【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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108話を投稿させて頂きます。

強過ぎる荒魂が出たら批判の対象になるらしいので、歩ちゃんでも一方的に勝てるレベルの弱い荒魂を出してみました。
   
   


生命を模しただけの荒魂

   

    

    

――――可奈美達が荒魂の予測進路上のルートへと向かう中、和樹も其処へ向かっていた。

 

理由はソフィアに、

 

『貴方を襲った例の刀使が、誤って半ば荒魂と化してしまい、必死に逃げている刀使を惨殺しようと向かいました。』

 

と言われ、刀使を救うと決めた和樹は、刀使が人殺しを行うのを止めたいと思った事もそうだが、敬愛する結月学長が特に目をかけていた燕 結芽(ニッカリ青江を持つ優のことを結芽だと勘違いしている。)が人を殺害することで、結月学長が苦しみ、涙を流すことが無い様にするため、和樹は身体中に走る激痛とこみ上げて来る嘔吐感に苛まれながらも、身体を引きづるように歩いていた。

 

和樹がその状態になった理由は、結芽を止めるため、自身の身体を荒魂によって強化する必要が有ったため、和樹はノロのアンプルを注入した。

しかし、そのノロのアンプルは、ノロと人を融合させ、強化・進化させることを主な研究としていたスレイドが造った物であり、そのうえスレイドは、成人前の刀使を安全に注入するために子供を使って実験していたという経歴の持ち主である。

そのため、成人男性の身体にノロを注入するのは初めてであり、和樹の身体にノロが上手く定着することができなかったため、和樹の身体は拒否反応を起こし、彼の身体は常に起こる激痛で常時危篤、内臓の殆どが機能不全を起こしているうえ、飲料ぐらいしか栄養補給と睡眠ができないという心身がボロボロの身体の状態であった。

 

そんな状態にも関わらず、彼はニッカリ青江を持つ優のことを結芽だと思い込み、刀使の中でも上位に入る程の実力者である結芽と戦えるぐらいになるために、和樹は更に自身の体内のノロの量を増やして、自身を強化していた。

 

そして、銃を所持し、綾小路武芸学舎学長の結月を裏切り刀剣類管理局側へと付いたうえ、人殺しも難なく行える非道な子供となってしまった結芽を結月学長が気付く前に和樹自身が結芽を倒すことで、結月学長を悲しませないようにするという歪んだ思いから始まっていた。そのためなのか、彼の体内にあるノロの量を増やす毎に更に身体の状態は悪くなる一方であった。

 

そして和樹は、結芽のことを思い出したためか、刀使であった妹のことを思い出していた。

 

御刀に選ばれ、刀使として成功する妹。

それに反して、就職難に苦労する自分。

 

そのため、いつも両親に、それを比べられていた日々を思い出していた。

 

母にも父にも見捨てられた孤独。

就職難で良い職場が見つからないことへの苛立ち。

刀使としての栄光を掴み、怪我をして引退したにも関わらず、充実した福利厚生のお陰で再就職にも困らなかった妹への嫉妬。

自身の待遇と比較され、何かと見下され続けた元刀使の妹に対する怒り。

その福利厚生の素となる税金を払い続けてきた自分に対する不当な評価。

それら不遇な環境によることで形成された根暗な性格がもたらす、子供から大人になっても続く陰湿なイジメを受ける日々。

 

……自分の最大の理解者であった初恋の刀使のお姉さんと外国人労働者だったミンとの死別。

 

そうして、今も荒魂パーカーを羽織って殺人を繰り返す結芽に自身のいけ好かない刀使だった妹と重ねていた。

 

それを思い出すだけで、怒りと復讐心で和樹の心は満たされ、それらを原動力にして全身を駆け巡る痛みも忘れることができ、和樹は歩くことができた。

 

せめて、その半ば荒魂と化した刀使を救えば、敬愛する結月学長は喜んでくれるだろう。

あんな心が拗くれた妹と同程度の結芽なんか見向きもしなくなるだろう。

 

これで、結月さんはボクをミテクレルダロウ。アイシテクレル。

 

そうして和樹は、結月が自分のことを愛してくれるという妄想を抱くだけで和樹の脳は、幸福という快楽物質……いや、麻薬によって支配され、和樹は嗤うことができ、身体を駆け巡っていた痛みが無くなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――予測進路上にて待ち構えることで、大量の荒魂を討伐するという命令を受けた可奈美達は新型S装備を身に纏い、現地に到着するものの苦戦していた。

