彩-aya-   作:ソウリン

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第3話です


天才

「ツモ、ドラ4、赤1、・・・嶺上開花、3000、6000」

 

その宣言が、静寂に包まれた室内に響きわたる。嶺上開花。カンをした際の追加ツモで和了した時に付加される役。役としてはたかが1飜役の最低点数。だが、その役には花があり、狙って和了るのはまず不可能と言えるような難易度があった。

 

「り、嶺上開花ですか・・・?」

 

「あ、アヤさんすごいです!」

 

「あちゃー。これは派手にやってくれたねー」

 

「彩ちゃん、やるわね」

 

それぞれ賛辞を贈るメンバー。一方贈られた丸山彩は・・・

 

「で、できたぁ~・・・」

 

成功した安心感に包まれ、ふにゃけていた。

 

「あ、彩ちゃん、狙ってやったんじゃなかったの?」

 

「え?もちろん狙ってやったよ?だけど、今まで成功したこと無かったから不安で不安で・・・」

 

「あはは、彩ちゃんにしては本番に強かったねー!」

 

「ううっ、本番に弱いの気にしてるんだからやめてよ・・・でも」

 

その場にいる全員は感じ取った。丸山彩の雰囲気が、気配が変わったことに。それはまるで、先ほどの役を和了る前のような、得体の知れない雰囲気。

 

「今ので感覚は掴んだから、たぶんもう失敗しないよ?」

 

後に皆は言う。そう語る丸山彩の放つ雰囲気は、正に魔王だったと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

東4局 ドラ表示牌{赤⑤}

 

南家 氷川日菜 15000点

西家 丸山彩  34000点

北家 大和麻弥 24700点

東家 若宮イヴ 26300点

 

この局も、丸山彩は止まらなかった。感覚は掴んだ。その言葉に誤りは無かったと言うことを皆に知らしめる形となる。

 

「ツモ」

 

{二三四六六六③④⑤北} 嶺上ツモ{北} 暗カン{裏11裏}

 

「ツモ、嶺上開花、60符2飜は1000、2000」

 

「あ、アヤさんまたですか!?」

 

「し、信じられないですね。嶺上開花2連発ですか」

 

「あはは、本当に感覚掴んだみたいだねー」

 

南1局 ドラ表示牌{③}

 

東家 氷川日菜 14000点

南家 丸山彩  38000点

西家 大和麻弥 23700点

北家 若宮イヴ 24300点

 

南入してなお、その勢いは止まらない。その卓にまた、花が開く。

 

「ツモ」

 

{一一一二三七八九11} 嶺上ツモ{1} 加カン{横99横99}

 

「喰い純チャン、嶺上開花、50符3飜は、1600、3200」

 

「さ、三連続・・・」

 

「開いた口が塞がりません・・・」

 

「おー、彩ちゃんやるねー」

 

「流れは完全に彩ちゃんみたいね」

 

このままの流れで、丸山彩が最後まで行く。4人を見守るスタッフと白鷺千聖にはそのような考えが浮かんでいた。だが、その考えは一瞬で塗り替えられることになる。一人の天才少女によって。事は次局、南2局に起きた。

 

南2局 ドラ表示牌{東}

 

北家 氷川日菜 10800点

東家 丸山彩  44400点

南家 大和麻弥 22100点

西家 若宮イヴ 22700点

 

それは、配牌が配られ、氷川日菜が最初のツモを掴んだ直後のことだった。最初に異変に気づいたのは丸山彩だ。

 

(なんだろう?日菜ちゃんの後ろにいるスタッフさん達が、ざわめいてる?)

 

その卓では、各自の実力を見るために、それぞれの打ち手の後方に数人のスタッフを配置していた。その内の、氷川日菜に付いたスタッフの様子がおかしい。まるで、ありえない物を見たとでも言いたげな表情を見せている。

 

「うーん、なんだかいまいちるんってこないなー。どの牌がいいかなー。お?この牌なんだかるんってきた!えい!」

 

氷川日菜1巡目 打{東}

 

その直後、思わず声が出そうになるスタッフ達。中には、崩れ落ちそうになる者までいた。それほどまでに、その一打はありえないものだった。常人にはまず理解できない。

そして、その常識外の打牌はその後も続く。

 

氷川日菜2巡目 打{東}

 

(いきなり東の対子落とし?ヒナさんは一体何を狙っているのでしょう?)

