INFINITE・ROGUE   作:鉄の字

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すみません!
投稿が遅れました!


二話:悪魔のサイエンティスト

 

来週から校外実習──臨海学校。

 

皆がそれぞれ海に思いを馳せながら準備に浮かれている中、幻徳は千冬に連れられ、とある場所へと足を運んでいた。

 

幻徳はチラリと近くにある窓を見る。

見渡す限りの海に刻まれた水平線。

こんなキレイな海を見たら人は泳ぎたくなるだろう。

しかし、今いる場所はそんな生易しい所ではなかった。

 

ここは陸から隔離された刑務所。

 

そこは公にも明らかになっていない孤島から作られた監獄だった。

 

何故、幻徳と千冬がそんな場所にいるのか。

それは幻徳に会いたがっている人物がいる、と言う理由だった。

 

レゾナンスの一件から数日。

 

スマッシュの事は千冬には報告したが、公に出る事は無かった。

流石にあれ程の騒ぎなのでネットの掲示板くらいだと書き込みがあったが、誰も写真を撮ってなかったのか信憑性に欠けるとして忘れられようとしていた。

 

そんなある日、放課後にマジカル☆八極拳の練習をするべく早々に教室を後にしようと思ったが千冬に呼び止められ、次の休みを空けとくように伝えられた。

 

とりあえず幻徳は制服のシャツをはだけさせ、『了解です』と書かれたシャツで返事しておいた。

無論、出席簿で叩かれた。

 

そして、現在、幻徳は刑務所の長い廊下をひたすら歩いている。

 

「会いたがっている人が囚人とは………強面を褒められているのを喜ぶべきか悲しむべきか」

 

「お前の強面で呼ばれたわけじゃないから安心しろ。そんなことよりもある意味危険かもしれんがな」

 

『そんなこと………』と何気にショックになっている幻徳を無視して千冬は話を続ける。

 

「ある日、とある人物よりお前に会いたいと言うメールが直接私のパソコンに来た。だがお前の名前ではなく、『仮面ライダーローグ』だった。つまりローグがIS学園の生徒だと知っているという事だ」

 

「周りに人がいないのを確認したつもりでしたが………」

 

「今の時代、どこに人の目があるか分からん。もし、お前がローグだとバラされた場合、様々な国からローグのデーターとお前が狙われる可能性がある。そいつとは一度会って話をしないとな」

 

「なるほど………」

 

そう話しながら歩いている内に案内してくれた職員はエレベーターへと入る。

幻徳と千冬も一緒に入り、エレベーターは地下へと下がっていく。

 

下がり始めて約数分。

あまりにも長すぎる時間に沈黙が痛かった。

 

エレベーターが開き、またしばらく歩くととある牢獄に辿り着く。

しかし、そこは牢獄にしてはシミ一つない真っ白な部屋で備え付けられた椅子、テーブルでさえも真っ白である。

 

そして、その椅子にその人物はいた。

 

「貴方は………」

 

「やぁ、レゾナンスで会った時以来だね、氷室幻徳君」

 

短い髪に糸目。

知的な雰囲気の中に底知れぬ何かを感じさせる青年。

 

「まずは自己紹介だね。僕は葛城 巧。以後お見知り置きを」

 

青年は顔の横で手をピラピラと振る。

そう、その人物はレゾナンスで幻徳と肩がぶつかったあの青年だった。

 

「アンタは一体………」

 

「まぁまぁ!積もる話は座ってやろうじゃないか。立ってたら落ち着かないだろ?」

 

幻徳の言葉を遮り、真ん中に置かれたテーブルにつくように促す青年──葛城 巧。

幻徳は隣にいる千冬と目配せして座る事にした。

 

巧は嬉しそうに頷くと端に置かれた冷蔵庫へ向かう。

 

「何か飲みたい物はあるかい?ラッシーしかないけどね!ふなっしーじゃないよ!?名犬ラッシーでもないよ!?ラッシー!ラッシーだからね!インドの飲み物、ラッシーだからね!!」

 

「織斑先生、この人大丈夫ですか?」

 

「侮るな、氷室、多分。コイツはあの天災並の頭脳の持ち主だと言われているぞ、多分。本来なら死刑を執行されてもおかしくないが、その頭脳を見込まれ技術を提供する代わりに刑期を軽くする契約を政府と交わす程だ、多分」

 

「何故語尾に多分を付けるのですか、織斑先生?」

 

つまり、死刑さえも帳消しに出来るほど、この男が持つ頭脳には利用価値があると国は見ているのだ。

 

「いやいや、僕ではISのコアを作り出すことなんてできないからね。あのコアのプロテクト、本当に固い」

 

テーブルに人数分のラッシーを置いて手をプラプラとさせながら否定する巧。

次の瞬間、糸目が少しだけ開かれる。

 

「でも、ISよりも強力な兵器は作れるよ?事実、君が証明してくれているじゃないか」

 

そう言って幻徳を指差す。

 

「トランススチームガンを始めとし、コブラフルボトル、スチームブレード。トランススチームガンの改造版であるネビュラスチームガン、そして、僕の研究の最高傑作でもあるスクラッシュドライバーとクロコダイルクラックフルボトル!全て、僕が作った物──」

 

大きく腕を広げ、自分が作り上げた作品を連ねていく。

その目には狂気と無邪気が混じっており、見る者を恐怖させる。

 

「──となっているね」

 

そういう風に見えた。

まるでスイッチを切り替えたかのようにテンションが下がった巧。

 

「ある日、ある人物が僕に会いに来てくれた。その人はあるガスを使った兵器を作って欲しいと頼んで来たんだ。それがフルボトルに使われているネビュラガスだ」

 

