骸骨と山羊と自然科学者   作:chemin

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色々とご指摘を頂きました。読みづらくてすみません。
文章が長くて回りくどいのはもはや癖です、ご勘弁を。

とか言いつつ今回も五千字近くに...

菊池 徳野様 NKVD様
先日は誤字脱字報告ありがとうございます。

追記
重大なミスがありました。こいつら原作ではダークエルフでなく普通のエルフでした。独自設定ということでご認識ください。

holubo様ご指摘頂き大変ありがとうございます。


陽王と陰王3

<< side ブルー・プラネット >>

 

 

ブルー・プラネットは頭の中で台詞を反芻しながら口を開いた。

 

 

闇妖精(ダークエルフ)と法国の皆さん、初めまして。先ほどこの子に紹介してもらった通り、僕の名前はブルー・プラネットと言います」

 

マジックアイテムは正常に働いているらしく、遠くにいる者もきちんと聞こえているようだ。かなり警戒されてはいるが、こちらの話を聞いてくれているので問題あるまい。

 

 

「今は仮の姿のため僕が人間に見えるでしょうが、真の種族は大地の精霊です。今日ここにやって来たのは、我が子同然であるこのアウラとマーレの願いを叶え、闇妖精(ダークエルフ)の方々を法国の魔の手から救うためです」

 

 

正確に主旨を理解させるため、短く区切り言い聞かせるような口調で優しく語りかける。予想通り『人間ではなく精霊』と『闇妖精(ダークエルフ)の味方』という部分に喰いつき、両軍から小声で話し合う者が出てきた。

 

「従って、法国の皆さんはこの空間から出たらすぐに全兵士をこのエイヴァーシャー大森林より撤退させてください。この戦争に限り僕たちが貴国の兵に直接手を下すことはありませんが、これ以上攻撃を続けるというのなら闇妖精(ダークエルフ)の勢力に支援の魔法を行使させて頂きます」

 

そう言い終わると「こちらの話は終わった」と言わんばかりに待ちの姿勢に入った。小声の内緒話がどよめきへと進化していく。

 

さあ、ここからの相手の選択で、法国の隠れた戦力がどの程度かつかめるはず。86Lv.の竜で<竜の威風(ドラゴン・オーラ)Ⅰ>を見せたのだから、紛れている六色聖典の奴らが勝手に自国の強者と比較し判断してくれるだろう。あとはその聖典の隊員を見つけるため<生命の精髄(ライフ・エッセンス)>を無詠唱で発動し、能力が高そうでかつ一兵卒とは異なる装備を纏っている法国兵を探していく。そして近場に一番HP量が多く歴戦の猛者を思わせる壮年の男を見つけると、案の定その男が周囲を代表して口を開くところだった。

 

 

「...申し訳ないが、現場の一兵士ではそのようなことは返答できかねる。それにそちらの少女。瞳の色が左右違うということは、かの邪知暴虐な王の子とお見受けする。実は我が法国では、同じようにエルフの王の血を継いだがために苦しめられた者を匿っているのだ。どうだろう。よければその少女はこちらで保護させてもらえないだろうか。あの王がいる限り戦争の勝敗に関係なく闇妖精(ダークエルフ)に未来はない。それにこのような血生臭く危険な戦場など、か弱き少女にはいささか以上に苦痛だろう」

 

 

こちらの思案顔を見ていけると思ったらしい。起死回生とばかりに途中からどんどん饒舌になり、仕舞(しまい)には逆にマーレを引き入れようとしてくる始末。あまり予想していなかったパターンに少しの困惑を覚えるが、それ以上に看過できない言葉の数々に苛立ちが募っていく。この場では指示がなければ言動は控えるようにと事前に言い含めていたから黙っているものの、マーレもハイライトの消えた絶対零度の瞳でその愚かな男を見つめていた。

 

 

「ふう。どうやらこちらの話をきちんと聞いていなかったようですね」

 

マーレを連れ<飛行(フライ)>でその男の目の前に降り立ちながら、なるべく気を静め理性的な会話を心掛ける。

ちなみにマジックアイテムは使用したままであり、パンドラズ・アクターの説明によればブルー・プラネットと対話すると効果範囲内の全員に伝わる仕組みになっているらしい。

 

「まず一つ目、緊急時の現場判断が指揮官と六色聖典に委ねられていることは分かっています。二つ目、彼女らは『我が子同然』と言ったはずです。この子の親はぶくぶく茶釜という僕の大切な友人であって、断じて矮小な王などではありません。そして三つ目、これが一番大切なことなので聞き逃さないように注意してください。国を再建できる新たな王ならここにいますので、戦争が終結すればこの国にはかつてないほど明るく栄光に満ち溢れた未来が待っています」

