「女子高生総理・芹沢鮎美の苦悩」   作:高尾のり子

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1月31日 会議会議

 

 翌1月31日の月曜朝、鮎美は議員宿舎に鷹姫だけでなく陽湖まで来てくれたので、やや戸惑っていた。しかも、陽湖は鮎美の髪型を真似、議院記章の他にブルーリボンと虹色のバッチを鮎美と同じ位置に着けているし、華奢な肩を鮎美と似せるため少し肩パットを入れて盛っている。もともとの顔立ちも似ていて身長差もないので遠目には両親でさえ間違うのではないかと思うほど、そっくりになった陽湖は始発新幹線で東京へ来ていた。

「鷹姫、これは何のつもりなん?」

「はい、影武者です」

「……影武者て……」

「シスター鮎美の助けになれば、と、私も覚悟を決めました」

「陽湖ちゃん………。けど、うちを狙うって脅迫してきたんは、どうせ脅しやよ」

「芹沢先生は、すでに一度襲われています。二度目がないとは限りません」

「鷹姫………もし、そんなことがあるとしても……うちは、陽湖ちゃんを犠牲にしてまで生きとうないよ」

「もはや芹沢先生のお命は、先生一人のものではありません。これも大義を成す者の勤めと、ご理解ください」

「……う~ん……そら、二人が並んで歩いたら、襲ってくるもんも、どっちを襲うか迷うやろけど……現代で……影武者って……桧田川先生、どう思う?」

「さあ? 私は医者だから。要人警護の専門家に訊いてみたら?」

 鷹姫が部屋前にいた介式と知念を呼んできて意見を訊いた。

「「………」」

 介式も知念も黙って悩む。

「介式師範、ご意見をお願いします」

「…………。前例がない…」

「そうっすよね」

 知念も頷いた。

「お言葉ですが、前例なら武田信玄、徳川家康の例をあげるまでもなく多数あり、元の木阿弥という慣用句が生まれたのも、筒井順昭と声の似ていた木阿弥なる者を代わりに立て…」

「いや、そこまで遡らず、ここ最近の要人警護では、そういったことはしない」

「北朝鮮では影武者がいるって噂はあるっすけどね」

「そうらしいが……知念警部補、有効な手段だと思うか?」

「う~ん……守る自分たちの側からすると、とっさのとき、どっちを守るか迷ってしまうかもしれませんし、それで人員が分散すると、かえって危険では? 何より昨日みたいに一般から撮影されたとき、二人の芹沢鮎美がいるのは、どうかなぁ、と」

「そうだな。宮本くん、せっかくの考えだが、我々SPとしては賛同しかねる」

「…そうですか…」

 かなり残念そうに鷹姫が肩を落とすので介式と鮎美が同時に鷹姫の肩に触れた。

「「そう気を落とさ…」」

 異口同音しかけて二人ともやめた。鮎美が議員として秘書へ言う。

「せっかく陽湖ちゃんも東京へ来てくれたんやし。今夜はセクハラ写真出版被害者の会の発足式もあることやし、いろいろ勉強していって」

「はい。午後には石永さんと石永先生も来られます」

「石永先生も、うちの案内のためにありがたいことやね。鷹姫、今日のスケジュールは?」

「参議院会館にて朝食会の後、国会は本会議での代表質問が終了し、各委員会での審議となり、芹沢先生は地方行政、文教、環境の委員会へ出席していただきます。昼食は自民党若手議員が集まる昼食会で」

「国会後は?」

「これが……大変にお忙しいのですが、…」

 ここまでは暗記していた鷹姫も間違えないようにメモ帳を開いて話す。

「まず17時より土地改善推進議員連盟会議、同じく17時より遺族会議員連盟会議、同じく17時より国防統合部会、17時30分より全国ダム建設検討会議、同じく17時30分より淀川河川整備促進議員懇話会、18時より砂防事業部会、同じく18時より環境改善懇話会、18時15分より街路整備促進議員連盟会議、同じく18時15分より土地改善整備事業促進委員会、ハァ、18時30分より都市再開発議員統合懇話会、同じく18時30分より共済年金合同部会、同じく18時30分より農政促進協議会発足式、19時より海洋対策合同部会、同じく19時より青少年対策委員会、同じく19時よりセクハラ写真出版被害者の会発足式、同じく19時より宇宙開発合同部会、19時30分より住宅対策委員会、同じく19時30分より琵琶湖環境保全委員会、ハァ、同じく19時30分より離島振興対策合同部会、20時より地震対策懇話会、同じく20時よりセクハラ写真出版被害者の会懇親会、21時よりテレビ局にてニュース番組へ出演、22時よりセクハラ写真出版被害者の会懇親会二次会。以上です」

