骸骨と山羊と自然科学者   作:chemin

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やっぱり月曜は憂鬱です。

前話でのアインズ様の台詞は元ネタがございます。実はそちらを読んでたら関連書籍でオバロが出てきたので、こうして今に至ります。

安直な俺TUEEE系でない作りこみの深い異世界ものをお求めの方へ、小野不由美さんの著書を個人的にはぜひお勧めしたいですね。




魔導王と鮮血帝2

<< バハルス帝国 帝都アーウェンタール >>

 

 

実用と芸術的外観の両方を兼ねた帝城の中でも、ひと際煌びやかな一室にその男はいた。

嫌味にすらならないほど洗練された調度品の数々に囲まれながら、世の女性を魅了する美貌を苦々し気に顰めている。彼こそは鮮血帝と畏れられ、歴代で最も秀でた皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスその人である。彼が皇帝の位に就いてからまだ日は浅い。しかし尋常ならざるスピードで無能な貴族を片っ端から粛清し、国政の抜本的改革を今まさに見事に実現しているところだ。そのために出自に関わらず有能な者は積極的に召し抱えてきた。”鮮血”の二つ名をつけられながらも、彼は血脈に拘らないことで成功を手にしたといえる。

 

 

 

そうして登用した優秀な秘書官の男が、今しがた緊急の最重要案件を持ち込んでいた。

 

「それで、もう帝都まで魔導国の使者とやらが来ているのだな?」

 

 

 

 

皇帝のお気に入りとして主席秘書官の座に就くロウネ・ヴァミリアンは、しかめっ面のジルクニフに臆することなく歯切れよく答えた。

 

「はい。彼らの騎乗する馬足があまりにも速く、伝令の早馬が先んじて伝え損ねたと報告がありました。代表はナーベラル・ガンマと名乗る非常に美しい女性だそうで、例の”森妖精(エルフ)不開箱(あかずの箱)”を持って面会をするよう要求しております」

 

「...アレを知っているということは、本物の使者とみて間違いなさそうだな」

 

 

ただでさえ先の大粛清で内政が慌ただしい中、つい最近国外で一大事件が起きた。闇妖精(ダークエルフ)の新興国である、”かぜっち双王国”が誕生したのである。

法国が併呑すると予想していたバハルス帝国は、当然上を下への大騒ぎであった。法国が停戦協定を結んだということは、言い換えれば『魔導国や双王国がバハルス帝国に侵攻しても法国は手を出せない』とも受け取れるからだ。加えてこちらは森妖精(エルフ)の奴隷制度が存在する。同族解放の大義名分の下、双王国が侵略戦争を仕掛けてこないとも言い切れないだろう。

 

そんな不安の種を取り除くべく、ジルクニフはしきりに双王国へ偵察隊と秘書官を送っていた。しかしバレないよう遠回しに没落貴族を使って派遣した非公式の偵察隊は全て音信不通となり、正規の使者である秘書官だけが無事に戻ってくるばかり。その使者が持ち帰ったのも、森林外縁部で突如現れた陰王直々に渡されたという30cm四方の箱一つだけである。

 

『えっと、魔導国の方から正式な使者を送りますので、そ、その使者の方が来た時に開けてもらってください!』

 

陰王マーレは可愛らしい仕草と声でそう言うと、その箱に何かの書類を入れて魔法を唱えたらしい。中身が危険なものではなさそうだったので、秘書官に同行していた魔法省の者が箱自体にも仕掛けがないことを確認した後、そのまま帝都に持ち帰ってきたのだ。

その箱がまた厄介だった。中身を鑑定しようとしても、無理矢理こじ開けようとしても、開くどころかかすり傷一つつかなかった。最悪帰国途中で魔物に襲われて壊れたことにしようと、物理的にも衝撃を与えたのにだ。ついには帝国が誇る人類最高の魔法詠唱者(マジックキャスター)、逸脱者フールーダ・パラダインが駆り出されたが、それでも蓋は未だ堅く閉ざされたままである。

 

故に”森妖精の不開箱”。

 

 

「そのようです。中身が書類であることも知っており、そこに書かれているのが要件だと言っているとのこと。おそらく本物の魔導国の手の者だと考えてよろしいでしょう」

 

「なるほど...では『双王国と連絡をとろうとしたら、魔導国から使者が来た』という認識でいいんだな?」

 

「私もそう捉えております」

 

