【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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97話を投稿させて頂きます。


ゴールデングローブ賞 人種多様性に欠け米放送局中継とりやめ

主催団体の会員に黒人が1人もいないことなどで批判を受けていた映画のゴールデン・グローブ賞について、アメリカNBCテレビは、来年は授賞式の生中継を止めると発表しました。

TBS News 5/11(火) 21:57配信
   
   


蠅たたきによる打楽器狂奏曲

   

   

   

悲劇やら闘牛やら磔(はりつけ)の刑やらを見て、人間はこれまで地上で最大の快感を味わってきた。人間が地獄を考えだしたとき、どうだろう、それは地上における人間の天国ではなかったか?

偉大な人間が苦痛の叫びをあげると、――――小さな人間がたちまちよりあつまってくる。そして快感にうずうずして、舌なめずりする。しかも、それをみずから「同情」と称する。

 

のがれなさい、あなたの孤独のなかへ! あなたは、このちっぽけな、みじめな者どもに、あまりに近づいて生きてきた。目に見えぬ彼らの復讐からのがれなさい! あなたに対して、かれらが加えるものは復讐以外の何物でもない。かれらにむかって、もはや腕を上げることをやめなさい!かれらは無数なのだ。蠅たたきになるのは、あなたの運命ではない。

 

――――ニーチェの著書『ツァラトゥストラはこう言った』から抜粋。

 

 

 

 

 

 

 

 

他の機動隊員が犠牲にならないようにするため焦った勝田は、火炎瓶を持った者を撃ち、その者が火炎瓶を落としてしまったことにより、その火炎瓶を持った者の付近に居た女性は火だるまとなってしまう。

 

「あっ!」

 

勝田は女性が苦痛の叫び声を上げながら火だるまとなっている様を見て、つい声を上げてしまい、寒気を感じるほどの罪悪感を抱くのであった。

自分が直接撃ったのではない。だが、彼にとっては人を殺めたという感覚を抱かせるには充分な出来事でもあった。

 

「S2、心拍数が220に上昇。パニック障害の進行が止まりません。……あっ、S1とS6、いえ、S4も同様に?」

 

聡美は、勝田以外にもパニック障害が出始めた者が急に続出したことに動揺するしかなかった。

 

では何故、コールサインがS1の古河、それとSTT隊員のS6とS4もパニック障害が生じているかと言うと、この三名も勝田と同様に増援の機動隊員と刀使達に被害が及ばないよう自分の力だけでどうにかしようと躍起になっていたことと自分が後ろに引いてしまえば更なる犠牲が出るという考えに陥っていたため、視界が狭まり、よく見ずに勝田と同様に古河もデモ隊に向けてゴム弾を発砲。結果、デモの参加者らしき少女に向けて撃ってしまい、その少女はゴム弾を頭部に受け、事切れたかのように地面に倒れたまま動かなくなり、デモの参加者らしき男性に担がれながら、後ろに下がって行ったため、その少女の安否が不明だった。そのため、誤って少女を殺してしまったのではないのかという罪悪感から、

 

(……あの子は、無事なのか?私は誤って人を殺したんじゃあ!?)

 

古河は激しく動揺してしまったのである。

 

(……あの人はデモ参加者だったのか?今のは一般の人じゃないのか?……分からない。分からない!!?)(俺は……オレは何てことを……怒りの感情に流されて、人を殺したんじゃないのか!?)

 

そのうえ、コールサインがS6とS4のSTT隊員二名もデモの参加者らしき女性や老人を誤って急所に当ててしまったため、勝田と古河と同様に罪悪感に苛まれ、パニック障害を引き起こしていた。

 

しかも聡美は、この総理の護衛任務に使うレミントンM870という武器には、殺傷力の無い"非致死性兵器"として暴動鎮圧等で使われている有名なゴム弾が装填されているので、殺人といったことから生ずる忌避感から来るストレスは無いと説明されていた。

しかし、実際はゴム弾は当たり所によっては後遺症が残ったり、死亡した事例が幾つも有ったりするので、最近は"非致死性"ではなく"低致死性"という言葉に置き換えられるようになっているのだが、そういったことを聡美は知らなかったのである。(それだけでなく、先程上部ハッチ上から優が古河と勝田の援護に使っているガス筒発射器に装填されている催涙ガス弾にも、弾を頭部といった急所に当ててしまい死亡させてしまった事例がある。)

 

何故、そのようなことになっているかというと、ゴム弾であっても当たり所が悪ければ死傷すると述べてしまえば、デモ隊に死傷者が出ることによって国内世論が敵に回る事態を避けたかった上層部がゴム弾すら装備することを禁じるかもしれなかったためであり、そうなってしまえばデモ隊との衝突は熾烈極まるものとなる可能性が高かったからである。

