【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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109話を投稿させて頂きます。

ぬえこ‐どり【×鵼子鳥】 の解説
[名]トラツグミの別名。
[枕]が悲しげな声で鳴くところから、「うら嘆 (な) く」に掛かる。
「―うらなけ居れば」〈万・五〉

――――goo国語辞書より。
   
   


鵼子鳥

    

    

丹沢山周辺にて、荒魂の群れが出現する数週間前――――。

 

「博士。この赤子の荒魂は?」

「ああ、そうだよ!!聞いてくれるかい!!?」

 

新しいノロと人体の融合実験の成果の一つを見せると言われたソフィアは、檻の中に入っている赤子の姿と声に酷似した荒魂を見て、何故このようにしたのか単純に知的好奇心からスレイドに尋ねていた。

 

「……実はね。私の研究に協力してくれた御方がね、人が新たな命を産み育てるということをして、人と同じ様に生きれないことにどうしようもない孤独感を感じておられたのだ。それで、私は荒魂でも新たな命を産み出せることを証明したかった!!私はその子を対して責任が有るからね!!!」

「……つまり、あの姿形と声は女性にしか務まらない刀使に対する精神的な攻撃を目的とした物ではないと?」

「?……君は何を言うのかね?赤子は全ての命、私達の次の世代を担う宝だよ?いや、神からの授かり物だよ?私がそんな鬼畜な所業をすると思うかね?私のことをあずかり知らぬ者が狂人か何かかと好きに言うから知らないかもしれんが、流石の私でもそんな常識は弁えているよ!!」

 

ソフィアはスレイドに、この赤子に酷似した荒魂は刀使が女性にしか務まらない特殊な兵科であると看過し、それに対抗できるようにこの荒魂を創造したのかと尋ねるものの、どうやら違った様であり、そんな鬼畜な所業はしないと断言していた。

 

……しかし、子供の人体にノロを注入させるという非人道的な研究を続けてきた研究者がそれを言うのかとも思ったが、ソフィアはそのことについて特に糾弾する事もなかった。

 

「それにだ。……この赤子の荒魂は赤子の声によく似ているだろう。その福音を以って人々の荒ぶる魂を鎮め、この赤子に対して慈しみを感じることで人間と荒魂は共存できると、荒魂でも新しい命を産み出せるということを立証し、それをあの御方に見せてあげる事ができるよ!!!」

 

つまり、この狂人と呼ばれたスレイドが人間の赤子の姿と声に酷似した荒魂を創った理由は、その赤子の声で人々の心を鎮めさせ、荒魂と人間は共存できるという意識を抱かせると同時に、荒魂も子供を創ることが出来るという事を証明し、人間と共に共存できないことに深い孤独を感じてしまった荒魂の心を癒すという目的を達成するためにこの赤子の荒魂を創ったのだとスレイドは述べていた。

 

「檻の中へ入れている理由は?」

「此処に入れて置かないと、勝手に動き回って人を襲うからねえ。……だから、これはベビーベッド代わりさ。」

 

だが、ソフィアは赤子の姿形と声に酷似した荒魂が檻の中に入っている理由をスレイドに尋ねると、赤子の荒魂が勝手に人を襲うからという理由でベビーベッド代わりに檻の中へ入れていると説明していた。

ある程度は想像通りだった返答に納得したソフィアは、スレイドにこう返答するのであった。

 

「……なるほど、戦闘力はそれなりにあるのか。」

「この赤子は戦闘を考慮していないよ!!?……だけど、刀使でない人相手なら勝てて、殺した人にも取り憑くことができるけど、人に取り憑いたとしてもどんな刀使にも負ける。だから、戦闘には極力巻き込ませないようにしなくてはダメだよ?この神秘な姿をした赤子はあの方のために創っていたんだから。」

 

ソフィアはスレイドの説明を聞いて、この赤子の荒魂は、ただの人相手には強く、その人間を殺して取り憑くことが出来れば荒魂化した人間とする事ができるという性質を持つ故に、女性にしか務まらない刀使達は人々を守るため、この赤子の姿と声が似ている荒魂を討伐しなければならないという事に悩み苦しむだろうとほくそ笑んでいた。

 

「フフ……そうですね。確かにこれは"宣伝目的"として考えれば、これ以上は無いくらい有効ですね。」

 