そう言うと懐から資料を数枚取り出す。

それには人間をスマッシュに変貌させるネビュラガスについて書かれていた。

 

「解析した結果、一個人が持っていい物ではないと判断した僕は断ったが、その瞬間、体が乗っ取られていた」

 

「乗っ取られた………?」

 

「そのままの意味さ。意識はあるのに体が勝手に動く。奴は僕の頭脳を使い、人体実験まで行ってクロコダイルクラックフルボトルやスクラッシュドライバーを完成させた。僕が自由になった時には『悪魔の科学者』と呼ばれ犯罪者としてここに投獄させられていたんだ」

 

あまりにも現実とはかけ離れた出来事を話す巧。

 

「奴、とは一体………」

 

「さぁね?ISがあるんだし、アメコミの様な設定を持ったSFチックなヴィランかもしれないし、宇宙船に乗った地球外生命体かもしれない」

 

「では、レゾナンスの時、葛城さんがあの場所にいたのは?」

 

「あー、あれは普通に脱走したんだよ。暇だったから」

 

「なっ………!」

 

あっけらかんと言う巧に千冬は驚きの声を上げる。

しかし、よくよく考えてみると幼馴染の天災もこんなノリで脱走しそうだ、と思い、頭を冷静にした。

 

「おかぜで刑期が増えたけどね。今更、百年増えたところですぐに帳消しにするけど。いやぁ、てぇん才って怖いなぁ!!」

 

「まさか、あのスマッシュは………」

 

「アレかい?アレは僕がネビュラガスを注入したんだよ。あー、安心したまえ。あの被験体は別の刑務所を脱獄した凶悪犯だ」

 

「だとしても関係ない人を巻き込むのはどうかと思いますが?」

 

幻徳の非難の声も巧は『ハハハ、確かにそうだね』と軽く受け流した。

その様子に幻徳は片眉を上げ、巧はテーブルに肘をついて手を組む。

 

「さて、じゃあ、本題に入ろうじゃないか。僕が何故、氷室幻徳君を呼んだのか?」

 

そう言うと巧は人差し指と中指を立てる。

 

「理由は二つ。君がそのスクラッシュドライバーを使うに値する人格を持っているかどうかだね。その点に関しては合格かな。レゾナンスの一件では強面のくせに見事スマッシュを倒した。そして、スクラッシュドライバーの制作に関しては僕に対してその強面とは似合わぬ哀れみを持ち、僕がレゾナンスで行った事に強面な君は僕を諭そうとしていたね。それならばスクラッシュドライバーを悪用しないだろう」

 

どうやらレゾナンスの一件やさっきの会話は試されていたらしい。

だが、ひたすらに強面と言うのは何故だろうか。

 

「そして、もう一つの理由。それは君のISを僕に作らせて欲しいんだ」

 

軽く言う巧に千冬は直ぐに反対の声を出す。

 

「貴方のような犯罪者が作ったISを生徒に使わせるわけにはいきません」

 

「おや?しかし、政府には氷室幻徳に専用機を渡すように迫られているんだろ?そりゃあ、そうだね。IS学園は二度も敵の襲撃を許し、氷室君は重症を追っているんだもんね。貴重なサンプルである二人のうちの一人。幾ら、国に属しないIS学園でも政府からの注意は受ける筈だ」

 

その言葉に千冬は苦虫を噛み潰したような顔になる。

自分、更に生徒にその話は聞かされてなかったが、よくよく考えれば当然の話だろう。

 

「遅かれ早かれ、彼に専用機を渡すのであれば僕の作ったISでも問題あるまい。それに、君達には拒否権は無いはずだよ?」

 

「脅しですか?」

 

「いや、お互いの状況を言っただけさ。」

 

片や切れ長の瞳を更に尖らせ睨みつける世界最強と片や狂気と無邪気さを混ぜた笑みを浮かべる悪魔の科学者。

 

そして、幻徳はここで『どシリアス』と書かれたシャツを出すかどうか迷っていた。

 

時間にして約数分お互いの視線を交差させていた二人だったが、千冬が溜息を吐いて逸らした事で終わりを告げる。

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「ああ、信じたまえ。前に余興でISを組み立てて、それでホットケーキを作った」

 

その瞬間、幻徳と千冬は不安そうな視線を巧に向ける。

 

「余興だと言っただろう?人様に送る物をそんな雑にしないさ。これでもてぇん才物理学者だからね!作るなら魂を込めて作り上げるさ」

 

「しかし、どうして?」

 

「スクラッシュドライバーにはISを超える力がある。しかし、ISが女性しか乗れない様に兵器には必ず欠点がある。いずれスクラッシュドライバーでは解決が難しい場面が出てくるかもしれない。その欠点を補う為だと思ってくれたまえ」

 

確かにスクラッシュドライバーは火力で言えばISを凌ぐだろう。

しかし、スクラッシュドライバーにはISの様な機動力は無い。

いずれそれで苦戦する場合も出てくる筈だ。

 

その巧の答えに納得する幻徳。

更に巧は『そして………』と言葉を紡いだ。

 

「ただ単純に君が気に入っただけさ」

 

巧は星が出そうなお茶目なウインクをするのだった。

 

「コアは前にIS学園を襲った未確認ISのコアを使うとするかね。まぁ、数日あれば作れるから、出来たら直ぐに送るよ」

 

そこで巧は話を区切り、ラッシーを一口飲む。

 

「いやぁ!久々にラッシーを飲むとインスピレーションが刺激されるなぁ!幻徳君のISを作り終えたら、次は人間のタンパク質を好む細胞でも作るか!!」

 

「「おい、止めろ」」

 

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