 

そんな理由もあって、古河と勝田とSTT隊員達はテロ対策の訓練を受けており、そういったストレスは受けないと伝えられていたこと、そのうえデモに参加していた女性が仲間の火炎瓶を受け火だるまとなったり、ゴム弾が撃たれ倒れたままになっている人が居る状況下であるにも関わらず、古河達と同じく前線に居るS3こと優の心拍数の数値が一つも変動しなかったことで、古河と勝田とSTT隊員達のみが何故パニック障害を起こしているのか理解できなかった。

 

そのため、聡美はパニック障害を起こした理由が分からず、動揺するしかなかったのである。しかし、状況は一刻一刻と移り変わっていくのであった。

 

「本部より通達。警護対象者に接近する車両在りとのことです。」

「……分かった。沼田、指揮車を頼む。」

 

西田は、沼田に指揮車のことを任せると言って、対人狙撃銃を持って外へ出ようとしていた。それを見た聡美は、西田が警護対象者に接近する車両を銃で止めようとしていると気付き、止めようとする。

 

「西田さん、待ってください!!」

「止めるな。……私の部下が好奇の目に晒されるよりはマシだ!」

 

しかし西田は、聡美の制止も聞かず、警備対象者である総理に接近する車を銃弾で排除しようとする。

無論、西田は不審車を銃弾で排除したことに関することで上層部に糾弾された場合、刀使も同席して警護している警護対象者が乗る車に近付き、自爆行為で総理を殺害する恐れのある不審車両を止めるために行ったことであると反論し、加えてそのような場所へ子供である刀使を送り、矢面に立たせたことに対する猛抗議を行おうという腹積もりであった。しかし、一人の人間を銃殺したこと、警備で流血沙汰を起こしたことは事実として変わりないので、自らがその処分を受ける積もりであり、部下にやらせようとは思わなかった。

 

『要らないよ。』

 

しかし、優の通信の声が聞こえ、もしやと思い西田は指揮車両内に戻って、マイクを取ると、優の行動を止めようとしていた。

 

「S3、直ちに戻れ!繰り返す、上部ハッチに直ちに戻れ!」

 

西田の懸念通り、優は上部ハッチから飛び降りて、総理と孝子達が乗る専用車に突進しようとする不審車の元へと向かって行くところを西田は遠目で見かけたため、優に危険が及ぶ前に不審車の排除を試みようとするが、射線上に優が重なってしまうため、引き金を引くことができなかった。

 

そして、西田は優の後ろ姿を遠巻きに見ながら、自分の不甲斐なさと至らなさに憤っていた。

 

彼は、古河と勝田、増援として来ているSTT隊員の実力があれば、デモ隊をどうにかできるだろうと踏んでいたため、上からこの警護に参加させるよう圧力を掛けられていた優を古河達の援護と称して、デモ隊との衝突を可能な限り避けようと配置していたのだが、結果はどうだ。

 

(……無念だっ!!)

 

その後の結果は、西田でも容易に想像ができる。

 

優は未来視としての能力を有する龍眼で不審車の移動先を予測し、腰に差してある短刀の御刀で隠世の力を引き出して使える迅移で移動、八幡力とノロの力で強化した身体能力で車の横っ腹を長巻の様に改造した鬼丸国綱で殴り飛ばすことによって、車を横転させて力ずくで停止させていた。

 

……そうなれば、正体を隠すために顔をスポーツマスクとグレー系のゴーグルで顔を隠し、折神家親衛隊の制服を着用して変装している優が刀使が持つ御刀で車を引き止めたことになり、第三者の目で見れば刀使が車両を御刀で引き止めたということになるのである。

 

そのため、車を力技で止めた優の姿を見たデモ隊は、

 

「…ば、化け物だぁっ!!」

「助けてぇっ!殺される!!」

 

と口々に優は怪物で自分達はその被害者であるかのように振舞い、騒ぐのであった。

だが、一部のデモ活動に熱心な者と刀使という存在を理解していない外国籍のデモ参加者はそれにたじろぐことはなく、鉄パイプやら石やらを手に持って襲いかかって来るが、優は冷静に、動じることすらなくゴム弾が装填されたレミントンM870で自分に襲いかかって来るデモ参加者を容易く打ち倒すが、中には怒りで興奮しているせいか、ゴム弾に撃たれても尚も立ち向かおうとする者が居た。だが、優はそんな者が相手でも、レミントンM870のストックで顎や腹を殴り、倒れて蹲ったときは後頭部を何度も何度も殴打して気絶させていた。

