【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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104話を投稿させて頂きます。


職場の後輩にスマホのネットワーク機能を使えば、勉学等にも使えることを教えると、

「え!?スマホってそんな使い方も有るんすね。ゲームか課金するぐらいしか使い途が無いと思っていました。」

と言われたことを思い出しました。
   
   


タキリヒメとの邂逅

     

    

    

歩のことを心配していた美弥の要望に応えるべくタキリヒメは歩との面会を要請し、歩はタキリヒメと美弥の居る場所へと来れたのだが、歩は剣術の腕が上達せず、行き詰っていたことに思い悩んでいたことをタキリヒメと美弥に打ち明けていた。

そんな友人の悩みを聞いた美弥は、

 

「……それなら、歩達の練習風景を動画にして公開するってのはどう?」

 

と歩に動画配信者となることを提案していた。

 

「え?」

 

美弥の提案を聞いていた歩は、驚くしかなかった。

何故、動画を配信したら剣術が上達するのか理解ができなかったからである。

 

「……まあ、いきなりそんなこと言われても困惑するしかないよね。動画配信を推すのには理由があるんだけどね。」

 

美弥はそう話してから、本題に入っていた。

 

「その理由ってのが、私がタキリヒメに勉学を教えてもらっている風景を動画共有サービスに動画投稿させられているんだけど、その内容がこの問題を解いてみろだとかこの文章を英文に直してそれを説明しろとかばっかりやらされていて……。最初は批判や酷い中傷のコメントが多かったんだけど、それにめげずに、ていうか、辞めようとしたらタキリヒメに脅されて辞めることができなかったんだけど、それでも続けていくうちに自分の知識を元に発信しているから間違いやできないこと、それに自分の足りなかった部分に気付けるようになって、それを直してやっているうちに段々と応援のコメントとか良い評価とか貰えるようになったんだ。それで、私は評価されているんだ。こうすれば間違っていなかったんだ。って思えるようになって、それで自分に自信が持てるようになったんだよ。」

「……脅されているんだ。」

 

タキリヒメが創った問題を解く美弥の姿と美弥の英語力を動画共有サービス上に動画として投稿させられていたことをタキリヒメに脅されているにも関わらず、笑顔で話す美弥の姿を見て、タキリヒメに洗脳されているか信奉しているのではないかと思ってしまい、歩は美弥に対して何とも言えない気持ちとなるのであった。

 

「あっ……で、でもまあ、それで自分の成績が上がったのは間違いないよ。動画投稿をやり続けた後に綾小路から送られてきた課題がスラスラと解けれるようになったからタキリヒメの言っていることって一応は効果が有るんだなって思ってるだけで、別にタキリヒメが凄いとか言いたい訳じゃないからな!」

「あ、うん。」

 

歩の反応を見た美弥は、歩が自分のことをタキリヒメを信奉する信者か何かのように思われたのではないかと思い、それを否定するべく必死で違うと言っていた。

しかし、歩は美弥の剣幕に圧され、空返事しかできなかった。

 

「ま、まあ、今の世の中ってインターネットが普及して様々なサービスが出始めたじゃない?例えばSNSとかブログとかで近況や自分の考えを広めたり、もしくは動画投稿できる動画共有サービスでも自分自身を発信できるようになったりして、個人が出来ることが一気に増えたじゃない?そんな時代だからこそ、昔の様な一人で籠ってする詰め込み式より、他者のことを認めて、高め合いながら上を目指した方が教養に対する興味が何倍も高まって、結果覚えが良くなるから、その環境も利用しろってタキリ……というのを聞いたことがあるんだ!!」

「あっ……そうなんだ。」

 

美弥の説明にタキリヒメと言いかけたところから、恐らくタキリヒメからその勉強法を強いられていたのだろうということは理解したが、先程と今の美弥の反応を考えて、歩は敢えて何も言わなかった。

 

「あっ、でも歩の場合はちゃんと周りの人の協力を得てから行うようにね?勝手にそんなことしたら、朱音様に責任が及ぶかもしれないし、最悪、私が言った方法ができなくなる可能性が高いから、そこは注意しときなよ?」