 肺活量の多い鷹姫をして二度の息継ぎを要するスケジュールだった。

「………影武者どころが分身が4つくらい要りそうなんやけど……ま、なんとかなるて石永先生が言うてるし、やってみよか」

「あと、報告事項として、ささいなことですが、秘書補佐の緑野がインフルエンザにかかり寝込んでいるそうです」

「カネちゃんが……」

 鮎美は日曜朝に入浴して、そのまま外に連れ出してしまったことを思い出した。

「カネちゃん、寒がりやのに……うちのせいで……」

「あれがひ弱なだけです。お気になさることはありません」

「鷹姫……、陽湖ちゃん、花屋さんに注文して、お見舞いを届けさせて。うちの私費で。メッセージカードには、ゆっくり休んで、しっかり治してよ、カネちゃんのこと大好きやしね、って記してもらって」

「はい。きっと、喜びますよ」

「あと、そのカッコでウロチョロせんときな、万が一、狙ってるヤツがおるんやったらSPなしの陽湖ちゃんが危ないし。鷹姫がポニーテールやし、陽湖ちゃんはツインテールにしておいて。それで他人からも別人やてわかりやすいやろ」

「はい、ありがとうございます」

「ほな、うちは会議の嵐に行ってくるわ」

 鮎美は朝食を会議しながらの朝食会で摂り、国会へ出席し、昼食も会議しながらの昼食会で摂った。食べ終わった鮎美が桧田川を振り返る。

「………桧田川先生」

「トイレね?」

「…はい…」

 昼食会の終わりかけにトイレへ立った。多目的トイレ内で、下着をおろしてお尻を向けようとする鮎美へゴム手袋をせずに桧田川が言う。

「お腹の傷跡を診せて」

「あ、はい」

 お尻ではなくお腹を向けた。桧田川は指先で傷跡のラインを押して確認する。

「痛い?」

「ぜんぜん」

 もう傷跡は手術した桧田川でなければ、どこだったか、わからないほど消えつつある。

「写真を撮るね」

「どうぞ」

 撮影が終わった桧田川は、ゴム手袋をしない。

「芹沢さん、普通にウンチしてみて」

「え……いいんですか?」

「最終確認だから。便秘っぽくて、出そうにないなら、あんまり頑張らないでね。普通の頑張りくらいの息みで、ウンチしてみて」

「はいっ」

 鮎美は便座へ腰かけ21日ぶりに、ゆっくりと息む。

「………ぁ……出る…」

 スルリと大便が肛門を通って出てくれた。

「……………ああ……気持ちいい……ウンチするのって、こんな気持ち良かったんや…」

「お尻を拭いて、お腹を診せて」

「はい」

 鮎美の下腹部を診た桧田川は頷いた。そして、介式たちがやるように敬礼して言う。

「完治であります! 現時刻をもって医療任務を終了とする!」

「………終わり? 治ったんですか? 完全に?」

「うん、完全に治癒。完治だよ。飛んでもいいし、跳ねてもいいよ。ウンチも好きなときに一人でして」

「…………ヤッタァ!!!」

「飛び跳ねるのはパンツをあげてからにしようね」

「治ったァァ!!!」

 全身で喜びつつ、午後の国会へ出席して17時を迎え、自民党本部ビルに入った。玄関で石永が待っていてくれた。

「よし、オレが案内する」

「すんません、石永先生に秘書みたいなことさせて」

「気にしなくていいぞ。やたら会議が多いのは半分はオレが入れたものだ。オレが落選したから、引き継いでほしい事業なんかを入れたんだ」

「え~…」

「さ、時間が無い。急げ。だいたい一つの会議、10分ほど顔を出したら、それでいい。出席にさえなればいいから」

 もともと目立つ存在の鮎美が鷹姫と石永、それにSP4名と移動すると、かなり自民党ビル内でも目立った。

「だいたいの会議が同じ階であるんや。これなら移動は楽ですね」

「だろ」

