【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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120話を投稿させて頂きます。
    
    


ソフィアの二次創作

   

   

    

――――私は弱かった頃の少女の名を捨て、獣の様に雄々しく戦うが指輪を奪った人達に憎悪を抱くソフィア、私のお腹に宿った赤ちゃんの未来を奪った世界に怨念を抱くソフィア、理不尽にも命を奪われ少女に怨みを抱くであろうソフィアの名を名乗った。

 

 

私の過去と未来を奪った社会に復讐すべくソフィアと名乗り、刀使になると決めたはいいが、最早子供も産めない身体となり、綺麗な女ではない私が御刀という代物に認められるかどうかが問題であった。認められなかったら、児童保護施設へと送られるだろうから、そうなれば自分の犯罪歴がバレて、刑務所行きだろうと覚悟を決めていた。

 

そのとき幼かった私の心の中は、どうせ刑務所行きで死刑になればそれでいい。私は弱かった頃の自分ではなく“ソフィア”として死ねるのだからと思い馳せるばかりであった。

 

……だが、御刀は私を見捨てなかったのか、御刀は私を認めてくれたのだ。

 

そのときの私は安堵と共に御刀に対して怒りが湧いてきたのだ。

理由は、神様という奴は姉と慕っていたソフィアとお腹の中に居たソフィアを救うことをせず、このときだけ私を救ったのかという怒りが湧いたからだ。

 

――――その怒りを抱きながら、私は理不尽なことに対して抗うべく"強くなる"と決意した。

 

 

御刀に認められた私の“刀使になりたい”という願いを養父上(ちちうえ)は私を養女にすることでどうにか叶えて下さった。

 

理由は恐らく、あまりにも不憫過ぎる私の願いを一つでも叶えたかったとか……そんなところだろうと推測していた。

 

実は織田防衛事務次官殿は、二十年前に相模湾岸大災厄にて多くの人間と刀使が死んだことが今もトラウマとなっているらしく、救えなかった少女、それに犠牲となった人達への贖罪を何らかの形でしたかったがために、たまたま見かけた私を手助けしたかったというのが本音だろう。

 

「……ソフィア、鎌府女学院でなくて良いのか?綾小路武芸学舎は共学だから大変だと思うが?」

 

事実、私の希望を叶えるべく養父となった織田防衛事務次官は、悪い大人達によって子供が産めなくなった私が男に対して何らかのトラウマを持っているのではないかということを懸念し、共学ではない女子学校の鎌府女学院に入学することを薦められたが、私はそんなことを気にするタマではないし、私は私の目的があった。

 

「養父上、折角の御恩情を有り難く思いますが、私が鎌府と綾小路の橋渡しをすることで冥加刀使に関する計画が早められるでしょう。」

 

私が綾小路に入ることで鎌府と綾小路の間を自由に行動できると踏んだからだ。私の心一つで分断も可能なのだと思えば、心が躍る思いしか抱かなかった。

 

 

 

その後、刀使となった私は剣術を学ぶことになったが、どんな敵をも打ち破り、蹂躪する剣術を欲した。

 

……何故それを欲したかといえば、所詮御刀が神性なものだとか言っても刀は刀。どんな銘があっても斬れなければ刀とは言えない。それに私が刀使になりたかった理由は金剛身や迅移といった超常の力を求めたのが最大の理由であり、神性なる御刀を扱える刀使がとか、親の使命だからとかはどうでもいい話しであった。

 

――――ただ単純に力が欲しかった。目の前の敵を好き勝手に蹂躪する力が欲しかった。

 

私にとってみれば、御刀という存在は目の前に居る障害や敵を蹂躪するための道具。言ってみれば、ソフィア達の復讐を達成するのに必要な道具だった。

……いや、弱かった頃の自分を捨て、力強いソフィアとさせてくれる物。もっと端的に言えば初めて手にした一番強い力だった。

だから私の印象に一番強く残ったのだ。

 

故に私は強いソフィアを創るためには、どんな敵をも打ち破る強い剣術を得なければならなかった。

……しかし、探していた物は見つからず、途方に暮れていたが、とある剣術に心惹かれた。

 