「……そうだね、美弥の言う通りだよ。私一人だけでやることじゃないしね。」

「そうそう、勉強っていうのも、それを教える教師とそれを教わる生徒がいないと成り立たないしね。それを考えると剣術も相手が居ないと成り立たないでしょ?」

 

美弥に自分が行っている勉学も歩が日々励んでいる剣術も相手が居るからこそ成り立つものであると言われた歩は納得していた。

 

「……そうだよね。私が衛藤さんを憧れた理由も元を正せば、あの人のように強くなれば人の役に立てる刀使になれるかもしれなかったからだったよ。それを思い出させてくれてありがとう美弥!」

 

そして歩は、美弥の学問も剣術も一人ではできないという考えを聞き、可奈美に憧れた理由を思い出せたと言って美弥に感謝していた。

 

(……そうだった。そうだったよ。私はその姿を見て憧れたんだ。衛藤さんに憧れたんなら、仲間と共に大荒魂討伐した衛藤さんみたいに私も皆と一緒に強くなるべきだったんだ!)

 

美弥の話を聞いた歩は、仲間と共に強くなることを決意すると共に、

 

「それなのに、私はどんなことしてでもって、思っちゃった。……色々と教えて貰ったのに、私、間違ってました。衛藤さん。」

 

歩はただ強さだけを求めていた己を恥じ、小さい呟く声量で可奈美に謝罪していた。

 

「ん?間違ってたって?」

 

しかし、美弥は聞き逃すことなく、先程呟いた内容を美弥に尋ねられた歩はハッとした顔をして、観念したのか、それとも此処に居ない可奈美への謝罪の意味も込めてなのか、素直に答えていた。

 

「……私、特別遊撃隊に任命されて浮かれてバカになっていたのから、少し思ったんだ。……どんなことをしてでも強くなろうって。」

「………。」

 

それ故に、歩の懺悔をただ静かに黙って聞く美弥。

 

「少し考えれば解ることだよね。……どんなことをしてでも強くなった衛藤さんを私は憧れるかどうか?って考えれば、そんな非道なことをする衛藤さんを憧れることなんてないのに、……なのに私、どんなことをしてでも強くなろうとか頭の中で……頭の中でたくさん考えちゃった。」

 

歩は少し悲し気な声で、美弥にそんな自分が情けなかったと告げていた。

 

「……仕方ないよ。歩は色んな人に助けられて、そんな人達の恩返しを少しでもしたいという気持ちが強くなって、それで焦って少し道を見失いかけたんだよ。……だから、その前に私とかに話してくれてありがとう。歩。」

「……美弥。私、美弥の言っていたことを実践して、もう少し頑張ってみるよ。」

 

歩は特別遊撃隊でもう少し頑張ってみると言うと、美弥に少しはにかんだ笑顔で答えるのあった。

 

「というか歩、何時の間に衛藤さんと会ったの?」

「あ~、その、初任務の際に応援に来てもらったときに出逢ったくらいかな。……それで凄かったんだよ!!車よりも大きいムカデみたいな荒魂を倒したんだから!!」

「へ、へえ、そうなんだ……。」

 

だが、美弥が可奈美の話題を振ると、目の色が変わったという表現が的確であると感じられるほどに、歩は元気になり、グイグイと美弥に寄ってきたのである。

その圧の強さに美弥は、先程の歩の元気の無い姿は何処へ行ったのかと思ってしまった。

 

「それで私、衛藤さんに近付くために柳生新陰流とか学んだり、一眼レフカメラで衛藤さんの姿を撮ってたんだけど……。」

「効果が無かったと。」

 

そして、歩のストーカー行為に美弥は効果が無かったのだろうとスッパリと言うのであった。

 

「ハイ。その通りです……。何で分かったの美弥?」

「そりゃそうだよ。今までアンタ鞍馬流でやってきたじゃん。流派を真似したって衛藤さんのように強くなれないと思うけど。」

「うう、そうだね……。」

 

流派と行動を真似しても強くなれないと言って、美弥は歩を諭していた。

無論、歩のストーカー行為を辞めさせるためでもあるが。

 

