98話を投稿させて頂きます。
他の影響を受けやすいタキリヒメが総理になったらどうなるか?
尖閣諸島といった離島に荒魂を配備すればどうだろうか?
人種に関係無く、犯罪を犯す奴は逮捕して、公平に裁いて欲しいよな?
非軍事と軍事の境目が曖昧となった戦争は国家総力戦とは言わないか?
テロリストや無敵の人は荒魂と本質的にどう違う?
そして、人間と荒魂との共存国家を築く主導者は、国王は誰であるべきだと思う?
――――そこかしこのテレビに、動画共有サービス上にもタキリヒメが映る理由。
それは、国会周辺の騒ぎ以降、総理を襲撃したデモ隊とそれに協力的であった黒人運動と一部の与野党の人間を国内外の大多数の者は非難していた。
理由は、一国の代表である総理を銃や爆発物等を使って襲撃し、流血沙汰を起こしたことで、最早差別是正や刀使の待遇改善を訴える組織として見る者は居らず、ただの反社会的勢力、所謂テロリストとして見る者しかいなかったのである。
そんな世論が浸透していく中、国会周辺の騒ぎにおいてタキリヒメは負傷した総理を救援するべく、派手な口上と共に一人で立ちはだかり、国会周辺で暴動を起こすデモ隊を抑え込もうとしたことでタキリヒメのことを民衆は“正義の味方”か"民主主義の守護者"という評価をしたのである。
そのタキリヒメの人気に目を付けたテレビ各局は、その人気をあやかって失いかけている視聴率を取り戻そうとしていたのである。
――――そのうえ、
「それではご紹介しましょう。今、話題沸騰中の人、と言って良いのかは分かりませんが、それだけで充分に分かりますね?それでは皆さん、拍手でお迎え致しましょう。タキリヒメさんのご登場です!」
最初に出た視聴者参加型のトーク番組にて大きな反響を呼んだため、一躍人気者となるのである。
無論、この番組のオファーを受けた理由は放送時間が夜の生放送であり、視聴者は日中の労働で疲れて視聴することが予想されるため、それによって、夕暮れ時に疲れていて思考力や判断力が鈍るという『黄昏効果』(今の政治家やビジネスマンにも使われている手法である。)を利用して、大衆を"説得"しようとしたからというのも理由の一つである。
そんな中、司会の進行に合わせて登場し、観客席に居てざわつく視聴者を尻目に、自己紹介のために壇上に立つタキリヒメは静かに沈黙し、ただ棒のように直立不動で立っていた。
「………。」
そして、この番組のオファーを受けたもう一つの理由は、荒魂であるタキリヒメがテレビの番組に本当に出て来たことに興奮している視聴者が番組カメラの先にも居ることも考慮し、この視聴者参加型の形式を採っている番組のオファーを受けたのである。そうすれば、この番組を観ている視聴者の仕草や表情が番組の観客席という近くの場所で見ることができるうえ、小声で「あの目隠しを装備してて前が見えるのか?」「本当に人間のようだ。」といった会話や考えに夢中となっている様を近くで見ることができ、その小声で話したり、別のことで考えていることを止め、黙ってこちらに集中し始めたところを見計らうことが容易となり、こちらの話を集中して聞いてもらえるタイミングが見計らえると考えていたのである。
……要は、市ヶ谷で可奈美達にやったことと同じようなことをするのである。
そうして、長く沈黙していたせいか、緊張して喋れないのであろうと判断した番組のスタッフがタキリヒメに話して欲しい内容のテロップを見せ始めていた。
(……そろそろか、全てが揃った。)
しかし、小声で話している声がポツポツと無くなり始めたことと話題にする物が揃ったと判断したタキリヒメは、そろそろ良いタイミングであろうと判断し、自身と観客席に居る視聴者の沈黙によって静寂と化した番組に、低く、それでいて響き渡るかのような声で聴衆に語り始めた。