 

そうして優は、何事もなく警護対象者が乗る総理専用車を移動させて逃がすために、横転された車で構築されたバリケードを破壊しに向かうのであった。

 

「うっ、うわあああ!!」

 

デモ参加者達は、優がゴム弾を撃った後も銃のストックで何度も気絶するまで殴ったことにより、頭部に血を流しながら倒れ伏すデモ参加者の姿を見て、優が人を殺したように見えたため、人殺しが近付いて来たと思い、我先にと逃げ出す者が続出するのであった。

それを見た優は、丁度良いと思いノロと八幡力の力を加えた鬼丸国綱で思いっきり振り下ろすと大きな破砕音と共に車を跳ね飛ばし、バリケードを力ずくで撤去すると、総理専用車が通れるほどの道を作るのであった。

 

「今の内に!!」

 

孝子は総理専用車の運転手にそう命じると、運転主は優がバリケードを力ずくで撤去して作った道に向かい、この戦場のような場所から早く逃れようとしていた。

 

――――しかし、何かが炸裂する音が辺りに響いた瞬間、総理専用車の窓に穴とヒビがデコレーションされると、総理の身体にも風穴を開けるのであった。

それに気付いた総理は銃撃されたのだと理解し、命の危機を感じたのか息を呑み、大量の汗と朱い血が流れると自身の無事をひたすら小声で祈り続けるのみであった。

 

「火点反応!総理が狙撃された模様!!UAVが捉えた火点反応の位置情報を送る!!」

 

UAVことスキャンイーグルが捉えた火点反応の位置情報を新型S装備に伝送したという沼田の通達に反応した西田は、古河と勝田に指示を飛ばすのであった。

 

「古河、勝田。お前達の近くに居る狙撃手の排除を急げ!」

 

西田の指示にハッとなった古河と勝田は、沼田が送った火点反応の位置情報が新型S装備のバイザーに表示されていることに気付き、それを頼りに標準を合わせると、レミントンM870の引き金を引くのであった。

 

タンッという発砲音を響かせると共に、総理専用車を狙撃した男の腹に当て、痛みにもだえさせることでどうにか銃撃することができないようにしていた。

 

 

 

一方、官房長官と中谷はデモ隊と機動隊の衝突を国会にあるテレビで観ていた。

 

「……どうだ?」

「いえ、確認を取れていませんので、しばらく。」

 

総理の安否を気にしているかのように取れる発言ではあるが、内心は総理の死を望んでいた。

何故なら、総理がデモ隊の手に掛かり殺害されたとなれば、デモ隊を反社会的勢力として糾弾し、それを名目とした新たなスパイ防止法案とそれに付随して自衛隊と警察、刀剣類管理局の強化を図っていたからである。

 

そんな理由もあって、官房長官と中谷は総理の死を望んでいたので、三木と甲斐に指示していたのである。

 

 

 

その一方で、国会周辺の生中継を通じて、北京に居る公安部長は総理が乗る総理専用車に銃撃が加えられたことに仰天していた。

 

「おいっ!銃撃をするなと伝えろ、今直ぐっ!!」

 

何故なら、彼としては失言をしてくれる今の総理が生きていてくれた方が何かと自国にとって都合が良いので、殺害してしまえば公安部長が支援しているデモ隊が総理殺害を行った組織として糾弾され、日本の公安に捜査されることとなり、その過程でもし自分と国会周辺で騒いでいるデモ隊との繋がりが見つかってしまえば、本国は自分一人の暴走による産物として処分し、最悪党籍剥奪され中国社会から排除されるかもしれないからである。

 

そういった理由もあり、公安部長は冷静さを欠き、感情的となって銃撃を止めるようにと部下に激を飛ばすのであった。

 

総理を生かそうとする公安部長。

総理を殺そうとする官房長官。

 

国内情勢を乱そうとする者が一人の命を慮り、国内情勢を安定させようとする者が一人の命を捨てようとしていたという奇妙な事が起きていた。

 

(歩は?………此処じゃよく見えないなぁ。……でも、皆ケガしませんように、何て思うのはちょっと、都合よすぎるかな?私、一番安全なところに居るし……。)

 

その一方で、友人の安否を気にし、皆の無事を祈るが一番安全なところに居ることに後ろめたさを感じる美弥も居た。

 

しかし、総理を生かそうとする公安部長を嘲笑い、美弥を仰天させるかのような事態が起きる。

総理専用車に近付くラジコン車に誰も気付くことがなかったため、そのラジコン車は総理専用車のタイヤにぶつかることで内蔵されていた爆薬を起爆させ、総理専用車のタイヤを潰すことができた。そのため、総理専用車は操縦が急に困難となり、電柱に追突し、その衝撃で窓ガラスが全て割れてしまうほどの事故を引き起こしてしまう。

