そんで修正して入場シーン書いたらバトル入らなくなるっていう。
「お待たせしましたアインズさん。指定通り森妖精から40Lv.の戦士一人連れてきましたよ。っていうか急遽レベリングして40ぴったりに調整してきたんですけどね」
そう言って前に押し出されたのは、双王国の言わずと知れた大貴族、ドルト・ファーヴル・ブンデスであった。
彼がここにいる理由は三日前遡る。ナーベラルがバハルス帝国の皇帝と謁見したのを機に、アインズが二人に魔導王杯のことをネタばらしした時のことだ。大会の説明をきいたウルベルトが悪魔ロールで放った一言が、ドルトに悲劇をもたらすことになる。
「ではせっかくなので、俺らも少し遊びましょうよ」
せっかく楽しそうなイベントなのだから、ただ観ているだけではつまらないとのことだ。裏側から糸を引きたがるあたり、いかにも彼らしい。
とは言え、さすがに自分たちが参戦するのは趣旨に反するので、どうやって遊び心を盛り込むか決めねばならない。結果として三人が一人ずつこの世界の戦士を代理に立て、その戦士のレベルは40に揃えることになった。アインズたちの代理というポジションに、守護者たちが『自分にその大役を!』と鬼気迫る表情で立候補してきたのは想像に難くないだろう。しかし大切なNPC同士をそんな場で戦わせるわけもなく、魔導王杯の狙いを諭しながらどうにか納得してもらうことに成功した。そうしてアインズは異なる武技を遣う現地の同レベル同士がどんな戦闘をするのか興味があり、ノリノリでロンデスを抜擢。ウルベルトは犯罪者や小悪党の捜索中に見つけた、ブレインという剣士を採用。いわゆる”推しキャラ”を応援しながら楽しみたいブルー・プラネットは、双王国からドルトを召喚した。
アウラとマーレが新国王に即位してからは慣れない事務仕事に忙殺されていたらしいドルトだったが、三日前突如として現れたブルー・プラネットに『武器持ってちょっと身体動かさない?』と誘われたのが運の尽きであった。困惑する彼を連れてカルネ村に転移した後はシャルティアに手伝ってもらいながらひたすらレベリングしまくったのだ。効率的な職業構成を目指して双剣を極めさせていたが、同系統の戦士職ばかり取得してもちゃっかりレベルが40に達したのだからこの世界の基準で考えればかなりの才能を秘めていたのだろう。レベリングが終盤に入る頃には、シャルティアが召喚するモンスターをどこか悟り切った顔で淡々と切り刻んでいた。
あとでステータスを確認したら「パイティアス・エルフ」や「シビリアン・コントローラー」など謎の職業もあり、それらがどういった能力を発揮するのかはまだ分かっていない。とにもかくにもこうしてそれぞれの駒が揃い、魔導王杯が開催される前日に帝国の宿屋で集まることとなったのだ。
「なに、私も先ほど来たばかりだ。それで、約束通り指輪などの装備アイテムは無し、武器と防具は遺産級(レガシー)で統一してきたか?」
低い声に一瞬ぎょっとしたが、ギルメン以外が同席しているときは魔王ロールだったのを思い出す。
(久しぶりだったから本物の魔王かと思ったよ......ん?いや、偽物...でもないのか?よし!...考えないようにするか)
「もちろん。しかし彼は二刀流なので、そちらのロンデスは不利でしょうね。あとで武器が複数あったから負けたなんて言わないでくださいよ?」
人間形態をとっているため分かりやすく口角を上げると、アインズも愉快そうに鼻を鳴らした。
「ふん。こちらこそ、ロンデスの種族は人狼だ。腕力や敏捷性は高いが文句は無いな?」
互いの持ち札で張り合う子供のような気分で楽しむ二人だが、この会話を周りできいているシモベたちにとっては拷問でしかない。彼らは至高の御方の代理として公の場で戦えるだけでなく、勝利を確信したお言葉を頂戴しているのだ。その栄誉に値するのは本来ならばナザリックで生み出された自分たちであるべき。
そんな羨望と嫉妬の豪雨がロンデスとドルトに降り注ぐが、ウルベルトの入室によって空気は軽やかさを取り戻した。
「おや、私が最後でしたか。これはこれはお待たせしてしまい申し訳ありませんね」
「お疲れ様です、ウルベルトさん。僕らもさっき着きましたから大丈夫ですよ」
「その通りだ我が友よ。我々はナザリックから直接馬車で来たが、そちらは都合上エ・ランテル経由だったのだろう?ならば謝罪など不要というもの」
「私は良き友人を持ちましたねぇ。そう思わないか?デミウルゴス」
「ハッ!私が至高の御方を評価することなど不敬にあたります。しかし少なくとも、お二方がウルベルト様の御心をご理解してくださる素晴らしきご友人であることは疑いようのない事実でございましょう」
「ふふふ、そうだな。私は親思いの良き子にも恵まれたようだ」
「もったいなきお言葉!」
(...あいかわらず仲良いな、この悪魔親子。そっちの青髪が空気になってるよ)
入室早々に展開される仲良しトークに、シモベたちの嫉妬の視線が今度はデミウルゴスへと突き刺さる。しかし先の二人と違い、デミウルゴスにとっては優越感のスパイスになるらしい。仲間思いな彼は決して面に出さないが、アルベドの背中の翼と同じで、銀色に光る長い尻尾が嬉しそうに激しく揺れていた。
「ふふっ...さて、皆が揃ったのだ。親子の邪魔をするのは本意ではないが、まず段取りの確認といこうではないか」
「おっと失礼。本番も明日に迫っていることですし、すべきことに時間を費やしましょうか」
「すまないな」
アインズの言葉をきっかけにデミウルゴスの尾もシモベの目も大人しくなり、臣下の礼をとり始める。
「面を上げよ」
ウルベルトとブルー・プラネットはこのくだりが二回あると思ったが、驚くべきことに全員が一度で頭を戻した。その代わりとでも言わんばかりに、いつもより濃密な忠誠心を全身から放っている。
「...皆私の意を汲んでくれたことを嬉しく思う」
((アインズさんどうやったの!?))
