骸骨と山羊と自然科学者   作:chemin

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嘘ついてすみません。書き溜めちゃんと読んだら今回思ったより文字数あったので、大きな展開は次話に持ち越しました。

戦闘シーンやナザリック無双をお待ちの方は次話にご期待ください。


ブループラネットの布石
陽王と陰王1


転移から一か月半後......

 

 

 

 

夜も深く森からは梢のざわめきしか聞こえなくなった頃、ナザリック表層部で三つの影が星を見上げながら談笑していた。

 

アンデット・悪魔・精霊と、三者ともに種族特性として睡眠不要なためここしばらくは昼間にお仕事、夜間は共有のための報告会といった日々を送っている。ちなみに報告会が終わればギルメン会議と銘打って必ず三人の時間を設けていた。

 

 

そんな毎日が一週間経った頃

『せっかく星がキレイなんだから夜空を見ながら話しましょうよ』

とロマンチックな口説き文句でブルー・プラネットが提案してきたのだ。リアルの世界では不可能だった贅沢な空の楽しみ方に反対する理由もなく、以後雨天時以外は基本的に星を見上げながらの会合となっている。一応室外ということで感知魔法に対しての攻性防壁と会話漏れを防ぐ静寂(サイレンス)をかけてはいるが、支配者ロールの不要な心休まる時間を失わないよういつもシモベは遠ざけていた。

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、でもようやくこの世界のことが大体分かってきましたね」

 

 

「まあウルベルトさんは王国担当でしたから地理的にも近くてわりと早かったですもんね。私も帝国は法整備がしっかりしててトップが分かりやすかったから楽でしたけど...」

 

 

そう言ってちらりとブルー・プラネットの様子を窺う。

 

 

「お二人はいいですよね...僕なんかガチ宗教団体相手で、しかもプレイヤーの匂いがぷんぷんしてる法国ですよ。最初は一番楽だと思ってたのになあ...」

 

 

 

 

 

あれから数々の実験の果てに”この世界がユグドラシルではないどこかの現実である”と最終結論が出てから、ひたすら情報収集に勤しんだ一か月だった。外に出るのは控えてほしいとNPCからの懇願に近い要望もあり、三人はそれぞれ傭兵NPCを十体ほど召喚し、魔法やマジックアイテムで感覚を共有しながら周辺を検めていくという手段をとった。途中からモモンガとウルベルトは<記憶操作>のコツをつかみ、ブルー・プラネットは<精霊召喚>を上手く用いて効率的に進めていったが、中世ヨーロッパに魔法を加えた風のこの世界では個人の知識は非常に狭く情報伝達の仕組みも未発達なため序盤はかなり苦戦したものだ。

 

 

本格的な調査を始めた頃は緊急事態に備え各自の操るシモベを固まって行動させていた三人だったが、すぐに分担作業の道を選ぶことになる。というのも最初に見つけた村で虐殺劇を繰り広げている騎士たちのレベルの低さに肩透かしをくらったり、周辺国家最強と名高い王国戦士長なる者が現れレベルの低さに呆気にとられたり、その戦士長を狙ってきた精鋭を揃えた秘密部隊だという魔法詠唱者集団のレベルの低さに呆れたりしたからだ。

 

 

しかし弱さに反して特殊部隊所属の彼らからは周辺地理について貴重な情報をたくさん頂いた。そこからナザリックから見て東方の鮮血帝が統治する『バハルス帝国』はモモンガが、王政が弱く貴族が腐っている『リ・エスティーゼ王国』はウルベルトが、そして神官長という聖職者たちの会議で国を動かす『スレイン法国』はブルー・プラネットがそれぞれ情報収集を担当し、分担作業によってスムーズに事を運ぶことができた。

 

ちなみにあのニグンだかサングンだかはまだ生かして有効活用させてもらっている。

 

 

 

 

「ま、まあでも戸籍管理は法国が一番しっかりしてましたし、最初はかなり助かりましたよ!」

 

 

一番のハズレくじを引いた友人をモモンガは必死にフォローする。日本でも電子化が進むよりもっと昔は、寺請制度など宗教関係の施設が戸籍管理を行っていたという。法国も熱心に六大神なるものを信仰していたり国策により優秀な戦力を育成したりといった背景から、近隣諸国に比べかなり正確に人口や家系を把握していた。おかげで初期の有益な情報はほとんどブルー・プラネットがもたらしたと言っていい。

 

 

 

ところが途中で商人として潜り込ませていたセバスに対しての高位の監視魔法を感知し、さらに70Lv.の隠密に優れた傭兵NPCが法都の神殿の調査中に二体も消されるといった事態が起きた。この世界で初めて強者の存在を確認したため、現在は慎重を期して停滞気味である。おそらくは漆黒聖典なる部隊の例の”ヤツ”だろうが、他人の記憶を見ただけではレベルまでは分からない。なにより...