「それに、私、さっき衛藤さんと会ったから分かったんだけどね。」

「当たり前だよね。衛藤さんは公務で来てるんだから。美弥に会いに来てる訳じゃないよね。」

「そこで張り合うな、そこで……。ていうか、アンタ衛藤さんのこと好き過ぎ。」

「うん!」

「即答かよ!……まあ、私の私見なんだけど、きっと衛藤さんそんなこと望んでないと思うよ。」

 

美弥の可奈美は歩が同じ流派を学んだり、行動を真似したりすることを望んでいないという発言に「えっ?」となる歩。

 

「……どうして?」

「いや、私もあの人とそんなに直接話してないから分からないけど……でも、あの人確か、剣術が好きなんだよね?」

 

美弥は歩に、可奈美が噂通りに剣術好きな人物であるかどうか訊いていた。

 

「そう聞いてるよ?それが理由でそう思ったの?」

「いや、朱音様が言っていたんだけど、衛藤さんって刀を合わせた者を感覚的に捉えられるらしいからさ、自分の模倣よりその人が創意工夫した熱意を感じられる技とかを見る方が好きなんじゃないかな?だから、自分のことを神だとか自称する中身中二病でしかないタキリヒメにも立ち合いを望んで、その人のことを知ろうとしたんだと思う。」

 

そして美弥は、自身が思う可奈美の人物像を歩に述べていた。

可奈美という人は、自分の猿真似なんかよりも、その人が創意工夫し、その人が籠めた思いを感じる剣技を魅せた方が喜ぶだろうということ。

 

「………。」

 

それを聞いた歩は、タキリヒメのことを中二病呼ばわりする美弥の姿に度肝を抜かれたこともあって、ただ静かに黙って聞いていた。

……そして、タキリヒメも場の雰囲気を読んで、美弥に中二病呼ばわりされたことについては、今は責めることなく、後で折檻することを心に決めていた。

 

「それに、衛藤さんの真似したって完璧に真似ることなんかできないと思うんだよね?……例えば、歩が衛藤さんのことを完璧に真似たければ、先ずは歩の持つ御刀を千鳥しなきゃいけないけどできる?」

「……無理です。」

「そうだよね。……だけど、衛藤さんは歩に剣術を教えてくれているということは、衛藤さんは歩に自分のコピーを求めているんじゃなくて、歩の隠されたポテンシャルを引き出そうとしていて、それに期待しているんじゃないかなって私は思っているんだけど。……違うと思う?」

 

美弥の話を静かに聞いていた歩は、可奈美の真似をするより、自分が鍛えた技を見せた方が可奈美は喜ぶのではないのだろうかと思い。美弥の話に納得していた。

そのため歩は、今後は可奈美と同じ流派にしようとしたり、可奈美の行動を真似するべく一眼レフカメラで可奈美を勝手に撮る行為は辞めようと心に誓うのであった。……しかし、

 

「違わないと思う。……けど美弥?衛藤さんを語るなら、先ずは私を通して欲しいな!!」

「メンドくさいな……。でも、"努力"っていうのはさ、一歩一歩進むように刀を振って鍛えるだけが"努力"じゃないんだよ。誰かと一緒に歩いて、相手の強さと弱さも理解して一緒に歩いて行くことだって等しく"努力"の形の一つだっていうことが動画投稿やSNSを利用した勉強法を通じて分かったんだ。」

 

歩は可奈美のことを憧れていることは辞めないという宣言を美弥にしていた。

美弥はそれを聞きながら、"努力"という物は様々な形をしており、その人次第では輝いたりすることだってできると説いていた。

 

(……そうだよね。衛藤さんに喜んで欲しかったら、流派を衛藤さんと一緒にしたり、行動を一緒にした猿真似なんかで得た技なんかより、皆と一緒に鍛えた技の方が見てて気持ち良いだろうし、素直に嬉しいに決まっているよね。)

 

そのため歩は、中身の無い猿真似より、皆と共に鍛え、高めた技の方が中身が有り、忘れることは無いだろうし、人に感動を与えるであろうと理解していた。

そして、それこそが歩が望んでいた人の役に立てる刀使の姿ではないかとも思い始めていた。

 