ソフィアは皮肉気に"宣伝目的"と言っていた。

その意味は、この赤子の荒魂の相手をさせられる事になる刀剣類管理局の特別祭祀機動隊はこぞってこう思うことであろうことが簡単に予想できたからである。

 

赤子の姿形と声に酷似した荒魂は、討伐せずに放置した場合は人を襲い、負傷・死傷させた人間の身体に取り憑き、その人間を荒魂化させるという能力を保有しているため、成人前の少女にしか務まらない刀使達には、この"赤子に酷似した荒魂"か"罪の無い一般市民"のどちらを救うのかという二者択一を強要させる極めて悪質な考えの元で造られた"荒魂"であると。

 

しかし、この赤子の荒魂を創った当の張本人であるスレイドがこの荒魂を創った本当の理由は、ただ単純に人と共に生きることが出来ないということに深い絶望感を感じた荒魂の傷付いた心を癒すために創ったものだというものなのだから、何とも皮肉な物だとしか思えなかったため、ソフィアは皮肉気に両方の考え方を合わせる様に"宣伝目的"と述べたのである。

 

そして、ソフィアは理解した。

このスレイドとかいうマッドサイエンティストは自分がこういう行動を取れば、他人がどう思うか?という他人と共感する能力が著しく低いのだろう。それに付随するかのように、スレイドは他者とのコミュニケーション能力も低く、それ故に、他者との会話も成立せず、スレイド自身もそれを危惧し、奇想天外な研究に手を出すことで周囲の理解を得ようとするが、却って他者に理解されることもなく奇人変人扱いされ、遂にはマッドサイエンティストの烙印を押されたのだろうと推測していた。

 

「しかし、夜見は血を媒介にして蝶型の荒魂を出していますが、この赤子の荒魂は何を媒介にしているのですか?」

 

そして、ソフィアは疑問に思ったことを尋ねたのであった。この赤子の荒魂は何を媒介にして生み出せたのかと。……そのソフィアの疑問に、何処か病的な目をし、満面の笑みを浮かべて、スレイドは返答するのであった。

 

「ああ、簡単だよ?血と人間の卵細胞を媒介にすればこの赤子の荒魂が出て来るよ?……だから、鎌府の実験台となり、尋常ではない量の荒魂を摂取し、御神体扱いされるノロに近い彼女が一番適任だと思ったんだ。」

 

この返答に、ソフィアはこの赤子の荒魂を斬ってしまった刀使は、この事実にどう向き合うのだろうかと想像し、苦悶の表情を浮かべるか、それとも涙を流しながら呆然自失となるかを見てみたいと心の底から思うのであった……。

 

苦痛や涙を流すのは生きている人間の内の表情の一つであり、その者が生きている人間であるという証拠となり、その人間が生きた人間であるというふうに見ることができ、実感ができるとソフィアは考えていたからこそ見てみたかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鵼子鳥

トラツグミの別名。そして、トラツグミは夜に笛の音のような声でヒョー、ヒョーとさえずり鳴くとされている。しかし、森の中で夜中に細い声で鳴くトラツグミの声を平安時代の貴族と天皇は不吉な物として捉え、トラツグミのことを鵺(ぬえ)または鵺鳥(ぬえどり)と呼ぶようになり、凶鳥とされ、気味悪がられ、大事が起きないよう鳴き声が聞こえると祈祷したという。

 

そして可奈美達は、今現在紫の命令で赤子の荒魂の産声がその鵼子鳥の様に鳴り響く山林の中へと入り、新型S装備のバイザーに表示されている人型の荒魂が居る場所へと向かっていた。

 

……何が待ち構えているかも分からぬまま、赤子の荒魂の声が鳴り響く暗い山の森の中へ入り、その奥深くへと進み続けていた。

 

「みんな待って!"人"が居る!!」

 

その山中の中、刀使の中でも特に目が良い可奈美は、仄暗い山林の中でも"人"が居ることに一早く気付くことができた。

逃げ遅れた人が居るのだろうと思い、可奈美は姫和達と共に近付くのであった。……しかし、可奈美はこの時、自分の目の良さを呪うことになる。

 

「特別祭祀機動隊です!安全な場所へ――――」

 

何故なら、その"人"に近付くと、可奈美は気付いてしまったのだ。

 

その"人"は既に人では無くなっているということに、その"人"は荒魂化し人間だった"物"に変わっていることに。

 