 同時刻から始まる会議でも10分ほど滞在すれば出席になる上、鮎美は目立っているので、すぐに出席確認してもらえる。せめて会議の内容を理解しようと資料をめくる気力があったのは三つ目までで、あとは諦めた。それぞれの会議は事前に族議員が、だいたいの方向を決めているようで、今さら鮎美が発言しても無視されるのが、空気感でわかるので石永のためにも、黙って座り、黙って早退する。わずかにエレベーターで移動するとき、自分たちだけになったので鮎美は石永へ問うた。

「うちが同性愛者やってカムアウトしたこと、どう思うてはります?」

「その話か……テレビで見て驚いたし、一時は支部も右往左往したけれど、だから、どうだという問題でもないと次第に落ち着いている。どちらかといえば、セクハラ写真の訴訟、これは女性側に勝ち目がある分、出版社とつながりのある先生方は、どうしたものかと考え中だし、無視して問題ないと思った連合インフレ税の提案に、予想外に海外が反応していて、そのうち鳩山内閣も無視できなくなるのでは、と囁かれているよ。その二つの影にレズってことは、どうでもよくなったんだろう」

「そうですか。あと、レズって言い方、嫌なんでやめてもらえますか」

「わかった。……じゃ、なんて言うんだ?」

「レズビアンか、ビアン、または女性同性愛者です」

「気をつけるよ。ま、我々としては芹沢先生を利用したいし、芹沢先生としても同じに、持ちつ持たれつ、オレが組んだ会議に出てくれるのは、ありがたいし、今日の被害者の会に自民党ビルの一室を貸すのも、与党だったらありえないことだが、今の流れなら、使ってもらおうという裏工作もあったんだ。静江が頑張ったよ。誉めてやってくれ」

「そうだったんですね。ありがとうございます」

 数える気にならないほどの会議の後、鮎美が主催する被害者の会発足式も17分ほど顔を出し、決意表明すると静江と陽湖に任せて次の会議に出た。時間帯的に、どの会議でも夕食として幕の内弁当や松花堂弁当が提供されるけれど、滞在時間が短いので食べるに食べられない。

「うち一人のために、いくつ弁当が無駄になるんやろ……もったいない話やわ」

「いっそ手をつけなければ党の職員か、誰かの秘書がありがたくいただくかもな。いや、芹沢先生の食べ残しなら、大食漢な先生でも喜んで食べるかも」

「……。男の人って、女の食べ残しとか、嬉しいもんなんですか?」

「う~ん、たとえば、ビアンならビアンで、好きな女の子の食べ残しとか、もらったら、嬉しくないか?」

「なるほど、そういう気持ちなんや」

 鮎美は一瞬だけ鷹姫の唇を見てしまってから頷いた。地震対策懇話会では顧問として議員を引退した久野も顔を出していたし、弁当ではなく非常食のレトルトパッケージを温めたチャーハンだったので、食べてみた。

「けっこう美味しいわ」

 他の議員たちも頷いている。

「鷹姫も、食べてみ」

 秘書に分け与えている議員はいないけれど、鮎美は鷹姫にも食べさせた。

「……美味しいです」

 久野が言ってくる。

「それは10年間の保存がききますよ」

「10年……すごいもんですね…」

「宇宙食開発の技術が役立っています」

「いろいろからんでくるもんですね」

 鮎美は失礼のないように時刻を確認する。まだまだ地震対策懇話会で勉強したい気持ちはあるけれど、すでにセクハラ写真出版被害者の会懇親会が始まっている。うまく静江と陽湖が運営してくれているとしても、やはり主役不在はつらいだろうと思う。久野が資料をめくって言う。

「大震災において、食の確保にまず目がいくが、試食中の諸君には悪いが、食べれば、出るわけだ。この処理が、また大きな問題になるし、この問題は文字通り溜まる。これを快適かつ衛生的に保たねばならない。被災者に気持ちよく過ごしてもらうことが大切だ」

