INFINITE・ROGUE   作:鉄の字

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投稿遅れて申し訳ございません!


十三話:一夏と言う生贄

 

「何故こうなった!?」

 

そんな箒の悲鳴に近い声が屋上に響いた。

時刻は昼過ぎ。

学生は昼休憩の時間である。

 

話題の転校生であるシャルルを狙った追っかけは食堂に向かっただろうが、今日は屋上で昼食である。

 

あのラウラとの会話の後、もう一度ラウラと話しようと幻徳は昼休憩にラウラの席に行ったが、そこにラウラはいなかった。

 

どうしたものかと思った矢先、一夏が『屋上で飯を食おうぜー』と誘ってきた。

 

隣に絶望の表情を浮べている箒を連れて。

 

最初は断ろうかと思ったが一夏は次々とセシリア、シャルル、鈴音を呼ぶので、仕方無しに応じる事にした。

決して、面白そうだからとかそんなのではない。

 

「何故って、今日は天気がいいから外で食おうって言ったの箒だろ?」

 

相変わらずの唐変木な一夏に箒はガクッと項垂れた。

 

「あはは……ねぇ、氷室君。僕達、ここにいていいのかな?」

 

「面白ければ万事良し」

 

「氷室君ってやっぱりお茶目だよね」

 

焼きそばパンを頬張る幻徳にシャルルは苦笑いを浮かべるだけだった。

 

その後は箒がアーンしたり、鈴音がアーンしたり、イチャコラしている一夏だが、そんな空間を吹き飛ばす出来事が起こる。

 

「実はこのセシリア・オルコット!サンドイッチを手作りしてきましたの!」

 

突如立ち上がったセシリアが胸を張り、背中に隠したバスケットを取り出した。

かけられた布をとると綺麗に並んだサンドイッチが。

 

「お、美味そうだな」

 

「えぇ!えぇ!どうぞ、手に取ってください!」

 

一夏の言葉に嬉しそうに興奮気味になるセシリア。

一夏がサンドイッチを手に取るとセシリアは幻徳にもバスケットを向けてきた。

 

「幻徳さんもよろしければどうぞ」

 

「ふむ、では頂こうか」

 

一夏と幻徳は妙に具が赤いサンドイッチを一口齧る。

 

「ふむ、ソースの丁度良い辛味が………辛味が………辛味…………」

 

おかしい。

 

辛味が止まらない。

 

噛めば噛むほど、いや、噛まなくても溶岩のように溢れ出る。

 

吐き出すのはあまりにも無礼。

幻徳は口をダムのように固く閉ざし決して開かないようにしていた。

 

「ポワァァァッ!?」

 

隣の一夏が奇妙な声を上げながら背筋が一直線に張った。

 

その瞬間、サンドイッチに込められた謎の力により幻徳と一夏の目の前の光景が変わる。

 

 

 

 

辺り一面真っ赤の火山地帯。

己の足下からポコポコと溶岩が滲み出て、追い詰めていく。

 

もう、ダメだ。

生きるのを諦めた二人を更に絶望へ落としていく。

 

二人の目の前にあらゆるものを燃やし尽くす灼熱の火柱が地面より噴いたのだ。

 

その火柱は八つに分かれ、まるで生きているかのように動く。

先には龍のような頭があり、全てがこちらを向いている。

 

膝をつく二人へマグマで作られたヤマタノオロチは襲いかかり──

 

 

 

 

「「…………ッッッ」」

 

意識は現実へと戻された。

 

「戻ったのか?」

 

「ご、極熱筋肉………?」

 

あまり表情が変わらない幻徳に対して一夏は意味不明な言葉を呟いていた。

そして、一夏は幻徳の肩を組んでセシリアに背中を見せ、小さな声でこの現状の打破を相談していた。

 

「なぁ、幻徳………これ、失敗してるって言った方がいいんじゃないのか?」

 

「いや、アレは何の原因でこうなっているのか言わないと意味が無い。それにあのような期待の眼差しをしてるんだぞ?食うしかないだろ」

 

「そうだけどよ………」

 

「大丈夫だ。いざとなればプランBだ」

 

「確実に無いよな、プランB!?」

 

突っ込む一夏を他所にセシリアはモジモジとしながら一夏の顔をチラチラと覗くように見る。

 

「このサンドイッチは殿方が好まれるように濃い味付けにしましたの………い、一夏さん………あ!勿論、幻徳さんも遠慮せずに食べて下さい………」

 

乙女なセシリアが料理(火山)を勧めた瞬間、幻徳は即座にプランBを発動。

 

幻徳のプランB。

 

それは──

 

 

 

 

「しかし、セシリアは凄いな。“一夏の為に”こんなに美味い飯を作ってくるからな。これだと俺がこれ以上食べるのは無粋だな」

 

 

 

 

──生贄(一夏)を捧げる事である。

 

 

 

 

「げ、幻徳んんんんんん!?!?」

 

「おお、どうした、一夏。俺に掴みかかってきて。そんなに嬉しいのか?セシリアの料理は嬉しいのか?」

 

血走った目で幻徳へ掴みかかる一夏。

人間、理不尽に死にたくはない。

それは必死になるものだ。

 

「い、一夏さん………幻徳さんはあのように言ってますので…………どうか全部、食べて下さいまし!」

 

「なっ………!」

 

幻徳の思惑通り、セシリアは一夏の前へバスケットを置いた。

 

目の前には期待の眼差しを送るセシリア。

 

その後ろにはあちゃー、と感じで額に手を当てて空を仰ぐ箒、鈴音、シャルル。

 

更に後ろではサングラスをかけながら『I'm perfect human』と低い声でいいながら踊る幻徳が。

 