瞠目する二人をよそに、魔王は重々しく続けた。
「明日より魔導王杯が始まる。まずは個人戦で一日、団体戦で一日だ。それぞれ決勝と三位の決定戦だけは最終日に残すため、これからの三日間で全ての勝者が決まる」
出場が決まっている三人の肩に力が入る。
「上位の三名、あるいは三チームには鍛冶長が安価で制作した遺産級の武具を賞品として与えるが、それらは我らからすればガラクタも同然。しかしなぜ武具を配るのか疑問に思う者もいるだろう。それは簡単なこと。ここにいる三者が手にすればこちらに損はなく、もし他の出場者が得ようともその強者を魔法で場所を探知できるようになるからだ。なにより最大のメリットは、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の大きな宣伝となることにある」
正直特に何も考えず
『戦う人向けの試供品みたいなものだから、ケチりすぎたら印象悪いよなぁ』
程度の理由だったが、例の如くデミウルゴスの前ではそれっぽくしなければなるまい。
「より多くの帝国民に、そして皇帝に!我らと組めば富や繁栄が待っていることを知らしめるのだ!」
「「「ハッ!!!」」」
威勢のいい返事が寸分の狂いもなく重なる。魔法で防音対策をしていなければ、今頃確実に苦情の嵐なはずだ。
「そのために魔導王杯は記憶に残るような催し物でなければな。なに、魅力的かつ斬新な演出も考えてある。今はまだ我々の種族は隠しているが、今回の試みが上手くいけば全て解決するだろう。皆はただ楽しんでくれればいい」
(それ失敗フラグじゃないか...?)
アインズの含みのある言い方に、ウルベルトは嫌な予感が胸をよぎる。
「その後の会談は私とナーベラル、ゴグンに加えて........パンドラズ・アクターとで臨む。用件はアンデットの労働力についてや、魔導国の概要を国際レベルで認知させることだ。今後も長くかかる交渉事なため、成果が出るまでにしばらく時間が必要となる。よってこちらも今は特に急ぎの仕事はないな。確認は以上だ。何か質問のある者はいるか?」
(お願いデミウルゴス!手を挙げないで!)
鈴木悟としての心の叫びが届いたのか、当のデミウルゴスは
『心得ております』
とでも言いたげに優雅に一礼するだけであった。
他にも質問する者はいなかったため、ナーベラルを筆頭に使者団の労いタイムに入る。ゴグンが何故か若干焦り気味だったが、フールーダがこちらの予想以上に喰いついてきた他は特に計画に支障はないらしい。
ナーベラルはクール過ぎて不安だが、なにやら使命感に燃えているようで拳を握りしめていた。
(しきりに頭を触ってるけど、髪型でも気になるのかな?)
労いタイムも終われば、することもない。
皇帝に断りを入れたものの、快適で高性能な馬車を十全に機能させ、帝国の護衛も無視して関所以外はノンストップでとばしてきたのだ。早く着きすぎて明日までヒマである。
「ではアインズさん。魔導王杯のオッズ見ながら予想大会やりません?ここにいるシモベたちも参加で。正解した子には、そうですね...シズみたいに特製のシールかなんかあげましょうか」
戯れで下賜なされた褒美なら頂いても大丈夫だろうと、シモベたちの目が鋭く光る。
ブルー・プラネットの単なる暇つぶしのつもりが、魔導王杯の前哨戦というべき熱き戦いを勃発させる引き金となった。
_翌日_
<< 闘技場 >>
『『皆様!!そろそろ喉は温まってきたでしょうか!叫んで食べて、観て賭けて!今日という日をぜひ楽しんでください!しかし一点だけ、魔導王杯初日から掛け金を全て失わないようご注意くださいね』』
ブルー・プラネットが以前使ったものとは多少異なり、マイクのように振動を増大させるマジックアイテムを使って、司会者らしき男が客を煽っている。笑いをとるのも忘れないあたり、場慣れしたプロなのだろう。
司会がルール説明をしていくが、ここはやはり闘技場。死合いを見世物にしているだけあり、敗北の条件に『死亡』があっても、忌避感どころかより一層の盛り上がりすらみせていた。
諸注意や興行主からの挨拶も終わり、会場のボルテージも徐々に高まってゆく。
『『余計な前置きは無粋というもの!!早速戦士のご紹介といきましょう!まずはこの方。言わずと知れた大ベテラン!