「すっきりウンチできるんわ、最高に気持ちええですもんね」

 思わず鮎美が言ってしまったので一同から大笑いされた。それを奇貨として恥ずかしくて居られないという顔で出ていくことにした。鮎美が席を立つと石永が言う。

「オレは、ここに残るよ。久野先生との付き合いもあるし」

「すんません。……あと、すんませんついでに、もし、嫌やなかったら、もったいないし、チャーハンも食べといてもらえますか? 非常食を残して捨てられるんは、気が引けますから」

「了解、いただきます」

 頷いてくれた石永を残して鮎美と鷹姫は被害者の会へ急いだ。女性ばかりの懇親会は経費の関係で、お茶とお菓子程度でささやかに進んでいた。鮎美と鷹姫が入室すると、拍手で迎えられる。

「遅くなって、すんません」

 発足式では、あまり発言しなかった被害女性たちも井戸端会議のような雰囲気で進められている懇親会では色々と本音を言ってくる。鮎美は聴いていて、大きく二つに分かれることを感じた。一つは本当にパンチラや胸元が見えた写真を週刊紙などに載せられて不快だったし今後のためにも訴訟を起こして懲らしめておきたい女性たちと、もう一つはお金が取れそうなら欲しいという女性たちだった。そして、前者は現在も週刊紙に載るような立場にある芸能人やアイドル、若い公人女性で、後者は鮎美が中学の頃に見かけた気もするような売れなくなった芸能人やアイドルなどで名乗られて初めて気づき、これが本人なのかと思うほど変わり果てている人もいて、その驚きを顔に出さないようにするのに鮎美も周囲も苦労した。懇親会の雰囲気そのものは重くはなく、もともとが強姦などの深刻な性的被害を受けた人たちではないので、半分はお祭り騒ぎのようなものとなり、大勢が鮎美との記念写真を求めたので丁寧に応じた。

「すんません、お先に失礼します」

 次は21時からのテレビニュースに出演するのでSPたちと移動した。移動の車中で15分だけ仮眠して、控え室でプロにメイクを直してもらい、スタジオに生出演したけれど、あまり深い政策の話にはならず、つい2時間前の被害者の会発足式のことと女性の権利や参議院制度についての基本的な事項へのインタビューで終わった。

「ちょっと寝るわ」

 車に戻ると少しだけ仮眠させてもらい、また22時からの被害者の会懇親会の二次会に出席する。二次会は少人数で主に発足式で役員に選ばれた女性たちとの懇親が目的だったのでお祭り騒ぎではなく静かに訴訟の準備や今後の日程について話し合い、日付が変わる少し前に議員宿舎へ戻ることができた。

「……はぁあぁ! 疲れた!」

 大きな声で言ったけれど、誰も何も言ってくれない。

「あ……そっか、うち一人なんや……」

 さきほどまで大勢に囲まれていたし、ずっとSPもいたけれど、部屋の前で待機しているし、鷹姫とも別れ、この21日間ずっと近くにいた桧田川もいない。

「桧田川先生とは、いつの間に……そっか、お昼から姿を見てへん……ちゃんとお礼も言えてないのに…」

 部屋のテーブルには書き置きと議員宿舎のカードキーがあった。

 

 じゃあね、お大事に。

 

 あっさりとした一言だけだったので淋しくてスマートフォンを見ると、詩織からメールが入っていた。

 

 寝る前に10分だけ私に時間をください。

 

 短いメッセージだったけれど、忘れないようにしたい。まず鮎美は遅い時間だったけれど、桧田川へ電話をかけてみた。

「遅い時間に、すみません」

「お疲れ様、さっきテレビ見たよ」

「ちゃんとお礼も言えず、すんません。長いこと、ありがとうございました」

「うんうん、私も完治してくれて嬉しいよ」

「お昼から、先生はどうしてはりました?」

「う~ん、それを仕事みっちり頑張ってる芹沢さんに言うのは気が引けるけど、オフ気分でTDLで遊んだよ♪ ごめん」

「ほな、まだ東京に?」

「うん、ミラコスタにいる。けど、こういうとこ、お一人様で来るもんじゃないね。家族連れかカップルばっかりでさ。お一人様もいるんだけど、そういう人は超ディズニーオタクって感じでさ。ふらっと来た私には淋しいところだったよ」