理由は、人間の赤子のような姿形をしているうえ、産声のような声で叫ぶため、女性にしか務まらない刀使にとってみれば、それは精神を摩耗させるのに充分な能力を備わっていると言えたからである。

事実、可奈美は自らの剣先が鈍る感触と息が荒くなるのを感じながら、御刀を必死に振り回してた。

 

必死に振り回す理由は、荒魂の数が事前に聞いていた数よりも遥かに多い数であったこともそうだが、その荒魂の姿形が人間の赤子に酷似しており、声も赤子の産声にそっくりであったからというのもある。

 

そのため今回の荒魂討伐の任務に参加している可奈美は、人間の赤子の様な荒魂に御刀の切っ先を入れるだけで、人間の赤子の悲鳴の声を上げていた。

可奈美は赤子の荒魂の悲鳴を聞いただけで、否応無く連想し、可奈美の記憶の中からある言葉が蘇ってきていた。

 

『ここ最近は人が荒魂化する事例はほとんど無い。だが、私の母の時代にはそう珍しいことじゃなかった。』

 

……嘗ての石廊崎へと向かおうとしていた姫和の言葉。母の時代、つまりは美奈都が刀使として活躍していた時代は人が荒魂化するということは珍しい事ではなかった。ならば、老若男女問わず、荒魂が取り憑き荒魂化する事例は幾つも有ったはずである。

となれば目の前に居る赤子のような荒魂が本当に存在していたことも考えられるのだ。

つまりは、人間の赤子が荒魂化する可能性はゼロとは言えないのだ。

 

それ故に、何時かは"本物"の赤子に取り憑いた荒魂も相手にする事態が有るという事なのだ。

 

そう考えるだけで可奈美達は喉の奥からこみ上げてくるものを感じるが、自分の後ろには、今も避難できていない人が居るため、逃げるということができなかった。

 

自分の心を保つのに精一杯だった。

人々が居る市街地に向かわせる訳には行かなかった。

後ろに居る人達は自分達が守らなければならかった。

 

そうした理由で、バラバラになりそうな心を可奈美は必死で繋ぎ止めていた。

 

『ねえ知ってる優ちゃん。お母さんが刀使は人を守って、感謝されて、剣術も学べる、最高だって言ってた。けど、私はこうも思うの、刀使は人を守って、感謝される、“正義の味方”なんだって。』

 

だから可奈美は昔の言葉を思い出して自分自身を肯定しようと試みた。だから、

 

コレは荒魂ダッ!!

 

『うん。ちっちゃい頃から毎日しごかれてた。』

 

お母さんは私に剣術を教えてくれた。あの厳しくも優しかった母がこんな非道な事させるためだけに剣術を教えてくれた訳がない。……だから、

 

之は荒魂だ!!コレは荒魂なんだっ!!

 

『でも……うちのお母さんは死ぬまで幸せそうでしたよ。死ぬまでってなんか変な言い方ですけど、剣術だっていっぱい教えてくれましたし、刀使の仕事を誇りに思うって。』

 

過去にこのような事象が有ったかもしれない。けれど、お母さんは幸せそうだったということを思い出せた。だから、

 

これは荒魂だ!!これはあらだまだ!!コレハアラダマダ!!

 

……母と同じ千鳥という御刀に認められ、母を想う剣術好きな少女は呪詛の様に之は荒魂であると唱えることによって、本物の人間の赤子ではないと自分自身を騙すかの様に説得し、気が狂いそうになるのをどうにか抑えようとしていた。

 

その一方で、母の想いを捨てたと思い込んでいる少女も同じ様に、母も握っていた小烏丸という御刀を握って、赤子のような荒魂を討伐していた。

 

『人は……人は人と交わり子を成す。そして素質や宿命を連綿と受け継いでいく。私や可奈美がそうであるように……だが荒魂は違う。ノロは繋がる輪から外れた孤独な存在だ。だから……。』

 

子を成すことを神秘的であると話した少女が、赤子の姿をした荒魂を躊躇うことなく討伐するという二律背反した行動に途轍もない違和感を感じながらも姫和は御刀を振り回し続けていた。

 

これ以上、市街地へと向かわせ、人的被害を出す訳には行かなかった。

 

