INFINITE・ROGUE   作:鉄の字

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本当にありがとうございます!

折角ここまで沢山の方に読んで頂いたので、何か還元できないかと考えまして、『質問コーナー』なるものを設けたいと思います!
詳しくは活動報告をご覧下さい!


十五話:『悪』になると言う意味

 

ラウラの襲撃があった日の夜。

自販機に飲み物を買いに行っている一夏はある事を考えていた。

 

シャルルのことだった。

 

彼──否、彼女が性別を偽り、自分と幻徳を狙ったスパイだと言うことを。

 

それはとある日のシャルル達との練習後の事。

ラウラが突っかかって来て心身共に疲れきった体に鞭を打ち、白式の正式な登録に関する書類を書き終わり白式の登録者となった時だった。

部屋に帰るとシャルルがシャワーを浴びており、そこで一夏はボディーソープが切れていたのを思い出した。

 

シャルルに届けようとボディーソープを手に脱衣場に入った時だった。

 

同じくシャワーが終わり浴室から出てきたシャルルは女子だったのだ。

 

事情を聞くとぽつりぽつりとシャルルは話してくれた。

 

彼女の実家の会社でもあるデュノア社が経営難に陥っていた。

そこで父である社長は妾の子であるシャルルを男装させ注目を浴びる為の広告塔と、世界で初めての男性操縦者である二人──一夏と幻徳、そして、一夏の白式のデータを取る為にIS学園へと送り込んだのだ。

 

一夏はそれを聞いた時、自身の姉を思い出していた。

 

そして、何もかも諦めたシャルルとその原因となる者、何も出来ない自分に腹を立てていた。

そこで、覚えたてのIS学園の特記事項である『どこの国にも属さない。そして、外的介入は許可されない』を思い出し、シャルルの三年間の安全は確保された。

 

その三年間、シャルルの事を考えていく事で一段落したのだが、また問題が起こっていた。

 

(幻徳はシャルルが自分の事を狙っていた、と分かったら………殺すのか?)

 

そう、氷室幻徳だ。

あの男は敵と見なせば容赦はしない。

今日のアリーナでそれは分かった。

 

だけどシャルルは無理矢理やらされていたのだ。

もしかしたら考えてくれるかもしれない。

そう思うと心が軽くなる。

 

やっとこさ着いた休憩場所には見慣れた顔が座っていた。

だが、一夏にとっては心臓が跳ね上がる程にグッドでありバッドでもあるタイミングだった。

 

「ドクペのこの何とも言えない薬品っぽい味は癖になるな………いかん、もう一つキメるか」

 

「何やってんだよ、幻徳………」

 

「一夏か。いや、何故かこの自販機にしかドクペが売ってなくてな。偶に飲み(キメ)に来るんだ」

 

「『飲む』に物騒なルビ振るんじゃねぇよ………」

 

件の男、氷室幻徳がドクターペッパーをキメていた。

完全なるドクターペッパーの中毒者である。

 

「隣、いいか?」

 

「隣は俺のものでは無い。好きにしろ」

 

「…………」

 

「…………」

 

この男は自分から話しかけることはあまりない。

故に何か喋らない限り流れるのは長く感じる時間と沈黙だけである。

 

「げ、幻徳。もし、学園にスパイがいたらどうする?」

 

我ながらド直球過ぎるじゃねぇか、と自分で突っ込む。

 

「ん?ブラッドスタークの事か?確かにアイツが現れたタイミングはドンピシャ過ぎるな」

 

どうやら都合の良い感じに解釈してくれたみたいだ。

 

「もしスパイがいるなら即座に尋問にかけるがな。ロープの結び目をひたすら睾丸にぶつけられる007よりも酷いヤツをやる」

 

(逃げルォォ!シャルルゥゥウウ!!!!)

