【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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105話を投稿させて頂きます。

どうも、8月は更新が出来ず、お待たせしまして申し訳ありません。
9000文字以上ありますので、時間があるときに読んでください。
   
   


タキリヒメと刀使と荒魂達と感情と

        

        

       

その日に予定されていた全ての会談を終えた後、美弥とタキリヒメだけが残っていた部屋の中で、美弥はタキリヒメにあることを訊こうとしていた。

 

「……アンタ、色んな人に声を掛けてんだ。」

「そうだが、いきなりどうした?」

 

美弥が隅でいじけながら、タキリヒメにそう詰問してきたことに、タキリヒメはいきなりどうしたのであろうかと尋ねるのであった。

 

「……だって、アンタは私のこと、盾代わりにしようとしてるんでしょ?」

「……うむ、まあ、悪く言えばそうなるな。」

「それに、私に黙って勝手に何処か出かけるし。」

「いや、一応あの時は外に出るとき一声は掛けておいたぞ?」

「そうだけど!……そうじゃなくてさ。何ていうか私はさ、……その、何ていうか、私はアンタに色々と教えてもらって色々と良くしてもらったから信頼してくれているのかなって、少しはそう思っていたから一声ぐらいは掛けられるかなとか思ってた私が少しバカみたいじゃん。」

 

それを言うということは、どういう意味なのか分かっているのだろうか、とタキリヒメは思いながら、美弥を連れて行かなかった理由を述べるのであった。

 

「……そうは言うが、お主は我の正式な臣下ではないしな。……それに、お主ではまだあの場所へ向かうのは早すぎると思うてな。」

 

ただ単純に、美弥があの国会周辺の騒動へ向かうにはまだ早すぎるうえ、精神が狂う恐れがあったからタキリヒメは連れて行かなかった。

……人が傷付き、血に酔いしれ狂った戦場の真っ只中に送り込むには、まだ早すぎると思ったのだ。

 

「良いんだよ、別に!……私は刀使なんだから、写シとか八幡力とか使えるんだから少しぐらいは活躍するし!何も問題ないよ!」

 

しかし、タキリヒメの忠告を他所に、美弥は御刀を媒介にして隠世から超常的な力を引き出す刀使なら、活躍すると答えて、聞く耳を持たなかった。

 

「……そうは言うが、お主。あの場所に居たら多分、いや確実に死んでたぞ。」

「良いんだよ、別に!私は人を守るのも使命なんだから、それぐらいは覚悟してるよ!!」

 

命を懸けることぐらいは既に覚悟していると叫ぶ美弥。

それを聞いたタキリヒメは、叱責することはなく、諭すかのような口調で話すのであった。

 

「そうは言うが、自らの意志で剣を振るうのではなく、誰が言ったか分からぬ使命の下で剣を振るうのであろう?……自らの命を懸けるのに値する戦場(いくさば)へと向かった経験が有る者の言葉であれば、それを真剣に受け取るが、そのような経験はあるまい?」

「そうだけど……でも、だからって何なんだよ!!」

 

美弥はタキリヒメに『命を懸ける戦場へ向かった経験が無い。』と言われ、それに今までの話とどう関係有るのかと返すのであった。

 

「それはだな。我としても、命を懸けて戦うことに関しては否定はせぬが、如何せん戦う理由が友人に差を開かされて、それに慌てて何かしがの手柄を立てるためだとかいう理由ではのう。……それでは、誰も浮かばれんであろう。」

「勝手に決めないでよ!っていうか、歩は関係無いし!!」

 

タキリヒメに戦う理由が歩や他の人に負けないようにという名声のみに拘っていると指摘された美弥は、顔を赤らめながら必死で否定していた。

だが実際は、美弥は歩が特別任務部隊から特別遊撃隊に栄転し、その後は活躍するであろうことが伺えたり、他の刀使も国会周辺の警備で奮闘している姿を見て、自分はタキリヒメの監視を任せられているにも関わらず、タキリヒメが国会周辺へと向かうことを許してしまい、自分のみが失敗しているように感じてしまったため、自分一人だけが能なしの様に感じてしまい、親友の歩にすら取り残されそうな気がしたがために何か功績を残そうと躍起になっていたのである。

 

