骸骨と山羊と自然科学者   作:chemin

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ユリさんとブルプラさんが書けなくてつらいです。
これ30話以内に終わるかな..?

ちなみに魔道王杯は、昔やってた某黒い猫のクイズゲームでやってるイベントから閃きました。深い意味や設定なんかないです。マスラヲ期待させてしまった方すみませんでした。


魔導王と鮮血帝3

「ま、魔導王杯?」

 

てっきり森妖精(エルフ)の奴隷制度をつついてくると予想していたジルクニフは、眼前に凛として立つ絶世の美女からの先制攻撃をもろにくらった。

ただでさえ謁見の冒頭に繰り出した、幾多の女性を落としてきた会心の皇帝スマイルも効果はなかったというのに。権力をかさに着ない親しみを込めた好青年を完璧に演じたはずが、手応えどころか侮蔑を含んだ嘲笑で返されるなど初めての経験だ。すぐ側で警護にあたる四騎士三人のうち、バジウッドが珍しいものを見る目でナーベラルを見ている。ちなみにフールーダは現在別室待機だが、遠視でこの醜態をしっかりと見ているのだろう。

ジルクニフが容姿に自信を失いかける中、ナーベラルの斜め後ろで膝をついていたゴグンが口を開いた。

 

 

「左様でございます。我がアインズ・ウール・ゴウン魔導王は皇帝陛下との会談をご所望すると共に、両国の友好的な歩み寄りの証として、ぜひバハルス帝国と共同で盛大な催し物をと申しております。なんでも貴国は()()()()()()()最高峰の素晴らしい闘技場をお持ちだとか。私共もせっかく帝都に参りましたので、外観のみではありますが先日拝見させて頂きました。しかしまあ、なんとご立派な建造物でございましょう!そして熱狂する民衆、臨場感溢れる戦い、剣の打ち合う音...アインズ様もこのような祭典を大変好まれておいでの御方。帝国民の皆さまにとっても良き娯楽になりますので、なにとぞ前向きにお考え頂ければと存じます。魔導王杯の詳細につきましては、陰王がお渡しになられた箱に収められた書に記してございます」

 

(アインズ様、だと?ずいぶん親し気だが、もしやこいつは王族か?...にしては腰が低い。この女がお手付きの者で、男はその親族と見るのが妥当か...というか、この女の服はメイド服...だよな?)

 

大振りな仕草で息つく暇もなく言い募ってくる。それにどこかぎこちなく感じるのは、誰かに準備された台詞や指示された動きでもしているからなのだろうか?

いずれにせよ、急にこんな提案をされても頷けるわけがない。服や話題には面食らってしまったが、いつもの冷静さを取り戻してきたジルクニフは手持ちのカードを一枚切ることを決意する。

 

「...そうか、まず会談の申し込みは大歓迎だよ。明日にでも日取りの調整のために配下の者を遣わそう。私も魔導王殿にはぜひお会いしてみたいと思っていたからね。それにしても『アインズ・ウール・ゴウン』という名は寡聞にして聞かぬ名だが、もしや王は()()()()()()()()()()なのだろうか?」

 

その言葉にナーベラルがピクリを眉を吊り上げ、不快感を露わにした。

 

(どうやら図星のようだな)

 

「ああ、御気分を害されたのなら失礼した。しかし領地の場所も誰も知らぬし、魔導王については存在さえ疑問の声が上がっているほど。如何せん謎が多すぎて、わが国としてもどのように接していくべきなのか分からないのだよ。それと魔導王杯に関しては性急に過ぎる故、この場で返答はしかねるな。まずはそちらの言う書を検めねばならないし、なによりあの闘技場は私の一存だけでは...」

 

 

ジルクニフには確信めいたものがある。

これは高官たちとの話し合いでも出た結論だが、まず間違いなく魔導国は()()()()()だ。

根拠はフールーダの古き記憶と、神話のような内容の一枚の記録用紙。かつて圧倒的な力をもって世界を震撼させた”魔神”、その生き残りの拠点が南方にあるということらしい。

幸い破壊を求める魔神は十三英雄の時代に滅ぼされたとされている。つまり今回の双王国の噂をきく限りでも、比較的温和な魔神が何らかの目的で表舞台に帰ってきたのだろう。あの魔神が相手ならさすがの法国も一旦手を引く理由は分かるし、温和であれば言論を交わしあわよくば抱え込むことさえ夢ではないはずだ。なにせこちらには伝説の十三英雄に匹敵する、逸脱者フールーダ・パラダインがいるのだから。