――――無住心剣術。

師を打ち破り、自らの力を誇示したことが気に入ったからこそ、この流派を選んだ最大の理由であるが、無住心剣術を遣い、千度にも及ぶ他流試合にて一度も不覚を取られなかった真里谷円四郎の言葉、

 

『生まれついたままの純粋な赤子の心でもって種々の分別を離れ、外面に捉われることなく、ただ刀を引き上げて自然の感ずるところ、落ちるべきところへ刀を落とすだけ』

 

という言葉に感銘を受けたからだ。

 

生まれついたままの純粋な赤子の心……それだけで、私のお腹の中に宿ったソフィアの心が私に宿るような気がしたのだ。

そして自然の感ずるところ、落ちるべきところへ刀を落とすだけという言葉に大人に殺され、この世に産まれ出る筈だったソフィアの怒りがこの神性なるというもので着飾った御刀に宿るような気がしたのだ。

 

………そう感じるだけで私は荒魂も人も等しく斬ることができた。そう思えただけで私の身体にソフィア達が宿るような気がしたのだ。そう信じただけで私はソフィア達が力を与えてくれて、何も無い私を容(かたち)を付けてくれるような気がしたのだ。

 

そうしてソフィアの怒りが乗った御刀で敵を打ち負かすのは、ソフィアの怨念が安らぐような思いさえ抱けた。そうすることで私の剣の技量は飛躍的に向上した。

 

 

――――そうして荒魂討伐任務等を数回こなした私は一部では有名となり、綾小路という伝統校に外人の見た目でありながら、織田防衛事務次官の養女ということで色々と噂を立てられたり、やっかみを受けたりしたが、全て力で捻じ伏せることで己の立場と立ち位置を皆に周知させた。そうすることで私は綾小路においても頭角を現していったのだ。

 

……そんなこともあって、私は綾小路の中でそれなりのポジションに居り、刀使という福利厚生が充実している国家公務員であることから、私のことを知らぬ者からすれば順風満帆な人生を送っているように見えたことだろう。

 

しかし私は、この国に在る物、どうしても許せない物があった。

 

移り住んだこの国は何もかもが恵まれていたということだ。それを目の当たりにした私は、私の故郷が今も貧しいうえに腐敗した官僚が蔓延る国であったことを思い出し、つい最近では不正選挙で政権を追放したと思ったら追放した政権を戻したりするという奇妙奇天烈な行動を起こす国なのである。

 

貧すれば鈍する。

 

それが私の故郷であり、そこに住んでいた私は飢えや別のギャングとの争い、大人達とのイザコザでいつも苦境に立たされていた。

 

地下構内に住む仲間達のために行った売春と強盗、麻薬売買といった非合法な活動。

野草だけのスープとパンくずだけといった残飯と見間違えるほどの食事をご馳走と思う程だった日々。

 

……だが、一人ではなかったし、幸せだった。

 

 

そしてこの国の平和の中身。『他人を傷付けるのは辞めよう。』『力による現状変更は良くない。』といった価値観をテレビで書物で新聞で私に押し付けてくる。

 

『他人を傷付けるのは辞めよう。』

相手と競い合う競争社会にしておいてよく言う。

 

『力による現状変更は良くない。』

自分達の権益を保護したいだけだろう。

 

形ばかりの平和国家が述べる“平和”とは、自身の思い描く『幸福』と他者が思い描く『幸福』は違うということと同様に、他者が思い描く『平和』と自身が思い描く『平和』は違うということに配慮することなく押し付けてくるものなのだということが分かった。

 

形ばかりの平和国家が述べる“平和”とは、金と体力のある者が他者の僅かばかりの養分を吸い取って、その養分を肥えた豚同然の腹を充たすためだけに使う大義名分だということを理解した。

 

 

……それらを思い返すだけで、私の故郷に居るであろう私と同じ境遇の浮浪児達は、今も苦境に立たされているのだと思い返してしまう。

 

ただ運良くこの国に住めたというだけで、ただただ其処に在るだけの平和を受け入れさせられるだけで、その無遠慮で横暴な平和が私に対して過去を捨てろと勝手なことを述べながら侵食して行こうと企んでいるように思えた。そして何をせずとも綺麗な水や食事が得られることに私は虚しさしか感じれなかった。

 

