書きだめが無くなったので暫く更新は遅くなると思います!
楽しみにしている方、申し訳ございません。
その時は夜だった。
自分はどこかの建物の屋上で満天の星空を見ていた。
視線を横に向けると一人の少女。
泣いていたのか目が腫れていた。
『──────!』
自分は何かを叫んでいる。
悲しみとか怒りとかではなく、何か大きい夢を語っているような感じだった。
自分の言葉に少女は一瞬、キョトンとした表情になるが、段々と崩れ笑顔になる。
あぁ、何だろう。
凄く、懐かしい。
何も知らないのに、何も分からないのに。
そして、手は上がり、自分の手が少女の頬に触れる。
「………………」
そこで目が覚めた。
目を開けると超ハイクオリティプレハブ小屋の天井だった。
上半身を起こし、頭を掻く。
(何の夢だ?)
何か見ていた気がするが、思い出せない。
大切な記憶だったような気もする。
時計を見る。
丁度長針と短針が十二で重なっている所だった。
「………寝るか」
思い出せない物は仕方ない。
幻徳はもう一度、横になり掛け布団を被った。
☆
翌日、カウンターの席で朝食を食べていた幻徳の後ろを一夏と箒がお盆を持って通る。
何故か箒はご機嫌斜めで一夏の言うことを全てガン無視していたが。
(ラブコメの予感がするな)
果たしてどこをどう見ればそう見えるのか。
一夏達のそんな様子を眺めながらご飯を掻き込んでいると幻徳の下に歩み寄る影が。
「む?布仏さんか?」
「ヒムヒム〜、朝ご飯〜?隣、いい〜?」
「隣は俺の席ではない。好きにしたらいい」
キツネかクズリか分からない着ぐるみパジャマを着た本音がお盆を持ってやって来た。
本音は『わ〜い』とのほほんな喜び方をしながら隣に座った。
「うわぁ、ヒムヒム、凄い朝ご飯たべるねー?和洋ごちゃ混ぜだ〜」
「朝ご飯は重要だからな。これくらいは食わないとやってられん」
幻徳がカウンターに置いてあるお盆は二つあり、一つには和食、一つには洋食が載せられていた。
「でも、パンをオカズにご飯は無理だとおもうよー?」
「焼きそばパンだって炭水化物に炭水化物がライドオンしているだけだ。なら、これでも文句は言われない筈だ」
「それについては文句言えないけどぉ〜………」
何か言いたそうな本音だったが、そんなのは知らず幻徳はパンを齧り、飯を掻き込んでいた。
すると幻徳は突然にその手を止めてしまう。
「今日はやけに視線を感じるな………」
初日の自己紹介と同じ好奇心半分、怖さ半分の視線を感じていた。
幻徳が顔を後ろへ向けると殆どの生徒は『ヒッ!』と顔を引き攣らせる。
「…………」
幻徳は顔を前へと戻す。
そして、振り向く。
「「「「ヒッ!」」」」
「…………」
幻徳は顔を前へと戻す。
そして、振り向く。
「「「「ヒッ!」」」」
「…………」
幻徳は顔を前へと戻す。
「ヒムヒム、もしかして面白がってる〜?」
「……………………そんな事ないぞ」
幻徳のこの無表情と強面は世界中を旅していても怖がられ、簡単に人を寄せ付けないので犯罪に巻き込まれにくい程である。
便利なようで悲しいような強面である。
「ヒムヒムは顔が怖いから笑顔になってみればー?」
「………前に無理矢理笑顔になったら軍隊を呼ばれた事があってな」
「ヒムヒムの笑顔は兵器並に怖いんだ〜………」
無表情ながらどこか遠い目をする幻徳に本音は苦笑いしながら、とある提案をする。
「じゃあ、もうちょっと口調を柔らかくするのはどうー?」
「ふむ、名案だな………早速やってみよう」
思い立ったが吉日。
考えたら即行動。
有言実行。
幻徳は勢いよく立ち上がり、後ろにいる生徒達へと向く。
もう、その時点で失敗する雰囲気を醸し出している気がする。
そして、幻徳は意味が分からないが流行っている言葉を並べてみた。
「好きピでマジ卍だ」
「「「「…………」」」」
食堂にいる全員の目が段々と白くなっていった。
「布仏さん、凄いな。一瞬で皆の見る目が変わったぞ。暫くはこんな感じで──」
「ヒムヒムはもう今まで通りでいいよー」
「解せぬ」
☆
二日目の授業が開始され、千冬と山田先生は教鞭をとり、ISに関する話が始まり、一夏が出席簿で伸される。
そんな中、一夏に専用機が渡される事が千冬によって発表された。
ISの中心にあるコアは今だ解明されていない為、作る事も出来ず、現在世界中にあるコアは467個と少ない。
しかも、それを作ったISの母──篠ノ之束はこれ以上作る事を拒否しているのでそれぞれ割り振られたコアを使用して研究、開発、訓練を行っている。
一夏は状況が状況なのでデータ収集を目的として専用機が与えられるらしい。
そして、幻徳は練習機の打鉄が貸し出されることが決定した。
休憩時間に入り、一夏は先程習った所を見ながら隣でシャカシャカと容器を振る幻徳と話していた。
「俺は専用機貰えるけど、幻徳は練習機なんだよな。何か不平等じゃないか?」
「一夏、量産型を舐めるな。世の中、量産型で戦後の混乱を生き抜いた異能生存体がいてだな」