「………今、そこに、手に紙の板を掲げ、その紙の板には私が話すべき内容が書かれている。……どうやら、その内容は政府と外国人を揶揄する内容ばかりのようだ。しかし、もし政府や外国人を糾弾したいのであれば、荒魂に尋ねるのか?むしろ、荒魂が出て来たら刀使を呼ぶのが一般的だと思うが?」
タキリヒメのジョークに、観客席に居る視聴者は笑うのであった。
「この国の政治家や企業の役員は、霧の中で迷うようになると、……荒魂か余所の国の人間に頼るのか?」
そうして、軽い笑いが終わった後、タキリヒメは番組の外に居る視聴者にも、観客席に居る視聴者にも問うていた。
この国は何時から方針が定まらなくなったとき、他所の国の人間や荒魂に頼るほど弱くなったのかと……。
急に荒魂のタキリヒメから、誰も予想できなかったことを尋ねられ、次は何を言い出すのか気になってしまい、誰もがタキリヒメに集中して、話を聞き始めるのであった。
「我が見たテレビは、……これほど薄い。我が知っていたブラウン管のテレビよりも遥かに薄いのだ……!」
そして、タキリヒメは次に今のテレビは自分が知っているブラウン管のテレビよりも遥かに薄くなっていると言いながら、親指と人差し指の間を狭くして、手の動作で分かり易く、且つ語気を強めてどれほど薄いテレビが出たかを力説していた。
「人類の発明の発展には驚くべきものだ。その証拠に、折神家はストームアーマーというSF小説でしか聞いたことがないパワードスーツを造っておる。……我がこの世に現れてからは、人類の発展には驚かされてばかりだ。だが、驚くべき発展を遂げたテレビに映るものの中身は何だ?……ハッキリ言おう、クズだ!しかし、国民にもささやかな愉しみが必要であることは事実であるから、コメディーや異世界や過去に行くことで活躍する小噺が、テレビだけでなく街の本屋の棚に有る。だが、今はそれに頼らざるを得ないほどに酷い状態なのか?それほどまでにこの世の中は過酷な時代なのか!?」
タキリヒメは更に問うていた。それほどになるまで今の国は酷い状態なのかと。
「此処はどんな国だ!!?……子供は貧しく、老人も貧しく、失業者に溢れている!出生率は地を這うかのようだ!!だが、無理も無い話だ!!一体誰が、コメディーや本に書かれている異世界よりも酷いこの国で、子供を授かり、産み育てたいと思う!!」
タキリヒメは力説する。巷に溢れるコメディーや過去にタイムスリップして活躍する小噺、異世界に転生や転移する物よりも遥かに酷いこの国で誰が子供を産み、育てたいのかと、語気を更に強めて話していた。
……一体誰がこの国で子供を産み、育てたいのかと。
「この国は今、奈落にまっしぐらだが、皆その事に気付いていない!それは国民にささやかな愉しみを与えるコメディーや異世界転生物、そして驚くべき発展を遂げたテレビでは、……奈落の底が見えないからだ!!」
タキリヒメは力説する。この国は今も奈落へと堕ち続けており、その事実は人々を愉しませるコメディーにも、異世界に行く小噺にも、超極薄となるぐらいに驚くべき発展を遂げたテレビですら、タキリヒメが言う"奈落の底"は見えないほど深いのだと話していた。
「精々テレビで見えてくるのは、……他人の不倫話か韓流ドラマ!」
タキリヒメのちょっとしたジョークにまたも聴衆は笑うのであった。……確かに、ここ最近はそんなものばかりであると思いながら、タキリヒメという荒魂は小粋なジョークを何度も飛ばせるぐらいにお茶目な部分が有るのだろうと聴衆は思ってしまい、タキリヒメに対して親近感を抱くのであった。
……しかし、タキリヒメは韓流といった物を毛嫌いしている者が多いことは既にリサーチ済みであり、人種対立を煽ることで、荒魂に対する忌避感を薄めると同時に古波蔵 エレンといったハーフの人間が現地の者との間に諍いを生じさせることで、刀剣類管理局といった政府機関を弱体化、または人同士による争いを更に激化させようと画策していたことには誰も気付くことはなかった。