「そうは言うが、我は歩のことを話しておらぬぞ?」

「!……ああ、はい。そうですよ!私は衛藤さんやら十条さんやら………最近物凄く頑張ってる歩とか見てると、自分が凄くちっぽけに感じて、それで刀使に選ばれたんだから、それに見合うように何か残したいと思っただけ!!」

 

タキリヒメは美弥の本心を聞くと、

 

「……美弥よ。何故、我がお主に戦う動機を聞くのかというとな。何かを斬るというのは思いの外、重く感じ、またその重圧に潰される者が多い。未来があり、年若いお主にそれを強いるのはタキリヒメと名乗った我の流儀に反するからだ。」

 

中学一年という年若い美弥にはまだ未来があり、霧に迷う者を導く者としてその者を道に迷わせるようなことはしたくなかったと答えるのであった。

 

「つまり、私じゃ役立たずだと思っているってことじゃん。……バカにして。」

「どうしてお主はそう卑屈なるかのう。……というよりもだ。我はお主のような人の子らが人を斬り殺すのに何の理由も無く、眉一つすら動かすことなく、感情も揺り動くことなく行える者が居たとしたら、その性根を叩き直してやるわ。」

 

しかし、タキリヒメの美弥をあのデモ騒ぎが起きた国会周辺へと向かわせるのはまだ早いという返答に、美弥は自分が実力不足だから呼ばなかったということなのだろうと受け取っていた。

だが、タキリヒメとしては、人が同じ人に対して残虐な行為を眉一つ動かすことなく平然と行うような者が居たら、その者の性根を叩き直すと言って、美弥の実力不足やそういった力量を求めていないと答えていた。

 

「……だけど、アンタは私のことをヘッポコだと思っているんでしょ。そりゃ、衛藤さんとか、十条さんとかと比べると私なんて全然だもんね。」

「…………。」

 

美弥は、静かに聞くタキリヒメとは対照的に元気よくそう言って、タキリヒメの前ではそう振る舞うものの、誰がどう見ても気落ちしているのは明らかであった。

 

「だから……だからどうせアンタも、私みたいなこんなヘッポコよりも他の強い刀使の方へ目移りしたんでしょ?……解ってるって。だから、そっちを新しい従者でも、臣下にでも何にでもすれば良いじゃん。」

 

美弥はそう言うものの、タキリヒメに色々教わっているにも関わらず、何一つ成し遂げられなかった自分を強く恥じているうえ、タキリヒメにもおいてけぼりにされたかの様に感じたことに、何処か悔しいと思ってしまっている自分が居ることに気付いてしまった。そのため、美弥はその感情を否定するべく、自分よりも優秀な刀使が傍に居た方が良いだろうと言って、タキリヒメから離れようとした。

 

――――刀使、それは御刀によって荒魂を祓う神薙ぎの巫女。

 

美弥は、上記の固定観念に囚われていたため、荒魂であるタキリヒメに対して独占欲を向けているかのような行動を恥じて、強い刀使を家臣にするということを勧めることで、タキリヒメから離れようとしたのである。

 

……特訓に付き合ってもらったり、色々教わっている身なのに、不要な存在と言われるのは癪ではあるが、美弥は、それはそれでタキリヒメに対して踏ん切りが付くだろうと思い、何を言われても受け入れようとしていた。

 

しかし、

 

「……そうさなぁ。我は荒魂は穢れが有る故に滅ぼされるということにされているこの世の中に対して抗うと決めたことを言うたのを覚えておるな?」

「……まあ、覚えてるよ。」

「この世という大きな、いや、大荒魂よりも大きな敵であるこの世の中に対して挑んでおるというのに、どうして誰が強いとか弱いとか小さなことで悩む必要がある。我はどんな人間でも、どんな奴でも我の臣下になりたいと思う者は全員、我の臣下だ!!なのに、剣術が尊ぶとか頭が良いとかそんなことはどうでも良い。意気地の無い奴でも他で活躍できなかった者でも構わぬ!!我が見違えるような優れた者へと変えてやるという気構えを組んでおる。さあ、若人達よ我の下に集え、我の臣下となった者は全員大活躍させるぞ!!とな。」

 

タキリヒメはそう言って、誰であろうと望むのであれば、自分の臣下にすると答えていた。

 