これが帝国上層部の一部の者たちで共有されている、極秘の情報であった。

 

そのため奴隷制度の対応策が空振りになった今、

『そちらの正体のは目星がついている』

という揺さぶりをかけてみることにしたのだ。

 

しかしその目論見も、ナーベラルの強く遮る声の前に儚く散っていった。

 

 

「救いようのない馬鹿ね」

 

「なっ」

「貴様、無礼な!」

 

突然の高圧的な態度に、同席していた執政官や近衛兵たちがにわかに色めく。

 

「黙りなさい」

 

しかし完全武装した大の男たちの敵意をそよ風のように受け流し、むしろ圧し返す勢いで一喝されてしまった。

 

「南方に潜んでいる強者?よく分からないけれど、そんなものと至高の御方々を一緒にしないでくれるかしら。アインズ様は私たちなどには到底理解できないほど先の未来をお読みになり、それを意のままに操ることのできるいと尊きお方。すぐにこの国の虫けら(コメツキムシ)たちにも分からせてあげるわ」

 

ジルクニフはこの怜悧な目つきと口調こそが本来の彼女なのだと、数々の腹芸をこなしてきた辣腕の皇帝として一目で見抜いた。と同時に、狂気すら孕んだ殉教者さながらの言葉も、偽りのない心底からのものだと分かってしまう。

 

「それに大きな勘違いをしているようね。アインズ様は御寛大にも、お前たちごときにお会いになると仰ってるの。ならお前たちは出来うる限り最大のおもてなしをすればいいのよ」

 

一方のゴグンも、やる気がありすぎて喧嘩腰になってきたナーベラルに歯止めをかけようと耳打ちをする。

 

「ナーベラル様、臣下が礼を失せば主の責。我らは平和的外交のため来ておりますので、ここはアインズ様のためにも耐えてください」

 

「..ちっ。仕方ないわね」

 

「...ナーベラル様に代わって先の非礼をお詫び申し上げます。まず会談については承知致しました。また魔導王杯に関しましては、闘技場の使用に関してはオスク様にご確認頂きたく存じます」

 

 

ゴグンが前に出て謝罪したが、帝国側、特に文官たちがナーベラルに対して殺気立ち始めたため、謁見の間は不穏な空気に包まれていった。

 

(オスクだと?...まあいい、今はこの雰囲気をどうにかせねばな。手を出されてはいないが、これはこれで良い批判の()()になった。こうなればもうじいにご登場願おうか)

目線で万が一に備え魔法で遠視していたフールーダを呼び寄せる。場を収めるのに一役買ってもらうフリをして、生まれながらの異能(タレント)を使い彼らを直接見ることで魔力を量ろうとしたのだ。

 

 

「どうした。騒がs...」

 

そうして満を持して現れた三重魔法詠唱者(トライアッド)は、ゴグンたちに目を向けた瞬間に豹変した。

老人とは思えぬ素早さでゴグンに走り寄り、飛び出んばかりに眼を見開き叫んだ。

 

「な、なんと!!そのオーラは..第五位階か!!後ろの者たちも、魔法詠唱者(マジックキャスター)は全員が第四位階以上に到達しておるではないか!素晴らしい...素晴らしいぞ!!その若さでどうやったのだ!師は誰だ!!??」

 

フールーダの様子に毒気を抜かれ困惑していた周囲の人間も、信じられないといった表情を浮かべる。

 

「過分なお言葉です。私などはナーベラル様の足元にも及びません」

第五位階ともなれば天才どころか間違いなく英雄級だ。人類の頂点と言っても過言ではない。

そんな男が、一見非常に美しいだけのメイドらしき美女の方が更に強いと口にした。

 

「む?...しかしそちらのお嬢さんは全くオーラが見えないが」

 

さすがにハッタリか

ジルクニフを含めて誰もがそう思った。

 

「<天候操作(コントロール・ウェザー)>」

 

しかし安堵の気配が漂うその前に、ナーベラルが突然魔法を放ったのだ。

会談を申し出ておいてその使者が皇帝を前に魔法を放つなど、戦争ものの重大な規約違反である。

 

すわ死闘の引き金かと皆が武器を構える中、数人が外に至る扉から秋口にしては早すぎる雪を伴う冷たい風が入ってくるのを感じた。

 

「おい...なんか寒くないか?」

 

誰かが呟く頃には外から人々の喧噪が漏れ聞こえてくるようになる。

魔導国の使者団が誰も戦闘態勢に入らないのを確認してから、フールーダは慌てて外に出て空を見上げた。

 

(これは...この魔法は雲だけでなく、天候そのものを操っている...!!)