 

 

「いやあ調査は今アウラとマーレに作ってもらってる仮拠点が完成すれば、あとはローリスクで再開できるんですけれど...」

 

 

「...やっぱりアルベドとデミウルゴスですか」

 

 

 

 

”異形種の排斥”というスレイン法国の国策が、ナザリックに属するシモベたちの逆鱗に触れたようである。

 

竜王国を担当しているアルベドと聖王国を担当するデミウルゴスは定例報告会でこれをきいた次の会で、[法国総駆除計画]なるものを立案してきた。その二人だけでなく賛同する他のNPCまで宥めるのに一苦労した記憶はまだ新しい。

『下賤な神を崇拝する下等種族が』とか

『万死に値する愚劣な思い上がりには、凄惨で苛烈な罰を』とか、笑顔なのに滲み出る怒気はすさまじいものがあった。

 

ぷにっと萌えのかつての教えを引き合いに

『表立って敵対したり攻撃するのは相手戦力をよく分析してから』と説得すると渋々引き下がったが、デミウルゴスが『では侵攻の際はぜひ我々にお任せください』と時限爆弾を設置していくし始末に負えない。

 

 

「あんなに頭の良い子達を抑えておくなんてムリです。そもそもまずはこの世界のことを調べるってだけのつもりだったのに、なぜかシモベたちは世界征服前提みたいですごくやる気になってるし...ホント助けてください」

 

 

 

 

精神疲労の一端を担う『シモベたちは世界征服前提』というブルー・プラネットの言葉に、なんだか思い当たる節があるウルベルトはかなり焦った。

 

 

 

 

 

 

 

そう、あれもつい最近の出来事だ。自室でアルベドと二人きりになったときのこと。彼女はなぜか部屋付き当番の一般メイドを追い出すように部屋の外に下がらせると、わずかに頬を染めながら急に甘えたような声を出して迫ってきた。

 

 

『あの...ウルベルト様。以前ウルベルト様が仰られていた世界征服というお望みについてでございますが...僭越ながら現在私が、そう !わ た く し が!その崇高なる目的を達成するためシモベ達に指示を出しておりますので、皆きちんと御方の御意思を理解し円滑に行動しております!いずれ必ずやウルベルト様にご満足頂ける成果を御覧に入れて見せます!!』

 

 

急な口調の変化に関する不自然さはまだしも、言い終わるや否やぐいぐい頭を近づけてくるので角がこちらの胸にあたるのではないかと心配になったほどだ。何と答えたものかと迷っていると、デミウルゴスが珍しくノックしてすぐに返事を待つことなく入室してきた。

 

苛立ちが見え隠れしつつも紳士的な態度を崩さぬ自慢の我が子は、断りを入れてからアルベドを連れ出していった。直後に廊下から『もう少しで至高の頭なでなでが...!』『我が主に色目など...!』『恋路の邪魔を...!』『そもそも手柄の独占は...!』など熾烈な応酬があったが、俺は何も知らないし何も聞こえていない。面倒になったので世界征服云々はうやむやにしてしまったことを、ウルベルトは今とても後悔している。

 

 

 

 

 

 

 

 

「...あいつらに意外と壁は薄いんだってことを教えてやらんとな」

 

「「?」」

 

ウルベルトの脈絡のないセリフに二人は首を傾げる。

 

 

 

「あー...なんでもないです。それで、まあ元々俺はユグドラシル時代から狙ってましたからね、世界征服。実際ここはレベルくそ低いからそんなに難しくないですし、ギルメン探すには悪くないと思いますよ。それに法国と評議国以外はもう手は打っちゃってますし」

 

 

とりあえず自分は賛成しておくしか道はない。実際にその誘惑が己の心に妖しく芳しく香ってくるのを自覚している。ならば悩むまでもないだろう。己の欲望に忠実な悪魔となっているウルベルトは、ここに災厄の名にふさわしい覇道を歩む覚悟を決めた。