 

たしかかぜっち双王国は、『アインズ・ウール・ゴウン魔導国の属国として外交に臨む』と布告していた。

しかしそれは最終的な判断を魔導国に委ねるという意味であって、窓口自体を丸投げするなどとは思ってもみなかったことだ。

 

 

「となると、双王国は完全にアインズ・ウール・ゴウン魔導国とやらに恭順しているようだな。興国と同時に『国交の準備がある』と発表しておきながら、それをまさか全面的に委託するとは...。やはり法国を打ち破るほどの武力を持っているのは、闇妖精(ダークエルフ)の影に隠れた魔導国だったと考えた方が筋が通る」

 

それを陰王自ら渡した箱で、再度明確に示したかったのだろう。

しかもその箱には高度な魔法技術が用いられている。つまりは軍事力の示威というおまけ付きだ。言葉もなく強烈な印象を与える、まさに謀略を巡らせた深淵な一手。迂遠ではあるが確実なやり方に、頭脳戦でも油断ならない強敵であることをジルクニフは即座に悟っていた。

 

 

「戦争を終結に導いた陽王と陰王も、魔導国から来たと大衆の面前で公言しているようです。今回の黒幕であることは間違いないと思われます」

 

「決まりだな。そうと分かれば今回先方から接触があったのはむしろ好都合。王国に先んじて太いパイプを作れれば、我が国に有利な関係に持っていきやすいだろう。新興勢力は上手く誘導できればメリットも大きい」

 

魔導国なんぞ聞いたこともない国名ではあるが、巧みに担ぎ上げて王国とぶつけられれば僥倖だろう。

たとえそれが無理でも、法国と停戦協定を結んでいる状況では彼らとは比較的友好な帝国を攻めることは難しい。

ただ、懸念を挙げるとすれば...

 

 

森妖精(エルフ)の奴隷制度についての説明が肝になりそうじゃな、ジルよ」

今まで瞑目して髭を撫でつけていたフールーダが、この話題で初めて口を挟んだ。といっても思案顔ではなく、愉快気に生徒へと問題を投げかける教師の姿そのものであったが。

 

「もちろん分かってるとも、じい」

分かりやすい幼少期からの師の様子に、自然と笑みがこぼれる。

フールーダが介入したことで、周囲にいた文官たちも積極的に発言を始めた。

 

「しかし停戦からまだ十日足らずしか経過しておりません。こんなに早く他国に干渉する余裕など生まれるでしょうか?」

 

財務を担当する文官の問いに、ジルクニフは即答した。

 

「普通は立続けに戦争を起こすのは避けるのが常識だが、先の法国戦における双王国の主戦力はあくまで闇妖精(ダークエルフ)。宗主国の方は兵も物資もまだ何も消耗していないのだから、大義名分さえあれば侵略戦争もあり得るだろう」

宣戦布告さえチラつかせる自国の皇帝に対し、秘書官ではロウネだけが全く取り乱さない。さも煽るように脅しをかけてみたのに、能面を崩さないこの秘書官はやはり頼もしい。

 

「では陛下は奴隷制度を如何されるおつもりで?」

 

「ふふふ、分かってきいてるんだろう?では逆にお前ならどうする」

相好を崩したジルクニフに、初めてロウネはニヤリと口元を緩めた。

 

「失礼しました。森妖精(エルフ)の奴隷はそもそも法国が捕らえて流通させたもの。帝国としては法改正には柔軟に応じる姿勢を見せるべきかと。むしろ解放や受け渡しまで面倒を見てやれば、双王国に貸しを一つ作ることもできます。きけば今になってエイヴァーシャー大森林に介入したのは、まだ幼い双王らが直々に魔導王らに願い出たことが発端とのこと。子供ながらに同族に対しての思い入れが強いのでしょう。最悪魔導国がムリに戦争を仕掛けてこようとも、奴隷の森妖精(エルフ)も殺されたと伝えれば双王国を離反させて潰し合わせる口実になるかもしれません」

 

「満点だな」

ジルクニフは瞳に残酷さを匂わせながら頷いた。

そうだ。強大な力をもつ者が複数いるのなら、まずは不和を起こさせればいい。

 

「それに外交の窓口を魔導国が軒並み引き受けるのはどうにもキナ臭い。表向きは新王が子供だからで押し通してくると思うが、本音としては彼女らを囲って洗脳しようという魂胆だろう。強いが幼い。これは最高の操り人形だからな」