「故に、我はこの他者に縋り続ける弱体化したテレビに、いやこの社会全体に対して挑み続ける!それ故に、我は相模湾岸大災厄で大暴れしかせず、人を理解することをせず、ただ暴れるだけで何も産み出さなかった愚かな大荒魂とは違う、霧に迷う者を導く者として"タキリヒメ"と名乗ったのだ!!」
タキリヒメは熱を籠めて語る――――。
「ただ、"奈落"という霧を知り、迷わせるためではない!容赦なく襲い掛かって来る"奈落"という名の霧に立ち向かい、その霧を切り払う力を得るためだ!!」
その瞬間に、聴衆は真剣な眼差しでタキリヒメを見ていた。
何故自分のことをタキリヒメと名乗るのか、何故霧に迷う者を導く者と言うのかを話すタキリヒメに集中して、ただ静かに聴いていた。
「故に、我は挑み続ける!!何処の誰かに穢れの有る荒魂と蔑まれようとも、我は自らの手で権利を勝ち取り、この社会の一員となった暁には、この社会を良くするまで挑み続けるっ!!抗い続ける!!何故なら我は、霧に迷う者を導く“タキリヒメ”であり、その霧を切り払い!!荒魂と人間が共存し、その両者が活躍できる強固な社会を築き上げるからである!!!」
タキリヒメの演説を聞いていた聴衆は、心の中で大きな熱を感じ始め、惹かれ始めていた。
「それ故に、我は先ずテレビに反撃を開始する!!現在、20時45分、これより我は反撃を開始する!!」
タキリヒメの熱の籠った演説を聴き終えた聴衆は、大歓声で応えるのであった。
この荒魂、いやタキリヒメなら、子供と老人の貧困化、そして失業者に溢れているという希望の無い霧に包まれた社会を切り払ってくれるだろうと期待したのである。
そして、タキリヒメの演説の一部始終を観ていた番組プロデューサーは、タキリヒメに感動し、熱くなりながらこう話すのであった。
「ありがとう!タキリヒメさんのお陰で我が局は救われる!!ついては朝から晩まで我が局の番組に出てはくれないだろうか!?」
それだけでなく、タキリヒメの話しを聞いた番組プロデューサーは、
(……上の意向で政府を批判する番組ばかりを作り、何も感じることなくただ惰性で放映していたが今は違う!……この人なら、この人なら本当の意味で世の中を変えてくれる!この見えない霧に覆われている国を救ってくれる!!……若い頃、報道記者として燃えていた自分を思い出すほどの熱い演説であった!!)
若い頃の熱意のみで突っ走っていた自分を思い出させてくれたタキリヒメに感謝し、そして全面的に協力することを決意していた。
……タキリヒメがこの番組プロデューサーとスタッフの過去、経歴、思想から趣味嗜好といったことを部下に調べ上げてさせていることに気付くこともなく。
その後も、全面的に協力してくれる番組プロデューサーの口添えのお陰で他のトーク番組やバラエティ番組に朝から晩まで呼ばれることとなる。
その大歓声の声と番組プロデューサーとスタッフの熱い視線を感じながら、タキリヒメがほくそ笑んでいたことに誰一人として気付くこともなかった。
「貴女以外にも荒魂が存在して、それらが刀使に討伐されているという現状についてはどう思われますか?」
そして、別のバラエティ番組で司会者にこう尋ねられたタキリヒメは、
「では聞くが、人間が秋葉原や池袋で無差別殺人を行った場合は警察を呼んで逮捕してもらい、裁判所で公平に、且つ厳罰に処されることで秩序が保たれることを望んでいるであろう?刀使が荒魂を討伐するのは、秩序を保つために無秩序に暴れる者を討伐しているに過ぎないのだから、我が荒魂討伐ご苦労さんと言うのは当然のことであり、我が荒魂討伐を辞めろというのは筋違いと思うのだが、……違うのか?」