 

思わず心の中で舌を巻きながら絶叫する一夏。

『男塾みたいな物でも十分拷問になるか』とか呟いている幻徳の声とか聞こえないし、聞こえたくない。

 

別の話題を振ることにした。

それはドラム缶風呂の時に聞こうとした事だった。

 

「幻徳ってさ、どんな旅してきたんだ?」

 

突然の話題の転換に首を傾げる幻徳だったが、少し視線を上へ向けると淡々と語り始めた。

 

「沢山の場所や人に出会った。永遠に続く平原があれば、深い森林、灼熱の砂漠、海みたいに広い湖。現地で明るく日々を生きている人もいれば、辛くても歯を食いばって生きている人もいた。中には俺と同じように世界を旅している人もいた」

 

簡潔に話す幻徳。

その懐かしむ声に一夏は不思議と幻徳が歩いて来た場所が見えてくるようだった。

 

「だが、それと同じくらい地獄を見た」

 

その瞬間、空気が変わる。

 

「未だに内戦を行う国にも行ったことがある。そこには平和を知らず武器を持ち戦う子供もいた。親を殺され復讐に燃える青年もいた。皆が来るはずの無い平和を求めて戦っていた。崩れ、炎により燃やし尽くされ、爆発により吹き飛ぶ。人も街も何もかも。誰もが、行く先々で俺に助けを求めて伸ばしていた。だが、俺は握れなかった。助けてやれなかった。俺には人を殺し、自分が生き残る事しか出来なかった」

 

救いを求める手を握れなかった。

その思いを表すかのように幻徳の手は音が出る程に握り締められていた。

 

「だから変えると誓った。争いの絶えないこの世界を変えると」

 

「まさかお前………!」

 

「分かるだろ、一夏。俺は解決の為なら武力を行使する事を。俺はこの世界を変える為に武力を使う」

 

つまりそれは世界を敵に回し捩じ伏せることを意味している。

堪らず一夏は立ち上がった。

 

「それは一緒だ、幻徳!力で全てを押さえつけるのは今までの奴らと同じだぞ!」

 

「あぁ、そうだろうな。それでもこれしか方法が無いんだ。このどうしようもない世界ではな。上の意地とプライドのぶつかり合いで関係ない人が巻き込まれるのは、もう見たくないんだ」

 

「………っ」

 

「一夏、『誰かを護りたい』『誰かの為に戦ってみたい』という理想を追い続けるお前には分からないかもしれないな。世界を変えたい思いが」

 

膝に手をつき、ゆっくりとベンチから立ち上がった。

 

「お前に、俺の信念は打ち砕けない」

 

幻徳は歩き出す。

 

「俺を悪と言うなら悪と呼べ」

 

そして、一夏とすれ違う。

 

「武力により国を纏める事を悪と呼ぶのなら………俺は悪で構わない」

 

「…………」

 

背中を向け合う二人の間を静けさが襲う。

 

自販機の明かりが一夏の周りを照らし、プレハブ小屋へ歩く幻徳の道の先は闇のように暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、六月最終週。

遂に学年別トーナメントが開催された。

観客席には国の政府関係者や研究所の職員、企業関係者など、様々な人が埋めつくしていた。

 

その中にはポップコーン(塩味)をモッサモッサと食いながら目の前の試合を観戦していた。

 

一年の部、Aブロック一回戦一組目。

果たしてこの男は『一』に何の因縁があるのだろうか。

 

織斑一夏&シャルル・デュノアVSラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒。

 

こうも早く因縁の試合が行われていた。

 

序盤は一夏対ラウラ、シャルル対箒だったがシャルルが箒を即座に退場させ、一対二の状態へ持ち込む。

危うげな場面もちらほら見えていたが徐々に一夏達が押している。

 

「流石に二人同時だとあのチビッ子も対処できないみたいね」

 

「いえ、それだけではありませんわ。一夏さんとシャルルさんの連携があるからこそボーデヴィッヒさんを圧倒できているのですわ」

 

「…………」

 

ネクターでポップコーンを流す幻徳の隣には同じくポップコーン(キャラメル)を食べる鈴音と冷静に試合を見ているセシリアだった。

 

「どうしたのよ。アンタにしては変に静かじゃない?」

 