「そうですか…」

 鮎美は桧田川が婚約者を亡くしたことを思い出した。性同一性障碍で女性化手術を受けている途中での薬剤との相性によるトラブルで亡くなっていて、桧田川も医師であるだけに、それが医療ミスでないとわかっているのは、つらいだろうと想う。

「芹沢さん、頑張ってね。いろんな人が住みやすい社会にして」

「はい、必ず」

「じゃ」

「またお世話になることがあったら、よろしくお願いします」

「ダメダメ、ちゃんと健康でいなさい。じゃあね」

「はい、ありがとうございました」

 名残惜しかったけれど電話を切った。

「……桧田川先生……ええ人やった………出会えてよかった」

 たまたま救急車で運ばれた病院の、たまたま当番だったにすぎない出会いが、とても貴重に想える。鮎美は制服を脱ぎ、裸になってバスルームで傷跡を鏡で見た。

「完璧やわ」

 もう刺されたことなど、わからない。

「……毛を剃られたのが、まだ生えてこんくらいで……皮膚は完璧やわ」

 シャワーを浴びながら、お腹を撫でた。

「はぁ……お腹空いてるのか、空いてへんのか、微妙やなぁ……」

 夕食は食べたような食べていないような中途半端に終わっているけれど、この時間に飲食するのは女子として避けたい。髪を拭いて裸のままベッドに寝転がった。風邪を引かないように暖房の温度をあげておく。

「……今日も長い一日やった……あとは詩織はんに…」

 眠気に襲われる前に鮎美は電話をかけた。

「もしもし」

「お疲れ様です」

「おおきに。そっちも疲れた声してるね」

「国際電話が次々かかってきますから。とうとう、さきほどNBCが鮎美先生とドミニク氏の対談を放送しました。これから、もっと世界は動きます。ここまでの下準備と調整、大変だったんですよ」