 

だがそうはいかない。直接コンタクトをとる手段は模索し続けていく必要がある。陽王と隠王は双子らしいから、どちらか一方さえ丸め込めることができれば、なし崩しで両者を帝国側に巻き込めるはずだ。

弱味も強味に変えてこその外交。それを叩きこんでくれた師も、正解を述べた愛弟子に満足そうだ。

 

 

うら若き美女とやらを使者に寄越した魔導国の短絡さを笑い、なんならその美女を籠絡できないかという下心さえ芽生えながら、ジルクニフは謁見の差配を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< side ゴグン >>

 

「以上がデミウルゴス様のご推察された、皇帝の思惑になります」

ナーベラルを前に臣下の礼とは違う部下としての礼をとりながら、ニグン改めゴグンは説明を終えた。

中盤から重苦しいオーラを放ち始めた彼女を、部下たちも恐怖の眼差しでチラチラと盗み見ている。

 

「汚い虫けら(ガガンボ)ごときが..!私たちの忠誠心を疑うなんて、やはり虫けら(フナムシ)程度の脳みそしかないようね」

 

 

今自分たちがいるのは、帝都最大の通りに面した高級宿屋の一室だ。

魔導国の正使としてナザリックを出てから一週間。ナーベラルの人となりは十分に把握できているため、ゴグンに狼狽の色はない。それにこういったときの対応策も守護者統括殿より授かっている。

 

「愚かな皇帝ごときに、ナーベラル様や皆様の忠義の深さを推し量ることなど到底不可能でございましょう。むしろ無知であることは、ナーベラル様にとっては好都合だとアルベド様も申しておりました」

好都合という単語に反応して、敵意を剥き出しにしていた顔つきがキョトンとしたものに変わった。

 

「アルベド様が?」

 

「はい。そもそもこの世の全てを服従させる目的は、二つあると伺っております。一つは現在ナザリックにおられる慈悲深きお三方がお望みであらせられるため。もう一つはまだお戻りになられていらっしゃらない至高の御方々が、こちらの世界にご降臨なされたときに安全にお迎えするため。それはお間違いないでしょうか?」

 

「ええ、その通りよ。お前も金魚の糞なりによく勉強しているようね」

まあシモベですらない我々の評価はそんなものだろう。しかしゴグンは、ナーベラルがお戻りになられない自身の創造主を思い出し、その麗しき顔に影を落としたのを見逃さなかった。

(さすがはアルベド様...この反応も予言なされた通りだ)

 

「ありがとうございます。そこで、です。例えば至高の御方がお戻りになられた際、ご降臨なさった場所が偶然帝国の領土内であったとしましょう」

ナーベラルにとってはこれ以上ないほど幸せな例え話に、今度は恍惚としながら目で続きを促してくる。

 

「そこで最初に遭遇する帝国民が叫ぶのです。『至高の御方がいらしてくださったぞ!ナーベラル様が仰る通り、なんと素晴らしい御方なのだ!』と。それを聞いた御方はすぐにお気づきになられるでしょう。真の神を知らぬ盲目の民に、(くら)きを(ひら)いた忠実なるシモベは誰か。栄えあるナザリックのご威光を帝国の隅々まで刻み込んだ、誇り高きシモベは誰か!」

そこまで告げるとしばしの静寂が訪れた。

 

その間ナーベラルの頭の中では、弐式遠雷が自身のハイセットポニーテールのつけ根辺りに手を乗せ

『俺たちのために頑張ってくれたんだな。よくやったナーベラル!さすが俺の造ったシモベだ!』

と、あの万物を照らす軽快な声で褒めてくれる至高の光景が流れている。

 

「...今回我々に課せられた任務は戦闘や敵対ではなく、平和的な外交でございます。アインズ様はこの重大なご勅命を授けるシモベの代表に、ナーベラル様をお選びになられました。アルベド様は、その意味をよく考えるようにとも仰せです」

 

ほう、と淑やかに一息。少年すら色を覚えるほどの艶やかさをもって、ナーベラルは現実に舞い戻ってきた。

「...なるほど、アインズ様の崇高なるお考えを勘違いしてしまうところだったわ。アルベド様には本当に感謝しなければならないわね...。さて。つまり相手がどれほど下等な虫けら(ミノムシ)であろうと、殺さずに調教せよということかしら?」