「ああ、ア"ア"、来ないデ!来ないでよぉっ!!これは私の赤ん坊よ"ぉっ!!!」

 

そのうえ荒魂化し、元は人であったであろうその女性は赤子の荒魂を自分の産んだ子であると誤認しているのか、赤子の荒魂を大事そうに抱き抱えながら可奈美達を非難していた。

……荒魂を取り込んだ者や荒魂化した人間は負の影響により、妄言を口走ったり人を襲撃することに躊躇いが無くなるといった異常な行動が見られるという部分が散見される。

 

つまりは、この荒魂化した女性が抱えている赤子の荒魂は、この女性の赤子ではない可能性がある。いや、そうである筈だと可奈美は強く思った!

 

「……っ!」

 

そのため、可奈美は覚悟を決めて斬ろうとするが、ある疑念が思い浮かんだことにより、斬るのを躊躇ってしまった。

 

……それは確証できることではないと、もしかしたら、本当にお腹の中に居た子が荒魂化したのではないかと、いや、この女性が抱えている赤子の荒魂は生命を模しただけの荒魂である可能性は捨てきれないのだと思い込もうとする。

……だが、可奈美の中にある疑念が生じる。私は、自分と母を重ねて見てしまったこの “親子” を斬れるだろうか?

 

そのような様々な感情と思考が可奈美の中で入り乱れたことにより、動きが止まってしまう。しかし、

 

『でも……うちのお母さんは死ぬまで幸せそうでしたよ。死ぬまでってなんか変な言い方ですけど、剣術だっていっぱい教えてくれましたし、刀使の仕事を誇りに思うって。』

 

剣術を教えてくれた母親が、刀使の仕事を誇りに思うと言ってくれた母の姿を思い出した可奈美は、このときだけでも目を閉じて、口を噤み、耳を塞ぐことで外界との全ての情報をシャットアウトしながら、御刀をその荒魂化した女性に向けて振るうのであった。

目を閉じ、口を噤み、耳を塞ぐことで手に感じる御刀の感触が大きく感じられ、その御刀の感触は確かに何かを斬ったという感触を得るのであった。しかし、"赤子の荒魂"を斬った感触と似ている感触がしたので、驚いて目を開けてしまうのであった。何故なら、“赤子の荒魂”を斬ってしまったのなら、“荒魂化した女性”は未だ健在であり、それに対して素早く対応をしなければ、こちらが危険な状況に晒され、エレンや薫、そして姫和といった他の仲間も危機に陥れるかもしれなかったからである。

 

…………だが、赤くドロッとした水状の何かを流しながら、倒れていたのは“荒魂化した女性”であった。

そして、可奈美はそのまま目を開け、自らの行いの結果を確認するかの様にその光景を眺めてしまっていた。

 

生き残ってしまった“赤子の荒魂”は、可奈美に斬られピクリとも動かなくなってしまった“荒魂化した女性”の顔を叩いて、眠っているであろう母を起こそうとしていると見える光景を。

 

これは何なんだ。何なんだこれは。何でこんなに気持ちの悪い気分になるんだ……。

 

(それに私がさっき御刀に感じた感触は……!)

 

それに“荒魂化した女性”を斬ったのに、斬った感触は“赤子の荒魂”と変わらなかった事に気付いてしまった。

……そのため、可奈美は人間と荒魂の違いが分からなくなっているのではないかと激しく動揺し、本当はこの赤子の荒魂はこの女性の赤子が荒魂化したものではないかと危惧し始めていた。

 

…………いや、もしそうだとしたら今まで倒してきた赤子の荒魂は本当に生命を模しただけの荒魂ばかりだったのだろうか?

……今まで会ってきた赤子の荒魂は、本当は赤子が荒魂化したものではないのか?