この二人もあの時アリーナにいた。

自分の異常な場面を見たからてっきり近づかないものかと思っていたが、いつものように挨拶され隣に座ってきた。

 

「俺が怖くないのか?簡単に殺すと言う男だぞ?」

 

幻徳の言葉に鈴音は『はぁ?』と片眉を上げる。

 

「そんなの今更でしょ?別に私達はアンタがどんな奴でも構わないわよ」

 

「だって、幻徳さんの今までの行動に嘘は無いのでしょう?」

 

『今までの行動』と言うのが何を指しているのか。

それは幻徳が人を殺そうとした事も含まれるだろう。

だが、それだけではない。

幻徳がおちゃらけて誰かに突っ込まれたり、誰かの為に真摯に向き合った事である。

 

「そう言ってもらえると、助かる」

 

最後のポップコーンを口に放り込んだ時、シャルルが瞬時加速によりラウラに詰め寄り、超至近距離からパイルバンカーを打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こんなところで負けるのか………?違う!)

 

朦朧とする意識の中、ただ一つの執念が彼女の意識をつなぎ止めていた。

 

(私は負けられない!!)

 

この左目により劣等種となった自分を部隊最強へと戻してくれたあの人。

 

強く凛々しく堂々としたあの人になりたいと思っていた。

 

だから、あの人に優しい笑み、気恥ずかしそうな表情をさせるあの男──織斑一夏。

 

認められない。

あの男を認めるわけにはいかない。

 

 

 

『願うか?汝、自らの変革を望むか?より強い力を欲するか?』

 

 

 

 

よこせ!

私の全てをくれてやる。

だから、あの男を叩き伏せる力を────

 

 

 

 

『世界が一つになって平和になればお前の綺麗な瞳を馬鹿にする奴なんていなくなるだろ?』

 

 

 

 

「……………カイ…………」

 

 

 

 

『Valkyrie Trace System────boot』

 

 

 

 

「あああああああああ!!!!」

 

 

 

 

突然、ラウラが叫んだかと思うとシュヴァルツェア・レーゲンから激しい雷撃が走る。

シャルルを吹き飛ばしたシュヴァルツェア・レーゲンはまるで粘土細工のようにぐにゃぐにゃと形を変えていく。

 

それは黒い全身装甲となったISとは違う何か。

刀を持った少女を模した鉄の像のような物が動きだし、一夏へと攻撃を始める。

 

「ちょっとあの銀髪、様子がおかしいわよ!」

 

「…………」

 

「あっ!幻徳さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、ドイツ候補生のISが別の物へと変貌し、観客が別ベクトルで騒々しくなる。

 

アラームが鳴く中で密かに口角を上げる者が一人いた。

ソフトハットを目深に被っており、人相は分からないが体付きから恐らく男だということは分かる。

 

「『Valkyrie Trace System』。まさか、あんな物を積んでいたとはな。人間って物はつくづく頭がおかしいな」

 

男は懐から何かを取り出す。

それは幻徳が持っている拳銃を黒くした様な物だった。

 

そして、ポケットから蛇のレリーフが彫られたフルボトルを振り、キャップを合わせる。

流れる動きで拳銃へと装填した。

 

『コブラ!』

 

そして、鳴り響くけたたましい待機音に周りにいた観客は一斉に男を見る。

拳銃を持った男に周りは悲鳴を上げるが男は構わず銃口を下に向け引き金を引いた。

 

「蒸血」

 

『ミストマッチ!』

 

銃口からは黒煙が舞い上がり男を包む。

 

『コ・コブラ………コブラ………ファイヤー!』

 

水色のコブラが光ったかと思うと火花が散り、辺りの黒煙が晴れる。

 

そこに立っていたのは数ヶ月前、幻徳達の前に現れたブラッドスタークだった。

楽しそうに笑いながら拳銃と剣を合体させ、ライフルにして安全装置を解除。

バルブを回転させる。

 

「さてと、ゲームメーカーとして面白い事を提供しようかね?」

 

『デビルスチーム!』

 

そして、ライフルを構え近くにいた観客へ銃口を向けた。

 

 




次回、変身。
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