【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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115話を投稿させて頂きます。

狛犬=神様の神使(お使い)
狐=稲荷神の神使
牛=御神牛

狼=御神犬、アセナ、ウプウアウト……そしてフェンリル

獣も神様になれるのか?
   
   


獣という神が居る世界

    

    

   

優は長巻状に鬼丸国綱を持ちながら、スポーツマスクと色付きのゴーグルを外して鬼のような角を生やし、右目の瞳の色と右半分の髪の色が変わった素顔を晒すと、夜見に向かって獣の様な、狼の様な雄叫びを上げて突っ込んで行くのであった。

 

優が真っ直ぐに突っ込んでくるのを見た夜見は、自傷跡から赤子の荒魂を這い出し、優を動揺させようとするが、優は赤子の声と姿に酷似した荒魂を何の途惑いも無く鬼丸国綱で纏めて斬り殺すと、赤子の荒魂を全てノロへと還すことに成功し、還した全てのノロを吸収するのであった。

 

赤子の荒魂を難なく斬り殺し、赤子の荒魂をノロへと還すとそのノロを吸収する優を見た夜見は、赤子の荒魂を優に襲わせても何の効果も無いうえ、ノロに還されると吸収され、自分の力へと変えるだけであり、結果は優を強化するだけのことであると判断。

故に、夜見はこれ以上、赤子の荒魂を産み出すことをすることを辞めるのであった。

 

……しかし、夜見は気付かなかった。

国会周辺暴動時に人を殺傷する恐れの有る銃を人に向けて躊躇うことなく撃ち、心拍数等の数値が一つも変動しなかった優にとってみれば、人を殺すことも、赤子を殺すことも何の罪悪感も抱くことはなかった。

 

……いや、殺してはならないという理由が分からないといった方が正確であろう。

それ故に優は常軌を逸した行動を取ることに抵抗も無く、人を殺すことに違和感を感じることも無かったため、夜見の赤子の荒魂に対して何の効果も発揮しないうえ、躊躇い無くノロへ還すとそのまま吸収し、自分の力に変えるという赤子の荒魂にとってみれば天敵の様な存在ということが夜見は気付いたのだが、人を殺すことに抵抗感の無い者が常軌を逸したらどのような行動を取るかまでは気付かなかった。

 

そして夜見は、真っ直ぐに突っ込んで来る優に対して迎え討つべく待ち構えるのであった。

そして、遮二無二突っ込んで来る優を夜見は左腕を伸ばして、優の心臓を刺し貫くのであった。

 

「!?!」

 

しかし、優の心臓を刺し貫いたにも関わらず、死ぬことも無く止まらずに、御刀に刺されたまま夜見の元へと向かおうとすることに流石の夜見も戦慄を覚えたのであった。

 

何故心臓を刺し貫かれても向かって来れたのは、脳内麻薬を増加させたことによって痛覚を遮断し、強烈な高揚感によって心臓を刺し貫かれたことに気付かなかったがためにそのような行動を取れたのか、それとも半ば荒魂化することで強化された身体のお陰で死ぬことが無かったのかは不明瞭であった。

 

夜見は心臓を刺し貫かれても、尚立ち向かってくる優に対して次はどうするべきかと手をこまねいていると、優は夜見に力負けしているために夜見に近付けないと素早く判断。夜見の左腕を掴んで拘束すると、攻撃範囲の広い鬼丸国綱で御刀を持つ夜見の左腕を斬るために振り上げて、そのまま振り下ろそうとしていた。

 

それを見た夜見は、御刀を持つ左腕を失うことで御刀をも失うことを阻止すべく、優を引き寄せると優を足で蹴り飛ばすことで無理矢理優に刺さった御刀を引き抜くのであった。

優の弱点の一つであった体重の軽さによって、少しの力で簡単に引き抜くことができたことが夜見にとって幸いであった。そのうえ、優との距離を簡単に空けることができたことは追撃されないという点においても助けられた。

 

優との距離を空け、その隙に体勢を立て直した夜見は腕を伸ばして追撃しようと本能的に行動しようとするが、リーチが長く、攻撃範囲が長い長巻を装備していること、長巻状に改造された鬼丸国綱の振りは大振りになり易いことを考慮して、腕を伸ばすことで斬られることを恐れ、近付くことで鬼丸国綱の懐に入り込むことが一番であると判断を替えると迅移と見間違えるほどの機動で一気に優との距離を詰めたのであった。