「いや、それ世の中と言うより宇宙の話なんだけど………」
何やら熱く語り始めた幻徳に一夏は小さくツッコミを入れる。
心無しか幻徳が容器を振る手も速くなった気がする。
そこへセシリアが一夏達の前に現れ、腰に手を当てながら胸を張っていた。
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど。あぁ、貴方は訓練機でしたわね」
「ん?あぁ、レッドショルダーは良いよな」
「貴方、やっぱり私を馬鹿にしてますわよね?」
「すまん、正直な話を言うと聞いてなかった。すまなくてすまない」
「訂正します。馬鹿にしてますわね」
青筋をピクピクと小刻みに動かすセシリア。
話が逸れてしまったのに気づいたのか何度か咳をする。
「まぁ、一応勝負は見えていますけど、流石にフェアではありませんものね」
「何で?」
「あら、ご存じないのね。いいですわ、庶民のあなたたちに教えて差し上げましょう」
「この私、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生……つまり、専用機を持っていますの」
「すごーい」
「ラビドリードックも良いな」
「〜〜〜!!貴方達は──!!」
そこで試合終了のチャイムが鳴った。
「クッ………おぼえてなさい!」
「前もそれを言ってたぞ」
「黙らっしゃいっ!!」
☆
時は放たれた矢の如く過ぎ去り、放課後。
一夏は対セシリア戦のために箒に訓練を付けてもらうことにしたらしい。
先程、チラリと剣道場を見たが、見事に脳天に一本取られた一夏の姿があった。
あの男は出席簿だったり竹刀だったり、前世で頭に恨みを持たれるようなことをしたのだろうか?
寮や部活に向かう生徒とすれ違う中、幻徳が向かったのは図書館。
図書館にあるパソコンでインターネットに繋ぎ、とある物を見ていた。
それはセシリアが操るブルー・ティアーズの性能テストである。
映像には射出装置がセシリアの周りを浮遊し、セシリアの合図と共にレーザーを的へと照射した。
(ブルー・ティアーズ………脳波を感じ取り、使用者の思うままに操る機能。要するにファンネルか。これを何とかしないと全方位から射撃され、蜂の巣にされ、蜂蜜にされ、トースターに塗られるわけか)
尚、蜂蜜にされ、トースターに塗られない。
試合まで一週間。
練習機を借りれないこの状況で出来るのは体を鍛え、頭の中にデータを叩き込み、戦術を練り込まないといけない。
専用機でもあれば変わるのだろうか?
否、機体の性能が分からないのなら無用の長物だ。
ふと、幻徳はコートのように改造した制服の内ポケットからある物を取り出す。
それは幻徳曰く『起動するとビリビリする痛い機械』である。
水色を主体に黄色のレンチが取り付けられており真ん中には何かを挟むための万力があった。
「これはISなのか?」
確かISの待機状態は何か体に身につける装飾具になっている筈だ。
実はこれ、ベルトのバックル部分に当たる物らしく、丹田に押し付けるように付けると自動でベルトが伸びるのだ。
謎オーバーテクノロジーな機能が付いているが、
もし、これがISならば、自分の専用機としてセシリアや一夏に戦える──
「ビリビリは嫌だな」
──が、上手く使えないと意味が無い。
極僅かな希望に縋らず、的確に一つ一つ解決していくしかないだろう。
☆
「え?訓練機についてですか?」
場所はまたも転々として職員室。
プリントと睨めっこしていた山田先生の机へ来ていた。
「はい。実はかくかくしかじかでして」
「ふぇ!?え、えっと………何言ってるか分からないのですが………」
「自分が使える機体のデータを見せていただきたいのです」
「あ、そういうことでしたか………えーと、これが打鉄のデータです」
慌てながら端末を操作しながら幻徳の前にホログラムを映し出した。
打鉄は性能が安定しており使いやすく、主に装甲強度重視型の機体だ。
「カスタマイズはどこまで可能ですか
?」
「大掛かりな改造でなければ当日に希望通りにできますよ」
「では、この装備をお願いします」
幻徳はポケットから一枚のメモを取り出す。
それは幻徳が図書館で調べたIS専用の武器である。
「え?これだとオルコットさんに決定打を与えられませんよ?」
「これは所謂牽制する為の物です。本命はコレです」
そう言うと鞄から教科書を取り出し、ある項目が書かれたページを開く。
それを見た山田先生は目を開く。
「コレについて、操作する際の感覚でもいいので教えてくれませんか?」
「で、でもこれは………」
「避けるだけだと素人の自分ではジリ貧になるのは確実。なので──」
視線は教科書から山田先生へ。
山田先生にとって恐怖しか感じない幻徳の瞳は不思議と何も感じれなかった。
そう、何も感じれなかったのだ。
「──死中に活。あえて突っ込んでみようかと思います………下ネタではないので顔を赤らめないでいただきたい」