骸骨と山羊と自然科学者   作:chemin

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エルフの国のオリキャラ回です。
エルフに関して大森林や湖の名前以外ほぼ捏造なのでご注意を。

諸々のネーミングセンスに関しては...はい。


陽王と陰王2

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スレイン法国の南側に位置するエイヴァーシャー大森林。その広大で深緑豊かな土地の中に、三日月湖と呼ばれる湖が存在する。本来であればそこは青く澄んだ水をたたえており、それを飲みに獣や魔物が訪れる憩いの場だった。

 

 

そこへ北方のトブの大森林から世界を滅ぼす魔樹に住処を追われた闇妖精(ダークエルフ)が辿りつく。彼らは枯れた故郷の地を諦め、新たに国を築き三日月湖をその中心とした。そして力ある四人の存在を旗にまとまり、その内抜きん出た一人の強者が始まりの王となる。新王の即位とその超越的な力の下に、一族はようやく安寧を得ることが叶った。

 

 

 

しかしそんな束の間に訪れた闇妖精(ダークエルフ)の平和な日々も、新王が引き金となった戦争の幕開けとともに終わりを告げる

 

 

 

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現在ここエイヴァーシャー大森林にて、初期の頃よりかなり人口が増えた名もなき闇森妖精(ダークエルフ)の国とスレイン法国とが長きに亘り戦争に明け暮れていた。

 

 

闇森妖精(ダークエルフ)側の首都に近い三日月湖のほとりで矢傷を洗いながら、ドルトは整った色白の顔に暗い影を落としていた。

 

(法国が新しく派遣してきたあの聖典が強すぎる...!陛下に参戦して頂けないのなら、このままでは本当に首都が陥落してしまうぞ!)

 

 

 

既に自国の敗北を色濃く感じているこの男ドルト・ファーヴル・ブンデスは、現在スレイン法国戦において計四師団からなる内の第二師団団長を任されていた。ドルトは一族の中でも特別秀でた才能をもって生まれ、第二位階までの魔術を操るだけでなく一流の小太刀と短曲刀の双剣使いという、指揮官としても一戦士としてもこの戦争では欠かせないほどの信頼を一身に集めていた。そもそもこのエイヴァーシャー大森林内に住む闇妖精(ダークエルフ)は基本的にエスパニ家・ブンデス家・プレミ家・セリエ家の4つの貴族家の内どれかに帰属している。各家系が中心となって師団を編成するので、その師団の団長ともなれば一族だけでなく種族全体の中でもかなりの地位に相当するはずだ。さらには第一勢力のエスパニ家の家長が現在の王なので、第二勢力家の家長となったドルトは実質国王の次に発言力をもつ人物ということになる。

 

 

 

しかしそれも戦争に勝ってこそだ。屍の上の権力者など、何も守れぬ己の無能を晒しているようなもの。

 

(王は我らを滅ぼす破滅の王となられるのか...)

 

本音を言えば士気を上げるためにもそろそろ前線へと加わってほしい。が、貴族の矜持としても師団団長の責務としても、王に泣きつき駆り出てるような真似をするのは恥でしかないのも分かる。我々は亜人や獣ではないのだ。王とは誰より前に出て戦うものだなどと、本能に従うだけの愚かな常識など持ち合わせていない。

 

 

(しかし、あれだけの力をお持ちであるのに...!)

 

だからこそ、と思ってしまう。だからこそ知性ある種族の王が戦うとき、そこに特別な意味を持たせられるのだ。王が力ある御子を求めていらっしゃるのは理解できるが、戦に敗れてしまえば元も子もないはずだ。なのに国を憂うどころか女をどんどん激しい戦場に送り出し、無駄死にさせてしまっている。

 

物思いに耽っていると、伝令が慌てふためいて急を報せに来た。

 

「バイエル副団長より緊急の伝令です!左軍の監視が抜かれ、中央軍が背後をとられかけているとのこと!」

 

「分かった!すぐに野伏の部隊に継続的に奇襲させ、バイエルに中央軍の後方を指揮させろ!私の直轄部隊も奇襲に向かう!総員即刻準備せよ!」

 

 

生きて帰れれば何度目かも分からぬ上申を行おう。尽きぬ不安は頭の隅に置いて、一切の躊躇なく指示をとばす。傷は癒えず身も心も休まらないが、一度戦場に出れば油断の先には死が両手を広げて待っているだけだ。ドルトは疲れきった身体にムチ打って、騎獣の背に飛び乗り再び前線へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇襲はどうやら間に合ったようだ。

