【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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99話を投稿させて頂きます。

今回の99話に出てくる"ある者"と"もう一方の者"と"この両者とは違う者"は同一人物です。


それと、

???「皆の笑顔のために!!」

ちょっと、使ってみたかっただけです。
   
  


次の狂ったお茶会が始まるまでの終曲

    

    

   

『だが、それを荒魂が成し得れば、それだけで我々に対する見方が変わるものであろう?二十年前に現れた大荒魂と市中を今も騒がせる荒魂は知性の欠片も無く、国会周辺の連中と同様にただ暴れ回るだけであった。だが、彼等を見れば分かるだろう?……暴力のみで変えようとするテロリズムが良い方向となるか?答えはNOだ。歴史の逆行にしかならない。……我等のような荒魂でも破壊活動以外に活躍できるのだと証明すれば、荒魂と人間が共存する社会を築くというのは夢幻の話しではないと証明することができる!!その社会に住む国民はどの国よりも気高く、どの国よりも強く生きていけると我はそう確信しておる!!』

 

 

しかし、タキリヒメの"人類と荒魂が共存する社会"は意外な処へも波及することとなる。それは、このトーク番組を視聴していた一部の野党議員と国会周辺に参加していたデモ隊、それにデモ隊に協力していた黒人運動の生き残りはタキリヒメを、

 

『穢らわしい荒魂。無能刀使と刀剣類管理局は早く討伐しろ。』

 

等と、半ば脊髄反射的にSNS上にて批判し、それだけでなく卑猥だったり差別的な表現も混じえて書き込んでいたため、

 

『差別是正を訴えている集団が差別を助長する様なことをするな。』

『タキリヒメは国会周辺の騒動を治めようとしたが、貴方方は助長し、総理を殺しただけではないか。』

『おまえらは何でもかんでも殺したがる集団か。』

 

といった多くの反論の声によって封殺され、それに逆上した一部の野党議員が、

 

『タキリヒメは世界征服しようとしている!!』

 

と根拠も論拠すらも示さずに言ってしまったため(実際、そうなのだが。)、「また野党が根拠無く述べているのか。」と呆れながら反応されてしまう。

……そんなこともあり、タキリヒメが世界征服しようとしているといった内容の話は誰も信じなくなり、タキリヒメを批判していた一部の野党議員が所属する野党の支持率は更に下がることとなり、遂には支持率が一桁になってしまうのであった。

そのうえ、デモ隊の生き残りが再起を図り、上記の一部の野党議員の台詞をそのまま言ってしまったために数少ない支持までをも失い、更にはデモ隊と黒人運動の一部過激派が組織の実権を握り、総理を殺害したことに気勢を上げてしまったために、黒人運動とデモ隊の参加者達の多くが総理を殺害したことに気勢を上げる連中と居ることに意気阻喪して、黒人運動とデモ隊から離れる者が続出。黒人運動とデモ隊の勢力は大きく縮小し、存続不可となるぐらいに追い詰められていた。

 

そういったこともあって、国会周辺にて暴れていたデモ隊と黒人運動、そのうえ一部の野党議員は図らずもタキリヒメの支持を上げることに貢献する形となってしまったうえ、支持する者も勢力も失ってしまったのである。

 

 

こうして、自身の手を直接汚すことなく、この国で騒ぐ、市中にて暴れる荒魂のような人間達を利用したタキリヒメの思惑通りに進んで行くこととなる………。

 

 

 

そのため、差別主義者と言われることを恐れ、不法行為が散見されていた黒人運動やデモ隊のことを今日に至るまで批判しなかった政府やテレビとは違って批判するタキリヒメのことを好意的に見る者が爆発的に増え、数々の番組に出演。一躍人気者となったタキリヒメの人気をあやかろうとした動画配信者達は再生数を稼ぐためにタキリヒメが出演した番組のレビューを行うことがトレンドになりつつあった。

 

 

そうして、タキリヒメがテレビに出演していたときの視聴者の最初の反応は、

 

「とにかく、あの"荒魂"は大躍進中ってこと。」

 

ある者は渋い顔をしながら、疑問を抱いていたり、

 

「でもアイツ。"大荒魂"らしいぜ、それでとにかく何かに反逆してるんだってさ!何かに反逆してるって、何かカッコよくね!?でも、あの"大荒魂"の目を覆うバイザーを真似して付けてみたけど、やっぱり良く見えねえわ。何で付けたんだ?」