 

優は夜見が右肩を刺し貫こうとしていたことは龍眼で気付いていたが、間に合わないと判断したのか荒魂化していない方の右腕で夜見の御刀を無理矢理払うと右肩は刺し貫かれることがなかったのだが、夜見の第五段階の力に負けたのか、優の右腕はあらぬ方向に曲がり、骨が飛び出る程の負傷をしてしまう。

 

夜見は優の右腕の状態を見て、片腕では鬼丸国綱を振り回すことは困難であり、右腕で右肩を庇ったところから夜見の迅移と見間違える程の足運びには対処できないのだろうと判断。更に接近するが、それが優の罠であったことには気付かなかった。

 

優は鬼丸国綱を投げ捨て、夜見の注意を投げ捨てた鬼丸国綱に向けさせると、その隙に夜見の懐に入り、夜見の腹に何かを突き刺すのであった。

 

「?……!」

 

優が夜見に突き刺したのは自身の飛び出た骨を荒魂化して強化し、刺突武器として扱えるようにしたものであった。

そして、その刺突武器で夜見の腹を刺し貫くと同時に夜見の体内に有るノロを吸い取り始めるのであった。

 

夜見は麻薬と珠鋼搭載型のS装備だけでなく、体内にノロを注入することで強化された冥加刀使でもある。体内のノロを吸い取られでもされたら、吸い取られた分だけ弱体化してしまい、最悪刀使の力を失う可能性すら有った。

 

夜見は、優にノロを吸収されることを阻止すべく優の右肩に噛みつき、右肩を壊すことで右腕の力を失わせ、優の右腕を引き抜こうとしていた。

それに対して優は、夜見の右耳に噛みつくと、そのまま夜見の右耳を引きちぎるのであった。

 

ウールヴヘジンの逸話に、狼の毛皮のみを羽織って、狼その物になりきり、相手に噛み付いて戦っていたというものがある。

 

……しかし、ウールヴヘジンは北欧神話に登場するベルセルクと同様であるとする説も存在し、その説が正しければ、ベルセルクを使った王達はその戦力を大いに期待してはいたのだが、敵味方の区別さえ付けず、鬼神の如く戦う彼等を決して、自分達の護衛としてだけでなく、自らの傍には近付けさせなかったのである。

 

異質な姿となって、優の右肩に噛みつく夜見。

荒魂パーカーを羽織り、夜見の左耳を噛みちぎる優。

 

仮に、神性な御刀の加護を得ることで巫の巫女である刀使になれるというのであれば、この両者は、北欧神話の軍神オーディンの加護を受けたとされるベルセルクと同様の存在だと見られていたウールヴヘジンへと、神の加護を受けた聖戦士になったと言えるのだろう。

 

そして、過去に存在していたとされるベルセルクやアサシンは、幻覚作用の有るキノコや麻薬によって人間以上の力を持って戦う存在だとすれば……。

 

「――――!」

 

スレイドの言う麻薬という神の薬によって、写シの様に痛覚を遮断させられている夜見ではあるが、流石に右耳を噛みつかれ、そのまま引きちぎられたのは激痛を感じたのか、優を無理矢理足で引き離すのであった。

 

そして響き渡る優の雄叫びと夜見の悲鳴、その声によりエレンや姫和、舞衣といった気を失っていた者達が目を覚ますが、それは不幸であったと言わざるを得ない。

何故なら、彼女等と可奈美は、優が夜見の左耳に噛みつき、そのまま引きちぎる光景を目の当たりにすることになったのだから。不幸としか言いようがないだろう。

 

可奈美達にそんな視線を受けていることを知ってか知らずか、優と夜見の両名は死闘を演じていた。

優は夜見を動揺させるべく、咥えていた夜見の右耳を夜見の目に当たるように吐き出すと、夜見の目に当てることには成功するが、夜見は動揺することなく優の右肩を御刀で刺し貫き、そのまま左腕を伸ばすと杭を打ち込むかのように優の右肩ごと石壁に刺すことで優を拘束するのであった。