「……つまり、誰でも良いってことじゃん。私もそう思っているってことでしょう?」

「どうして、お前はそう卑屈になる。」

「でも私のこと、三流刀使だとか好き放題言ってたじゃん。」

「それがどうした?我とて勝手に神の名を騙るという、分不相応な事をしておるのだぞ?」

 

タキリヒメはそう言いながら、見出しに"小学生でも解る"と書かれている世界地図の本を出して、世界地図が載っている頁を開け、それを美弥に見せるのであった。

 

「この世界と我を比べたら、どちらが大きい?羽虫や人と同じく小さい我より、世界が大きいのは必然的であろう?そんな大きい世界にちっぽけな我とお主を書いて、この現世たる世界と比べて見ろ。どちらが大きいと思う?」

「…………。」

 

タキリヒメの話を何故か静かに、黙って聞いてしまう美弥。

 

「そんな我が乗り越えねばならぬ世界と比べたら、我も個人の才能もちっぽけなものだ。……錆びれて何も無い街にな、創った鉄道を儲けさせるために活気ある街を創った才能とやらが溢れている者も、家を買えない者に家を買えさせるようにするため、月賦で払うことで住宅を建てさせる契約を創り、それで収入が少ない者でも住居を持てるようにし、その住居を多く建てることで街を造り、その街に活気と他の街の人も来るようにするために演劇や映画といった娯楽施設を建てて、そのうえ利便性も追及して住みやすくするために駅ビルや百貨店を創って、ようやく活気のある街を創れたのだぞ?……才能ある者も結局は自身の大望を支持する人を集めることができなければ、同じ夢を抱く者が居なければ何の役にも立たんのだ。それに、その者は地下鉄には無理解であったうえ、失敗を幾度も経験しておる。だから、我は個人の才能如きに目を曇らせん。」

 

そしてタキリヒメは、自身が知り得た過去の偉人である小林 一三を例に出して、才能ある者も協力してくれる人と同じ夢を抱く者が居なければ何の役にも立たないし、どんなに才能があろうが失敗もするのだと話し、それと同時にタキリヒメは自身のしたいことも美弥に述べていた。

 

「それにのう。お主が我と出逢わなかったり、お主が我にパソコンなる物の使い方を教えてくれなかったら、自分の世界の広げ方を知らなかったままであったぞ。そう考えると、今も神様ごっこに終始していたであろう。」

「……それって、最初に言っていた『霧に迷う者を導く神』とか言ってたアレ?」

「そうだ。お主に無視されたのは堪えたが、今はそんな神様ごっこをやっていた昔より、今の世の中に挑み、何事にも愉しむ方が充実した日々を過ごせておると胸を張って言えるぞ。昔の神様ごっこに終始し、未熟な種は所詮は虫や獣と同じとかカッコつけた昔の我に『人の姿になってる。羽虫ザマァッ。』とか草生やしながら言えるぐらいには変わったぞ。」

 

そしてタキリヒメは、過去の自分の弱さを曝け出しながら、美弥を励ますように話していた。

 

(ああ、そっか。……コイツ、こういう奴だったな。)

 

美弥はそんなタキリヒメを見て、元々はこういう奴だったんだろうなと思いながら、あることを思い出していた。

 

 

 

 

 

それは、国会周辺でのデモ騒ぎの数日後のこと。

国会周辺にてタキリヒメが現れ、その後の行動について問い詰めていたときのことを思い出していた――――。

 

『……何時の間に手なずけてたの?』

『何の話だ?』

『此処から出られたのは、……この市ヶ谷の基地から出られたのは、私以外の人の協力を得たからなんでしょ?』

 

美弥は、タキリヒメに対してむくれながらそう問い詰めていた。

 

『うむ、そうだ。だが、我としてはあの番組のように角鹿型の荒魂に跨って登場したかったのだが、流石にできなかったがな。』

 

タキリヒメがそう言うと、美弥は嫌な予感がしたため、どういう番組か一応尋ねるのであった。

 

『………一応聞くけど、何ていう番組?』

『うむ、コレだ!!』

 

美弥にそう訊かれ、元気良く答えたタキリヒメは、パソコンのネットワーク機能を使って動画共有サービスへと繋げると、その番組のオープニングを流すのであった。

それは、 

 

徳川吉宗が貧乏旗本の三男坊と偽って、悪を成敗する時代劇であった。

 