そこら中で背を向け散り散りになって逃げていく法国兵を見て、安堵のため息を吐く。

まだ目の前には四人ほど残っているが、この程度造作もない。

 

(やるか)

 

腰を落とし武技<肉体向上><疾風加速>を発動すると、すぐさま相手の懐に飛び込んだ。虚をつかれた敵は互いの距離を測りながら得物を振るうが、短曲刀と小太刀の二刀流で水のように滑らかに動くドルトを捉えられない。

 

「ふっ!」

 

最初の踏み込みで最も近くにいた戦士の鎧の首の隙間から小太刀を突き立て、連携攻撃をしてくる槍使いの迫る穂先をかいくぐり<斬刃>を発動しながら動脈のある腕と脚の付け根に短曲刀を滑らせる。動かなくなった両者を尻目に動きの遅い重戦士にフェイントをかけ、左に避けると後衛で呪文を唱えていた魔法詠唱者(マジックキャスター)に背に隠していた短刀を投擲した。そのまま命中するのを見届けることなく、最後に残った自分の戦闘スタイルとは相性の悪い重戦士を<植物の絡みつき(トワイン・プラント)>で動きを止め、指を切り膝裏を刺し抵抗を封じてから兜をとりとどめをさす。

 

ものの数秒であっさり片付けたドルトの手際に、周りの兵から歓声が沸き起こった。油断なく四人の死を検め、武器を収めると再びため息が出る。

 

 

遮蔽物のない平地であれば、挟み撃ちや別動隊はすぐに察知し対応が可能である。しかし草木生い茂る大森林ではとにかく見通しが悪すぎて早期の発見が非常に困難なのだ。もし斥候や監視の目を盗んで裏をとれれば、そこから攪乱や兵站の妨害活動などでかなり戦況を有利に運ぶことができる。

 

そうしたゲリラ戦が得意とする種族は元々森妖精(エルフ)族の方だったが、法国側が少数精鋭の特殊部隊を投入してからは立場が逆転し始めてしまっている。今ではお互いに奇襲のかけあいと、部隊の目となる斥候の潰しあいが熾烈を極めていた。

 

 

本軍に合流すると参謀本部の天幕へ着くまでの時間すら惜しい。

「バイエル!被害の報告を!」

 

「はっ!こちらは中央軍700と左軍500に加え左軍連隊長マイン討ち死に!裏に抜けた法国軍は800程度で、現在ほぼ壊滅させましたが特殊部隊らしき者たちは取り逃がしたとのこと!」

 

 

即座に後ろから声をあげるこのバイエルは、息もつかせぬ連撃と闇妖精(ダークエルフ)随一のスピードで敵を鮮やかに葬る強力な戦士だ。その俊敏なイメージにそぐわず堅実な状況判断能力と慎重な性格を併せ持っているため、ドルトの最も信頼する副官であった。

 

「ちっ、思ったより被害が大きいな...予備軍から援軍を出すか」

 

「であればシャルがよいかと。彼女は防御に秀でた指揮官ですので、穴埋めに最適です」

 

「よし、ではすぐに伝令を走らせよ」

 

「既に向かわせております」

 

これは通常時であれば上官に無断で軍を動かす重罪だと裁かねばならないが、こういった一刻を争う場ではとてもありがたい。

「...あいかわらず電光石火の働き、見事だ」

 

「恐れ入ります」

お咎めなしでむしろ褒めているというのに、眉一つ動かさず簡素な謝意を述べる部下に苦笑を禁じ得ない。

 

 

 

 

 

続けて右軍の状況を尋ねようとすると、前方から大きな音が聞こえてきた。

 

わずかな時間を空けて何か凶暴な魔獣の咆哮のような雄叫びがあたりに響いたと思ったら、立て続けに地響きや悲鳴、突風が木々を揺らす音なども耳に届く。自身も周囲も事態が呑み込めないでいると、前衛にいるはずの歩哨や長槍隊などが規律や命令をことごとく無視してこちらの脇を抜け奥へと走っていく流れができ始めた。

 

 

「どうした!?何を見たのか説明しろ!」

 

さすがに尋常ではない気配を感じ取り、前方から死に物狂いで逃げてきた兵をつかまえ何が起きたのか問い質す。しかし腕をつかまれた女性兵士はよほど混乱しているのか、言葉がきちんとした文章になっていない。

 

「ド、ドラゴンが!王の子、二人、そ、それにあの化け物たち!死ぬ!あんなの勝てるわけない!」

 

それだけ叫ぶように答えて、腕を振りほどき去っていってしまった。

 