 

そのため、優は夜見の御刀が右肩ごと石壁に突き刺されたことで右腕が上がらず、見動きが取れなかった。

 

優は何とか夜見の拘束から抜け出そうとするが、伸びた腕を容易く両断することができる鬼丸国綱を投げ捨てているうえ、夜見に対してニッカリ青江は使わないこととなっていたため、夜見の腕を斬って拘束から逃れる術を持たない状況であった。

ならば、右肩に刺さった御刀をどうにか抜くことができれば良いが、夜見は第五段階の八幡力を使えるが優は使うことができないため、力で抜くことは不可能であった。

 

しかし、この拘束から逃れないと迫り来る夜見から対処出来ないまま、一方的に殴られるのみである。

 

「……なんかコレ、邪魔だなぁ………。」

 

それ故に、優は迫り来る夜見を対処すべく、ニッカリ青江を隠世から取り出すと、自身の右脇の下に切っ先を入れ、荒魂化していない生身の部分である右腕をコレと言って右肩ごと切除しようとしていた。

 

今の優は、脳内麻薬が多く分泌している状態であるため、右腕を切除している時は痛みを感じないのか、笑みを浮かべながら無理矢理ちぎる様に切除していったのである。

 

しかし、優は親から貰った身体の部分を『要らなくなった。』という軽い理由で不要と断ずると切除し、荒魂化されていない生身の部分を捨てることに途惑うことすら無かったのである。そうして、顔も知らない母親が残してくれた身体を捨てて行くことに躊躇が無かったために、優の荒魂化は加速度的に進むが、タギツヒメ達との約束は守りつつ、夜見の拘束から脱することができたのであった。

むしろ、優は右腕が無くなったお陰で、その分だけ身体が軽くなったとしか認識しなかった。

 

そうして身体が軽くなった優は、P938という自動拳銃を隠世から取り出すと後ろに下がりながら、夜見に向けて薬室内に有る弾と弾倉内に有る弾8発全てを夜見に撃つと、夜見に向けて投げ捨てていた。……しかし、この行為には優も荒魂化が進んでいる夜見に対して確実な有効打とならないことは分かっているが、あることを調べるためには必要なことでもあった。

 

「荒魂!……荒魂!!排除します!!!」

 

撃たれたことに怒りを感じたのか、それとも夜見に向けて弾を撃ち尽くした後に銃を投げ捨てたことから、ただ単にヤケクソになって攻撃しただけでしかなく、後ろに下がったのも夜見から逃れるために取った行動なのだろうと夜見が判断し、その判断を元に石壁に刺さった御刀を引き抜き、優に接近したのかは不明瞭であった。

何故なら今の夜見は、自身の瞳から涙と自身の口から涎が滝のように流し出している表情しかせず、不明瞭な言葉を吐きながら優の元へと近づこうとするため、傍目から見ると何を考えているのかは優ですら読み取れなかった。

 

だが、仮にチャンスだと思い、優に接近したのは間違いだったかもしれない。しかし、優は第五段階の八幡力が使えないことは何度も拘束に近い状態に持ってこれたことから、間違い無いことは判明していたことであるため、打つ手を失い後ろに下がったと判断したのは当然のことであり、夜見が優に接近したのは正しい判断であるとも言えよう。

 

だが、優が後ろに下がったのは、夜見が接近戦に持ち込ませるように思わせることで、自ら接近させるための罠であったことに気付いていれば勝負は違ったのかもしれない。

そして優は、夜見が接近してきたと見るやいなや、優も夜見に返す形で接近し、夜見の生身の部分を対刀使用の矢2本ほど投げ、夜見の生身の身体を刺し貫くのであった。

 

「……!?!」

 

先程、優が夜見に向けて拳銃を撃ったのは、ヤケクソになって攻撃したのではなく、夜見の生身の部分がどれほど有るかを探るための攻撃であったのだ。そして、夜見の赤い血が出た部分は荒魂化されてない生身の部分であると判断し、対刀使用の矢を投げて生身の部分を攻撃し、写シを使い辛くさせたのである。

 

「……その程度!!その程度!!!雪那学長がくれた力を得た私には!!!」

 