『…………。』

 

その時代劇のBGMが盛大に流れている中で絶句する美弥。

 

『この様に、我が馬みたいな物に跨って颯爽と現れれば、カッコよく映ったことであろう?そうすれば、我の人気は鰻登りであったろうになぁ〜〜。我の傘下に入った議員等は反対しておったが、美弥はそう思わんであろう?』

『いや、まあ確かに人目に付いて、それで脳にこびり付いて離れないくらい記憶に残るだろうけどさ、それだと芝居臭すぎて、胡散臭く見られると思うんだけど?』

 

タキリヒメの愚痴に美弥は冷静に、暴動の最中にタイミング良くそんな格好で現れれば、タキリヒメのことを胡散臭がる人が現れると言い、

 

『……例えば、角鹿型の荒魂を周到に用意していることとかを突っ込まれて、この暴動はアンタが仕組んだんじゃないかとか言われて、疑われると思うし、今のタキリヒメは国民から周知されている訳じゃないから、余計に胡散臭く見られてタキリヒメを敵視する奴が多くなると思うんだよね。それ考えたら、どう登場するかを考えるより、普通に現れた方が良いと思うし、自分がどういった人間であるかを示す方が先だと思うんだけど……。』

『ウ〜ム、やはり知名度が無いのは辛いか。』

 

それをする前に、先ずは知名度が必要であると説く美弥に納得するタキリヒメ。

そのタキリヒメの姿を見た美弥は、自身の夢を叶えるために奮闘し、邁進しているように見え、その姿を見るだけで何処か眩しいと思えたことを覚えていた。

 

 

 

 

 

 

――――美弥はそんなことを思い出しながら、タキリヒメはこういう奴だったということを改めて認識してしまっていた。

 

「それにな、この現世に何も持つ物が無く、神様ごっこしか出来ないうえ、彷徨うだけだった我のことを人と間違えたうえ、その後も我のことを荒魂どころか神として敬うことを一切しなかったお主とこうして一緒に居て、世界を見て回ったのは、久方ぶりに心が躍ったわ。」

 

そうして、タキリヒメの言葉に、何か気付いた美弥はこう思った。

 

(……もしかして、タキリヒメとか荒魂って怪物扱いされるのもそうだけど、神様扱いされることを望んでいないのかも。)

 

タキリヒメが自身の夢を語るとき、歩という友人が刀使として頑張る理由を述べるときに嬉しそうにしていたものと同じものを感じたからなのか、美弥はタキリヒメのことを何処か人間らしいと感じていた。そのせいなのかは美弥は分からなかったが、美弥はタキリヒメといった大荒魂は自分のことを神と名乗ったりする割りには化け物扱いされるのと同じくらい神様扱いされて、ただ敬うだけというのも望んでいないのかもしれないと思ってしまった。

 

「だが、自身のことを才能が無いと評しながらも、足掻こうとするその姿勢は我とて同じだ。そんな我のことをバカだと蔑む者は居るであろうが、好きなだけ言わせておけ。我が挑む"この世"にとっては、我のことなど現世に根を下ろした一つの荒魂であり、極小の点にも劣るかもしれんが、そう考えると、そんな我がこの大きな世界に挑むのは心が滾る!!我の中に在る荒々しい魂が躍るのだ!!それしか考えられなくなるほどにな!!何も無いというのは、裏返せば開拓する余地が充分にあるということなのだ!!」

 

それと同時に、そんなタキリヒメの行動と姿勢に、惹かれている自分が居るということに美弥は自覚していた。

 

田辺 美弥は、今まで憧憬を抱いた相手がいなかった。御刀に籠める思いもなかった。

それ故に、大きな大望を抱き、叶えようと足掻き続けるタキリヒメに惹かれていったのであろうか?と美弥自身思うほどであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その次の日には美弥の感動を吹き飛ばす出来事が起きるのであった。

それは、タキリヒメは優こと、タギツヒメと会談することができた時の事である。

 

「お主、何の用じゃゴラァ!何か文句あんのかゴルァ!」

「……タギツヒメよ、お前そんな奴だったか?」

 

しかし、優の身体を乗っ取っていたタギツヒメは、タキリヒメを見るなり、必死に威嚇していた。その様はまるで絵に描いた頭の悪いチンピラのようであったと美弥は述懐している。