 

 

「...ドラゴンに類似した魔物かもしれん。ともかく何か予想もできない異常事態が起きたようだ。今後の戦況に関わるかもしれない、直接確かめに行くぞ」

 

まったく運が悪い、今日は次から次へと危うい展開ばかりに見舞われる。努めて冷静を装いながら、人波をかきわけ騎獣を流れの逆方向へ進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして法国と向かい合う最前線まで来たとき、ドルトは自分の目を疑った。

 

「なっ!?」

 

百歩、いや千歩譲って巨大な狼や不思議な色の爬虫類はいい。

 

そこにいたのは見るからに強靭そうな筋肉と勇猛な体躯をもち、それを宝石のごときアメジスト色に輝く鱗で覆った、知らぬ者はない伝説に謳われる存在であるはずの本物の(ドラゴン)だ。その寿命は千年をゆうに超えると言われる。瞳には超常の生物のみが許される全てを見下すような傲慢さと知性が宿り、魂の底から本能へ訴えかけてくるほどの威圧感(プレッシャー)に震えが止まらない。

 

それだけならまだ、何か自分などには計り知れない事情で噂に高い評議国の真なる竜(ドラゴン・ロード)が来たのだと己を騙せた。しかしその背には二人の闇妖精(ダークエルフ)の子供と、男性と思しき人間が乗っているではないか。それに竜がまるで飼い主にじゃれつく仔犬のように背の者たちに顔を擦りつけている光景もにわかには信じがたい。

 

 

とびきり性質(たち)の悪い冗談だろう。

そうでなければ高位の幻術だ。

 

 

 

彼らは何者なのか、どこから来たのか、どちらかに肩入れする気なのか。至急問わなければならないことが多すぎる。とりあえずは同族ならば話しかけてもいきなり殺されることはないだろうと、萎える勇気を限界まで振り絞り一歩踏み出した。

その瞬間、それが合図だったかのように急激に周囲の様子が変わっていく。子供の片割れが腰に携えた大きな巻物を開くや否や急激に空の色が茶色く濁っていき、樹海だったはずの四方から植物が消え失せ乾いた岩肌が露わな不毛の地へと変貌を遂げる。

 

 

「総員、防御態勢!」

 

 

戸惑いや不安に押しつぶされそうになるが、培ってきた経験によって反射的に部下に命令を下した。気づけば空中に人間の男と闇森妖精(ダークエルフ)の少女が浮かんでいる。もう一人少年がいたはずだが、魔獣や竜もろともどこにも見当たらない。

 

「派手な登場から5分、探知も接触もなし。山河社稷図使用、アウラより報告で回避者なし。予定通りいきます」

男の方が頭をおさえながらぶつぶつ独り言を呟いている。現状は把握できていないが間違いなくこの男が何かやったのだろう。見渡せばかなり広い範囲で両軍ともにの兵士たちが呆然と立っていた。

 

 

 

「うーん、ちょっと法国の兵士が多いけど、まあいいか。マーレ、頼めるかい?」

 

「は、はい!ブルー・プラネット様!お任せください!」

 

近くにいるドルトにはどうにか二人の声が届くので分かるが、どうやら人間が主であの少女は良くて部下、悪ければ奴隷か服装からして慰みものなのかもしれない。一刻も早く意思疎通を図りたいが、少女の方がどこからか筒状の道具を取り出しこちらに呼び掛けてきたので、少しでも多くの情報を得るためにまずは聞くことに集中する。

 

 

「み、皆さん!ぼ、僕の名前はマーレっていいます!さっきまで一緒にいたのは僕のお姉ちゃんで、アウラって名前です!そしてこちらにいらっしゃるのは、至高の御方のお一人であらせられるブルー・プラネット様です!えっと、あの、光栄にもブルー・プラネット様が今から皆さんに直接お話をしてくださいますので、ちゃんと静かにきいてください!」

筒状の道具はマジックアイテムだったらしく、どこにいても聞きやすい一定の音量で声が流れてきた。

 

 

マーレとアウラとブルー・プラネットか...

先触れに従者を一度挟むあたり貴族か王族かもしれない

あいつは一体何を語るのだろう?

得体の知れない大きな恐怖に包まれながら、ドルトは言葉を待った。




ネイア嬢や禿ジルのポジション作りがなんとも上手くいきません。サブタイと今回の内容読めばオチまで予想できる方も多いでしょうが、お付き合い頂けると幸いです。

書きためあっても平日連チャンは大変ですね。
来週はペース落ちそうな予感。
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