 

氷川日菜3巡目 打{南}

 

(場風牌のドラ南切り?普通ならまだ残しておいていいような牌ですが。日菜さんの考えが全く見えてきませんね)

 

氷川日菜4巡目 打{南}

 

(ドラ南の対子落とし!?さっきは東の対子落としだったし、連続で対子落とし・・・日菜ちゃん一体何をしてるの?)

 

氷川日菜5巡目 打{西}

 

氷川日菜6巡目 打{西}

 

ここまで3連続字牌対子落とし。それを見て、同卓につく面々は、混乱の渦に巻き込まれていた。だがそれは決して彼女達だけでは無い。経験豊富な雀士、白鷺千聖にも彼女の、氷川日菜の意図は全く読めていなかった。

 

(日菜ちゃん、あなたは何を狙っているの?一体、日菜ちゃんの手で何が起きているの?)

 

巡目が進むにつれて、氷川日菜後方のスタッフのざわめきも大きくなっていっている。明らかに、彼女の手では異常事態が起きていた。そして、7巡目にそれは起きた。

 

「きたよー!リーチ!」

 

氷川日菜7巡目 打{横北}

 

氷川日菜のリーチ。それは、他メンツの意表を付くには十分すぎる効力を発揮していた。

 

(あの捨て牌からリーチですか!?ヒナさんの手が全く読めません・・・)

 

(日菜ちゃん、一体何を狙ってるの?全然わからないよ・・・)

 

(自分の記憶が間違っていないのなら、日菜さんの切った牌は全て配牌時にはあった牌。となると、日菜さんの配牌はわかっているだけで・・・)

 

氷川日菜配牌

{裏裏裏裏裏裏東東南南西西北} ツモ{裏}

 

(ま、まったく理解できないですね。どうしてあんな捨て牌になるんですか?役満も見えてるじゃないですか・・・)

 

理解に苦しむ面々。だが、そんなことは気にしないとばかりに、氷川日菜は上機嫌だった。

 

「るんるんるーん♪ほら、彩ちゃんのツモ番だよー。早くツモってツモってー」

 

「あ、うん・・・」

 

この時、実は丸山彩にも大物手が入っていた。上がれば問答無用でこの対局を終わらせることが出来る大物手。

 

丸山彩9巡目

{一一一九九九①①①1119} ツモ{①}

 

清老頭、四暗刻単騎のトリプル役満。和了れば、問答無用で周り全てを消し炭にできる大物手。そして、今正にその手を上がれる局面に来ていた。

 

(日菜ちゃんの手は確かに気になる。だけど、暗カンにまでは絶対手を出せない。暗カンに対して手を出せるのなんて『あの役』だけだし、あの捨て牌からは絶対にありえない。これで私の勝ちっ!)

 

「カンっ!」

 

丸山彩

{一一一九九九1119} 暗カン{裏①①裏}

 

丸山彩は自身の勝利を確信した。確かに、氷川日菜の手は気になる。だが、自身の暗カンにまで干渉できるはずがない。だからこそ、確信した。自身の勝利を。だからこそ、信じられなかった。氷川日菜の発声を。

 

「・・・ン」

 

「・・・え?」

 

丸山彩には、最初氷川日菜が何を言ったのかがわからなかった。いや、わかりたくなかった。嘘だと言って欲しかった。今その発声をするということは、つまり・・・

 

「あれー?彩ちゃん聞こえなかった-?しょうがないなー、もう一回言うよ。ロン」

 

「ろ、ロン!?」

 

「そう。 槍槓だよ」

 

「ちゃ、 槍槓!?だ、だって、今 槍槓するってことは・・・するってことは・・・」

 

槍槓とは、基本的に誰かが加カンした際に、そのカンした牌が自身の和了牌だった際に、ロンが許されるルール、及び1飜役だ。

 