夢見心地でも理性は働いていたらしい。自分なりの解釈をしっかり考えるところまで持ってこれた。

 

「調教..では(いささ)か語弊があるかと存じます。皇帝との会談において、ナーベラル様はあくまでも橋渡し役。皇帝が魔導王たるアインズ様に無礼な振る舞いをせぬよう警告し、下地をつくっておくのが最善と考えます」

 

「無礼のないよう警告...たしかにそれはメイドとしても必要..。お前、ロクグンだったかしら?他の虫けら(ヤブカ)と違って、お前は中々使える拾い物だったようね」

 

「ゴグンですが、見に余るお言葉でございます」

もはや不機嫌さは霧散してしまい、任務に燃え皇帝との会談を心待ちにさえしている様子。

部下も皆針の(むしろ)から解放され、感謝の視線すら送ってくる。

しかしゴグン本人は、これが自分の手柄でないことを重々承知していた。

 

(やはり守護者統括様はその地位に見合うだけの卓越した管理能力をお持ちだ。ナーベラル様の短所を懸念され、的確に意識を誘導していらっしゃる。デミウルゴス様も引き締めに長けておられるが、アルベド様ほど焚きつけるのが巧妙なお方は他にいないと断言できるな。惜しむらくは直接お声かけされるとき、何故か辛辣になってしまわれることだが...噂にきく”つんでれ”とは何であろうか?)

 

明日に控えた皇帝との謁見を前に、ゴグンも己の過去に思いを馳せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

<< side アインズ >>

 

 

今回の主役であるアインズは、ナザリックの自室からちゃっかり帝国皇帝の執務室を覗いていた。

(うわあ...デミウルゴスとアルベドの予想がほぼ完璧じゃないか!これもう俺要らないんじゃないか...?)

 

ナザリックでも一、二を争う知能を誇る二人のシナリオは、現実を写し取ったような正確さだ。早くもアインズは胃の辺りに重く鎮座する何かを感じつつあった。

 

そうして悶々とする中、同室で作業していたブルー・プラネットが話しかけてきた。

彼も双王国建国の仕事から一段落して、こういった細かい情報共有のため頻繁にアインズの私室を訪れてくれている。

「そういえばアインズさん」

 

「はい?なんですかブルーさん」

 

「例のニグン...じゃなくてゴグンか。彼らはもう外に出して大丈夫なんですか?元は法国の聖典だったので僕も気にかけてましたが、エイヴァーシャー大森林に行ってる間はそちらに一任してたので、現在のコンディションとか実はよく分かってないんですよ」

 

「ああ!そういえばお話してませんでした!うわあ、勝手に使っちゃってすみません」

 

「いえいえ、扱いに困ってたのでむしろ使ってもらえて有難いです。レベルキャップの実験も行き詰ってましたしね...」

 

 

 

そう、彼らは陽光聖典という名のいわゆる秘密部隊であった。

情報収集期間中、彼らの先遣隊がナザリックに最寄りのカルネ村を襲っているところを見つけ、この世界における戦闘力の水準を調べるため一当たりしてみたのだ。

 

先遣隊と聖典本隊は拍子抜けするほど簡単に拘束できた。戦闘がシモベ越しということもあったので積極的に仕掛けてみたが、おかげでエリート兵士の基準値がせいぜい20Lv.程度であることも確認済みだ。

国家に所属する軍人を拉致するのはまずいが、彼らの知識はぜひとも欲しい。捕らえた者たちの処遇で悩んでいたとき、幸運な出来事が次々に起きた。

 

 

ほぼ入れ違いでカルネ村に駆けつけてきた王国戦士長を名乗る男に、雑魚を3人ほど引き渡すことで国家を敵に回さずに済んだこと。

派遣したシモベたちが忍者のような外見のため、異形種だと誰にもバレなかったこと。

戦士長は義理堅い実直な男で、村を救った代わりにこちらの存在は伏せるようお願いしたら快く承諾してくれたこと。

渡した雑魚はずっと眠らせていた3人なので、本隊を拘束したことは知られてないこと。

残りの隊員は強力な魔獣に食われるのをこの目で見たと、渾身の言い訳を思いついたこと。

それをきいていた村人が『森の賢王だ!』と援護射撃をくれたこと。

 