だが、そんな空虚な平和をこの国が得ることができたのは、私の故郷や他の国を食い物にすることで成り立っているものであると分かってしまえば、気味が悪くなる思いしか抱けなかった。

 

……私だけ、地下構内と共に過ごした嘗ての仲間達を見捨てて、良い思いをしているような気さえした。

 

 

それ故に、地下構内でソフィアが見せた獣のような戦いをした者こそが本当の生きている人間であり、それ以外は屍にしか見えなかった。

 

故に、この国に蔓延するただただ在るだけの平和が、虚無のように感じれたのだ。いや、何も無い灰色にしか見えなくなった。

 

ただ生きているだけの屍。そう表現するのが適切と思えるほどに虚無で止まっている人間が多いように感じ取れた。

 

それ故に、生きているだけの屍が死んだとしても何の感情も湧かなかったのだ。

 

 

それだけでなく、この国に建つ幾つもの鉄の塔。所謂ビルや高僧マンションといった建物が嘗て私の仲間達と共に住んでいた地下構内の上に建てられた鉄の塔を思い起こさせる物に見え、それら全て壊す力が欲しかった。

 

だからこそ私は服装から変えることを考え、黒色のベレー帽を被り、灰色のトレンチコートを羽織ると、黒のジャングルブーツを履くことで強くなろうとした。

それは、コロンバインの高校で銃乱射事件を起こした二人が黒いトレンチコートを強さのシンボルとして着込んだのと同じ心理であったと私は、私の心境を推測していた。

 

故に私は望んだ。力をもっと望んだ。私の瞳に映る嘗ての自分達を踏み躙ったあの数多くのビルを自らの手で壊せたらどれだけ爽快だろうかと。廃墟と瓦礫の山となって恵まれた大人や子供がその惨状に泣き叫んでいる姿を見たら、どれだけソフィア達の心が穏やかになるだろうかと。この国の人間が私達と同じ苦痛や絶望を味わわせることができたら、どれほど私の中に在る恨みつらみが消えるだろうかと何度も……何度も何度も何度も何度も何度も考えたことがある。

 

世の中は、刀使を母に持つかどうかといった生まれやこの国に産まれたかどうかといった境遇だけじゃないと、一撃を与えたかった。

 

全ては、生まれや境遇だけで決まるものではないという一撃を与えたかった。

 

……そんなときに私は静に出逢った。そのときの静は、私にこう尋ねたのだ。

 

「……ねえ、貴女って私と同じ匂いがするね?」

 

それは「どんな匂いだ。」と私は続けて尋ねた。

 

「私と同じで、周りの人が理解してくれないことがあるんじゃない?」

 

それを言われた私はこう答えるしかなかった。

 

「……確かに私はそんな子供みたいな感覚に囚われたことがあります。あの生きるのに精一杯の世界から、こんなに平和な世界に生きていることで不思議に思うことがある。本当にこの国は私が生きている世界と同じ世界に居るのかと。」

 

私は静にこう言うと、更に続けて述べるのであった。

 

「だって、おかしいでしょう?私が生きていた国は、明日を生きるために武装をして自分の居場所を、自分自身をどうにか確立させて生きていた。だが、この国は平和主義と言って自らを守るのに必要な武器を放棄していても何もかもが簡単に得られる。何の達成感も無い。そんな違和感を私はずっと感じてきた。」

 

そうだ。この国は私からすれば異常に見えるのだ。

 

「自らをあらゆる武器で守ろうとしないのは、事実上自己を放棄しているのと同じだというのに、そのような扱いを受けているというのに誰も何も疑問に思わない。話し合いや愛といったもので人は救われるというのなら、刀で武装している私達は救われない存在だということになり、そう言われていることに何の疑問も抱かない世の中に思うことは、精々が誰もが誰も、自己を放棄しているとしか思えない。そんなものはただの家畜だ。羊だ。動いているだけの屍だ。……というぐらいですね。」

 

この平和主義の国に住む者は、刀使という刀を振るう者が居り、軍事兵器を扱う自衛隊や警察が存在しており、在日米軍という他国の軍を頼りにしていることに何の疑問を抱かないのだろうか?……どうやって自分を確立させ、生きていると思えるのだろうか?

