片の一撃を頭を傾けることで躱し、一夏の腹へライフル銃の銃床で叩く。
「ガッ!?」
「そらよっ!」
体をくの字に曲げた一夏の後頭部を鷲掴みにし地面へと押し付けた。
「一夏!!」
「ハハハ、気の強いガキは好きだぜ?そっちの方が甚振りがいがあるからな!」
「させるか」
小さな声と共に一夏へライフル銃を向けていたブラッドスタークの後頭部から火花が散った。
「幻徳!?」
そこに立っていたのは先程バイカイザーを倒した幻徳だった。
だが、その姿はあまりにも痛々しい。
随所からは血を流し呼吸も安定してない。
それでも怪我など関係なしにバイカイザーから奪った拳銃をブラッドスタークに向けていた。
「グッ………!ハハハ!躊躇ないねぇ!流石に童貞は捨ててるってか!?」
蛇のように地面を滑らかに動き放たれた足払いを小さく跳ぶようにして避け、ブラッドスタークの顔面へと逆手に持った剣で突き刺そうとする。
ブラッドスタークはライフル銃を眼目へと構え、ライフル銃の銃身で幻徳の手首を抑えるようにして止める。
その瞬間、幻徳は片手に持った拳銃の銃口ををブラッドスタークの横腹に付けると躊躇いなく弾丸を放った。
「うぉっ!?」
着弾した箇所から火花を散らし、ブラッドスタークはよろめいた。
「ったく、これトランスチームシステムでも痛てぇ物は痛てぇんだぞ!」
またも蛇のように地面を滑りながら幻徳へ奇襲をかける。
幻徳は再度突き刺そうとするが、それよりも速くブラッドスタークのライフル銃が火を噴き、幻徳の剣が弾き飛ばされた。
「………ッ」
幻徳はライフル銃からの射線を避けるために、横に転がる。
受け身を取りながら幻徳はダイアモンドフルボトルを手に取ると、キャップを合わせ振る。
ダイアモンドの成分を手に纏わせると、連発して来るブラッドスタークの弾丸を硬くなった腕で防御しながら走った。
そして、ライフル銃を払い、ブラッドスタークの顔面へと拳を叩き込んだ。
「シッ」
「グォッ!?」
体を仰け反らせたたらを踏むブラッドスターク。
「ふふふ………ハハハ………ハハハハハハ!!!!」
殴られた箇所を手で触ったかと思うと、狂ったかのように笑い始めた。
そして、大きく両手で広げ歓喜の声を上げる。
「ハザードレベル3.0!バイカイザーとの戦いで覚醒したか!!」
「……………」
「ハハハハハハ………!ハァー………何も無かったら雪片を貰おうかと思っていたが、どうやらわざわざ来た甲斐があったみてぇだな。じゃあ、今日はここら辺で引き上げさせてもらおうか………Ciao!」
ひとしきり笑い終えたブラッドスタークは手をプラプラさせる。
ブラッドスタークにある一本角のような筒から黒煙を吐き出す。
「待て。俺の質問に………消えた、か………」
黒煙がおさまるとそこには誰もいなかった。
一瞬の静寂が過ぎるが、幻徳は糸が切れた人魚のように倒れた。
「お?」
「「幻徳!?」」
自分を呼ぶ声にエコーがかかり、視界がブレる。
自然と瞼は閉じていき、完全に閉じた瞬間、幻徳の意識は無くなった。
☆
「紙と石膏ボードの天井だ」
「そんな『知らない天井だ』みたいな感じに言われても体は治らないわよ」
どうやら丸一日寝ていたらしい。
体は全身打撲などで済んでいた。
それでも驚異的な回復力だと保健室の先生は言っていた。
今は起きてから初めて包帯を変えている。
保健室の先生のなされるがままに体を動かされながらブラッドスタークの行動を思い出していた。
(ブラッドスタークは何故、俺にフルボトルの使い方を教えてきた?)
自分を殺したいならとっくに殺しているだろう。
奴にはそれ程の実力がある。
それで自分にアドバイスを送るのは決して余裕があるとかではない筈だ。
何か目的があるからである。
『まだまだお前には成長してもらいたいからな』
(俺に何をさせるつもりなんだ?)
思考が終わった所でベッドに仰向けに転がされる。
そして、また新たな思考の海へと潜っていく。
(トイレに行きたい)
実は幻徳は一夏と鈴音の試合の時、大量買いしたドクターペッパーを消費する為に飲んでいたのだ。
それも多量に。
そのツケが回ったのか扉が開かなかった時は尿意を感じており割とヤバかった。
それから戦闘に入ったので気が紛れていたが、今になって緊張の糸が切れて本格的にヤバくなっていた。
(マズい。このままでは漏らす。だが、体は動かないからトイレには行けない。しかし、先生に言うと尿瓶でする羽目になるかもしれん。十五の男子が女医にムスコを晒すのはキツいが、それはそれでいい経験に………いかん、思考がおかしくなってる)
段々と危ない方向へと向かう思考。
そこへ仕切られたカーテンが開かれた。
「氷室、邪魔するぞ」
「邪魔するなら帰ってもらえますか?」
「断る」
「いともたやすく行われるテンプレ破壊行為」
黒いスーツを身に包んだ千冬だった。
医務室にあったパイプ椅子を広げ、幻徳のベッドの近くに座った。
「先ずはクラス代表対抗戦はアリーナの破壊により中止になった。まぁ、これは当然だろうな。次に織斑と凰は特に怪我らしい怪我は無い」
「それは良かったです」
「ではこれからはお前に関してこちらから聞いていくぞ。お前と対峙した敵の拳銃と剣だがこちらで預かる。そして──」
スーツのポケットから何か取り出した。
「──これもだな」
机に出されたのはフルボトルとあのベルトのバックルだった。
「やはりですか」
「当たり前だ。学生が持つ物にしては未確定要素が多すぎる。これが安全かどうか確かめるまではな」
ISはISのルールがある。
犯せば罰することはできるだろう。
しかし、フルボトルは未知の力である。
何者かの手に渡り犯罪を起こされたら誰にも罰せない。
「まぁ、妥当かと」
「じゃあ次だ。あのブラッドスタークと名乗る男だが、どうやらお前と面識があるみたいだが、どういう事だ?記憶は無かったんじゃなかったのか?」
千冬の鋭い視線を受け、幻徳は心臓を掴まれる感覚がした。
「実は記憶はありました。でもそれは途切れ途切れで、俺は何かをされました」
「何か、だと?」
「何かは分かりません。水槽のようなケースに入れられ、何かを注入されました。そして、そこにいたのがあのブラッドスタークと名乗る男でした」
「つまり、お前は何かしらの人体実験をされていたと?」
「はい。俺は命懸けで逃げ出しました。そこからは育て親に旅しながら育てられました」
「そうか………何故それを言わなかった」
そう言う千冬はどこか悲しそうな瞳をしていた。
「………これは世界の裏の話です。もしもの場合、ここを巻き込まない為で──」
気づけば幻徳は千冬に頭を撫でられていた。
前にもこんな状態あったな、と幻徳は思った。
「十五歳のガキが一丁前に抜かすな。私の役目はお前達を一人前にする事だ。だが、半人前の間は背負えない責任を負おうとするな。前にも言っただろう?」
「………はい。申し訳ございません」
「まぁ、何にしてもお前が無事で良かった」
頭を下げる幻徳とそう笑う千冬だった。
この後、一夏や箒、鈴音、布仏、更にはクラスメイト全員が押しかけ千冬の出席簿で全員地面に叩きつけられたのはシュールな光景だった、