11話を投稿させて頂きます。
大変、遅れて申し訳ございませんでした。気付けば、一ヶ月近く経ってしまったことは本当に申し訳ないです!!理由はその、Youtuberのシロ組長に嵌っていました。ハイ、本当に申し訳ないです。
可奈美達は石廊崎まで6キロという所まで進んでおり、其処で可奈美と優は話していた。
「ねえ、優ちゃん聞いてくれる?」
「んっ、何?」
可奈美は優と同じ目線になるように屈んで、抱擁していた。
「……あんまり、人を殺しちゃうのはダメだよ。お姉ちゃん悲しむから。約束、約束だよ。」
「んっ、分かった。」
可奈美にそう言われ、優は頷いていた。
初めからこうすれば良かったのだ。…そうすれば、優は人殺しをしなくて済む。急いで強い刀使になる必要も無い、これで少しは剣術に打ち込めるかも知れない、可奈美はそう思い、少しだけ何かに救われたような気がした。
「……。」
姫和はこの光景が不気味に見えた。普通の人が見れば、美しい姉弟愛に見えるかも知れない。しかし、何処か壊れていて、儚げで、狂っているように感じた。そして、
「ねーっ。」
「わっ、」
「あっ、ねねちゃんだぁ。」
可奈美はいきなりねねが飛び込んできたことに驚くが、優は喜色満面であった。
「こいつが、居るということは……。」
そう言った姫和は辺りを見回すと、薫が居た。
「薫ちゃん、無事だったんだね!」
「……合流地点まで送る、行くぞ。」
薫はそれだけ言うと、石廊崎方面へと歩く。しかし、ねねは反対方向へ行き、優を引っ張って何処かへ連れて行きたいようだった。
「ねね!」
薫がそう言うと、ねねはしょんぼりとしていた。
「お前、もう一人はどうした?」
「エレンちゃんはどこ?」
「……。」
薫はエレンが仮野営地に行ったことを可奈美達に伝える。それを聞いた可奈美はエレンの救出に行くことを強く主張したことにより、薫もそれに折れる形で可奈美達と一緒に仮野営地に向かうことにした。
南伊豆、特別祭祀機動隊仮野営地にて、真希は増援として来たソフィア達と話していた。
「綾小路からの増援は刀使二名のみか……。」
「何か不満でも?」
「いや、……もう少し多くの人数が来ると思っていたが、現在の綾小路は人手不足か?」
少し機嫌の悪い真希は、奇抜なコスプレしている刀使と能力は平凡がいいところの刀使が来た事に不満を隠さずに尋ねる。
「ご心配無く、突然緊急を要すると言われたので、たまたま近くに居た私達だけが増援として向かっただけのことです。」
その答えに真希は色々と聞きたいことはあるが、特別刀剣類管理局の仮本部としても機能する綾小路武芸学舎との関係が悪化するのは避けたいため、詰問するのは止める事にする。
「……まあいい、君の武勲はかねがね聞いている。活躍を期待している。」
「光栄です。」
ソフィアはそれだけ言うと、静を付き従えて、さっさと親衛隊が居るテントから離れて行った。
「……隊長、歓迎されてませんねぇ~、睨まれてましたよ。」
満面の笑みをした静は茶化したことをソフィアに言うが、そう言われた本人は動じることなく微笑みながら返答する。
「別に構わない、多分お前がスタンフォード大学の実験みたいにやり過ぎたせいだろう。」
「え~、違いますよぉ、あれはただの“しつけ”ですよ。“しつけ”、大人も子供もそれに従えば素直でとっても良い子になるんですからぁ。」
静は自分が行っている拷問を“しつけ”と称していた。
「そんでもって、この“しつけ”は立派な刀使だったお母さんとお父さんが最初に教えてくれた物ですよ?…まあ、3回までは失敗しか無かったですけどねぇ……。」
「やっぱりお前じゃないのか?」
「え~~、隊長も斬りまくっているのに?それに、おとうさんじゃないのに、おとうさんって呼んでるじゃないですか?」
「あまり外でそう言うことは言わないでくれ。あと、“しつけ”のこともあまり表立って言うな。」
「何でです?」
「色々あるのさ、……色々な。」
そのとき、静は一瞬ソフィアが何かに怒っているように感じた。
「…分かりました。けど、私のやっている事を悪く言わないで下さいね。私、悪い事してませんから。」