人が白昼堂々と無差別殺人を行った場合は、警察官が取り押さえて逮捕し、裁判所で公平且つ、厳罰に処することで秩序有る社会を形成していることと同じく、無秩序に暴れる荒魂を討伐して秩序有る社会を形成していると説明し、刀使が市中を暴れる荒魂を討伐することは当然のことであり、何も可笑しなことではないとタキリヒメは話していた。
無論、荒魂であるタキリヒメは、荒魂である自分自身が荒魂討伐を否定してしまえば、強固な支持を得られないということを理解しているからこのような発言をしただけである。
「しかしだ。昨今の刀剣類管理局はノロを地元の社で分祀するということにしておるそうだが、今のデフレで苦しんでおる経済状況と社を維持するために税金が使われていることを照らし合わせて鑑みて見れば分かることだが、いずれは過去に起きた経済的な理由から社の数を減らそうという状況へと戻るのは明白であろう。……ノロを扱っている以上、その社にも警備は必要となるだろうから、これからは増税に次ぐ増税が予想される。それならば、いっそのこと我としてはノロが結合し疑似生物となった荒魂を人の居ない離島に配備して、古代朝廷が行った防人のように活躍させることが適当であると思っておる。」
タキリヒメは刀剣類管理局が行っている社の分祀をこの国の財政状況を理由に批判し、疑似生物化した荒魂を人の居ない離島に配備(タキリヒメがこう表現した理由は、荒魂を戦力化することができれば他国の軍隊は容易にこの国に攻め込めないと暗に示し、荒魂は必要不可欠な存在だという認識を植え付けようとしていたのである。)するのが適当であると答えていた。
「……それにだ。荒魂はノロが結合し、疑似生命体となったものであり、この国のノロの総量も限られておる。その証拠に関東を中心に頻発する荒魂事件は、鎌倉で起きた特別危険廃棄物の大量漏洩、漏出が原因であると聞く。……それらを突き詰めれば、荒魂を離島に配備するだけで頻発する荒魂事件をある程度は抑え込むことはできる筈だ。更に言うと、20年前の大災厄で現れた大荒魂は広域に及ぶ荒魂への支配力を有すると聞く。それが可能であれば、荒魂を離島に配備するだけで我が国唯一の防衛組織である自衛隊の負担は減り、荒魂対策の政府予算と併せて防衛費の削減を行うことでこの国の税金を下げ、経済悪化の原因の一つとされておるデフレ脱却が可能となるはずだ。」
加えて、タキリヒメは離島に荒魂を配備すれば、荒魂対策の政府予算と併せて防衛費の削減を行うことでこの国の税金を下げ、デフレ脱却が可能になると述べていた。
………無論、これには理由があり、荒魂対策の政府予算を下げることで刀剣類管理局の弱体化を狙っているのもそうだが、20年前の大災厄で現れた大荒魂を例に挙げて、自身を強化する正当な理由を仄めかしていたのである。
そして、別のバラエティ番組では、
「――――ということを仰っていましたが、タキリヒメさんは刀剣類管理局のやり方には批判的であると?」
「フフ、存在自体は否定せぬ。刀使が秩序を破壊する荒魂を討伐することに関しては何も言わん。我は荒魂と人間が共存し、活躍する強固な社会を築くのが目的だからな。」
番組のコメンテーターのタキリヒメの返答次第では刀剣類管理局批判へと繋がるような質問をタキリヒメは躱しつつ、刀剣類管理局は必要であると述べていた。
「……だが、割に合わんことはやめるべきだと我は言わせてもらう。それに、荒魂対策等の政府予算を削減し、それで浮いた政府予算は公共事業に注力。それを元に新たな雇用の創出と今現在関東を中心に頻発している荒魂事件による被害の復興も早めるべきだと我は考えている。」
それと同時に、デフレ対策としての公共事業を行うことで新たな雇用の創出と関東を中心に頻発している荒魂事件によって損害を受けた建築物等を早期に復旧させることができると説明していた。
しかし、タキリヒメは公共事業が成功し、次に狙うのは銃規制を緩和をすることであり、それが真の狙いでもあった。