 

季節外れの雪と北風という異常気象に、平民も城内の一部警備兵も屋外に出て何ごとかとざわついているようだ。

それらの声を背に、興奮した足取りで再び謁見の間へと戻り、誰にともなく告げた。

 

「...今のはたしかに、第六位階の<天候操作(コントロール・ウェザー)>でした」

 

「そうよ。そしてもちろん、私などアインズ様の足元にも及ばないわ」

 

「そ、それはつまり...!」

 

「申し訳ありません。皇帝陛下を前に魔法を行使した非礼をお詫びするとともに、これ以上お伝えすることもございませんのでこれにて失礼いたします」

 

 

このやり取りを最後に補佐が慌てて礼をし、一団を率いて去っていった。

さすがにもう止めようとする兵も文官もいない。相手は逸脱級の美女を筆頭に、英雄級の補佐と天才級の集団なのだ。

腰が引けたのは帝国四騎士とて例外ではない。使者団の退席を見送った”激風”ニンブル・アーク・デイル・アノックは、使者団の退席後に項垂れた皇帝に報告しに歩み寄る。

 

「最前列に唯一戦士風の精悍な男がいたのを覚えてらっしゃいますか。身のこなしや一瞬だけ見せた殺気からして、彼はかの王国戦士長と同等かそれ以上の実力と考えられます」

 

信頼する部下の狼狽した声とフールーダの口元に滲む裏切りの兆しが、ジルクニフに今回の敗北を突きつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__それから三日後___

 

『バハルス帝国皇帝およびアインズ・ウール・ゴウン魔導国魔導王の共同開催!!その名も魔導王杯!!!』

という売り文句で、現在闘技場の前ではチラシが貼りだされている。

 

 

近頃なにかと話題の魔導国が、ついにその神秘のベールを脱ぐらしい。

 

(まこと)しやかに囁かれる噂も手伝い、帝国民の間ではこの一大イベントに並々ならぬ関心を寄せていた。それこそ誰が優勝するのか早くも賭けを行う者が出てくるほどに。

 

魔導国という馴染みのない国が関わってくるというのに、どうして市井はこれほど歓迎ムードになっているのか。これはアインズ自身にとって嬉しい誤算であったが、闘技場が生活の一部に深く根付いている彼らからすれば『闘技場好きの他国の王が皇帝を誘って面白い祭典をつくってくれた。皇帝が許可したくらいだから相手も悪い国じゃないのだろう』という解釈になっているのだ。観客側だけでなく、興行主にとっても実りの多い提案である。話題性に富み、帝国の大々的なバックアップがあれば集客率も高い。果てはモンスターや商品の武具を、魔導国が提供してくれるときている。武王を擁するオスクを筆頭に、催す側も観る側も一体となって楽しんでいたのだ。

 

 

 

もちろん、楽しくない人間もいる。

 

 

魔導王杯の開催で最も不愉快な気持ちになっている者が、帝城の執務室の中にいた。

 

「くそっ!」

ジルクニフは最近痛み出した胃の上を抑え、深呼吸してから賢君の姿を崩さぬよう気を取り直した。

 

「舐めていた...やはりあいつらは劇物だったようだ。フールーダは既に主席宮廷魔術師の仕事をかなり放棄しており、魔導王に降るのは時間の問題だろうな」

帝国最高の戦力であり人類最強の個であったフールーダ・パラダインの離反は、もはや疑いようがない。皇帝は謁見の日から”じい”と呼ばなくなり、フールーダも”ジル”と呼ばなくなった。今は会談や魔導王杯の準備のために通常の業務から遠ざかってることにしているが、いつも執務室に招集するメンバーには周知のことだ。

 

 

「しかし本当にパラダイン様が我らバハルス帝国を裏切るのでしょうか?百年以上も代々皇帝に仕えて参られたというのに...」

 