そうして手に入れた貴重な現地人は、5人ほど脳を壊してしまったり特殊な魔法で死なせてしまったものの、40人近く手元に残せたのだ。

付け足すならば、その戦士長にはウルベルトが影の悪魔(シャドウ・デーモン)を二体尾行させていたので、どうやらその後も色々と面白いことが起きているとのことらしい。

 

 

「レベリングで言えばゴグンだけは唯一42Lv.までいきましたけど、他は30Lv.いけば良い方でしたからね。やっぱりこの世界では経験値を積んでも、レベルの上限が邪魔をするようです。脅威となる存在が育ちにくいのは大きな救いですが...」

 

情報が抜き終われば、他にもたくさんの実験に使い回すのが貧乏性の(さが)である。

 

「でも第五位階まで使えるようになったなら上々だと思いますよ。あ、そういえば人間種って種族レベルがないんですよね?種族変換や職業(クラス)再構成(リビルド)とかってもうやりました?」

 

 

「もちろんやりましたよ。先遣隊の隊長だったべリューズ?とかいう男を一回殺して再構成(リビルド)しようとしたら、蘇生が失敗して灰になっちゃったんですけどね...蘇生はその場で復活することが分かったので、蘇生の杖(ワンド・オブ・リザレクション)をケチって死者の復活(レイズ・デット)使ったんです。5Lv.の罠をすっかり忘れて油断してました」

 

情報収集から実験までの期間は、ニューロニストの部屋が彼らの寝室代わりだった。

いかに過酷な訓練を受けた特殊部隊員とはいえ、耐えられる者などいるはずもない。しかし隊員たちには驚くべきことに(ニューロニストには喜ばしいことに)、最後まで声を上げ続けていられたのがなんとべリュースである。

 

 

「うわ、可哀そう...でもないか。たしかそいつ人殺しのくせに最後まで醜く命乞いしてた奴ですよね?ならまあ元から極刑ものですよ」

 

「そう言って頂けるとありがたいです。いや、それでですね!副隊長のロンデスって男は条件満たしてたんで、まず獣人の種子っていうアイテム使って種族変更したんですよ。そしたらなんと彼、人狼(ワー・ウルフ)になりまして!感動してしばらく召喚したアンデットと戦わせてたら、種族レベルも5まで上がりました。再構成(リビルド)も大成功で、呪い装備でレベリングしたら暗黒騎士(ダーク・ナイト)とまさかのカースド・ナイトを取得したんです!」

 

「えっ!?カースド・ナイトって、シャルティアもとってる職業(クラス)だよね!?60Lv.くらい必要じゃなかったっけあれ」

 

「それが不思議なことに、ロンデスは40Lv.ちょうどでストップしました。つまり、この世界の職業の分岐(クラス・ツリー)はユグドラシルとは似て非なるものなんです!」

 

アインズは何度も沈静化されながらも、こうして語り合える楽しさと謎を解き明かしていくワクワク感を受け、徐々に興奮していく自分を抑えられずにいた。

 

 

「おお~!僕が自然界を分析している間に、アインズさんは真理を探究していたんですね」

 

「真理だなんて!それは大袈裟ですよブルーさん」

 

「いやあ、僕はそう思いますよ?」

 

こうして未知をまた一つ味わったところで、ブルー・プラネットはずっと気になっていたことを尋ねることにした。

 

 

「...それで結局、アインズさんが隠してる皇帝を説得するための切り札って何なんですか?」

 

「ふふふ、やっぱり気になりますか?でもここまで来たんですから、せっかくなんで直前まで秘密にさせてください」

 

「うわ、それはずるいですねー。じゃあヒントだけください!」

 

 

 

「ヒントですか?まあそれならいいですよ。えっと..営業で大切なのは、まずインパクトのある大きなメリットを前面に出してプレゼンすることです」

 

「なるほどなるほど。じゃあプレゼンのタイトルとかってあるんですか?」

 

「もちろんありますよ」

 

「それは教えてもらえたりします?」

 

 

アインズの顔は骸骨だが、ブルー・プラネットはこのとき彼がニヤリと笑うのを確かに幻視した。

 

 

「名付けて...”魔導王杯”です」

 




菊池 徳野 様
スペッキオ 様
毎度誤字脱字報告ありがとうございます!
実は今回チェックしてないので、絶対たくさんあります...
本当にすみません。

アリア様の感想があまりに嬉しかったので、ちょっと力入れます。
チョロイ自覚はあります。
アインズ様ほどではありませんが。

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