 

……だが、現在のタギツヒメの姿を見たタキリヒメは、自身の記憶の中に在るタギツヒメは人間に対する怒りや怨嗟といった原初の感情を一つも隠さなかったため、今もタギツヒメは人への報復を望んでいるものだとばかりタキリヒメは思っていたのだが違ったのだろうか?と疑問を抱くほどであり、人への報復ばかりを口にしていたタギツヒメが、今や頭の悪いチンピラのように威嚇しているという変わり様にタキリヒメは動揺していた。

 

……とすれば、今現在身体を乗っ取っている優という少年の影響であろうかと推測していた。何故なら、今その優という少年の身体を乗っ取っているということは何時でもそれが可能であり、それを常にしないということはやはりタギツヒメは優という幼子に何かしら遠慮しているということだろうと推測していた。

 

だが、タキリヒメの推測を他所にタギツヒメは、タキリヒメに言いたいことがあり、それを伝えようとしていた。

それは――――、

 

「我が表に出た理由はお主が卑猥な姿で居るからじゃゴラァ!!」

「…………は?え?どこがだ?」

「何を言うんじゃい!!その大きい胸が性的欲求を掻き立てたりして、いかがわしいんじゃボケェ!!そんな下劣な物を優に見せるなボケェ!!」

 

身体の一部が物凄く大きいからという、正直に言えば物凄くどうでもいいことを言ってきたと、タキリヒメのみならず、この会談に同席していた美弥とタキリヒメ派の議員も心の中で物凄く思っていたそうである。

 

「…………それだけか?それほど気にすることなのか?」

「当たり前やろがい!というよりそんなに大きくする意味有ったんか!?意味有ったんかお主!?」

 

しかし、タギツヒメはそんな周りの雰囲気に流されることなく(読む気もないが。)、タキリヒメに続けて主張するのであった。

 

「貴様にまで負けたら……イキリ散らかせるのが姫和とかいう奴しかおらんやんけっ!!」

 

姫和ぐらいしか勝てる奴が居ないと……。

それを聞き、タキリヒメは顔に手を当てながらも必死で先程会った姫和の容姿ついて思い出していた。今までは顔だけを覚えるようにしていたので、身体の何処が大きいかとかは気にしていなかったため、何一つ覚えていなかった。

……そのため、タキリヒメは思い出すのに四苦八苦しながらも、姫和の容姿について何とか思い出し、タギツヒメに返答するのであった。

 

「あー、えっと、……つまり、胸を大きくしたいということだな?」

 

タキリヒメはタギツヒメに豊胸になりたいのか?と聞きながら、安堵していた。

何故なら、タキリヒメが見知っているタギツヒメは人に対する怒りや怨嗟の声をよく上げていたので、この現世を滅ぼす計画を練り、その行動を取るのではないかと危惧していたが、今のタギツヒメの騒がし過ぎる姿を見れば杞憂であったことが伺えたため、安堵したのである。

 

――――これで、この現世の全てを我が物にするという望みを邪魔する者は居ないと内心ほくそ笑んでいた。

唯一の障害となるのが、ソフィアとかいう一介の刀使が邪魔となるであろうが、彼女も戦力が無い状況であり、行動を起こすことはないだろうと判断していた。だが……、

 

「そうじゃ!とりあえずは我よりも胸の大きい奴は敵じゃ!滅びちまえ!!」

 

上記のタギツヒメの言葉を聞いたタキリヒメは前言撤回するのであった。

……それは、人類全てが敵だと公言しているようにも聞こえたため、タキリヒメは一応は"ある事"を聞くのであった。

 

「……そ、そうか、ではタギツヒメよ。本体が隠世にあることについてはどう思う?」

 

それは、タギツヒメ達の三女神の本体であった通称ヒルコミタマのことについてはどう思っているのか?と尋ねるのであった。

その質問に、タギツヒメは、

 

「えっ?アレ隠世に行ってたのか?……知らんかった。」

 

本体のことアレ呼ばわりし、全く興味が無いと返すのであった。

そのタギツヒメの姿を見たタキリヒメは、本体のヒルコミタマのことをどうでもいいと思っていることは理解したのであった。

 