 

 

「そうですよ。情報も集まってきましたし、いつまでもコソコソ隠れていてはアインズ・ウール・ゴウンの名が泣きますからね。ウルベルトさんのお望み通り、こうなったら世界の一つくらい手に入れてやりましょう」

 

 

加えて願ってやまなかった仲間との再びの冒険に、我らがギルマスはもうノリノリなようだ。ギルメン探しという本懐達成のためのメリットがあり、皆の期待に答えようとする鈴木悟の性質を考えれば彼が反対する理由などないも同然だ。二人目の賛同を得たので、世界征服の是非については多数決というギルドのルールに照らし合わせれば結論は出る。それでもモモンガとウルベルトは残る一名が嫌がるならば無理に実行する気はなかったが、そんな配慮も不要だった。

 

 

「...いえ、まあ、実は僕も賛成なんですけどね」

 

 

渋々ひねり出されたその言葉に、二人はひどく驚いた。そもそもブルー・プラネットはそんなことに興味がないだろうと心のどこかで決めつけていたからだ。

 

 

「なんて言いますか...すみません、正直意外です。ブルーさんも世界征服にご興味があったとは」

 

「興味があるといいますか、いや男のロマンや征服欲みたいなものを感じたわけではなくてですね...僕の目的は支配ではなく、この大自然をどうにかして守ることなんです。」

 

そうなればなんとなく納得ができてきた。

「なるほど。つまり世界征服したら各国に自然保護の法令を設けるわけですね」

やはりそこに繋がっていくのかと、異世界に来ても異形種になってもらしさを失わない仲間がなんだか無性に頼もしく思えてくる。

 

 

「ええもちろんそれもあります。しかしお二人とも、元の世界を思い出してください。自然界の最大の敵は何か。それは自分勝手な人間が使う、よく発展した科学なんです。少なくとも『自然』という言葉の対義語が『人工』と定義されてしまう程度には、人間という生き物は環境を破壊できます。だからあの世界で起きたことをこっちで防ぐために、その危険性を知る者が適切に科学や魔法の進歩を管理しないといけないんです」

 

 

空に輝く星を霧の手でなぞるようにして見上げながら、静かに、そして強く言い切った。先に賛成の立場を表明していたはずの二人にも伊達や酔狂などでは済まない鋼の意志が伝わってきたため、改めて真剣にこの世界と向き合うため気を引き締めた。

 

 

「...そうですね。たしかにこの一か月ずっと『自分たちは普通の一般人だったのに』って言い訳しながら過ごしてきました。初心は大切ですが、巨大な組織と力をもった以上、それに伴う責任と自覚が必要なのかもしれません」

 

 

リアルでは反体制の活動団体に所属し、既得権益の上に胡坐をかく権力者と戦ってきたウルベルトには人一倍思うところがあるのだろう。ゲームの中でしか表現できなかった”悪”の本質を、この現実でまた昇華させていくに違いない。

 

 

 

唯一自身の欲や理想ではなく『皆と一緒にいたいから』という理由で賛成をしているモモンガは、それでも一見して突拍子もないその目標に誰よりも乗り気だった。

 

この二人とならやれる。俺は今一人じゃないんだ。

沈静化されても胸の奥から次々にあふれ出てくるよく分からない高揚感に身を任せ、モモンガは立ち上がって拳をかざし叫んだ。

 

「それでは景気づけにいっときましょうか!我らの手で理想の世界を!」

 

「「理想の世界を!!」」

いいですねえ、と嬉しそうに二人も続けてくれた。

 

 

 

 

気付けばもう空は青白くなり、星の輝きを覆い始めている。

 

「あ、もう朝になってしまったようですから今日はこの辺でお開きにしましょう。僕は今日は予定通り、法国を釣り出すための生餌その1を作りに行ってきます」

 

 

 

そうして骸骨と山羊と自然科学者が親睦を深めた次の日、ブルー・プラネットは二人の階層守護者と合流するため南へと発った。




なんか書いてて不自然だから、会話文は「ブルーさん」「ブルー様」で、地の文は「ブルー・プラネット」にしようかなと思います。というかもっと早く展開させるつもりだったのに...色々と思い浮かんでしまいあれもこれもって駄文が増えるのは困りものです。読みづらい文になってしまいました。

というか
敬意を示しつつツンデレ、って難しすぎません?
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