 

「孝子!!孝子っ!!?」

 

孝子も警護として同乗する総理専用車が電柱に追突してしまったのを国会周辺の監視をしていたUAVのスキャンイーグルが捉え、その一部始終の映像を指揮車にあるモニターに送られ、映されていたため、それを観ていた聡美は思わず通信機のマイクに自らの大声をぶつけるかのように孝子の無事を祈りながら叫ぶのであった。

その祈りが通じたのか、孝子が総理専用車から這い出てくるのであった。しかし、それは御伽噺に出てくるまるで創られたかのような幸福な結末が体現するものではなく、次の災厄を告げるものであった。

 

「誰か救急車!救急車を呼んでくれぇっ!!総理が、総理と私の部下がーーっ!!!」

 

何故なら、頭から血を流している孝子が、孝子の部下である刀使一名が割れたガラスで負傷。護衛対象である総理も銃と割れたガラスで大きく負傷し、危篤状態であるという悲惨な状況を告げるものであったからだ。

孝子の声を通信機越しから聴いた聡美は大慌てで、西田に救急車を呼ぶように叫んでしまった。

 

「西田さんっ!総理が!!」「総理専用車に近付く者が居る!荒魂パーカーを羽織っている者だ!!」

「分かった。指揮車も前に出るぞ!全隊員は総理の救援に向かえ!!」

 

聡美が西田に総理と孝子達を救援するべく救急車を呼んでほしいと訴えると同時に、沼田は荒魂パーカーを羽織り、総理専用車に近付く不審者を排除しろと勝田と古河達に指示していた。

それを同時に聞いた西田は、負傷している総理を医療設備の有る場所へと運ぶため、西田が持つ対人狙撃銃の射撃可能範囲を広げ、輸送防護車の援護をするため、指揮車を前に出そうとしていた。そして、総理の救援のため、勝田と古河やSTT隊員等に総理と孝子達の元へ向かわせようとしていた。

 

「俺は、荒魂ダァーーーー!!!」

 

その荒魂パーカーを羽織る不審者はそのようなことを口走りながら、自爆ベストを身に纏いながら総理専用車へと突貫しようとするが、その不審者は総理専用車の元まで到達し自爆することもできず、西田達も驚くことになる。

何故なら、何者かがその不審者に突っ込んで上手く抑え込んだ後に自爆させたため、周囲に被害が及ぶことはなかった。そして、その不審者を周囲の被害も無く上手く抑え込んだのがタキリヒメであったため、西田達は驚くのであった。

 

「双方、矛を収めーーーーい!!我はタキリヒメ!巷では大荒魂と言われている者なり!!!」

 

そして、両手を広げ、一際大きな声で宣言するタキリヒメ。

それを見た北京に居る公安部長、官房長官、美弥の三人は知らないが、揃って大きな声で叫んでいた。

 

「「「なっ、何しとんじゃアイツはーーーーっ!!!!?」」」

 

総理を生かそうとする公安部長。

総理を殺そうとする官房長官。

被害が大きくならないことを祈る美弥。

 

バラバラだった三人は、このときばかりは気持ちが一つとなるのであった。

 

 

 

 

 

 

そんなことが起きていることに気付いていないタキリヒメは、尚も口上を述べていた。

 

 

「今回の騒ぎ、一部始終を見させてもらった!!今回、我は秩序を乱す不届き者は敵と見なし、成敗する!!」

 

 

タキリヒメの口上に唖然とする古河と勝田。そのため、優は通信機で西田達に次の指示を仰ぐのであった。

 

「ねえ、アレどうしたら良いの?」

『……とりあえず、タキリヒメが騒いで注目を集めているのはチャンスだ。タキリヒメには手を出さず、全隊員は今の内に総理の救援に向かえ。救援に来た輸送防護車は総理を医療設備の有る施設まで護送する手段として使え。』

 

西田の指示でハッとなった勝田と古河は指示通りに輸送防護車を総理専用車の前まで誘導し、その車内へと総理を運ぶのであった。

 

「我が剣の錆となりたい者は来るが良い!!幾らでも相手になってやろう!!」

 

そして、輸送防護車の前には、先程の自爆攻撃を受けても物理的な損傷が見受けられないタキリヒメを見て、石ころや棒きれ、火炎瓶では敵わないと判断したのか、逃げ出す者が続々と出始め、デモ隊は総崩れとなったのである。

 

