短編ということでかなり短め
さっきからどこかから乾いた笑いがしてうるさい。しかしそれが自分のものだと気付くのには少しばかり時間が必要だった。
自分の意識と身体の意識が剥離しつつあるか……などと物思いにふけながら静かにその時を待つ。
そうだ。しばらくの間昔のことを考えるとしよう。
私は羽田優という。これもこの身体の名前で私そのものの名前ではない。私の名前はもうとっくに忘れてしまった。
ここは刑務所、私は二日前に無期懲役を宣告された。罪名は殺人。どうやら私は人を殺したらしい。無論そんな記憶は無い。だから無実を主張したが、まぁ証拠が揃いに揃ってる。恐らくは意識が無い時に犯行に及んだか。だいたい理由は分かっている。自分の体を操作されたんだろう。
私は他人の意識に介入する能力を持つ。この能力を使って他人の意識を乗っ取り何年も生き続けている。もう彼が何人目かさえも数えてない。
そんな中私はずっと実験をしている。
私の能力は応用をすると他人に第三者を操作する能力を付与出来ることが判明した。今も何故これが出来るのかは謎だが意識という概念で全てが繋がっているのだろうという認識をしている。
その能力を他人に与えるとどうなるのか、これが長年の研究課題だった。
結果は能力が付与された人間は自分の恨んでいる人間を自分が恨んでいる人間を操作し殺すというものだった。
例外なく能力が付与された人間はそうしている。
こうして私は疑問を解決した。
しかし私にはこの結果は解せなかった。この能力を世間のために使ってくれる人間は必ずいる。そう信じてこの能力を色々な人に渡してきた。しかし結果はいつも一緒。その頃からだろうか、昔の記憶が薄れてきて、年齢を数えるのも馬鹿馬鹿しくなってきたのは。
さて……自分の意識が独立してきた。この身体ともさようならな訳だがもう少しばかり時間がかかる。なのでもうすこし物思いにふける。
話を戻そう。
しかしながら今回は違った。今回は結果こそ同じだったが私が加害者となったのだ。これは初めてのことだ。
一か月前ほどだろうか。昔、操作能力を渡した人間……名前は忘れたが、羽田優の意識を乗っ取る前に仲が良かった人物だってことは覚えている。そいつが私を飲みに誘った。適当に話をしてその時に恐らく操作対象にされた。考えが浅はかだったというか。次からは操作能力を付与した人間に会うのはやめよう。
で、まぁその後色々あったが気が付いたら人を殺していた。
ここでだ。私に久しぶりに感情というものが込み上げてきた。私が渡した能力で私を加害者にした。その事がここまで私の逆鱗だったとは思ってもみなかった。
幸い私には自分の手を使って確実に殺し、しかも自分の罪にならない、そんな方法を思いついた。
要は一時的に適当な人間の体に乗り移りそいつを殺してからすぐに適当な人に乗り移ればいい。
さて、計画は完璧だ。意識も完全に羽田のものから離れた。こいつの意識や精神は全て私が乗っ取ったものだから今はからっぽ。恐らくこれから何をしても満たされないだろうし何も出来ない、する意欲が湧かないだろう。精神病院送りになって飯もろくに食えずに死ぬ……こいつの将来はこんな感じだろう。ろくな死に方はしない。
さようなら、羽田優くん。
そしてこんにちは、私の前を通った見知らぬ看守さん。
貴方が次の殺人事件の犯人だ。
いかがだったでしょうか?
では明日の試験、頑張っていきたいと思います……