但し、銃規制を緩和させると言うだけでは民意は得られないことをタキリヒメは理解していたため、タキリヒメが推し進める公共事業が成功した暁には、その成功例を挙げて推進する積もりであった。
要は、
「デフレを脱却のするためには、お金を回す必要がある。だから○○をするぞ!!」
よりも、
「デフレ脱却のために行い、成功した公共事業を拡大させるため、お金を回すために○○をするぞ!!」
と言った方が、人は成功した前例から安心感を抱き、従ったりするのである。
(……だが、作者的には、余り急激に進め過ぎると、急激なインフレとなって円が紙くずになってしまう恐れがあるため、やりすぎは良くないと思っている。何事も引き際が肝心であるのだが、仮にタキリヒメの言う公共事業が成功し、その成功例を以って銃規制を緩和して銃弾の製造を行う関連会社を創って更なる雇用と経済の流動を行ったとしたとすれば、その"成功例"に縛られ、引き際を見誤ってしまう可能性が高い。その点を考慮すれば、このやり方は余り良いやり方だとは思えないだろう。)
とはいえ、前提の公共事業の拡大が確実に成功する保証は無いので、必ず成功するとは限らないというリスクも孕んでいるのだが、荒魂と人間の人口比率が荒魂の方が高いという状況に持って行くために必要な事であると判断していた。
そんな思惑を持つタキリヒメは、その後も何食わぬ顔をして別のトーク番組に出演し、
「――――と述べておりましたが、貴女は一体何を狙っているのですか?」
トーク番組の司会者に、タキリヒメは何を狙っているのかを問い質される。そのため、
「我がこの国の代表となり、この国を今一度、高度経済成長期のように発展させ、今再び経済大国へと復活させることだ。故にこの国を覆う霧であるデフレ対策として、減税と公共事業の拡大を先ず第一に成し遂げようと考えておる。」
「それを成したとして貴女にどのようなメリットが有るのですか?」
「確かに、我には何のメリットも無いように見え、不自然に思うことだろう。」
荒魂である自身がこの国の総理大臣となり、この国を発展させ、経済大国にするとタキリヒメは答えるが、それだけの説明では信用できないだろうと言って、スッと立ち上がると、タキリヒメはこの国を発展し、経済大国にする理由を述べていた。
………そう、ただ立ち上がったというだけで、この番組の視聴者だけでなく、司会者と番組の制作スタッフ全員が息を呑んでタキリヒメに集中したのであった。
世にも珍しい人型で人語を理解できる荒魂だから、何を言うのか気になっただけではない。
高い背丈と局長代理の朱音が怯むほどの圧倒的な威圧感。そして、人間離れした白い肌も合わさって、何処か言いようのない威容な神々しさを感じたのである。
「だが、それを荒魂が成し得れば、それだけで我々に対する見方が変わるものであろう?二十年前に現れた大荒魂と市中を今も騒がせる荒魂は知性の欠片も無く、国会周辺の連中と同様にただ暴れ回るだけであった。だが、彼等を見れば分かるだろう?……暴力のみで変えようとするテロリズムが良い方向となるか?答えはNOだ!歴史の逆行にしかならない。」
そして、この場に居る皆が自身に集中し始めたということは、この番組を視聴している者も集中しているだろうと確信したタキリヒメは、それに合わせて自身の考えを話し始めるのであった。
その内容は、国会周辺で暴れ、総理を殺害した嫌疑が掛けられているデモ隊を批判するものであった。
「我等のような荒魂でも破壊活動以外に活躍できるのだと証明すれば、荒魂と人間が共存する社会を築くというのは夢幻の話しではないと証明することができる!!」