「ああ、分かった。お互い気を付けよう。」
このとき、少女達はまるで長年付き添っていた友人と楽しく談笑しているようだった。
その後、寿々花と真希は仮野営地に来たエレンと会っていた。
「長船女学園高等部1年、古波蔵 エレン。」
「……御前試合に出場していたな。」
「あの~そろそろ手降ろしてもいいデスか?あなた達と戦う気なんてこれっぽっちもありませんから。」
そして、折神家の不正の証拠を手に入れるために潜入することにしたエレンは、堂々と正面から入って行き、真希と寿々花に詰問を受けていた。
「……そうですか、まず一つ聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」
「ハイ、良いデスヨ。」
「こんな所で何をしていた?」
真希は鋭い目付きでエレンを睨みながら、このようなことを聞いてきた。
「いや~試合の結果がアレだったじゃないデスカ~。このまま手ぶらで帰ったら学長に大目玉くらっちゃうカナーと思いまして、紫様襲撃犯をとっ捕まえて手柄にしようと思ったんデスヨ。」
「へぇ、…で南伊豆に来たと?」
寿々花は違って、穏やかな笑みを浮かべながらエレンに聞いてきた。
「バケーションしていたら、何か山で爆発があったじゃないデスカ?それで紫様襲撃犯が暴れているんじゃないかと思いまシテ、そうして探索していたら何か野営地が有ったのでもしかしたら襲撃犯を捕まえるために設営した仮野営地なのかなと思いまシテ、何かお手伝いをして手柄上げれば学長も許してくれるカナー?とか思ったんデスヨ。」
「で、今は一人なんですの?」
「ハイ、今は一人デス。」
「……まあ、良いでしょう。一応、御刀と携帯を預からせて頂きますわね。」
「え~っと、何でデス?」
エレンは御刀と携帯を没収する理由を寿々花に聞いていた。真っ当な理由も無く没収される様なことが有れば、口八丁で上手く言いくるめようと思ったが、
「貴女のお友達の益子 薫さんが、昨夜うちの皐月 夜見に御刀を向けたからですわ。」
あまりの衝撃の発言にエレンは思わず「えっ?」っと言ってしまった。
「まあ、貴女がどうやって此処まで来たか、お友達の益子 薫さんについて色々とお訊ねしたいことが有るので、御刀と携帯を預からせて貰ったあと、テントの中でゆっくりと話し合いましょうか?」
エレンは表情も変えず、頭の中でどうするべきか必死に考えていた。今、此処で逃げ出せば親衛隊に追われ確実に捕まるだろう。しかし、此処で御刀を失い、長時間拘束されれば、戦闘はおろか逃走もままならないのは避けたいところでもある。選択肢は二つあり一つしか選べない。そして、エレンは。
「分かりましたー。協力シマス。」
笑顔で後者を選択した。
「ご協力感謝致しますわ。」
そして、寿々花も笑顔で応え、エレンの御刀と携帯を没収したあと、近くに居たSTTの隊員に真希と話があるため、遅れるからエレンをテントの中へ案内するように伝え、寿々花は真希を連れてエレンから離れて行った。
「……僕に尋問するな?どういうつもりだ。」
「そのままの意味ですわ、冷静ですらない貴女とあの娘を引き合わせたら血が流れますもの。」
寿々花は、頭に血が上っている真希がエレンを尋問すれば、流血沙汰になることは避けられないうえ、完落ちさせるのは困難になると思い、真希は尋問から外れるべきと言っていた。
「……紫様から頂いた指揮権を蔑ろにする積もりか?」
「真希さんともあろうお方が地位を盾にするとは。」
真希と寿々花の間で行われる御刀を使わない攻防、一瞬訪れる静寂が時を進めて行き。そして、
「……はぁ、前回の戦いで少し頭に血を上せていたようだ。……すまないが寿々花、あの金髪女の面倒は任せる。」
軍配は寿々花に上がり、真希はエレンの尋問を寿々花の担当とすることにし、自身は森の方へと向かって行った。頭を冷やしに行ったのだろう、長い付き合いの寿々花は何となくだがそれを察し、何も言わず見送っていった。
「少々、意地悪が過ぎたかしら。…冷静さを欠いているのはわたくしも同じですのに。でもまぁ、貴女が舞草の仲間だとしたらそれなりの代償を支払ってもらわねばなりませんね、古波蔵さん。貴女方は最大の過ちを犯したのですから。」
