INFINITE・ROGUE   作:鉄の字

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うわぁ、シリアスゥ………


十四話:『進む』と言う『決別』

一夏は六月の最終週にある学年別トーナメントの練習へと向かっていた。

何故か学年別トーナメントに優勝すれば一夏と付き合える、と言う噂話が飛び交っているが、ぶっちゃけ伝言ゲームの悪い結果みたいな感じに真実が湾曲しているのだろう。

 

今日は千冬に呼ばれ、放課後、ISの整備室へと向かっている。

いくつもある整備室に事前に言われた部屋に入ると様々なデータを管理していた千冬が振り返った。

 

「来たか。前にお前が持っていたベルトとロボットから奪った武器の解析が終わった」

 

幻徳が椅子に座ると同時に幾つかのホログラムを投影する。

それにはバイカイザーから奪った紫色の拳銃とバブルが付いた剣が映されていた。

 

「解析した結果、銃はエネルギー状の弾丸を撃つ。剣は蒸気、それも氷や雷を纏った蒸気を発生させる。そして、これらは連結可能でライフルにもなるらしい」

 

確かにブラッドスタークもそう言う使い方をしていたな、と幻徳は思い出していた。

次にベルトとフルボトルを置いた。

 

「そして、このベルトにはこのボトルの中の成分を増幅させる力を持っている。これらが共通して持っているのはボトルの力を抽出する事だ」

 

『まぁ、分かったのはそれだけだがな』と千冬は付け加える。

 

「明らかにISとは違う兵器だ。そして、それをあのブラッドスタークなる者とそれが連れてきたロボットが使っている。まさか裏でこんなのが蔓延っているとはな………ほれ」

 

千冬はベルトとフルボトル、拳銃、剣を掴むと幻徳へと投げ渡した。

 

「いいのですか?」

 

「使えん物はしょうがない。起動しようとベルトを付けた山田先生はそこで伸びている」

 

どうやら山田先生は実験台になったのだろう。

何という鬼だろうか。

まぁ、鬼教官だが。

 

「それでお前とボーデヴィッヒの関係の事だが………」

 

次に千冬は鞄から何枚もの資料を取り出し、机の上に広げる。

 

その資料に載っていたのは一人の幼い少年。

幼い上に髪型も違うが、間違いなく自分だ。

 

「カイ・モルゲンシュテルン。元はボーデヴィッヒと同じ部隊の所属だ。射撃、格闘、座学、全てにおいて素晴らしい成績を残しているが、自由なところがあり上官には気に入られてなかったらしい。十歳になった次の日に別の部隊へ配属。そして、交通事故により他界した事になっている」

 

千冬から語られたのはラウラが自分を『カイ』と呼ぶ少年の経歴だった。

資料には拳銃を構え発砲している姿や仲間と語っている姿の写真が挟まれている。

 

「ボーデヴィッヒと共にいた部隊では特にボーデヴィッヒと仲が良かったらしい。常に一緒に歩いていて、まるで兄妹のようだったみたいだ」

 

写真の中にはラウラと共に写るカイが。

笑顔のカイと恥ずかしそうにしているラウラ。

 

この笑顔の少年が自分。

全く、思い出せない上に気味が悪い。

 

「どうだ?思い出したか?」

 

「いえ、何も………だけど前にボーデヴィッヒさんと話した時、『カイ』の時の記憶を見ました。俺がカイと言うのは間違いないでしょう」

 

あの時、ラウラとの校舎裏で見た記憶。

アレはカイとラウラの思い出の一つなのだろう。

 

「問題は何故交通事故で死んだ筈のお前が生きているのか。そして、お前が死んだとされた後に何をされたのか、だな」

 

「おそらくブラッドスタークが知っているかと思いますが………奴がどこにいるか」

 

「だからそれを返した。ISは許可無しでは動かしてはいけないルールになっている。だが、それにはルールが無い。もし、ブラッドスタークが奇襲をかけてきても何とかできるだろう」

 

法の抜け道を抜けてるようで抜けてないグレーゾーンだが、専用機を持っていない幻徳としてはフルボトルと拳銃、剣があれば何とかなるだろう、と考えていた。

 

「成程。最近、フィジットキューブに飽きてきましたから」

 

「お前にとって、それはストレス発散の道具なのか………?」

 

呆れる千冬を他所に触らなかった分を取り戻すかのようにフルボトルを振りまくっていた。

 

その時、一人の生徒がドアを勢いよく開け、大慌てで入って来た。

 

「織斑先生!アリーナで前に転校してきたドイツ代表候補生が暴れています!」

 

その言葉に脳裏にラウラの顔を思い浮かべ、気づいたら幻徳は整備室を飛び出し、走っていた。

 

自分はカイ・モルゲンシュテルンだった。

おそらく、これからそう名乗るべきなのだろう。

 

だが、それでも──

 

『氷室幻徳って名前はどうだ!いい感じだろ?』

 

「──そう簡単には捨てられないな」

 

幻徳はボソリと呟き、走る脚を更に速く動かした。

 

 

 

 

 