しかし、夜見は雪那の名を叫ぶとハッとなり、雪那がどんな姿かを考えてしまった。

確か雪那学長の姿は血の色の様に赤い服を着ていて、いや、それは違う。それは局長の紫様の御姿であったはず。

確か雪那学長の姿は三つ編みをして髪はまとめていた、いや、それは違う。それは局長の紫様の御姿であったはず。

確かいつも黒いハイヒールをしているのが紫様で……いや、それは違う。それは局長の紫様の御姿であったはず。

 

片方の目を隠すような髪型でそれは違う私は紫様が履いていたとする白いブーツを頂戴しならば血の色の様に赤い服を着て白いブーツを履いていた記憶が無いけれど血の色の様に赤い服を着用着ていて三つ編みをして髪はまとめて短くしていて黒いストッキングと黒いハイヒールをしているのが紫様だと私の記憶は証言しているならば敬愛していた高津学長はどんな御姿をしておられたのかを思い出せないのは何故だ?

 

……何故だ何故ナゼWhatどうして理由は根拠は私は局長は紫様は高津学長は誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰誰?

 

 

夜見は戦いの最中に雑念を生じさせ、動きを止めてしまったことにより、優にその隙を突かれ、夜見の目は優が隠し持っていた対刀使用の矢に刺し貫かれる。

 

「――――!!!」

 

その瞬間、夜見は獣のような、そして少女の悲痛な叫びも混じった声で、そして急に視界が黒一色になったことに驚くと大声で叫ぶのであった。痛覚は遮断していようが、視覚は死んでいないのだ。

 

荒魂は現世に実体が、隠世に霊体が存在し、霊体は実体の設計図のようなもので現世にて実体が破損しても、隠世にある霊体を元に修復が可能であるため、御刀以外での物理的な攻撃は効果が薄いとされているが、同じ珠鋼から生まれた御刀は同じように隠世にも存在しているため、実体と霊体ごと荒魂を断つことができる。

そのため、荒魂に対して有効打となるのである。そういった理由もあり、御刀は荒魂に対して唯一対抗できる武器であった。

 

しかし、優は夜見の右耳を嚙みちぎり、その後も御刀で斬った訳でも無いのに荒魂の様に再生されないことからもしやと思い、銃で生身の部分が何処か探り、探った生身の部分は荒魂と珠鋼搭載型のS装備によって強化されていることも考慮し、対刀使用の矢を刺したらどうなるかを確かめてみたところ、優の推測通りに再生されなかったうえ、対刀使用の矢も身体に刺さったままであった。

 

夜見の右耳と銃で撃った箇所が再生されなかったこと、生身の部分に刺さったままにすることが可能であることが分かったからこそ、夜見の両目に対刀使用の矢を突き刺すことが可能であると判断することができた。そのため、夜見の両眼が塞がっている隙に優は薫の元へ近づくと、祢々切丸を片手で掴み、持ち上げるのであった。

 

「ちょっと使うねー。」

「お…おい!待て!!」

 

「ちょっと使うねー。」と脳内麻薬の影響か言動の怪しい優に祢々切丸を分捕られた薫は、非難の声を上げるが、写シを使い切ったせいか立ち上がることもままならなかった。それ故に、薫は優に易々と祢々切丸を分捕られてしまう。

そして、優は分捕った祢々切丸で夜見の元へ向かうと、目に刺さった矢を引っこ抜いていた夜見の姿が目に映った。

 

そんな夜見の姿を見た優は、矢尻が眼窩の奥にある脳まで達していなかったのか、それとも強化された身体のお陰で死ななかったのかは不明だが、今も活動していることから攻撃を加えるべきだと判断し、優は夜見の活動を止めるために祢々切丸を持って、夜見と薫の間に居るねねを飛び越えて夜見に接近する。

 

夜見に接近した優はそのまま祢々切丸を片手で持ち上げると、祢々切丸の22.5kgという刀自体の重さを利用して、その重さだけで垂直に振り下ろすと、夜見が御刀を手に持っている左腕を両断することができ、夜見の手許から御刀を離し、失わせることに成功するのであった。

 

夜見の左腕を切断することで御刀を手許から離すことに成功した優は祢々切丸を放すと、夜見の背後に回り、珠鋼搭載型のS装備のバッテリーの部分を荒魂化した左腕で無理矢理殴って損壊させ、そして強引に引きちぎるのであった。