こうして西田達はタキリヒメの突然の登場と救援のお陰で総理を医療設備の有る病院へと、どうにか移送することができたものの、総理は銃撃と割れた窓ガラスによって重傷を負っていたため、程なくして息を引き取ることとなる。

これにより、中谷と官房長官の狙い通り、今回の国会周辺の騒ぎはデモ隊に責があるとし、そのデモ隊等を総理狙撃事件の主犯として糾弾。それを契機として副総理が緊急事態宣言を発令し、自衛隊と警察の強化、並びに刀剣類管理局内に臨時の特務警備隊と特別遊撃隊の設立が決定され、特務警備隊には獅童 真希と此花 寿々花の二名が配属されることとなる。それに伴い、優が親衛隊の制服を身に纏いながらデモ隊の人間に危害を加えたことにより、真希と寿々花の二人は親衛隊の制服から特務警備隊の制服へと変わることになり、特別遊撃隊には可奈美達が配属されることとなり、それに伴い特別任務部隊は解隊される。

そのうえ、緊急事態宣言を活用し、特務警備隊も綾小路武芸学舎とデモに参加した者達への監視の強化及び、イチキシマヒメと皐月 夜見の捜索範囲の拡大をすることが可能となったのである。

 

結果として、自衛隊と警察は権限を拡大することができ、刀剣類管理局も防諜といった能力を得ることができたのであった。

そのため、北京に居る公安部長の工作活動は、敵国の防諜関係と警備力が強化されるという結果になってしまったこと、他国の代表を殺害するような組織と交流を持っていたということに関する責を裸官や公安部長を引きずり降ろそうと画策する者達等に問われてしまい、その責を取るべく公安部長の席を部下に譲ることとなってしまった。

 

「……お疲れさまです。」

「私のような人間を出迎えるものではないぞ?」

「いえ、私は今まで公安部長にお世話になりましたから。」

「…………そうか。私は良い部下に恵まれたな。」

 

公安部長は少しはにかんだ表情をしながら、そう答えていた。良い部下を持ったと……。

 

「君が後任で良かった。……売国奴共に制裁を加えられなかったことは残念だ。君も気を付けたまえ。」

「ハッ!……了解しました。」

「……そろそろ飛行機の便が出発しそうだ。済まないが、この国のことを頼む。」

 

公安部長は、部下に海外に居る妻の元へと高飛びするための飛行機に乗るということを言うと、部下に見送られながら退室するのであった。

……それを見届けた後、公安部長の部下は、

 

「……はい、私です。この度は公安部長の役職を私に推挙してくださったことを感謝します。……ええ、公安部長は外に出ました。警備の者は付けておりません。ええ、今後とも私を宜しくお願い致します。……それと、公安部長の奥方様は?……ああ、逃亡先の海外で議員の男とデキていると、……ハハッ、それは良い話ですね。それをネタに使えば男の方もこちらの意向を無視することはできないでしょうし。……はい、今後も我が国の発展のために、ですな。」

 

携帯電話でそう話していた。

 

 

 

――――その後、公安部長は自殺することになるのであった。

こうして、公安部長の部下は、公安部長の末路が汪のようだったなとほくそ笑みながら、公安部長という役職と新たなスパイ候補を得るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして、タキリヒメは、

 

「それではご紹介しましょう。今、話題沸騰中の人、と言って良いのかは分かりませんが、それだけで充分に分かりますね?それでは皆さん、拍手でお迎え致しましょう。タキリヒメさんのご登場です!」

 

国会周辺にて口上を述べ、総理の救援を行っていたところを映した動画を動画共有サービスにてタキリヒメ派の人間が配信したところ、暴力で国を変えようとするデモ隊から民主主義を守った立役者であり、暴力的なデモ隊や黒人運動とは違って良識の有る荒魂として有名人になるのであった。その後はバラエティやトークといったあらゆる番組に呼ばれ、自らの持論を語ったことで更に支持を集め、一躍人気者となることになる。

    

    

   

 




  
  
次回はタキリヒメがテレビに引っ張りだことなるぐらい人気者となった経緯と理由を書きます。少々、お待ち下さい。
それと、『次回、総理死す。』と書いておきながら、一話跨いでしまいました。申し訳ありません。


髙橋龍也
@t_takahasi
·
2019年10月30日
今回、事実上の主人公であるのは元親衛隊(現特務警備隊)の真希と寿々花です。特務警備隊は朱音直属の組織で、諸問題に対応すべく現場指揮のみならず諜報活動も行っています。今回はふたりの個人的な『名残』を解決すべく事件を担当し、可奈美と姫和に協力を要請します。

ということらしいです。


あと、シンデレラもそうなるのか………。
    
   
   

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