「む、どのアリーナか聞きそびれたな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は第三アリーナ。

 

「クソッ!!」

 

一夏は今、窮地に陥っていた。

目の前にはISを纏ったラウラ。

その手から伸びるワイヤーブレードには鈴音とセシリアが捕まり、ラウラにより負わされたダメージでぐったりとしている。

 

「やはり敵ではないな。この私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では貴様も有象無象の一つでしかない」

 

ラウラが駆るシュヴァルツェア・レーゲンは鈴音とセシリアを蹂躙した後、激昴し突撃した一夏を捕らえていた。

 

一夏は必死に動こうとするがまるで岩の中に閉じ込められたかのように動けないのだ。

足掻くうちにエネルギー刃は小さくなり、無駄に白式のエネルギーを削っていく。

 

その様子を赤い瞳でラウラは睨む。

 

 

 

これが尊敬する教官の弟。

あの方の名誉を損なわせた面汚し。

情けないまでに愚直な男だ。

 

同じ男でもアイツは違った。

 

アイツは………カイは私の──

 

私だけの──

 

 

 

気づけば僅かに視線が下がっていた。

視線と肩の大型カノンを一夏へと向ける。

 

「消えろ」

 

冷酷に告げる。

 

 

 

 

『ライフルモード!ファンキー!』

 

「一夏、死にたくなければ下がれ」

 

 

 

 

淡々と聞こえる男の声。

それと共にラウラの背中に数発のエネルギー弾が当たる。

 

「げ、幻徳!?」

 

その場にいる全員が声のした方へ向くと銃と剣を合体させライフルにした幻徳が構えていた。

 

「ッッ!?カイ!?」

 

背中に感じる痛みと現れた人物に動揺するラウラ。

解除され、一夏は瞬時に鈴音とセシリアを担ぎ離脱する。

 

「俺はカイだった。だが、今は氷室幻徳だ」

 

「っ………」

 

はっきりと告げられた言葉。

その言葉はカイを捨て、幻徳として生きる事を表している。

 

カイ()と君は大事な関係だったのだろう。だが、君が誰かに暴力を振るうのなら幻徳()は構わず君を攻撃する」

 

そして、それは歩みを止めない事を表していた。

 

「そして、必要とあらば殺す」

 

瞬間、その場の空気が凍る。

 

 

 

『流石に童貞は捨ててるってか!?』

 

 

 

一夏の脳裏でいつかブラッドスタークが言った言葉が今になって蘇った。

 

『童貞』

 

その言葉はブラッドスタークのジョークか何かだと思っていたが、一夏はやっと全て理解した。

 

この(幻徳)、人を殺してる。

 

だからセシリアを何の躊躇いなく撃った。

躊躇いないからバイカイザーを破壊した。

人間だろうブラッドスタークを撃つのも躊躇いない。

 

人を殺してるからだ。

 

「幻徳………お前………」

 

これがあの男(氷室幻徳)なのだ。

 

「退け、カイ!お前を………傷つけなくない………!」

 

怯えていると言うよりもまるで何かに祈るようだった。

千冬が言ったようにまるで兄妹みたいだと言われてた二人。

その幼馴染をラウラは撃ちたくなかった。

 

 

 

そんな何も映ってない瞳で私を見ないでくれ。

銃口を向けないでくれ。

お前は私にとって大切な存在なんだ。

だから──

 

 

 

だが、幻徳は違った。

 

 

 

「…………」

 

『フルボトル!』

 

 

 

何も言わずフェニックスフルボトルをセット。

燃え盛る炎が銃口へと収束されていく。

 

「嫌だ………嫌だ………カイ………やめろ………!」

 

「…………」

 

頭を振り大型カノンを向けるだけのラウラと何も言わず無表情で引き金に指をかける幻徳。

あと数ミリ、引き金を引けば灼熱の弾丸が発射される時だった。

 

ラウラと幻徳の間に成人男性よりも長いIS用のブレードが突き刺さった。

 

「やめんか、若造共が」

 

「千冬姉っ!?」

 

そこに現れたのは後頭部を掻きながら鬱陶しそうにしている千冬だった。

恐らくISの補助も無くIS用のブレードを投げたのだろう。

本当に人間なのだろうか?

 

「模擬戦をやるのは構わんが、アリーナのバリアーの破壊、デッドラインを超えかねない操縦者の負傷、生身の人間にIS兵器を向ける、などがあると流石に教師として黙認はできないな。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」

 

「……………」

 

「いいな、ラウラ?」

 

「………分かり、ました………」

 

ラウラはISを解除し、ピットへと歩き出した。

幻徳の横を通る時、ラウラは歩みを止める。

 

「早く行け。それともまだ俺をカイと呼ぶか?」

 

その反応は違っていた。

歯を食いしばり、辛そうな表情で背の高い幻徳を見上げていたのだ。

 

「………お前は………私のヒーローだったのに………!」

 

その一言だけ言うとラウラは去っていく。

だが、その一言に幻徳の目は僅かに揺れた。

 

「俺が………ヒーロー………だと?」

 

 

 

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