「気持ちは分かるが、現実を見るしかなかろう。お前も分かっているはずだ。あの時のフールーダの様子を見れば、国への忠誠と魔導の探求、どちらを選びそうなのか」

 

「...」

 

認めたくないのは理解できる。物心ついたときから政治の世界で生きる術を教わり、誰よりも尊敬していたジルクニフ自身が一番否定したいのだから。

好々爺と孫のような仲の良さを垣間見せていた二人を知るだけに、誰もが二の句を継げずにいた。

 

 

「今は現状を分析し、これからどうするかを考えるべきだな」

 

気を抜けば暗い道へと迷い込んでしまうようだ。

ジルクニフは建設的な時間にするべく、あえて事務的な口調で感情の入る余地をなくす手段に出た。

 

「まず今回の魔導王の本命は、フールーダの獲得だろう。森妖精(エルフ)の箱は軍事力の示唆ではなく、魔法技術に興味を抱かせるための布石とみた。陰王マーレで気を引き、メイドの使者で落とす。双王国離反の可能性を探るこちらの裏をかき、逆にフールーダに絞って先手を打ってきたと考えるが、どうだロウネ」

 

「ハッ!であれば一切森妖精(エルフ)の件に触れなかったことも、双王国建国から間を置かぬ拙速な魔導国の介入も腑に落ちます。しかしそうなれば...()()()()を見ても、相当深くまで調べられていることになるかと」

 

「アレか...魔法省の者はいるか?」

 

「ここにおります」

 

「お前は高弟の片割れだったな。()()()()は何者かに侵入されたり、魔法的な監視を受けたりした痕跡はないんだな?」

 

「はい。あそこはフールーダ様も儀式を用いて防壁を強化なされておりました。しかし、仮により高位の魔法を受けていた場合、気づけなかった可能性はございます」

 

 

第七位階以上の魔法の行使。以前ならあり得るとは思いつつ、そこまで警戒はしていなかった。

しかし今は魔導国という目に見える相手がいる。そしてあのナーベラルとかいう女の言うことが正しければ、魔導王は最低でも第七位階は使えるということ。

 

 

「ならばもう一度出入りした者を中心に、全職員を洗いなおせ。これは最優先事項だ」

 

「承知致しました!」

 

「諸君は引き続き、会談に先んじて行われる魔導王杯の準備にかかってくれ」

 

「「「ハッ!!」」」

 

「バジウッド、ニンブル。分かっていると思うが、レイナースには目をつけろよ」

 

「もちろんです」

 

「...同僚には心苦しいが、パラダイン様の件があっちゃな」

 

「任せたぞ。それと魔導王杯にエントリーするワーカーや冒険者の選定も急いでくれ。個人戦の戦士が残り4人。団体戦の4~6人チームがあと2つ。景品はチラつかせてもいいが、魔導王が準備するものだって触れ込みも忘れるな。来週の頭から開催だから、闇討ちも考慮して予備も選んでおけ」

 

「ハッ、直ちに」

 

「はいはい。しかし人使いが荒いですね。この短期間に個人戦に団体戦の準備、しかも上位者の商品の喧伝なんぞ商人の仕事じゃないですかい」

 

「それは魔導王に言うんだな。全てはこの書状で指定されていることだ。しかし..どうやったのか、オスクにまで根回ししていたらしい。あいつめ、魔導王杯のことを既に知ってて日程まで決めていやがった」

 

 

そう言って机の上に置かれている”森妖精(エルフ)不開箱(あかずの箱)”から取り出した書状に眼を向けた。

 

魔導王杯について実に詳細な提案がかいてあり、それこそ良心的な商人の企画書にも見える。しかしこの催し物も前回と同じように巧妙な目くらましかと疑いたくなる、最後にとってつけたように加えられた一文が問題だ。

 

 

「くそ...魔導王、一体どこまで知ってるんだ...?」

 

 

そこには

『アンデッドの労働力について、ぜひともお話しましょう』

と書かれていた。

 

 




スペッキオ 様
壱 様
誤字脱字報告ありがとうございます!
最近は読み返していると平仮名がゲシュタルト崩壊を起こすので、自己採点甘めになっております。反省します。

次回は御三方揃い踏みで、魔道王杯スタートさせたいです。
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