 

夜見が着用していたS装備は、厳密に言えば一年前の珠鋼搭載型のS装備ではなく、ただ単純に通常のS装備のバッテリーに珠鋼を入れただけという細工を施しただけの代物であり、飛行能力を使わなかったのも八幡力と金剛身を自動制御しなかったのもそれが本当の理由であった。

しかし、優はS装備のバッテリー部分を無理矢理引きちぎることでS装備の力を失わせ、夜見の第五段階の八幡力と金剛身を使えないようにしていた。

 

こうして夜見は、第五段階の八幡力と金剛身、それに御刀を手許から失ったうえ、新しく得た能力である赤子の荒魂も殺人に躊躇の無い優に対して効果的ではないという不利な状況下に陥ってしまった。

 

しかし、こうなればもう勝負は付いたも同然であった。

 

優はタギツヒメ達との約束を守るために、夜見を吸収するべく獣の如く襲いかかると仰向けにし、マウントポジションを取って何度も何度も短刀の御刀で刺していくのであった。

そうして優は、夜見の活動を停止させるだけに留めると、夜見に対して手をかざし、夜見ごとノロを吸収することで夜見を自分の身体の中へと取り込むのであった。

 

「なっ……何という。」

 

優と夜見の戦いを見ることしかできなかった真希は、驚嘆と畏怖が入り混じったかの様な声を上げるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――時は少し戻り、丹沢山周辺に突如として現れた荒魂のノロの反応に釣られて来た別の荒魂の群れを岩倉 早苗とその配下の刀使達と共に対処していた内里 歩は、隊長である岩倉 早苗の制止を振り切って、山中に響き渡った荒魂の声の方角へと向かっていた。

そして、歩は知らないことだが、その山中に響き渡った荒魂の声は、嘗ての姿に戻ったねねの声であった。

 

それに気付かず、声のした方角と新型S装備のバイザーに表示されている可奈美達が居る方角が一致していたため、可奈美達に危機が迫っているのではと思い、早苗の制止を振り切って可奈美達の元へと向かっていたのである。

 

しかし、歩はその先へ進むべきではなかった。

 

何故なら、優と夜見が死闘を繰り広げている部分を見なくて済んだのだから………。

 

そうして、可奈美達だけでなく、不幸な事に歩もその光景を見てしまい、こう感想を漏らしていた。

 

「……すごい。」

 

歩はそう呟くが、その言葉とは裏腹に、まるで野獣の様に戦う優と夜見の姿を観て、畏怖という感情しか湧かなかった。

 

優の右肩に噛みつき、右腕の力を失わせると同時に優を引き剥がすことで逃れようとする夜見。

それに対して、優は夜見の右耳に噛みつくと、そのまま引きちぎったことで夜見に激痛と血を噴き出させ、優の口の周りが血で紅くなるのであった。

 

……あれが一番強い者の姿だと言われれば、そうかも知れないと歩は答えるしかないだろう。

 

――――だが、歩は強くなろうとした。

 

若さ故にただ突っ走り、そして単純に強くなりたかっただけだった。

だが、自分が目指していた強さとはそのような物なのかと自問自答し、何かが違うと考えを改めさせられる程の相手の喉笛をも噛み千切らんとする野獣達による死闘が其処にあった。

 

「ハァッ……ハァッ……。」

 

ただただ野獣達が共演するコロシアムの様に思えて仕方が無く、歩は身震いすると後退りし、特別任務部隊での初めての荒魂討伐任務での恐怖以上の恐怖に直面した事によって、あの時の恐怖を思い出し、下半身の感覚が無くなると、歩の股の部分が、自分が出したしめやかに生暖かい"何か"によって濡れるのであった――――。

    

 

 




    
   
荒魂は現世に実体が〜は、髙橋龍也氏のツイッターに書かれているとじみこに関する設定をそのまま参考にしました。
心臓を刺し貫かれても無事だったのは、理由があります。
……まだ何にも言えないけどね。

そして歩ちゃん怖がる。
そして私も何時か原作スタッフから怒られないか不安の日々をおくっております。
    
    
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