 

もう一方の者はいかにもビックリした表情をしながら、興味を抱いていたり、

 

「それでね!あの"人"こう言ったの!……『テレビはクズだ!』って、それを見て、私コレ見たいって思ったの!!」

 

この両者とは違う者は"笑顔"で言いながら、好感を抱いていたことを告白していた。

 

そのため、ある者は"荒魂"、もう一方の者は"大荒魂"、この両者とは違う者は"人"と言って、タキリヒメのことを"荒魂"扱いしたり、"大荒魂"と解説したり、同じ"人"のように見ている者が居ることを動画配信者達が証明していた。

そして、この三者に共通することはタキリヒメに関連することを述べたら、再生数と評価数が急激に上がったということであった。

 

 

その次は、タキリヒメがデモ隊のことを批判したことについてであった。

 

「皆ビックリしたよな!?荒魂らしいけど、流暢に日本語喋っていたし、真剣に取って良いのか?それとも笑えば良いのか、ちょっと判断し辛いよな?だって、言っていることが超シリアスで、超その通りなんだ!正に正論!!犯罪者は刀使が討伐する荒魂と同じ扱いにすりゃ良いんだ!!」

「タキリヒメにとって大きな問題は今、日本中とポリコレ被れの連中がこの手の問題を受け入れるかどうかってこと。」

 

特措法の廃止を訴えていたデモ隊は取り締まるべきか否か?

 

「今、問題視すべきなのは国外から来る移民が多いってこと、そういった奴等が国会で騒ぎを起こしているんだから取り締まるのは当然だ。テレビも政府も、何処も差別的だ何だって言われるのが怖くて、まともに取り締まることも反論することもできやしない!!」

「ミスターニュースはダメだね!問題は移民二世の方が犯罪率が高いとかじゃない。移民を入れた後のことについてなんだ!!移民推進派は平等とか人権とか耳障りの良いことばかり言って、入れるだけ入れたら待遇が悪いまま放置してるじゃないか!!」

 

タキリヒメの言う荒魂と人間が共存する社会は築けるのか?

 

「……甘く見て良いのかな?って思う。だって、彼女は、その、何て言うか"大荒魂"な訳だし、最終的に何するか分からない。……それに、昔は色々耳障りの良い事ばかり言って失敗したから、……どうなのかな?って思う。何処まで、信じて良いんだろ?って、だから私、どうかと思ってる。良いのか悪いのか?」

 

そして、タキリヒメが言うことは全て信じるだけで良いのか?

といった動画を配信し、動画共有サービスを利用する者の皆がタキリヒメに注目し、タキリヒメに関する話題ばかりであった。

 

「相応しいのは、動画配信者か?テレビスターか?……それとも首相か?どれもその資質が有るのでしょう。これは、刀剣類管理局が発表した『荒魂が人を襲う根本的な原因は珠鋼を奪った人間に対する怒り』という研究成果を覆すこととなるかもしれません。何故なら、今の彼女は激情に任せて人を殺めるという部分が見られませんので、その可能性は非常に大きいと思われます。」

 

しかし、とある動画配信も行っている大学教授が、刀剣類管理局が発表していた"荒魂が人を襲う根本的な原因"に対して、タキリヒメが人間を“今は襲っていない”ことを根拠に疑問をぶつけるのであった。

この疑問を切欠に多くの動画共有サービスの利用者が、刀剣類管理局の言うことが本当に正しいのか?と疑問を抱き始めることとなり、

 

「――――って、別の動画で大学教授がそう言ってたけど、ちょっと待てよ。……国会周辺で騒いでた奴等は人間なんだろ?人間も荒魂みたいに暴れまくるなら、タキリヒメだけが危険だということにはならないんじゃねーの?」

 

荒魂であるタキリヒメの言うことの方が正しいのではないのかと思い始めるのであった。

……そのため、

 

「こうすれば、特徴的な目のバイザーなのかなアレ?……まあ、これで完成。後はそれと併せて、髪の毛を白く染めれば"タキリヒメ"コスプレが完成!ちょっとアニメっぽくて、少しカッコイイと思わない!?」

「荒魂パーカーをこうして……こうすれば、な?"タキリヒメ"に見えなくはないだろ?」

 