「……でも、そうだよね。美弥の言う通りだよ。私だけじゃなく皆が居てくれるから人の役に立てる刀使になれるんだよね。ありがとう美弥!今度、実践してみるね!」

 

美弥の教えてもらったやり方を実践してみるという歩の姿に、美弥は感動すると共に特別遊撃隊という恵まれた環境に居て、自分なんか置いて行くぐらいに精進しようとする歩のことが羨ましいとも、妬ましいとも思えた。

何故なら、美弥はタキリヒメを監視するという役目を負っているのに、市ヶ谷の外へと出すことを許してしまった無能な自分とは違い、歩は特別任務部隊を経て特別遊撃隊に栄転し、優秀な仲間が付いていたとはいえ、強い荒魂を討伐するといった明らかな差を感じ、そのうえタキリヒメから教わった美弥の話を聞いて、それを直ぐに理解し、糧とする今の歩の姿は更に、自分なんか置いて行って自分なんかが届かない遠い場所へと向かうのではないかと危惧し、美弥は焦りを感じてしまったのである。

 

「それと、皆と一緒に大きくて強い荒魂を倒したときは真っ先に美弥に報告するね!」

 

しかし、歩のその真っ直ぐな言葉に射貫かれた美弥は、羨む気持ちと妬みの感情が消え去ってしまったのである。

 

「あっ、……そうなんだ。……というか、何で私が先なの?歩の憧れの人は衛藤さんなんだし、それに上役さんである獅童さんに言った方が良いって。」

 

そうして美弥は、最初は小声で頷きつつ、どこか心が痛いという気持ちを抱えながら、笑顔という仮面を必死に被って、自分なんかよりも歩の憧れの人である可奈美か歩の上役となるであろう真希か寿々花に報告する方が断然良いだろうと返答していた。

 

「良いの。周りの人を大事にしろって美弥が言ってたんだし、最初に教えてくれた美弥にそれを実践する意味と色々教えてくれた感謝の意味も込めて、それを私がしたいだけだよ。」

 

しかし、歩にそう真っ直ぐそう返答された美弥は、先程妬みと羨んでいた感情を向けていたことに気付いていない歩に対して罪悪感を抱くのであった。

 

(……何だよ、そんなこと言うなよ。………そんな歩のことを少しでも嫉妬したり、妬んだ私がバカみたいじゃん。)

 

そして、泣かないように奥歯の歯を食いしばって、

 

「そうなんだ!……それはよかった!!」

 

歩に心配掛けないように、涙を流すのを堪えるべく、大声を上げた後、くるりと歩に対して背中を見せるのであった。

……そして、

 

「……歩。"努力"っていうのはさ、一つだけじゃないんだよ。一歩一歩歩んだり、誰かと一緒に歩いたりするんだっていうのも等しく"努力"何だってことを、それを学んだということを忘れないでよ!私が伝えたかったことはそれだけ。私が伝えたかったことが歩に届いて良かった!……ハイ!終了!!」

「えっ、……美弥?」

「良いから早く行けって!……皆、待ってるんだからさ。」

 

美弥は笑顔の仮面を被って、それを言うのであった。それを見た歩はタキリヒメに、

 

「……あの、タキリヒメさん!………美弥のこと、お願いしますね。」

 

と言うのであった。

それを聞いたタキリヒメは、

 

「うむ、相分かった。お主の友人は我が預かっておく。友が伝えた言葉を努々忘れず、胸に抱きながら精進するが良いぞ。……それと、何時でも此処へ来るが良い。」

 

そう歩に返答するのであった。

何時でも来いと言われた歩は、ただ静かに黙って深く礼をするのであった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩との会談を終えたその次は、タキリヒメはソフィアとの会談に応じていた。

そして、ソフィアは穂積を付き人として連れていたため、タキリヒメの横に座していたタキリヒメ派の議員とタキリヒメの後ろに隠れていた美弥を合わせて、2対3で対面する形での会談を始めていた。

 