 

もしそうだとしたら、私はとんでもない事をしでかした。

もしそうだとしたら、私は鬼畜外道の所業をしてしまった。

もしそうだとしたら、私は母の剣術を穢してしまった。

 

もしそうだとしたら…………ワタシハ、

 

『……そう、ならおねえちゃんに任せようかな、……お願いね、おねえちゃん。』

 

………何ノ為ニ……、

 

『ねえ知ってる優ちゃん。お母さんが刀使は人を守って、感謝されて、剣術も学べる、最高だって言ってた。けど、私はこうも思うの、刀使は人を守って、感謝される、“正義の味方”なんだって。』

 

ケンジュツしか……取り柄ガ無いワタシが………、

 

『だから、約束。…私はお母さんみたいに人を守って、感謝される、“正義の味方”のような強い刀使になりたい。だから、私は優ちゃんのことも怖い物から守るし、今度は何があっても救ってみせるよ。』

 

…………ガンバッテ、 嘘 マデツイテ………、

 

『……そうなんだ。だったら僕もそんな大好きでカッコイイお姉ちゃんの助けになりたい。』

 

ワタシハ 刀使 ニナッタンダロウ。

 

可奈美は、血のようにへばりついた負の神性、珠鋼を生成する際に取り除かれる不純物と言われているノロで穢れた千鳥を見つめながら、悩み、もがき苦しむのであった。

 

 

……一方の姫和も、"荒魂化した男女"と"赤子の荒魂"の計三つの荒魂を討伐し終えていた。そのうえ、仲の良い家族を思わせるこの計三つの荒魂を討伐後にあることを思い出していた。

 

それは、姫和が刀使として残ることを決め、特別任務部隊に在籍し、鎌府女学院に居たときのこと。

ある刀使が、親の意向により転校することが決まり、両親が車で迎えに来てくれたところを姫和は、遠くから眺めるように見ることしかできなかった姫和は、そのときこう思ったのである。

 

――――ああ、そうか、今の自分には迎えに来てくれる両親すら居ないのだ。

 

そう思った姫和の心の中に、両親が健在な者と死別して両親の居ない自分とを比較し、温かく迎えに来てくれる両親も、ああやって心配してくれる両親も居ないのだと再確認し、両親が迎えに来てくれる子のことを羨み、妬み、辛み、嫉み、僻むという感情を向けながら、その光景を遠巻きに見ていた。

 

――――今の私は、あの子の様にすら、生きることも許されないのだろうか?と。

 

姫和はその感情を思い出した瞬間に、この計三つの荒魂を"討伐"していた。

 

ああ、そうだ。こうやって否定すれば良いのだと理解すると、心の中に在った痛みが引いてくる様な気が今の姫和には実感できた。

敵対する相手が、嫌悪感という感情を抱かせるには充分な相手の酷い任務でも、こうやって嫌悪の感情を憎悪へと変えてしまえば戸惑うことなく、躊躇いなく、動きを止めることなく斬れるのだということが分かったのだ。それだけでも充分だと姫和は理解し始めていた。

 

そうして、小烏丸を持つ腕が軽くなったような気さえした姫和は、次の討伐すべき赤子の荒魂の元へと向かおうとするが、

 

『薫隊員等に通達。特に反応の強い荒魂が一体、そちらに急速に向かっています。会敵予想時間は約30……いや、早くなった。約5秒!』

 

姫和は、後方の作戦本部の通信士がこのような状況下でも冷静な声で話す事にすら苛立ちを感じながらも、特に反応の強い荒魂が姫和達に向かっているとの通信は聴こえていたため、新型S装備のバイザーに表示されている方向を見ると、同じくS装備を纏い、御刀を所持していた“人型の荒魂”が其処に居た。

 

……そして、“人型の荒魂”と邂逅した際に赤子の荒魂の鳴き声が山林の中で響き渡っていたため、姫和はその鳴き声がまるで本物の鵺が此処に居るかのように聴こえ、この"人型の荒魂"との出会いが不吉を表し、その始まりであるかのように感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――一方、和樹もある人物と対面していた。

 

旧親衛隊服の上に荒魂パーカーを羽織り、熊の鍔とイチゴ大福ネコのシールとストラップの付いたニッカリ青江を携え、スポーツマスクとグレー系のゴーグルを装着し、パーカーのフードを被って顔を隠している優と対面していた。

……しかし、

 

(……燕……結芽っ!!)

 

当の和樹は、優であると気付くこともなく、敬愛する結月を裏切った結芽として見ており、憎悪を燻ぶらせるのであった。そのため、

 

「……燕 結芽!どうして結月さんを裏切った!!」

 

と優に向けて述べてしまう。

 

(……何コイツ?結芽おねーちゃん、誰か知ってる?)