タキリヒメのコスプレ紹介や荒魂パーカーをタキリヒメ風にアレンジしたといったタキリヒメに関連する動画がSNS上で急激に増え始めたのである。無論、そうするだけで『いいね!』や『Good』を多く貰えたりするため、皆がこぞってタキリヒメに関連する動画を創っているという部分もあった。

 

 

『あの教授が『荒魂が人を襲う根本的な原因は珠鋼を奪った人間に対する怒り』が覆るかもしれないと言ってたけどそうだよな。あのタキリヒメ、人間が作った異世界転生物のこと言ってたし、そういった物に興味有るのかな?』

『それな、もし刀剣類管理局が言っている通りなら人間が作ったサブカルチャーなんて興味持つ訳ないよな。』

『そう考えると、あのタキリヒメが異世界モノを熟読してるところ想像したら、何かカワイイな。』

『でもさ、タキリヒメの境遇考えると、異世界転生というより追放系に近くね?』

『- 私、政府に荒魂と蔑まれて追放された私が人望を集めて大逆転!!今更、助けを請うてももう遅い。今の私は気にせず爆進中。 - が始まります。』

『だwwwwれwwwうまwwwwww。』

『おいwwww悪ふざけが過ぎんぞwwwwwでも、あながち間違っていないような気がするから何も言えねえwwwwww』

『おまえら、草生やし過ぎwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』

 

 

そのうえ、タキリヒメの演説で異世界転生のことについて少しだけ言及したことに食いついてきた者達が囃し立てたことで、SNS上でもタキリヒメの話題がホットワードとなるのであった。

 

 

 

ただ、一人の対象に対して議論を重ねる。それだけで、タキリヒメの認知度と支持率は飛躍的に上がっていったのである。

そうして、タキリヒメの評価は――――、

 

 

「ちょっと悲しいけど、"タキリヒメ"の言っていることは正論だ。それほど間違っていない。」

 

疑問を呈していたある者は、"苦笑い"しつつも、タキリヒメは正論を述べていると語り、

 

「子供も貧しく、老人も貧しく、失業者に溢れている!誰もそれを問題視してなかった。だけど、"タキリヒメ"だけが言ってるんだ!すげぇよ!!だから、オレは"タキリヒメ"のことを応援しようと思う!!あと、チャンネル登録もよろしく!!」

 

興味を抱いていたもう一方の者は、興奮気味だが、"笑顔"でタキリヒメの言うことに共感していると語り、

 

「この国で子供を産みたいかって?正直この世界で?産め産めと機械のようにしか言わないこの国の政治家何か目じゃないくらい"タキリヒメ"って本当に凄いって思う!!言っていることホントその通りなんだから!みんなも要チェックしてね!!」

 

最初から好感を抱いていたこの両者とは違う者は、タキリヒメは素晴らしい人物であると"笑顔"で語り、三者ともそれぞれの感想を発信していた。

 

こうして、タキリヒメに対して親近感を抱き、好意的に見る者が漸増の一途を辿るのであった。

そして、この三者は共通して、タキリヒメのことを"荒魂"、"大荒魂"、"人"とは呼ばずに“タキリヒメ”という名前で呼んでいたことに気付かなかった…………。

タキリヒメはこの社会が自分を受け入れつつあり、そしてそれを利用して徐々に支配していき、国民と指導者が一体となった強い国を自らの手で築き上げることを夢見つつ、それを支持する"国民"が漸増の一途を辿っていることに人を支配・管理・導くことを望むタキリヒメは内心ほくそ笑みつつ、ある者達に感謝していた。

 

(……デモ隊の諸君。国会周辺で暴れてくれてありがとう。)

 

自分の思惑通りに暴れ、図らずもタキリヒメの支持率の増加に貢献したデモ隊に、心の中で笑いながら感謝の言葉を送り、タキリヒメもそれを支持する者達も同じように笑いながら、気付かぬ内にタキリヒメだけが座れる王座を築き上げていくのであった………。

 

 

 

 

 

 

――――その数日後、今日も動画配信サービス上には、タキリヒメに関連することばかりが並び、新聞もテレビもタキリヒメに関する話題で持ち切りとなっていた。

 

「……また、タキリヒメのことばかりですね。」

 