「……この度は私めとの会談を応じて下さり、真に感謝しております。」

「見え透いた世辞は良い。……何が目的で我との謁見を望んだ?」

 

先ずは、お互いに軽いジャブの応酬から始まっていた。

 

「いえ、変革派の我等としましてもタキリヒメ様との謁見は願ってもいないことでありまして。」

「ふむ、しかし変革派は荒魂の掃討を掲げていると聞き及んでおるぞ?」

「ええ。ですが貴女はそのことについては既にご承知であると思われたのですが?」

 

ソフィアはそう言って変革派、つまりは刀剣類管理局本部長の紗南等が言う旧折神 紫派が今まで行っていた人体とノロの融合実験によって創られたノロのアンプルと冥加刀使という計画といった内情を知っているタキリヒメなら、……いや、より正確に言えば、大荒魂に取り憑かれ、それらを主導していた当時の紫と共に居たタキリヒメなら分かるだろうと暗に話していた。

 

尚、これらの情報は静と共に居るイチキシマヒメからもたらされたものである。

 

そうして、ソフィアはこれらの情報をタキリヒメに話すことによって、タキリヒメもノロと人体の融合実験に一枚噛んでいたという事実を公表すれば、タキリヒメの高い支持を一瞬で失わせることができるぞと暗に話していたのである。

 

「ふむ。……そう言うのであれば、我もお主に言えることはあるぞ?」

「……ほう。それは何でしょう?」

「お前が進もうとしている道は地獄しかない。得る物など、何も無いぞ?」

 

そのため、タキリヒメも反論するかのように龍眼を通して視たソフィアの未来を語っていた。

 

隠世の門を開けても、何も得る物などないと答えて――――。

 

タキリヒメの言葉を聞いたソフィアは、眉をピクリと動かすものの、表情は口元を緩めた不敵な表情を崩すことはなかった。

そして、地獄しかないことは理解していると心の中で独白していた。

 

「……続けて伝えよう。お主は狡猾な蛇であるかのように振る舞っておるが、蛇は龍になれぬぞ?龍になりたくば、蛇としてではなく我が幕閣に加わる気はないか?」

 

そのうえ、タキリヒメはソフィアのことを狡猾な蛇と評しつつ、蛇は神として崇め奉られる龍にはなれないと語り、加えてタキリヒメは、ソフィアに自分の臣下とならないかと説得していた。

……だが、タキリヒメはソフィアがこちらに心服し、こちら側に加わることは無いことは龍眼を通して分かっていた。……分かっていたが、自分の臣下として加えることで、隠世の門を開けようとするソフィアを止めようとし、加えて実力の有る刀使を何名か味方にしたいとも考えていたのである。

 

「そこまで思っておられるのに、私を野放しにして宜しいのですか?」

「我は霧に迷う者を導くことを信条とするタキリヒメであるぞ?刀使が御刀という武力を以って成り立つ者であるならば、武力ではなく言葉で心服させるのが、霧に迷う者を導くと宣言したタキリヒメが行うべきことであると理解している。」

「……なるほど。」

 

ただ闇雲に争うのではなく、言葉によって心服させ、臣従させることを自身の信条にしていると言うタキリヒメの話を聞いたソフィアは、狼の時代の到来を望む自分とは別であると確信していた。

そして、支配を求めるタキリヒメと争いを求める自分とでは相容れぬことも……。

 

「……ですが、タキリヒメ様。蛇の中には世界を巻き込むほど大きくなり、自信が持つ猛毒で神をも殺せる蛇が居るそうですよ?そして、その蛇は世界を意味する紋章の一つなったとか、……蛇には充分に気を付けた方が宜しいかと。」

 

そのため、ソフィアはタキリヒメとの対決姿勢を宣言するのであった。

世界蛇と呼ばれた蛇を例に出して……。

 

「そして、蛇の毒はゆっくりと効くものであるそうです。」

 

ソフィアはそれだけ言うと、タキリヒメの居る部屋から退室していくのであった。

     

     

      




   
  
   
最後に、前話にて書かせて頂きましたが、諸事情により次回の更新は9月以降となりますので、ご理解の程宜しくお願い致します。
  
  
     

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