寿々花もまた、真希と同じく舞草は“何の罪も無い子供を改造して、戦闘員に仕立てている”と思い込んでいたからこそ、このようなことを言っていた。……赤い目をさせながら。
そうして、寿々花は既にコンビニ弁当を食べ終わっていたエレンの居るテントに入り、早速尋問を開始していた。
「ごちそうさまデシタ~。」
「お口に合いまして?」
「コンビニのお弁当はお漬物も一緒にチンするのが玉に瑕デスネ~。」
「そう?私、あれはあれで嫌いではありませんけど?」
「変わった人デスネ~。」
まずは、寿々花は警戒されないよう、高圧的な態度で接さず、和やかな雰囲気で進めようとしていた。
「良く言われますわ。…まずは、長船女学園高等部1年、古波蔵 エレンで間違いありませんわね?」
「YES!」
「よろしい発音で、ではもう一つ、この事情聴取の内容は貴女がどうやって此処まで来たか、お友達の益子 薫さんについて色々とお訊ねしたいことが有る。…ご理解出来ていますわね?」
「YES!」
「あと、この事情聴取に不服は有りますか?」
「問題ありマセン。」
寿々花はまず、相手の名前と経歴に間違いは無いか、この尋問がどのようなものであるか、尋問の意図を理解したか、意義や不服の申し立てはないか、などの説明をしていた。目的は緊張状態をほぐし、信頼関係を構築するためである。
「…山で爆発があったと仰っていたでしょう?実はアレ未登録の所属不明のS装備のコンテナですの、音は一回だけでしたか?」
「う~~ん、だと思いマスけど……?」
エレンは正確なことは判らないと答え、はぐらかすことにした。理由は舞草が何人居るか解らせないためであるが。
「……なるほど、では益子 薫さんとはどういう関係で?皐月 夜見に御刀を向けた理由は何かご存知ですか?」
「薫とはベストパートナーですケド、何かの間違いじゃないデスカ?薫は理由も無くそんなことしません。」
「へえ、何か思い当たることが有るんですの?」
「薫は特撮ヒーローものが好きで、刀使になりマシタ。」
「へえ、でも今はその友人を放ったらかして、何をしているんですの?」
「えーっと、面倒くさがりなところもあるんで先に帰っちゃったと思っていたんですケド。違ったみたいデスネ。」
「うちの夜見に御刀を向けているとは思いも寄らなかったでしょう?」
「ソウデスネー。」
しかし、エレンはヤレヤレとした表情でこう言っていたが、内心はエレンも意外だったのだ、何故そのようなことになったのか見当もつかなかった。自分が疑われていて、カマをかけているのでは無いのかとも思ったが。
「それで、貴女一人で山の中に向かおうとしましたの?」
「いやー、まあほらぁ、手柄上げとかないと、うちの学長って結構怖いんで。」、
「フフフ……失礼、なるほど、それはお気の毒に。」
ぼそぼそと寿々花に理由を話すエレンに、寿々花は少し“怖い学長”のワードで何故か高津学長のことを連想してしまった自分に笑ってしまった。
「あと、古波蔵ってどこかで聞いた気がしていましたの、で、先程思い出しましたわ。DAAPAから出向しているS装備開発チームの主任技術者がそんな名前だったと。確か…ジャクリン・アン古波蔵でしたかしら?」
「ジャクリーンならママデス!ついでに言っておくとママと一緒に働いている古波蔵キミタケがパパデスよ!」
「そう、確かそのジャクリーンさんのお父様が天才科学者リチャード・フリードマンでしたかしら?確か、ノロの軍事利用の第一人者にしてS装備開発の先駆けとなった人だった筈でしたわよね?」
「YES!けど、グランパだけデハ……。」
エレンは流石にフリードマン一人だけでは、無登録の機体を射出することはできないと言おうとしたが、
「ああ、存じ上げています。いくら開発責任者とはいえ無登録の機体を射出することはできませんわ。S装備の開発・生産は全て折神家の管理の下に行われてますもの。ただ、5年前自らが創業した技術開発企業を売却後忽然と姿を消されたらしいですわね?」
「YES!]