 

再度丁寧に語りかけるような口調でゆっくり話すが、その裏に抑えられた負の感情と揺るがぬ意志に気づいたのだろう。傍らに控えるマーレのドスの利いたオーラも拍車をかけ、男の顔ははみるみる蒼白になり先ほどまでの計算高そうな表情はもう影すらない。

 

「言葉には魂が宿ります。くれぐれも発言には気を付けてくださいね」

 

耳元で念を押すように囁くと、脅された人質よろしく神妙に頷いてくれた。しばらくそのまま体中の筋肉が硬直したかのように黙り込んでしまったが、やがて思考の整理を終えたようだ。

 

「...なるほど、我が国や聖典について色々とご存知の様子。失言を詫びよう。では確認なのだが、先ほど『自分たちは直接手を下さない』といった内容の発言があったはずだ。それはそちら側に他の仲間がいる場合は、その者や先ほどの魔獣や竜などの生物も全てを含め、我々には一切攻撃行為を行わないという意味で受け取ってよろしいか」

 

(へえ...さすがは六色聖典。腹は立つけど馬鹿ではなさそうだ)

ブルー・プラネットはこの聖典の隊員らしき男の評価を少し上方修正することにした。たしかに己の忠告通り、発言には注意をしなければならない。『僕たち』とは具体的に誰を指すか、『直接』ならば間接的にはあり得るのか、『手を下す』の行為はどう解釈すればよいか。短い間にそれらを吟味し、法国側に有利となるよう一義的な表現で言質をとろうとしてきたのだ。いざとなったら使おうと思っていた屁理屈を先んじて潰されたが、まあその程度なら特に支障はない。

 

「ええ、もちろん。今は確実に話を聞いて頂くため拘束させてもらっていますが、言葉通り『闇妖精(ダークエルフ)に支援魔法をかける』以外のことはしませんので」

 

やたら支援魔法の部分を強調したことで懐疑的な目をされたが、そこには触れずもう一つ質問を重ねてきた。

 

「...仮に戦争は止めずこちらが彼らに攻撃を続けても、貴殿らの報復はないと?」

 

そうは言っていないが、彼の言わんとすることは察したので首肯しておく。むこうも得心がいったと頷いたので、どうやら理想的な展開になりそうだ。会話の間に一か所にまとまり始めた自軍のところへ戻っていき、案の定男は宣言した。

 

 

「この戦争では人類に多くの尊い犠牲が出た!またそもそもの発端はエルフの王が我らの同胞を姦淫したことにあり、非難されるべき側は明らかであろう!故にスレイン法国はその大罪人を誅し、使命のために散っていった犠牲者に勝利で報いねばならない!たとえ精霊が敵となろうとも!」

 

 

わざわざ大声で大義名分をかざしたのは士気向上のためだろう。報復がないとはいえ竜を見せられても戦いを挑むのだから、法国の隠し玉はどうやら相当の手練れとみえる。まあ実際はここで退けば後々第三者の攻撃を容認してしまうようなものなので、仕切り直しなんかせずこの戦争で決めてしまえばいいだけだ。陣形を整える法国軍を背に、今後の流れをほぼ確信しながら闇妖精(ダークエルフ)軍へと歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

<<side ドルト>>

 

 

謎が多すぎる。

 

人間との会話は全て把握しているが、精霊殿はこちらに来てから一言「じゃあ皆さんは普通に戦ってください。ご武運を」とだけ言い残して再び上空に去ってしまわれた。

我々を救いに来てくださったのではないのか?ならなぜ敵を焚きつけるような条件を出し、己は高みの見物をなさるのか。というより”大地の精霊”なんて精霊の種族は聞いたこともない。それにあの少女たち(マーレとやらが『お姉ちゃん』と言っていたのでおそらく姉妹)は王の御子たちではなかったのか。しかし”ぶくぶく茶釜”なる家系も我が国には存在しないはずだ。”新たな王”という不穏な言葉も引っかかる。あとここはどこなのかお願いだから教えてほしい。

 

 

...やはり謎が多すぎる。

 

しかし法国兵は既に戦列が揃い、七千近い数が吶喊の号令を今か今かと待ちわびているのだ。もはやこちらが精霊殿にお伺いを立てる時間は残されていないだろう。

これから種族的には非常に不利な白兵戦を、しかもこちらは怯え切った中央軍三千程度で相手どらなければならない。いくら竜を従えるほどの精霊殿でも四千の差を覆すにはかなり苦労されるはず。万が一勝利を手にすることができたとして、その頃生き残っていられるのは何人いるかと思うと、やはり絶望的な気分になってしまうのは致し方ないではないか。しかしその三千の命を預かる将として、ブンデス家の長として、情けない顔や言葉などおくびにも出さずに高らかに叫んだ。