 

「そうなんだ。……でも、愛はあると思うよ?」

「どうしてお前はそう言える?」

「だって、私はこんなに愛されていたんだもん。」

 

静はそう言うと、素肌を見せた。

その肌は痣と傷だらけで、とても見れるような肌ではなかった。……私は、静がそれを愛と捉えたことに疑問に思い、何故そう思ったのかを尋ねるのであった。

 

「……おかしなことを言うね?神様も血を見るのが好きだから、天国でも神様同士でも戦争をしているんじゃないの?だから神様は刀使と荒魂を創ったんでしょ?」

 

そうか、神様も戦争が好きなのか、……そうなら、戦争というのは御刀を扱う刀使と同じで神性な物なのだろう。

 

静の考えを聞いた私は、力よりも戦争を望むようになった。

 

戦争!戦争!!……私達刀使が存在する理由は神性なる戦争のためだ。ソフィアといった狼が活きれる世界。獰猛な捕食者達のためだ。

奪い奪われ、例えソフィアが強者に奪われたとしても、ソフィアはその強者共の糧となり、その強者は強くなる。そうして、その者は私と同じように暴力を糧とする者になるのは目に見えている。……ならば、私が呪う鉄の塔も壊すことだろう。

 

「……分かった静。私と共に行かないか?私もお前と似た物を求めている。」

「そう言ってくれると思いました。」

 

そう考えただけで私は、力だけでなく戦争というものはこの世の理不尽を浄化させる炎のように思えてきたのだ。

 

こうして私は、静という同志を得た。仲間ではなく、同志だ。私の仲間はあの地下構内と共に死んだ。だから友人や仲間はもう作らない。

 

わたしは、このせかいにじょうかのほのおをともすのだから。

 

だからこそ私は、

 

「……大荒魂になりたいな。」

 

と子供のように呟くのであった。生まれや境遇で全てが決まるこの世界を壊したかった。何故私が"大荒魂"を知っているのかというと、養父である織田防衛事務次官から聞いた何千人もの犠牲者を出した大災厄、それを引き起こした大荒魂になれたらどれほど心地良いだろうかと思い始めたのであった。

 

……だが、御刀に選ばれるかどうかのときは力を貸してくれた神は、流石に大荒魂になりたいと思う私の思いに力を貸してはくれなかった。

 

何故なら、その時の私は中学生ぐらいの齢で大荒魂になりたいという願いを叶えるにはノロが足りなかったうえ、養父が私を気遣って冥加刀使の選抜から外させたのだ。……そのことに私は憤慨したものだが、そのときの私は防衛事務次官という公職に就く養父の力が必要であったため、癇癪を起こして排除するべきではないと判断すると、抑えたのであった。

 

その後も私は、全てを浄化の炎に包み、私の全てを奪って糧とする強者を育ててくれる戦争を求めた。求め続けた。

 

目的のない生活は味気なく、目的のある生活はわずらいだ。とヘルマン・ヘッセが述べていたが、私は全く以ってその通りだと思った。目的が私にこれだけの力と戦争という生きる理由を与えてくれたのだから……。

 

 

……そんなことを考えながら、毎年5月に鎌倉の折神家にて開催される御前試合に出場する代表選抜選の選手に選ばれることになったのだが、私はソフィアが魅せてくれた獣のように叫び、自身のか弱き命を絞り出すかのように、使い果たすかのように雄々しく戦う姿こそが人の在るべき姿だと思っている。

 

故に私は、鎌倉の折神家にて催される御前試合とかいう棒振り大会、もしくはチャンバラごっこと形容するのが的確な物に付き合う気にはなれなかったのだ。

戦いとは、ワインと例えられるほどの美しい血を流し、それに歓喜を感じ、怨嗟を撒き散らすことで真価が問われるのだ。それこそが最も美しい戦いであり、戦いが生んだ血と鉄と怨嗟と歓喜の声が、この世を憎悪しているであろうソフィア達に対する鎮魂歌となるのだ。

 

 

 

 

そうして17歳になり、私をソフィアにしてくれた刀使としての力が徐々に弱まり、大荒魂になって街を破壊することもできない味気無い己の人生に虚しさを感じながら、親衛隊が南伊豆にて山狩りを行うために人手が必要とのことで援軍として来た際に、あの子に出逢った。

 