「うん、おおきに、ありがとうな」

「ご褒美ください」

「言うと思った。何が望みなん?」

「とは言っても私もヘトヘトです」

「珍しいね、誰よりタフそうな詩織はんが」

「どうせ、まだ国際電話がかかってきますから。今はナユが下手な英語で一生懸命ちょっと待ってもらっています」

「まだ、事務所なん?」

「今夜も朝まで、ここですよ。今は執務室で一人ですけど」

「遅くまで、ありがとうな」

「ってことで、ご褒美お願いします」

「どんな?」

「これから私はオナニーするので、電話越しに私へ愛を囁いてください」

「……。そんなことしたことないし」

「私に元気をくださいよォ。欲望は活動の原動力です」

「たしかに、……そやけど……………どう言えばええの?」

「鮎美先生がオナニーするとき、どんなことを好きな人から言われたら興奮するか、自分で考えて言ってください」

「………。心の逆レイプみたいなプレイを思いつくなぁ……」

「お願いします」

「わかったよ。………えっと…」

「………」

「………うちのために毎日ありがとうな」

「はい」

「……………今、エッチな気分なん?」

「すっごく」

「じゃあ、自分で、おっぱい触ってみ」

「はい。服の中に手を入れて詩織は鮎美先生の手だと想いながら、おっぱいに触ります」

「……。乳首、強く摘んでみ」

「…んっ……はい、摘みました」

「少しゆるめて、今度は連続して摘んでみ」

「はいっ…んっ…んぅ…」

「……。反対のおっぱいも同じようにしてみ」

「はいっ……んっ…んぅ……鮎美先生、大好きです。ハァ…」

「………うちも詩織はんが好きよ」

「ああぁ! やっと言ってくれた」

「…そ……そういうプレイやし…」

「もっと言ってください」

「……好きよ、詩織はん………、もっとエッチなところ、自分で触ってみ」

「はい、詩織はスカートをあげてパンツの中に手を入れます」

「………そこ、執務室やんな? 鍵、かけた?」

「そんなことより、次、どうすればいいですか?」

「…………。指先で感じるところ、ゆっくり擦ってみ」

「はい。………ハァッ………ぁあぁ……」

「もっと、ゆっくりがいい? もっと、早くがいい?」

「……ハァ……早く……してほしいです…」

「じゃあ、ゆっくり擦りぃ」

「あんっ……焦らすなんて鮎美先生……ハァ…ハァ…余計に感じちゃう…」

「……」

 鮎美は湿っぽい詩織の声を聴いていると自分も興奮してきたので電話を持ち替え、右手で自分の股間に触れる。

「…ハァ…次、詩織は、どうすればいいですか?」

「ゆっくりゆっくり、だんだん早く、擦って」

「はい…っ…んぅ…ハァ…すごく気持ちいいです…ぁぁ…」

「指先でクリ、剥いてみぃ」

「んっ…んぁ…」

「剥いたら爪の先だけでクルクルって回すように擦って」

 言いながら、ついつい鮎美も同じようにしてしまう。電マを買うまでに鮎美自身が自慰するとき行っていた定番の方法だった。

「…ハァ…ああ、これ気持ちいい…ハァ…」

「もっと早く、でも、もっと弱く、触れるか触れへんくらいに弱く、早く擦ってみ」

「んぁぁあ! ああぁぁ! ハァああ! んふぅぅ!」

「詩織はんのエッチな声、可愛いね。ハァ…」

「ああぁっ…ああぁっ…い…イキそう……イッてもいいですか?」

「そんなにイキたい?」

「はい、はい、イキたいですっ! 詩織、鮎美先生のこと想いながらイキたいです!」

「焦らしてほしいんやね。けど、焦らさへんよ。すぐイきぃ。けど、一回でやめたら、あかんよ、三回連続イクまで擦り続けぃ」

「あっうわああ! はあぁあわあ! くはっ! んんぅっはあ! ハァっハァ! んんぅっくくうぅ! 2回、うぅぅくくぅ! あと一回ハァハァ!」

「手を止めたら、あかんよ。擦り続けぃ。ハァ…」

「んんっ、はい、んはっ! うあんっ、うはんっ、くうんっ…ハァ…ハァ…ハァ…」

「ええ子やね。ちゃんと3回、イった?」

「はい。ハァ…ハァ…」

「ゆっくり、おやすみよ」

「ハァ…鮎美先生、いっしょにイってくれましたよね?」

「………」

「わかりますよ。途中で電話を持ち替えてから、自分でも始めましたよね」

「……」

「でも、一回しかイってない、それも軽く」

「……」

「今度は私の誘導で、あと2回、イってください」

「………」

「返事してください」

「……うん…」

「今、議員宿舎で一人ですか?」

「……うん…」

「どんな姿ですか?」

「………お風呂上がりよ」

「裸ですか?」

「……うん…」

「電マはありますか?」

「………うん…」

「フフ、ちゃんと持ってきているのですね。エッチな議員さん、そんなものカバンに入れて新幹線に乗ってきた」

「……肩もコるし…」

「嘘つきは政治家の始まりですよ」

「………」

「オナニーするために電マを持ってきましたって、言ってください」

「………………オナニーするために、電マを持ってきたんよ」

「じゃあ、取り出してください」

「…うん……ちょっと、電話おくな」

 鮎美は起き上がってカバンの奥を漁り、電マを取り出した。コンセントに差し込み、準備も終えた。

「出したよ」

「これから鮎美先生の右手は私の言う通りに動きます。2回イくまで、途中でやめることはできません」

「……うん…」

「電マのスイッチを最強にしてください」

「…いきなり…」

「最強にして、すぐにイってください。できるだけ早く、今までにないくらい早く」

「……うっうっ! ううっ! イっ」

「そのままあて続けてください」

「うんうあああ! イっく」

「2回で終わりませんよ。もっと、もっと、4回、5回、イキ続けてください」

「あああああはああああ! うううああああ! もう! もうやめてぇ! やめてぇやあ! あああああっ!」

「イクのが止まらない! イキ続けます!」

「ふああああっ! ああっ! ああああっ! っ…ハァ! っ…はぁあ!」

「息が止まるくらいの快感ですよね? もうやめていいですよ」

「…ハァ……ハァ……ハァ……」

「鮎美先生の喘ぎ声、最高に可愛かったです」

「……ハァ……」

「まだまだ、大きく成長してください。大輪の花に。大きく、大きく、咲いてください。どこまで、あなたが大きく咲くのか、とっても楽しみにしています。おやすみなさい」

「………おやすみ」

 ぐったりとした鮎美はスマートフォンと電マを置き、最後の気力でパジャマを着てから眠った。

 

 

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