『えー?私知らないよ?そんなおにーさん。』

 

そのため優は、結芽の知り合いだろうか?と思い、一応結芽に尋ねてみるものの、結芽は和樹と直接会ったことは無いため(というよりも、内気な性格の和樹には、人と向き合って話すのにも勇気が必要であり、結芽に話しかけるという勇気が無かった。)、結芽は知りようがなかった。

 

「お前は、結月学長から天然理心流を学んでいるのに、何故銃なんか持っているんだ!!?」

『……えっ?そこ一番気にするところっ!?』

 

和樹の天然理心流ではなく、銃を使うことに対する問い掛けに対して、優の中に居る結芽は子供が銃を持っている事について非難しなかったことに驚いていた。……真っ先に聞くべきことは其処なのだろうかと。

 

「…………。」

「お前は……お前は!結月学長から……結月学長から天然理心流の剣を教えてもらったり、色々と手を尽くしてくれたというのに何も感じなかったのか?何で教えてくれたと思っているんだ!!」

 

そして和樹は結月学長から剣術を教わっているうえ、あれだけ甲斐甲斐しく見舞いに来てもらったのに、刀剣類管理局側に付いた結芽を裏切り者として見ており、そのことに対して糾弾していた。

 

「僕は許さない!……お前みたいな奴がっ、どうして刀使になれるんだ。……ふざけるな!!お前みたいな裏切り者が僕は許せないんだ!!」

(何か勝手な事言っているなぁ……。)

 

和樹は、結芽だと思っている優に向けて、怒りをぶつけていたが、優が黙って聞いていたために和樹は一人で勝手にヒートアップし、更に糾弾するのであった。……自分こそが正しいと思いながら。

 

「お前はただの恥知らずで!!恩知らずの!!顔を隠してコソコソするのがお似合いのただのクソ――――」

「あのさぁ……。」

 

ただのクソガキだと罵ろうとした和樹だったが、急に優が喋りかけてきた事に驚き、喋るのを中断してしまう。そのうえ、

 

「妬ましいなら妬ましいって言いなよ、面倒くさいなぁ……。」

 

優に、そう核心を突いた反論をされたため、対面している優のことを結芽だと思っている和樹は顔を歪ませて、大声で叫ぶのであった。

 

「こんの、調子に乗るなぁーーーー!!!!」

 

結月さんから天然理心流を教えてもらう結芽。

結芽のお見舞いに何度も向かう結月さん。

 

それらを遠巻きにして見ることしかできず、結局は結芽のように結月さんに目を掛けてもらったことなど無かったことを思い出した和樹は、その際に感じた結芽に対する妬み、嫉み、僻みを覆い隠すかの様に大声で叫びながら、結芽だと思っている優に向かって行くのであった。

 

 

 

 

『平家物語』にある怪物は「鵺の声で鳴く得体の知れないもの」で名前はついていなかった。しかし、現在ではこの怪物の名前が鵺だと思われ、有名となっている。

 

この意が転じて、掴みどころがなく得体の知れない人物・集団の事を喩える際に"鵺"と表現されるのはここから来ているとされている。

 

そして、和樹は刀剣類管理局と政府から謎の人物として追われ、優もまた不正規活動と二十年前の事件の真実を隠匿するために正体を隠され、テロリスト側から正体不明の悪魔として恐れられていた。

この両者もまた捉えようによっては鵺の如く、得体の知れない者達であり、そして仄暗い山林の中でさえずる様に言い争っていた。

   

   

    




   
    
赤子の荒魂はアニメ第12話「ひとつの太刀」にて、寿々花氏が結芽の遺体に対して、

『お行きなさい真希さん。紫様の下へ。残念ながらわたくしにはもう戦う力はありません。ここで結芽の遺体の処置を行います』
『そのままでは結芽は荒魂になってしまいます』
『真希さん!お分かりでしょう?それはもう結芽ではありませんわ。結芽という器を苗床にしたただの荒魂。そうなればもう一度結芽を殺さねばなりません。』

と証言していた処から察するに、死んだ人間が何らかの形で荒魂として蘇るケースも存在するのだなと思いまして、そこからDead Spaceのネクロモーフと赤子の荒魂みたいなものが出てきたら究極の二択を迫れるなぁとか、猫の鳴き声が赤子の泣き声に似ているなぁといったことを考えていたら、思い浮かびました。

アニメの二期が出たら、荒魂化した人間とか出て来て欲しいなぁ…………。
     
    
   

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