その結果なのか、今も病院のテレビに映るタキリヒメを観ていた桐生 葉月は複雑な気持ちであった。何故なら――――、

 

『やっぱ許せないっすよね。理由はどうあれ、刀使さんにまで暴力を振るうなんてサイテーです!』

『タキリヒメさんの言っていることを考えたら、刀使さんって大変ですよね。暴動で暴れてた連中よりも凶暴なのを日々相手にしてるんですから……。』

 

人が白昼堂々と無差別殺人を行った場合は、警察官が取り押さえて逮捕し、厳罰に処することで秩序有る社会を形成していることと同様に、無秩序に暴れる荒魂を討伐して秩序有る社会を形成していると説明し、刀使が荒魂を討伐することは当然のことであり、何も可笑しなことではないとバラエティ番組で論じるタキリヒメを観た聴衆はその通りであると発言していた。

 

『刀剣類管理局は許せないですよ。一刻も早く事態を収拾すべきです。』

『刀剣類管理局は、この荒魂の被害に遭った人間全員に、慰謝料を払うのが当然じゃねえ?』

 

しかし、先程まで刀使に対する風当たりが強く、刀剣類管理局と同様にバッシングの対象にしていたにも関わらず、舌の根も乾かない内に刀使を労わるべきであるという論調となりつつあったことに、葉月は何とも言えない感情を抱くのであった。

無論、これは視聴率を回復させ、広告収入が激増したことでテレビ局が復活したことに大恩を感じている番組プロデューサーが前の刀剣類管理局を批判する番組作りと同じ手法で、タキリヒメのことを支持している者のみをインタビューしているというテコ入れも有ったのだが、タキリヒメを支持する者達はそのことに気付くことはなかったうえ、刀剣類管理局も自衛隊(中谷や甲斐といった防衛省の重鎮が、総理暗殺に加担していたことが発覚することを恐れてだが……。)も数を増しつつあるタキリヒメを支持する者達の批判を恐れて、追及することが出来なかった。

 

そのため、つい先程までテレビが刀剣類管理局を批判していたことを思い出した葉月は、刀使に対するバッシングを荒魂が解決するということに何とも言えない複雑な思いを抱くと同時に、今まで刀使と刀剣類管理局が悩ませていた事を刀使の討伐対象であった"荒魂"のタキリヒメに解決してもらった事実を受け容れることには時間が掛かりそうであるとも思っていた。

 

「……結局。私達がやってきたことって、何なんでしょうか?隊長。」

 

その結果なのか、政府(官房長官や副総理といった内閣の重鎮が、総理暗殺に加担していたことが発覚することを恐れてだが……。)は、数を増しつつあるタキリヒメを支持する者達からの批判を恐れて、表立って批判することが出来なくなりつつあった。

そのうえ、視聴率の回復に貢献してくれたタキリヒメに対して足を向けることができなくなり応援し続けるテレビ。更にはSNSや動画サイト上でもタキリヒメを支持することが多くなり、批判することが無くなりつつあるという、誰もがタキリヒメに逆らえなくなりつつある状況下の中で、『タキリヒメ、テレビも動画配信サービスも"支配"!!?』という見出しが書かれている新聞を病床の上で見ることになった葉月は、これは性質の悪いジョークなのかと戸惑う程であった。

……そんな心の奥底で引っ掛かりを感じる結果となったことについて薫に尋ねる葉月。

 

しかし、その一方で薫は、葉月と同じ物を読みながら物思いに耽っていた。

 

……奇妙な話だ。

 

誰もが誰も、人が人のためにと思い、理想に酔いながら戦っていたが、結局は独り善がりのテロ行為でしかなく、結果は"人"が損をし、"荒魂"が得するだけだったという結果となったことは、折神 紫に対抗する組織舞草に所属していた薫にとっては、何とも言えない複雑な思いを抱かせるには充分であった。

 

舞草も『御刀や刀使のあるべき姿を取り戻す。』や『大荒魂に憑依された紫の打倒。』という目的を掲げ、行動をしたが結果は鎌倉危険廃棄物漏出問題である。

 

それ以降の刀剣類管理局は、社会的信用を失い、ノロを大量に漏出し、土地を汚した杜撰な組織と批判されることとなり、その刀剣類管理局と同じく更に重税を強いる政府も信用することができないという事態となり、社会不安と生活不安によって人が人を信用することができなくなりつつある社会情勢となってしまった。