後に名前を知ることになる鎌府の制服姿で戦う衛藤 優

 

身体に銃弾を受けながら付き進むその姿、嗤いながら人を殺せるあの精神、その"孤高"とも言えるその強さに私は心惹かれていった。となった。彼が大荒魂になったらと思うと歓喜した。

その理由は、私が思い描く戦争と暴力の体現者が其処に居たからだ。彼こそが最も大荒魂になるのが相応しいと思った。捕えたいとも思ったが、捕えてしまえば紫の手に渡ることに思い至ると捕らえることを辞め、少し斬られたからという理由で彼等を逃すことにするのであった。

 

……その後、その時は名前も知らない衛藤 優について調べていたときに燕 結芽と出会った。

 

私にとって、その者は鼻持ちならなかった。

裕福な家庭の下で何不自由なく育ったうえに、それに気付くことなく自分が不幸だと思い込んでいるだけの餓鬼。端的に言えば私が嫌う生まれと境遇に恵まれた者。それが彼女に対する第一印象だった。

 

「いや、結芽さんも中々手強かった。それでなのか、結芽さんとの手合わせが楽しく、つい夢中で時間が忘れるほど戦いました。」

 

それで私は、こう言えばこの目立ちたがり屋の子供は喜ぶだろうと考えた。そして血を吐いてでも戦い続け、もだえ苦しみながら戦うように仕向けた。

そうすれば利用できる駒が一つ増え、親衛隊と折神家を引っ掻き回すのに使えるうえ、生まれと境遇に恵まれた者がもだえ苦しむ様を眺められると思ったのだ。

 

そして、そんなことが過ぎた後、衛藤 優のことをスパイを使って調べてみると、20年前の大荒魂を身に宿していることが分かった。

 

………本当に素晴らしかった。

 

私がなれなかった大荒魂に彼はなってくれるだろうという確信を得たのだ。この子が私の代わりに私の障害を全て排除してくれるだろうと確信をしたのだ。この子なら私の全てを奪い、私の中にあるソフィアの力を糧にして、私ができなかった戦争と暴力の体現者となるだろうという確信を持ったのだ。

 

――――だからこそ、衛藤 優くんが私の全てを奪って、私を糧として鉄の塔を壊して行ってくれたらどれだけ快感なことだろうと思ったのだ。

 

だが、彼はもっと大荒魂として相応しい存在。暴力と争いの体現者としての偶像として相応しい姿とするべく結芽を苦しめて弱らせて優くんに殺させ、御刀も彼女の体内にある荒魂も何もかもを奪って力を高めて欲しかった。

 

そして、殺しの技を更に洗練とするべく、再び衛藤 優くんの姿を見たとき、彼が結芽の御刀を持っていたことに内心歓喜していた。

 

やはり私の想定通りに暴力で全てを奪っていったのだ。そうして力を高めてくれた。やはり彼は私の想像通りの私が求めていたイデアか救世主だったのだ。

 

そのため私は、優くんの殺し方が更に鋭くなるように国会議事堂前での暴動も扇動し、夜見を改造して強化し送ったのも彼女の中にある荒魂を全て奪って欲しかったからだ。

 

そうすることで私は………自らの手でこの世に混乱をもたらす大荒魂を創作しようと思ったのだ。そして大荒魂となった優くんに私の全てを奪ってもらい、私を糧にして、鉄の塔が並ぶ街を20年前に起きた大災厄のように破壊してもらいたかった!!!!

 

「……昨今の刀剣類管理局、並びに政府の行動に対して我々は行動を起こす時が来た!!!」

 

だからこそ、私は綾小路の刀使達と変革派をも焚きつけた。戦争を起こすために。

 

「この数カ月、朱音局長代理の刀剣類管理局は警察から独立し、省庁と一つとなったがどうなった?関東一円にノロを飛び散らせた『鎌倉特別危険廃棄物漏出問題』を引き起こし、関東中に荒魂事件が頻発。事態を収束させるため我々を酷使した。だがそれは良い。国民を守るのが我々の使命であるからだ!!」

 

本心にも無い、『国民を守るのが我々の使命』という言葉を使って変革派の面々を焚きつけたのだ。

彼等は紫を信奉しているが、荒魂事件に対して後手に回ってばかりの朱音局長代理に対して憎悪を滾らせていたから扇動は容易かった。

 