『だったら、お仕事頑張ってね。』

 

そして、優が言った言葉を思い出すと、後ろへ下がるという選択肢を選ぶこともできなかった。

何故なら、荒魂を斬ることを辞めてしまえば、刀使で無くなってしまう。そうなれば、優は私のことを無価値だと判断して、簡単に捨てるだろうということが理解できたからである。

 

……もう誰からも必要とされない娘になりたくない。そんな一念から必死に剣を振り続けていた。

その姿はまるで、心の奥底に深い孤独を抱え、その孤独を癒す術を持たぬ故に暴れるというある意味で"荒魂"に近しい者とも言える存在となってしまった。

 

そうして、赤子の姿をした荒魂は御刀に斬られ、体を裂かれた痛みによってか、姫和が斬った赤子の荒魂は赤子の産声が混じったかのような呻き声を上げ、新たな生命として認められることなくノロへと還って行き、土の上にノロが血の海の様に遺るだけだった――――。

 

それだけでなく、この赤子の荒魂は全く強くないというのも問題であった。

何故なら、赤子に近い姿をしている荒魂をほぼ一方的に殺せるという状況には可奈美と姫和、それに薫とエレンといった刀使達の心にある共通の疑念を抱かせるのには充分であった。

 

歩くこともままならず、這い寄ってくるしか無い赤子に対して、無慈悲にも御刀を振り下ろすことしか出来ない自分達。

死にかけだったのか、自分達の足元に縋りつき、赤子特有の母を求めているかの様な行動と共に、ただのノロへと変わって行く様を見るしかなかった自分達。

そんな状況下に居ながら、当の自分達は人を守るためと言って、赤子の荒魂を屠り続ける。

 

可奈美達はそんな自分達のことをこう思った。

―――――命令とはいえ、人間の赤子の姿をする荒魂を何の疑問も、抗うことをせず、一方的に殺している自分達は荒魂よりも本物の怪物に近い存在ではないのかと。

 

そんな考えが過りつつ、いつもよりも重く感じる御刀を必死で可奈美と姫和とエレンと薫は、世の中のため、守るべき人のためと心の中で叫び続けながら御刀を赤子の荒魂に向けて振り続けていた。

しかし――――、

 

「ぐっ!?」

 

薫が赤子型の荒魂の接近を許してしまい、薫は足を噛みつかれるのであった。

しかし、薫には写シが張られていたため、負傷はしなかった。だが、今の噛みつく攻撃で可奈美達は理解してしまった。この赤子の荒魂を人に近付けてはならないと。

 

「こなくそ!」

「薫ちゃん!!」

 

そのため薫は、赤子の荒魂を蹴り上げて引き離すと、祢々切丸で赤子の荒魂を討伐するのであった。

……しかし、人間の赤子の産声を発する赤子の荒魂の死に際の断末魔は、薫に不安を掻き立てるには充分であった。その証拠に、赤子の荒魂の声を聴く度に薫は群馬山中での少年兵が殺される場面、江仁屋離島での秘密工作といったことを思い出し、新型S装備を通して薫の心拍数と血圧は規定値以上にまで上昇するという、そういった状態であるという報告を紫は聞くことになるのであった。

 

「衛藤、十条、古波蔵、益子の4人は先行しろ。……この生命を模しただけのただの荒魂は、私達に任せておけ!残りの上級生は私と共にこの荒魂を討伐するぞ!」

 

そのため紫は、人型の荒魂という報告を聞き、イチキシマヒメの可能性が高いと推測しており、タギツヒメといった大荒魂に特に有効打となる千鳥と小烏丸を持つ可奈美と姫和を優先的に、連携の訓練を受け、組むことが多いエレンと薫の4人で当たらせようとしていた。

 

「ですが、大丈夫なんデスか!?」

 

エレンは、紫と他の特別遊撃隊隊員達のみで大丈夫かと尋ねていた。

 

「……私はこういった荒魂との戦いは経験済みだから大丈夫だ。それに、獅童の援軍ももうすぐ来る。……それに、"人型の荒魂"が私の予想通りなら、衛藤と十条、それに連携の訓練を共に受けている古波蔵と益子の方が良いうえ、この先にはこの荒魂は居ない。」

 