カンには3種類が存在する。自身で同牌を4枚ツモった際に行える暗カン。

自身が3枚持っている牌の4枚目を、誰かが切った際に行える大明カン。

自身がポンした牌の4枚目を、自身でツモってきた際に行える加カン。

 

以上の3種類が存在する。そして、槍槓が効力を発揮するのは基本的に加カンの場合のみだ。その他の場合は、例外を除いて他者のカンに干渉することは誰にもできない。そう、例外を除いて。

 

ただ一つだけ、全基本役の中で一つだけ例外が存在する。その役は、全ての基本役の中でただ一つだけ、暗カンに対する槍槓が許されている。その役の名は・・・

 

氷川日菜

{一九⑨19東南西北北白発中} 丸山彩放銃 暗カン{裏①①裏}

 

「国士無双。32000」

 

氷川日菜の役満が炸裂した。

 

「こ、ここ、国士無双ですか!?ちょ、ちょっと待って下さい!それよりもその手はおかしいですよ!?じ、自分の記憶が正しければ、た、正しければ日菜さんの、日菜さんの配牌は・・・」

 

氷川日菜配牌

{東東東南南南西西西北北北白} ツモ{9}

 

「字一色、大四喜、四暗刻単騎・・・は、配牌5倍役満テンパイ・・・」

 

「ど、どうやったらそんな配牌引けるんですか?どうやったらその打牌になるんですか?わ、私には理解できないです・・・」

 

「い、イヴちゃん、たぶんこれは日菜ちゃんにしかわからないよ・・・」

 

「日菜ちゃん、教えてくれるかしら?どうしてそんな打牌ができたの?」

 

「うーん、なんだろうねー。なんか配牌見たときるんってこなかったんだよねー。それで、最初にどれ捨てるか考えて、東に触れた時になんかグッときて、るんってきたからそれを捨てたんだー」

 

「るんってこなかった?」

 

「そうそうー。たまにそういう時あるんだけどねー、そういう時はまず間違いなく和了れない時だからさー、和了れそうな方向になんとなく切っていったらこうなったよねー」

 

「よ、要するに自分の感覚に従って打った訳ですか・・・それで5倍役満を捨てるなんて、恐ろしい感覚ですね・・・」

 

「だけど、それは結果的に正しかったかもしれないわよ?」

 

「え?千聖ちゃん。どういうこと?」

 

「皆の手配をよく見てみて?」

 

千聖に促され、皆の手配に注目する面々。そこには、驚愕の真実があった。

 

氷川日菜

{一九⑨19東南西北北白発中}

 

丸山彩

{一一一九九九1119} 暗カン{裏①①裏}

 

大和麻弥

{二二三四赤五六七789白白白}

 

若宮イブ

{⑨⑨⑨5678発発発中中中}

 

「こ、これって・・・」

 

「彩ちゃん気づいた?」

 

「ど、どういうことですか?」

 

「イヴさん、よく見て下さい。日菜さんがあのまま手を進めていても、和了ることは絶対にできなかったんですよ」

 

そこにあったのは、全て使いつぶされていた么九牌の姿。唯一九索が一枚だけ見えていないが、それは丸山彩の待ち牌。おそらく、いや間違いなく嶺上牌になっているのだろう。要するに、氷川日菜が和了るにはこの道しかなかったのだ。それ以外の道を選択していた場合、間違いなく先に丸山彩が和了って、この対局は終了になっていただろう。

 

「だ、だけどアヤさんを信じるのなら、嶺上牌は九索なんですよね?だ、だったらドラに捲れてる東は別にして、南、西、北のどれかをカンして九索を手に置いておけば和了れてますよ!九索は最初のツモだったのですから、十分可能なはずです!」

 

「イヴさん、それはただの結果論ですよ。日菜さんには嶺上牌なんてわからない訳ですし、狙って出来るようなものじゃないですよ」

 

「そうでした。すみません、アヤさんのことがあったので出来るものだと思ってしまいました・・・」

 

「うん、それに、たぶんカンもできなかったと思うよー。あたしも最初その可能性考えてみたけどさー。なんかるんってこなかったんだよねー」

 

