INFINITE・ROGUE   作:鉄の字

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増える感想とお気に入り登録が50突破にコンビーフ吹き出しました。
幻徳のキャラが面白いと言っていただきありがとうございます。
まだ変身は少し先ですが、必ず変身しますのでもう暫くお待ちください。
これからもINFINITE・ROGUEをよろしくお願いします!


四話:プレハブ小屋と言うか家

「女子と同室かプレハブ小屋ですか!?」

 

初日の授業が終わり時刻は夕方。

夕日差し込む教室で一夏と幻徳は山田先生から二人の今後の暮らしについての話があった。

 

どうやら部屋数が空いてなく、一人でつかっている生徒の部屋と同室か元は倉庫だったプレハブ小屋かの二択だった。

一夏の場合、千冬と暮らす家があったのだが、世界で二人しかいない男性操縦者の一人。

最低限のセキュリティしかない家よりも国に属しないIS学園の方が百倍良い。

 

しかし、度重なる意味不明な単語が羅列する授業に千冬による出席簿により頭から黒煙を上げている一夏にとってはこれ以上面倒事はごめん、と言ったところである。

 

対して山田先生は本当に申し訳ないのかひたすらに生徒である二人に『ごめんなさい!ごめんなさい!』と頭を下げていた。

ついでに言えば胸も揺れていた。

二人の視線も胸につられ上下に揺れていた。

 

大人に涙目で謝られ、怒るほど二人は子供ではない。

一夏は腕を組み、隣にいるもう一人の男子と相談する事にした。

 

「どうする、幻徳?」

 

「俺はどちらでも構わないが、相部屋となった場合だとその女子が可哀想だ。慣れない環境での学園生活だから休まる場所くらい欲しいはずだ。それなのに男と二人っきりは困るだろう」

 

「だよなぁ………それに、そのプレハブ小屋がどんな物かにもよるしな」

 

「じゃんけんで決めるか?」

 

「あぁ、その方がいいな」

 

「因みに一夏の暮らす地域はどのようなジャンケンだ?」

 

「ウチは『ジャンケン、ポン!』だったぜ。幻徳は?」

 

「俺は世界中を旅していたからな………長い間いた国ではトラ、鉄砲、上官でジャンケンしてたな」

 

「一部だけ上下関係が存在するジャンケンかよ………」

 

慄いている一夏に突如、教室のドアが開き、千冬が入ってきた。

その手には二つの荷物があった。

 

「あぁ、山田先生。二人に決めてもらう必要は無くなった。織斑、お前は同室だ」

 

「ハァッ!?千冬姉、マジで言ってるのか!?」

 

そこで一夏は出席簿による神の一撃をくらう。

明らかに出席簿では鳴らないだろう音が響くと同時に一夏は頭を抱えて崩れ落ちた。

 

「頭がぁぁぁああああ!?!?」

 

「織斑先生、だ。そうした方がいいと私が判断したからだ」

 

「ちょっ、ちょっと待って──」

 

「反対の言葉は聞かん。分かったな?山田先生、織斑に鍵を渡してやってくれ」

 

「は、はいっ。織斑君、教室に鍵があるので取りに行きましょうか」

 

ナイフさえ切れそうな瞳に当てられ恐縮する一夏に千冬は無理矢理荷物を渡す。

不一夏は承不承と言った感じで山田先生の後を追って行った。

 

一夏達が出て行った後、千冬は幻徳へと向き直る。

 

「さて、お前に部屋を案内する………その前に、だ」

 

そこで千冬は一旦言葉を置く。

周りに人がいないか確かめているみたいだ。

 

そして、言葉を紡いだ。

 

「氷室。お前が十歳までの記憶が無いのは知っている。故に国籍が無いこともな。IS学園はどこの国にも属しないが、裏があるかもしれない人間を入れるわけにはいかない」

 

そこで千冬は出席簿から何枚かの紙を取り出し、近くにあった机の上に並べた。

それには幻徳の血液、指紋、声帯など、様々なデータが載っており、どれも『合致無し』と書かれている。

 

「悪いが勝手に調べさせてもらった。様々な検査の結果、今から二十年以上前でもお前の遺伝子と合致する人物は存在しなかった。本当に何も覚えてないのか?」

 

「………」

 

『十歳までの記憶があるかどうか?』

その問いに幻徳は『ある』と答える。

 

そう、幻徳には記憶があるのだ。

 

しかし、それは一部のそれも辛く苦い記憶だけだった。

 

 

 

 

 

酸素マスクを取り付けられ、液体漬けにされている自分。

 

物言わぬ死体となり運ばれる人間。

 

ガスマスクを付けた研究員。

 

苦しい、痛い、殺してくれ、と言う感覚。

 

 

 

 

 

そして──

 

 

 

 

 

『さて、怪物になるか兵器になるか………お前はどっちだろうな?』

 