その結果、薫は互いに互いを攻撃し合う社会へと変貌したかのように感じていた。その証拠に、群馬山中での争い、関東8区での暴動、安アパートでの銃撃戦といった人同士の争いが増えているのである。

 

……そう考えるだけで、自分達と暴動を起こした人達は本質的に似ているのかもしれないと、妙なセンチメンタリズムに酔っている自分が居ることに気付いた薫は、その考えを改めるように手に持っている新聞に改めて集中することにした。

 

「………隊長?」

 

葉月は、急に薫が返事もせず静かに、新聞に集中して読んでいることに珍しく感じたのか、どうかしたのかと尋ねるのであった。

 

「ん?……ああ、ワリィ。少し4コマ漫画が面白くてな。」

 

薫がそんな返事をしたためか、「……全く、少しは他のニュースとかにも興味を持って下さい!!私達の部隊長でもあったんですから。」と注意を受ける。

 

「ハハ、そうだな……。」

 

何故だろう……。この会話が、懐かしく感じるのは?

今やもう、真庭 紗南本部長に「働けこのバカ薫がぁ!」と言って、叱責されたときが何時だったか、もう思い出せないのだ。そのうえ、紗南からちゃんと休暇は貰えるのだが、何故か嬉しく感じなかった。

 

……あの頃に戻りたい。

 

子供も女を唆し自爆させようとする狂った奴しか出てこない侵食された世界から、任務をサボってエレンや葉月に小言を言われ、最終的に紗南本部長にバレて大目玉を食らったりするといった、いつもの何事も無い日常を送れる日々へと戻りたい。

 

不思議と何故か、そう思う自分が居ることに薫は奇妙な感覚を抱きながらも、そう心の奥底では願っていた。

 

「……だけど。俺は俺達がやってきたことは間違いじゃねぇよ。」

「でも……。」

「間違いじゃねえさ。……それに、お前の頑張ったから、それが繋がったから、タキリヒメが"荒魂と人間が共存する社会"を目指したんだろうな。……だから、ねねも俺もお前に感謝してる。……お前に助けられた機動隊の隊員と同じように、俺も感謝してる。」

 

だから、薫はそう思わせることにした。

真面目な性格である葉月が、これ以上無茶をしないように。

 

「……昔さ、ねねが"荒魂"とかいう理由で除け者にされたことがあったんだ。……ねねに"穢れ"が無いにも関わらずだぜ?"穢れ"が有るから荒魂じゃねえのかよ。って本気で思ったな、そのときは。……だから、それを考えると、タキリヒメの言う世界っていうのも存外悪くねぇかもな。」

 

いや、薫はそう思うことにした。

葉月の努力が無駄でなかったと証明するために、葉月の努力の結果が良かったと言えるようにするため、トーマスと一時的に組んだが結果は国会周辺以外の次の暴動計画を阻止したものの………。葉月にはとても言えないこととなってしまっていた。

 

あの後、アメリカ海軍所属である潜水艦ノーチラス号で起こったことは、"アメリカ海軍内で起こったこと"として、誰も追及しないことになっていた。

そう、あの娘と母親、そしてテロリストである父親も"存在しない"ことになっていたのである。

 

……そして、葉月も薫の真意に気付いたのか、静かに聞いていた。

 

「だから、この話は……これで終わり。もうこれで終わりなんだ。」

 

そう言って、薫はこの後、上層部の命令で可奈美達と共にタキリヒメと会談することになっているのだが、それを伏せるため、潜水艦ノーチラス号にて起きたことを葉月に気付かれることがないよう、終わったことなのだと話すしかなかったのであった。

    

    

    




    
    
こうして、防衛省と外国の工作員と政権与野党が争う暗闘の最終的な勝利者は心の中で大笑いするタキリヒメになりましたとさ。

そのため、荒魂の株は急上昇するのでした。やったねタキリヒメ。
しかし、その陰で一番の被害者は………。


あと、タキリヒメのモデルはピクシブ百科事典のサイコパスの項目に書かれている“支配型サイコパス”ってこんな感じの人かな?って思いながら書いてました。
いや、紫様が合理性が強すぎて苦しかったとか言われたら、そういうキャラなのかな?って思ってしまったんですよ。
   
   

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