これは援軍も期待できない、引けない状況となった。

幻徳は後でぶっ飛ばす。

 

男、一夏、これより修羅とならん。

両手にパンに挟まれた溶岩を持ち、口の中へ全部詰め込んでいく。

 

口一杯に頬張り、咀嚼する。

だが咀嚼する度に肉が焼ける音がしており、一夏の唇の間から煙が出ている。

明らかにサンドイッチを食べて起こる現象ではない。

 

ゴクリ、と喉が動き、口の中のサンドイッチ(マグマ)を飲み込んだ。

 

全員が息を飲んで見守る中、一夏はまるで神に祈る様に手を合わせ──

 

「ぐふっ」

 

──ぶっ倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」

 

まるでどこかのブラックサンになりそうな一夏は胸倉を掴みながら前後へ振りまくっていた。

 

顔を真っ赤にして倒れた一夏を『セシリア、どうやら一夏はあまりの美味さに『今までのサンドイッチなど豚の餌ぁぁぁああああ!!!!』って感じに昇天したみたいだ。すまないが介抱してくる。また一夏に作ってやってくれ』と言って肩に担ぎ、屋上を後にした。

 

緑茶を流し込み数度ビンタすると一夏は起き上がったが状況を理解した瞬間に襲いかかってきて、ブラックサンに至る。

 

「落ち着け、謝罪と言っては何だが、一夏、そろそろアレをやろうと思う」

 

『アレ』と言う言葉を聞き、一夏は手の力を緩める。

 

「アレってまさか、アレか!?手に入ったのか!?」

 

「あぁ、用務員さんに融通してもらってな。お前も大分溜まってるだろ?」

 

「当たり前だろ!周りに女子しかいないこの環境じゃ気軽にできないからな!」

 

盛り上がる一夏。

そんな男子達を遠くで聞き耳を立てる者が数名。

 

「ねぇ、男子が女子の視線を気にする事って………そう言うことよね?」

 

「そう言う事だよな………?」

 

「そう言う事ですわよね………?」

 

「えーと、皆、聞き耳は良くないと思うけど………」

 

瞳のハイライトを無くした乙女の後ろで頬をポリポリと掻きながら呟くシャルルに乙女達は一斉に振り返る。

 

「こ、これは同門の腐った精神を鍛え直す為だ!」

 

「わ、私だって幼馴染としてよ!」

 

「私は同じクラスメイトとして!」

 

「い、一夏って愛されてるんだよね………?」

 

何やら妄想が至る所で空中乱舞している乙女達は拳を握るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽が沈みかける夕方。

クラブ活動が終わり、寮へと帰る生徒がちらほら見かける中、幻徳が暮らしているプレハブ小屋の近くにブルーシートで四方に幕が張られていた。

 

お湯が入ったドラム缶があり、その中には一夏が蕩けそうな笑みで入っていた。

その側ではドラム缶の下にある焚き火の様子を見ている幻徳がいる。

 

「あ゛ぁぁぁ〜〜〜………いい湯だぁ〜〜………」

 

「湯加減はどうだ?」

 

「いい感じだぜぇ〜〜………」

 

ふにゃふにゃになっている一夏。

ここにセシリアのあのサンドイッチを入れたらどうなるんだろう、と遊び心が疼く幻徳だったが、流石にこれ以上は一夏がもたないので断念する。

 

先程の話はこのドラム缶風呂のことである。

前に一夏が風呂に入れないことが苦痛に感じている話をしていた。

そこで、幻徳は用務員のおじさんがドラム缶を運んでいた事を思い出し、何とか手に入れてみようという事になった。

 

そして、用務員さんの仕事を少し手伝うことでドラム缶が手に入り、今に至る。

 

「よし、そろそろ交代するか」

 

「いいから早く出ろ。後がつっかえている」

 

「後ってお前だけだろ………」

 

呆れながら一夏はドラム缶の中で腰にタオルを巻く。

 

「しかし、懐かしいな………旅に出てた時はドラム缶があれば仲良くなった人達と交代で入ってたな………」

 

「…………」

 

一夏は一瞬だけ黙る。

表情は変わらずとも穏やかに話すこの男に何故あのような冷静に人を撃つ事が出来るのか。

 

付き合いが浅いが、この男が合理的でありながら現実的な男であることは分かっている。

それでも人を躊躇いなく撃つことは異常である。

 

この男の瞳に映った物を知りたい。

そんな欲が湧いてきた。

 

「なぁ、幻徳………」

 

そこで、張っていた幕が真っ二つに引き裂かれた。

 

「一夏ぁぁぁああああ!!!!その腐った根性を叩き直してやる!!」

 

「大人しく成敗されなさい!!!」

 

「一夏さん!男同士でそんな事やあんな事してはダメですわ!!!」

 

幕を切ったであろう竹刀を持った箒と甲龍を部分展開した鈴音、同じくブルー・ティアーズを部分展開したセシリアが突撃してきた。

やや一名、勘違いしているようだが。

 

「…………へ?」

 

間抜けな声を上げる一夏はドラム缶にかけられた脚立に足を乗せる為に足を上げている。

女子達の視線は男の逞しい足から段々とタオルに隠された付け根へ。

 

一瞬、時が止まる。

そして、空にカラスが鳴く。

 

「「「キャァァァァアアアアア!!!?!?!」」」

 

「ギャァァアアアアア!!?!?!」

 

「ふむ、言うなれば『爆発オチなんてサイテー』か」

 

三人の女子と一人の男子の悲鳴がIS学園中に轟き、その周囲がビームや衝撃砲による爆発で満たされた。

 

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