「しかし、今の刀剣類管理局は政府と結託し、20年前の大荒魂の一部であるタキリヒメを匿っていたのだ!……これは我等刀使と我々と共に戦ってくれた同志だけでなく、今も大災厄の災禍に悩む者や荒魂事件で被害を被っている者に対する裏切り行為である!!」

 

私が、相模湾岸大災厄と今も続く荒魂事件の被害を受けている者に対する裏切り行為であると述べると、変革派に属する刀使達やSTT隊員といった人達は頷いている者や涙を流しながら聞いていた者も居た。

 

無理も無い。刀使の中には大災厄の後遺症によって両親と死別したか、今も病床に伏している者が居るのだ。それだけでなく、戦友か先輩が荒魂によって重傷を負い、刀使を続けられなくなった者も居り、そういった者達は荒魂に対する憎悪が強いのだ。

 

「今の朱音局長代理の言う"かつて人とノロが寄り添っていた古来のやり方"はどうなった?荒魂事件を増やしただけではないか!?故に、我々は一刻も早く嘗ての折神 紫体制の様ように戻し、荒魂事件を減らすべきではないのか?神性なる御刀を持ち、荒魂を討伐するという使命を理解している真の刀使、いや、誠の勇士である我々こそが、その誤った考えを正さなければならないのではないか!!?」

 

そうして、私は荒魂に対する憎悪が強いこの者達にとどめとばかりに荒魂を討伐するという"正義"を与えた。

すると、仕込んでいたサクラが「そうだ。」「私達が変えるべきだ。」と口々に口走って行くのであった。そうすることで、周りの人間達はこれが正しいことであると、正義の行いであると錯覚していくのである。

 

私はそんな正義の行いに酔いしれ始めている者達を見て、嗤いをどうにか堪えながら演説を続けていた。

 

「故に私は立ち上がる!!……全ての戦友のために、荒魂事件で散って行った者達のために、全ての同胞のために立ち上がる!!先ずは、手薄となっている市ヶ谷基地へと向かい、タキリヒメを討ち取るぞっ!!!!」

 

私のタキリヒメを討ち取るという言葉が終わった瞬間に、皆が喚声の声を上げるのであった。

こうして私は、変革派の者達と荒魂に対して憎悪を抱いている刀使達と共に、タキリヒメをイチキシマヒメに吸収させるべく市ヶ谷基地へと向かうのであった。

 

私の戦争と暴力の体現者を創造するという野望の礎となってくれた燕 結芽。

鎌府の研究成果を知るためにノロのアンプルを使って聞き出した高津 雪那。

それと、生け贄の望月 和樹。

 

そして、新たな荒魂の実験材料となってくれた皐月 夜見。

 

彼女等の"協力"の下、新型のノロのアンプルが完成し、それを投与することで冥加刀使となったソフィアである私と共に。

 

 

……タキリヒメを吸収したイチキシマヒメと冥加刀使のノロを全て私の理想である優くんに献上すべく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『たいちょー!タキリヒメを見つけましたーーー!!』

 

スレイドの処置のお陰で、静はイチキシマヒメと融合することができたため、タキリヒメの居場所を感知することが可能となったため、タキリヒメを感知した静はソフィアに通信機越しにタキリヒメの居場所を報告するのであった。

 

「ついに、私が思い描く序章が始まるのだな。」

 

その静の報告を聞いたソフィアは、もう後戻りすることはできないのだと再認識する。

 

「……だが、もう戻れないな。」

 

もう戻れない。弱かった少女の頃にも、刀使としてももう戻れないだろうと、ソフィアはそう再認識するしかなかった。

    

    

    




    
   
ソフィア嬢のモデル。

孤独となった可奈美。
復讐心に囚われた姫和。
何をすべきか逸る舞衣。
優しさを失った沙耶香。
理解者が居なかった薫。
差別を受けるエレン。

あとは既存(原作)の世界に対して革命(二次創作)を起こそうとしたり、新たな大荒魂を創ったりといった二次創作キャラが二次創作行為をするっていうのをやりたかったのです……。



次回、タキリヒメ襲撃時点に戻ります。
   
    

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