先行したドローンがこの先に、“人型の荒魂”が居るということ、そして、特殊廃棄物甲類らしき荒魂しか確認できなかったという報告を聞いた紫は、この赤子の姿と声を模した荒魂を討伐するのに精神的なダメージが多い可奈美達を先行させることで、赤子の荒魂と戦わずに済む様にし、できるだけ精神的な負荷の少ない状態でイチキシマヒメと戦わせることにしたのであった。

 

とはいえ、紫も紫で気が立っているのだろう。

 

“人型の荒魂”が紫の推測通り、イチキシマヒメではない可能性を考慮できなかった点もそうだが、無意識とはいえ、こういった荒魂との戦いは経験済みと返答したことによって、此処に居る刀使達の心の中にある疑念が確信へと変わっていくのであった。

 

……つまり、嘗てはこの赤子に似た、もしくは赤子に取り憑いた荒魂を討伐したことがあるということであり、いずれは自分達にもそのお鉢が回る可能性があると。

 

「分かりました。ご裁断に従います。」

 

しかし、他の特別遊撃隊隊員達は、自分達よりも下級生の四人にこれ以上の負担を掛けたくなかったため、紫の指示に従うと明言していた。

 

 

 

 

 

 

――――その一方で、優も、

 

「例の蝶の荒魂を出す男が現れた。荒魂の習性故なのかそれとも別の思惑があるのかは判然としないが、そいつは“人型の荒魂”へと向かっているようだからその前にお前が叩け、とのことだ。」

 

和樹を始末するべくヘリで向かっていた。

そして、ヘリの機内で同乗しているトーマスの話を聞きながら、ACOGサイトの上にホロサイトが載っている物へと換装させられたHK416Cのサイトを覗いていたり、上下二連式のソードオフにされた散弾銃の装填と排莢の仕方を確認していた。

 

HK416Cは有効射程距離の強化、上下二連式のソードオフショットガンは対刀使用の武器として所持が許されていた。

 

「そいつに変わっている点とかある?」

「ああ、別の荒魂を取り込んだからかもしれんが少し反応が強くなっている。そうすると、前よりかは強くなってるだろうから、気を付けた方が良い。」

「そうなんだ。……でもさぁ、もう面倒くさいから、そいつ殺せば良くない?」

「そうしたいが、捕らえてそいつの背後関係等を暴きたいらしい。」

 

優の和樹を殺害して、全てを終わらせるという提案をするが、トーマスは上層部が和樹を捕らえて、背後関係を洗うことで一気に変革派と呼ばれていた旧折神 紫派を一気に追い詰めたいという思惑があることを優に話し、提案を却下していた。

 

「しかし、荒魂化した人間の証言なんて裁判所が取り合ってくれる訳もない。理由は、荒魂化した人間は正常な判断ができないため、信頼に足る証言ができないという見解らしい。……という事は、降伏勧告をしたが、正常な判断を失っているこの男をやむを得ず殺害したと言えば、だれも文句は言えまい。」

 

だが、トーマスも和樹を追うことに嫌気が差しているのか、暗に殺害を容認していた。

事実、荒魂の影響によって、妄言や人を襲撃することに躊躇いが無くなるといった異常な行動が見られるところから、荒魂化した人間の証言を裁判で採用されない事例が多くある。

 

トーマスはそのことを言っているのだが、優は気にすることなくこう述べるであった。

 

「やっと面倒くさいことから開放されるんだ。」

「面倒くさいって、……まあな。」

 

捉えようによっては優が人間扱いされることが無いという内容の発言だったのに、優は普段通りに答えるのであった。

その姿に、流石のトーマスは何か言おうとするものの、今まで優を戦闘兵器として散々利用しておいて何か言えることがあるだろうか?と思い、何も言えなかったのであった。

 

事実、今も特定の人物を始末し、都合が悪くなれば、優の中に居る荒魂の負の影響によって暴走したとして処分される都合の良い暗殺道具として使っているにしか過ぎない行動を取っているとトーマスは思うだけで、何も言えなかったのであった――――。

    

    

    




   
   
でも赤子に酷似しているうえ、産声を上げる荒魂を倒すと、10連ガチャチケットが手に入る仕組みになったら何人ぐらいの人がクリアしてたんだろ?

ミルグラムの実験みたいに9割ぐらい行うのかなぁ……。


あと、刀使ノ巫女のアニメはまだまだdアニメストアとAmazonプライムビデオで観れます。やったね。
   
   
    
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