「カンができなかった?」

 

「・・・その答えは嶺上牌にあると思うよ」

 

丸山彩のその言葉に導かれて、嶺上牌を手に取る大和麻弥。そこにあったのは彩の待ち牌、九索だった。

 

「彩さん、彩さんの読み通り、嶺上牌は九索でしたよ。ですが、それがどうかしたんですか?」

 

「ううん、違うの。もっと深いところを見てみて」

 

丸山彩の言葉に従い、さらに先の嶺上牌を捲る大和麻弥。そこには、驚くべき牌が埋もれていた。

 

「こ、これは・・・」

 

嶺上牌

{9北西南}

 

なんと、嶺上牌の中に氷川日菜がカンできた牌、南、西、北が全て埋もれていたのだ。これが意味することはただ一つ。氷川日菜はカンをするためにカンをしなければいけなかったのだ。正に、本末転倒。そして、この時、大和麻弥はもう一つの事実に気づくことになる。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい・・・日菜さんのすごさは十分わかりました。ですが、彩さん・・・も、もしかして嶺上牌の中身が全てわかるんですか・・・?」

 

その言葉に軽く頷く丸山彩。その瞬間、その場にいた面々に戦慄が走る。ありえない。そんなことがありえるのか?到底信じられないようなことだ。

 

「て、天才・・・」

 

その言葉は果たして、誰が言った言葉だったのだろうか?誰に向けられた言葉だったのだろうか?その後の局も、天才の共演は続いた。

 

南3局 ドラ表示牌{発}

 

西家 氷川日菜 42800点

北家 丸山彩  12400点

東家 大和麻弥 22100点

南家 若宮イヴ 22700点

 

「うーん!るんってきた!ツモ!」

 

氷川日菜

{③③⑤⑤6688北北発発中} ツモ{中}

 

「リー即、ツモ、チートイ、ドラ二つ、裏は・・・」

 

裏ドラ表示牌{発}

 

「乗って倍満!4000、8000!」

 

南4局 ドラ表示牌{四}

 

南家 氷川日菜 58800点

西家 丸山彩   8400点

北家 大和麻弥 14100点

東家 若宮イヴ 18700点

 

「ツモっ!」

 

丸山彩

{一二二三三四六六七九} 嶺上ツモ{八} 暗カン{裏五赤五裏}

 

「ツモ、門清、ドラ4,赤1、嶺上開花、数え役満は8000、16000」

 

対局は終了を迎えた。生まれつきの天才少女と、努力して天才に昇格した少女の共演。その熱演は素晴らしいものになった。

 

「ふふっ、これなら、頂点も目指せるかもしれないわね」

 

白鷺千聖は静かに微笑む。この先の見知らぬ強敵達との対局を思い描き微笑む。きっと、このメンツでなら素晴らしい戦果をあげられるはずだ。その日を夢見て、静かに微笑むのだった。

 

最終結果

 

氷川日菜 50800点

丸山彩  40400点

大和麻弥  6100点

若宮イヴ  2700点

 

 

 

 




どうも、ソウリンです。
この作品の主人公は彩ちゃんです。
主人公は彩ちゃんです。(大事なことなので(ry
いやーでもビックリですね。5倍役満VSトリプル役満
こりゃ本家咲-saki-でもお目にかかれないな(白目
む、ムダヅモ無き改革ならワンチャンありえるから(震え声
ムダヅモも面白いですよね。今、新シリーズ連載してますけど、今のシリーズに使ってる題材どう考えても限りなくアウトを超えたアウトですよね。
よくあれでお偉いさん方に止められないですね。まぁそれがおもしろいんですけど。
後、日菜ちゃん後方にいたスタッフさんについて一つ。
彼らのことを、是非某黒服さん達だと思って見て下さい(笑)
あ、こころん所のじゃないですよ。某吸血麻雀の黒服が一番シックリくるかな(笑)
それと、今回のお話で連日投稿は一旦ストップです。
次話は、もう一つの作品の最新話投稿後になります。
ご了承下さい。
では、今回はこの辺で。
ではでは、よかったら次回もお願いします!
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