竜殺しの偉業を成した老年のワーカーが、代名詞となる美しい緑の鎧を纏って登場した。
本日の主役たちが現れるとあって、全員の目がフィールドの入り口へと集中する。
『『どんどん参ります!二人目はこの方。魔導国より参戦!背中の大剣の威力やいかに!ロンデス・ディ・クランプ!』』
法国への釣り針として本名で登録したロンデスは、紫の全身鎧に黒い大剣を背負っている。
『『こちらも魔導国傘下の双王国より遠路はるばるやって来ました!
身につけるは森に生きる種族らしい深緑と茶褐色の革鎧に、腰の後ろに据えた純白の小太刀と真紅の短曲刀。なぜ達観したような物悲しさを漂わせているのかは本人にしか分からない。
『『続いて三人同時です!闘技場お馴染みの大型ルーキー!モブテル・モーク!モブルット・ボルブ!モブン・ウッドワンダー!』』
実直そうな軽戦士を先頭に、軽薄そうな
『『今大会の二番人気!もちろん賭けの話です!個人戦での出場となります、“天武”エルヤー・ウズルス!』』
エルヤーは司会の皮肉には気づいていない。顔立ちの良さを台無しにするように、傲慢さを隠そうともしない尊大な態度で一部の黄色い歓声に応えている。
『『皆さん、彼は本物です!かつてあの王国戦士長ガゼフ・ストロノーフと互角に渡り合った男!ブレイン・アングラウス!』』
エルヤーと同じこの世界では珍しい刀を腰に佩いているが、武器も服も明らかに質が高い。御前試合を知らない者も少なくないが、ガゼフと互角となれば期待は保証されたようなもの。
『『さらにさらにサプライズ!なんと帝国が誇る四騎士から直々に申し込みがありました!華麗で苛烈な“重爆”レイナース・ロックブルズ!!』』
昨日まではオリハルコン級の冒険者だったはずの枠なのに、まさかの展開に客席も大いに湧いている。苦い顔をしてるのは、残りの四騎士と皇帝のみであった。
『『最後を飾るのは奴しかいない!!今大会のダントツ一番人気!魔導王陛下とオスク氏の希望で参戦が決定しましたが、夢の組み合わせを実現して頂き感謝の念が尽きません!ご紹介しましょう!我らが“武王”!!!』』
今日最大の盛り上がりを受けて、その巨体を太陽の光に晒した。彼は人ではない。人ではないからこそ、反則的なまでに強いのだ。
“武王”の名を冠するトロールは、亜人らしからぬ武者の装いをもってフィールドの中央に立った。
壮観である。
武王の勇姿もさることながら、戦士としての高みを極めた者がこれだけ揃っているのだから。
魔導王杯の結末を様々に思い描きながら、舞台に立つ者たちはしばらくの間高揚感に包まれていた。
『『最後に今大会の主催者でもございます、この方々にも盛大な拍手を!!!我らがジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下!!並びにアインズ・ウール・ゴウン魔導国よりお越しくださいました、アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下です!!!』』
突然の謎深き魔導王の紹介に、場内からは拍手ではなくどよめきが起こる。
闘技場を中央から見下ろすテラス席のような場所から、二つの人影が手を振るのが観衆の目に映った。
「あの真っ黒なマントを羽織ってる方が噂の魔導王だよな?」
「だと思うぜ。やっぱ実在してたんだな」
「っていうか、仮面を被ってないかしら?」
「王様というより、金持ちで凄腕の
漆黒の不審者に多くの帝国民が懐疑的な印象を抱くが、魔導王が彼らの眼前で皇帝に握手を求めたため、どうやら親しみや謙虚さも備えているようだと判断された。
皇帝が握手に応じて和やかな笑みを浮かべると、ようやく大きな拍手が巻き起こる。
『『ありがとうございました!!なお両陛下のご意向により、お言葉を賜りますのは最終日の全試合終了後とさせて頂きます!!』』
良好な関係をアピールした二人の支配者は、用は済んだとばかりにそそくさと席へ戻っていった。
『『それでは皆様お待ちかね、いよいよ第一試合へと参りましょう!初戦を飾るのはパルパトラ・オグリオンとロンデス・ディ・クランプの対決です!!他の方々は一旦控え室へとお戻りください』』
この言葉を皮切りに、暴力を待つ独特の緊張感が静寂となって人々を襲う。
乾いた土の上には、二人の男だけが残された。
モブトリオに関しては特に意味はないです。
悪気もないです。
スペッキオ 様
対艦ヘリ骸龍 様
S(人格16人) 様
忠犬友の会 様
毎度ながら誤字脱字報告ありがとうございます。
ボキャ貧なくせに間違い多くてマジすんません。