「……いや、確かにアレはどうでもいいとは思うがな……フフフ。」

 

そして、タギツヒメのヒルコミタマなんかどうでもよくね?という感じの返しにタキリヒメはフフフと軽く笑いながら、共感していた。

現世の世界の支配を企むタキリヒメとしても、未だに人への怨嗟を引きずっているヒルコミタマは邪魔な存在でしかなく、消したかったのである。そう考えると、ヒルコミタマのことを興味無さげにどうでもいいと答えるタギツヒメの返答に共感しか抱かなかった。

 

そんな話をしている最中に、ねねが出て来たのであった。

 

「ねー。」

 

そのまま、ねねはタキリヒメの胸元の襟の中へと入るのであった。

 

「……我の胸元に何用か?」

「……チッ。ああ、そやつは胸の大きい奴が好みというエロ魂でな。……そのうえ、将来胸の大きくなる可能性がある人間を見分けられるらしいぞ。……チッ。」

 

突然の行為に流石のタキリヒメも怪訝な表情でねねを見ていた。

それを見たタギツヒメは、舌打ち混じりにねねは将来胸の大きくなる可能性がある人間を見分けられるほどに胸の大きな女性が好みというエロ魂(アニメ第7話にて、舞衣の胸元へ飛び込もうとしたねねに対する薫の造語であると思われる。)であると補足していた。

 

「……ほう。胸の大きさか。」

「ついでに言うと、この可愛らしい我よりも可奈美お義姉さまはこのエロ魂の方が大層気に入っておるらしくてな。……やっぱり納得いかんぞぉ!!」

 

そして、タギツヒメはねねに対する妬みと嫉みを言うのであった。それを聞いたタキリヒメはニヤリと笑みを浮かべると、タギツヒメに対してこう言うのであった。

 

「……なるほどな。寄って来ないということはまな板ということなのか。」

「い、いや!!今の我は優の身体を借りているからのう~。仕方なかろう?」

「誰もタギツヒメのこととは言っていないが?美弥のことを言っていただけだが?」

「ウ"ア"ァ"ァ"ア"ァ"ア"ア"ア"ア"ァ"ア"ァ"ア"!!!!」

 

タギツヒメはタキリヒメに胸部が豊かではないということを指摘され、否定するが、直ぐにそれが嘘だとバレたことにタギツヒメは奇声を上げるのであった。

 

「ねぇへへへへ。」

 

タキリヒメの胸元に埋もれてご満悦のねね。

 

「というか、お主は三女(タギツヒメ)を名乗ってしまったから貧相な身体となったのではないか?」

「そこからかあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!」

 

関係性があるかどうか不明であるが、三女であるタギツヒメの名を騙っているから胸が小さいのではというタキリヒメの指摘に騒ぐタギツヒメ。

 

「後、我は衛藤 可奈美から気に入られとるぞ。」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"も"う"や"だ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!聞きたくない!!!聞きたくない!!!」

 

タキリヒメにマウントを取られ、エビのようにビチビチ動くタギツヒメ。

 

その両者の姿を見た美弥は、何とも言えない複雑な気持ちを抱くのであった。

しかし、ねねとタギツヒメ、それにタキリヒメという三者三様の荒魂を見て、微笑ましいとも思え、この三名はそれぞれ誰かに好かれたい、世の中を変えたい、巨乳が好きという人間にもある欲望に忠実な姿を見て、美弥は荒魂と人間の思考の差はそれほど離れていないのかもしれないと思うのであった。

 

 

――――しかし、その後に綾小路の刀使が三名、国会周辺のデモ隊の残党によって殺害されるという事件が勃発したことで、事態は急変する。

それが切欠となり、タキリヒメは現世から消滅することとなる。

     

       

           




   
   
三女神がヒルコミタマ(タギツヒメの本体のこと。)についてどう思っているかまとめ。

タギツヒメ「今の現状に満足しとるから、どうでもええのう。」
タキリヒメ「我の支配する世界の障害にしかならんから、邪魔。」


ヒルコミタマ「(´;ω;`)ブワッ」

誰も気にしていない状態。
三女神が出るだけでギャグが書きやすい。



次回、次の戦闘までの用意、刀使殺害事件の内容。
これが終われば戦闘シーンが書けるし、夜見さんも出せる。ウオォォ!!
   
   

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