加えて、タキリヒメは声をより一層大きくして、国会周辺で暴れるだけに飽き足らず、総理を殺害するデモ隊。市中にて理性無く暴れ、物を破壊する荒魂。そんな両者とは違うのだということを証明するために、荒魂と人間が共存する社会を国民とタキリヒメが一体となって築き上げようとしていることを説明していた。
「荒魂と人間が共存する社会を築くやり方は単純だ。一人一人が活躍するだけで我等が築く荒魂と人間が共存する社会はどの国家よりも繁栄しているのだと言える。」
更に、荒魂と人間が共存する社会を築くことは簡単で、その社会の一人が活躍し荒魂と人間が共存する社会を繁栄させるだけで良いという誘い文句。
「……そして、それを築き上げることが出来れば、その社会に住む国民は違う種族の生き物を受け入れることができる気高い生き物であると言うことができ、どの国よりも強く逞しく、清らかな精神を持って生きていけると我はそう確信しておる!!そうするだけで我等が正しいのだと胸を張って言えるのだ!!」
そして、荒魂と人間を分け隔てなく接することで気高さを証明することができるという何かに酔いたい人に刺さる文言を入れるというテコ入れをタキリヒメは欠かさなかった。
そうすることでタキリヒメは、国会周辺で暴れ、総理を殺害したデモ隊とその暴力行為に加担し、協力した黒人運動と野党の一部の議員等を二十年前の大災厄にて暴れた大荒魂と今も市中を騒がせている知性無き荒魂達と同じであると批判し、それを反面教師にし、荒魂が破壊活動以外の方法で活躍することを証明することができれば、荒魂と人類が共存する社会を築くことができ、それを礎にした力強い国家になれると演説したのである。
……これにより、
何かと隠蔽する刀剣類管理局に不満を持つ者。
国会周辺で暴れ、総理殺害という事態を引き起こしたデモ隊に批判的な者。
流血沙汰の結果を出した政府に疑念を抱く者。
といった者達からも支持を集めることに成功したのであった。
……そのうえ、
国会周辺で暴れたことによって総理を殺害するという事態にまで発展させたデモ隊。
流血沙汰で以って事態を解決させた治安維持組織と政府官僚及び、政府閣僚。
そして、人類との共存を謳うタキリヒメ。
これらを鑑みた国民は、"人間"がこの国を任せればこうなるのだから、"荒魂"にこの国を一回任せてみても良いのではないかという意見が出始めるのであった。
しかし、タキリヒメはただ単純に人を支配・管理・導くことを望んでいるがために、荒魂と人間が共存する社会の必要性を訴えているということに、誰一人として気付くことはなかった…………。
こうして、荒魂と同じように暴れる者が居て、それを嫌って荒魂を支持したりする者が増えましたとさ……。
後、作者的にお勧めしないとは言いますが、住友重機械が機関銃生産から撤退するというニュースが有ったので、このまま過度な御礼奉公状態で良いのかという疑念は抱いております。作者の数ある中の一つの持論としては、
『我々が食事をできるのは、肉屋や酒屋やパン屋の主人が博愛心を発揮するからではなく、自分の利益を追求するからである。』
―アダム・スミス―
というものがありますので、住友重機械まで銃製造を撤退すると、豊和工業のみとなり、常に高品質な製品が創ってくれるかどうかはその一社に全てがかかっており、そのうえ誰も称賛されることなく常に御礼奉公状態であり、使用されるのが自衛隊のみという閉鎖空間。
そのような利潤も生まれない状態で、且つ中立的な観点による評価が下せぬままであれば、神戸製鋼のデータ改竄のような事件が起こるかもしれませんし、今現在も起こっているかもしれないので、利潤が生まれ、顧客のニーズを求めることによって、その業界が発展するようになる仕組みを築くべきであると考えております。
故に、何れは銃規制の緩和すべきなのかどうかという議論が起こるだろうとは思っております。
最後に、次回もタキリヒメさんが人々からどうやって信頼と支持を勝ち取ったかという話しになりそうです。