 

 

「我がドルト・ファーヴル・ブンデスの名の下に、第二師団の皆に告げる!こちらにはあの屈強な竜を従えるほどの精霊殿が加護をくださるそうだ!つまり我らに敗北はない!今は何も考えず、ただ敵を屠ることだけ考えよ!」

 

発破をかけるのももちろんだが、本当に伝えたいことは最後の一言だけである。

他の者も絶えず上空の精霊殿に目を遣っているのが分かるけれども、今は戦いに集中すべきとき。

戦場(いくさば)にて散漫さは必ずや死を招く。

 

ほどなく法国軍が魔法詠唱者(マジックキャスター)を後衛に、壁となる戦士を前衛としたお得意の戦術で四千人ほど前進を開始する。

 

「弓兵!構え!」

 

それに対してこちらは森妖精(エルフ)お得意の弓矢で応戦の準備をした。

法国は魔術が発展しているため弓矢はあまり多用しておらず、練度や飛距離はこちらの方が圧倒的に有利だ。

 

「弓兵!放て!」

 

短弓(ショート・ボウ)が標準装備なため射程・威力共にやや見劣りするが、そこは千に達するほどの数の勢いで補うしかない。

しかしさすがによく訓練されている。前衛の盾と最小限の魔法で思ったよりダメージを与えられなかったようだ。

 

「続けて放て!」

それでも射続ける以外に選択肢はないも同然だ。じわじわと迫る鎧の集団に、精霊殿はいったい何をしているのだと怒りが込みあげてくる。

 

「弓兵!やめ!総員抜刀!」

もはや泥沼の死闘を覚悟した瞬間、辺り一帯が万色に彩られた。

 

 

目で捉えたことだけでは何が起きたか全く分からない。まさか敵の魔法かと身構えたが、手に力を入れたとき何もかもを悟った。

 

これは精霊殿の支援魔法だ。

 

果たしてこれは何位階の魔法なのだろうか。筋力・魔力・感覚...あらゆるものが限界を易々と超えていき、己の磨き上げてきた武技など所詮児戯でしかなかったのだと確信をもっていえるほどの力が際限なく湧き出てくる。さらに驚くべきことに、その光は三千人を余すことなく包み込んでいた。

 

 

「うおおおおお!」

 

誰からともなく雄叫びがあがり、やがてそれは地響きを伴うほどの怒号に変わっていく。そして陣形も戦略も何もなく唯々突っ込んでいくだけの総攻撃が開始されるが、ドルトは暴走を止めるどころか自身も参加するべく駆けた。もはや敗北などは毛ほども感じない。圧倒的な暴力の前に指揮官など必要ないのだ。

 

騎獣に乗るより遥かに早く走り、あっという間に互いの第一陣同士が衝突した。

 

 

 

まず前列で重戦士が構える鉄壁の大盾を、細身のエルフたちが長剣一本で薪のように全身鎧ごと叩き割り、また綿毛のように次々と弾き飛ばした。

 

「なんだこいつら!?まずいぞ!はやく止めろ!」

焦る二列目と三列目の兵は大盾の交代要員か槍衾のための長槍隊だったが、闇妖精(ダークエルフ)を誰一人として討つことなく懐に侵入を許し、取り回しの悪い武器が(あだ)となって為す術もなく切り伏せられてしまう。敵を釘付けにして時間を稼ぐという役割を果たせぬまま、十分もかけずに前衛二千五百で立っている者はいなくなった。

 

 

「どういうことだ!あんな効果の強い支援魔法なんかありえない!」

「いいから急いで魔法を放て!こっちに向かってくるぞ!」

「予備隊!大至急間に入れ!奴らを一人でも減らすんだ!」

圧倒的な蹂躙を目の当たりにして、初めて法国は強化度合の異常さに気がつき対策を講じようとする。

 

が、何もかもが遅すぎた。

かろうじて当てた<火球(ファイア・ボール)>も、いとも容易く弾かれてゆく。

 

開戦の火蓋が切って落とされてから二十分。

両軍の数はほぼ等しくなった。

 

 




あと2~3話で次章に入って、早くウルベルトさんの悪魔ロールやりたいです。
大筋は全部書き溜めてあるのですが、ブルプラさん推しすぎて二人の出番が...

あと、感想書いて頂いた皆様方、本当にありがとうございました。
この手の投稿系初めてなんですが、けっこう励みになりますね、ああゆうの。
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