 

 

 

 

──液体に浸かる自分を見ながら笑う赤い蛇だった。

 

 

 

 

 

脳裏に思い出される記憶。

コンマ一秒の後、幻徳は口を開いた。

 

「何も覚えてません。何も」

 

この記憶が何なのかは分からない。

だが、少なくとも巻き込むわけにはいかなかった。

 

たったの一日しか経ってないのに何故かここは楽しいと言う思いが湧いてくる。

 

「本当か?」

 

「はい」

 

この場所を涙で濡らすわけにはいかない。

幻徳は咄嗟に嘘をついた。

 

対して千冬はその切れ長な目付きを変えず、幻徳の瞳の中を覗く。

まるで何もかも貫き通すような鋭くも強い瞳だ。

 

時間にしてどれくらい過ぎただろうか?

千冬は幻徳から視線を逸らした。

 

「そうか。そういう事にしておこう。だが、何か思い出したら直ぐに言え。分かったな?」

 

いつもは怖がられる強面が今だけは幸をそうしたのか千冬を騙せたようだ。

内心、幻徳は胸を撫で下ろす。

 

『分かりました』と言おうとした時だった。

頭に、何かやさしく押さえられる感覚が。

 

気づけば、幻徳の頭の上に千冬の手が乗せられていた。

千冬よりも背の高い幻徳へ手を乗せるために少しつま先立ちになっている。

 

「織斑先生、これは──」

 

「お前はまだ十五歳だ。全てを背負う必要は無い。心が屈しそうな時は遠慮せず教師に吐き出せ」

 

「………」

 

「では、これからお前の住む所へ向かおうか」

 

手紙頭から離れ、千冬は幻徳の荷物を持って教室から出て行く。

 

バレているのか?

いや、そんな様子は無かった。

ただ、そうただ、自分を気遣った言葉なのだろう。

 

手が置かれた部分を自分の手で触る。

 

先を行く千冬の背中が少し大きく見えたのは錯覚なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プレハブ小屋だが改装を重ねて水道電気ガス、電話線、テレビ線は通ってる。冷暖房完備、プレハブ小屋も断熱素材で出来ているからそこそこ暮らしやすいだろう。少なくとも学業に影響は出ない筈だ」

 

「それは最早、家なのでは?」

 

学生の寮の隣にポツンと立つプレハブ小屋。

しかし、その実態は超ハイクオリティなプレハブ小屋だった。

 

シンクのキッチンが付けられた内玄関がある六畳一間の部屋だった。

畳が敷き詰められた部屋には箪笥や押入れがあり、収納スペースもきちんと確保されている。

 

「流石に風呂については女子達からの拒否が強かった為に暫くはキッチン奥にあるシャワーを使ってもらうぞ」

 

「構いませんが、何故に畳なのでしょうか?」

 

「私の趣味だ。いいだろう?」

 

織斑千冬。

思いの外、お茶目な人なのだろう。

 

「しかし、世界中を旅しているとは聞いていたが、これだけか?下着と少しの小銭で生きていけるのか?」

 

幻徳の荷物を見ると中にはパンツとチャリチャリと心許ない音を鳴らす小銭しか入ってなかった。

男のパンツを見ても狼狽えないのを見ると、流石は弟を持つ姉なんだな、と幻徳は思った。

ブリュンヒルデに死角無し。

 

「生きていけますよ。明日のパンツとちょっとの小銭があれば」

 

「誰の言葉だ?」

 

「同じく旅している人です。今もパンツを枝に下げながらガラの悪い人と歩いていると思います」

 

「世界中を旅する奴らはそんな個性的なのか?」

 

「人によりけり、かと」

 

ハァ、と溜息を吐く千冬に幻徳は先程から聞きたかった事を言うことにした。

 

「織斑先生、質問があります」

 

「何だ?」

 

「一夏を同室にした理由は?」

 

強引に一夏を女子との同室にさせ、自分は良い部屋を一人で使わせていただく。

それでは一夏が不憫過ぎるのでは。

そして、その女子も男と同じ部屋だとストレスの原因になるのでは。

 

その質問に千冬は僅かに口角を上げ、意地悪を考える少年のような表情になる。

 

「織斑と同室になるのは篠ノ之箒と言えば分かるだろう」

 

「理解しました」

 

今日知り合った男よりも絶賛片想い中の幼馴染の方がいい。

一夏には気の毒だろうが箒にとってはある意味チャンスだろう。

 

存分にラブコメるがいい。

その方が食う飯が美味い。

 

光速で手の平を返した幻徳は握り拳に親指を立てて千冬に返事した。

 

 

 

 

 

その夜、隣の寮では竹刀で何かを打った音がしたが、一人部屋と言う利点を使いかめはめ波の練習で夢中になっていた幻徳には聞こえなかった。

 

 

 

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