「そのフリードマン博士が日本に入国した形跡があるのをご存じかしら?そして舞草と接触していたら……。」
「藻草?お灸デスか?」
エレンは寿々花のことを話が分かる人だと思い、つい洒落を言ってしまう。そして寿々花は、エレンの様子を見て自分に気を許していると判断し、一気に攻勢に出た。
「そして、舞草に拉致されて、ノロの軍事利用、延いては人体実験のために使われていたとしていたら、貴女はどう思います?」
エレンはつい驚愕の表情をしてしまった。何故、そんな話になっているのか?全く理解出来なかった。
「ああ、何故こんな話をしているかと言いますと、昨夜舞草の構成員と思われる人とばったり出会って、真希さんと共に交戦したんですが、…どうもノロで相当強化されているらしいんですの。」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってクダサイ。グランパがそんなこと……。」
「ええ、心中は察しますが、あくまで可能性の話です。どちらにせよ、フリードマン博士は危険な状況であることは間違い無いと言えますので薫さんの確保にご協力をと……。」
「勝手な事ばかり言わないでクダサイ!グランパは……そんなことしてイマセン。」
エレンはついカッっとなり、座っていた席から立ち上がるが、乗せられてはマズイと判断し、声を抑えた。
「……ええ、分かっています。お辛いでしょうが、フリードマン博士と薫さんの確保に協力を……。此処に暫く居てもよろしいのですし、何か思い出したらご連絡を。」
寿々花は微笑みながらそう言って退室したが、エレンは静かに席に着くとこう思っていた。これでは、此処に御刀も携帯も無い状態で薫とフリードマンが見つかるまで、何時までも留まらなければならない。
(早く見つけて帰らないとマズイですネ。)
エレンは今、籠の中の鳥のような気分であった……。
寿々花はエレンのことと目撃情報を報告しに真希の所へ向かったが、
「……限度というものを知らないんですの?」
「何の用だ?」
辺り一面、穴が空いていたり、樹木が倒れていたりしていた。そんな場面に出くわせばそんなことを言いたくなると寿々花は思ったが、
「未確認ですが、南伊豆町の山中で目撃した情報が入りましたわ。制服のまま山の中を走り回る女子中学生と子供はそうはいないと思いますけど…。」
先程入った情報を真希に伝え、指示を仰いでいた。
「そうか。」
「あれ、興味ないんですの?」
「偽情報かも知れん、正確な情報かどうか調べてくれ。あと、金髪女はどうだった?」
「ほぼクロだと思っていますわ、単独で山岳装備も無しに山に登ろうとしていたり、舞草のことを藻草と言うぐらい知らないのに、何か知っているようなことを仰ってましたし。」
寿々花はエレンのことをクロだと思っていた。前述の通り山岳装備も無いのはそうだが、フリードマンの安否を気にする発言をしなかったことが妙だと思ったのだ。
「それで、偽情報だと思う根拠は?」
「金髪女が捕まってすぐにそんな情報が入る、出来すぎだ。…もし、匿名のタレコミが警察じゃなく、此方に連絡して来たのなら間違い無いだろう。」
「ええ、刀剣類管理局に匿名のタレコミだそうですわ。」
「……だとしたら、ここは動かないほうが良いな。本部に連絡して金髪女を送って貰おう。あの女狐、証拠が無いからどうしようもない。」
「……どうせでしたら、誘いに乗るのが良いのでは?」
「?…どういうことだ?」
「少し、お耳を……。」
寿々花は真希に近付き、耳打ちしていた……。
「……二班、三班とともに私と寿々花、増援の刀使を連れて目撃情報のあった場所へ向かうから、古波蔵 エレンのことを頼む。」
「了解です。」
エレンの居るテント内に移動していた真希は一人のSTTの隊員にそう告げると、退室していった。
「そういう訳だ、この嬢ちゃんは俺一人で護衛すっからお前さん等は休憩して良いぞ。」
「えっ、良いのか一人だけで、二人居た方が良くないか?」
「良いよ、何か逃亡中の刀使はやったらと腕が立つらしくてな、人員が要るらしいから結構人が割かれるみたいだぜ、後々大変だから今の内に休んどけってさ。」
「おお、そうなのか、じゃ悪いけど頼むわ。」
エレンはチャンスだと思った。機動隊員の数が少なく、刀使の数も夜見一人であれば潜入活動しやすいと思ったからだ。
(……なら、行動開始と行きましょうか。)
まずは、この目の前に居る見張りの機動隊員を一人黙らせることから始めることにしたため、席を立つ。
「あっ、あの~~デスネ。」
「んっ、何だ?」
「そ、そのぉお花を摘みたいなぁ~ナンテ。」
頬を赤らめたエレンを見た機動隊員は、
「あっ、あぁ、来たばっかりだから知らんよな、場所まで案内するから付いて来てくれ。」
バツの悪そうな顔をした機動隊員は後に続くよう促すが、エレンに背を向けた瞬間、その機動隊員は倒れてしまった。
「ふっふっふーん。ご愁傷様、刀使が得意なのは剣だけとは限りマセンヨ。」
その後は、警備の数が少なかったので、難なく越前康継と携帯を取り戻すと、携帯で夜見を監視していた。
「なるほど、薫が御刀を抜いた理由はこれデスカ。」
夜見がノロを注入しているところを見て、薫が御刀を向けた理由はこういうことだったのかと理解したエレンはこの映像とノロのアンプルを手に入れればあとは撤収するだけと思い、夜見が居たテント内に侵入し、ノロのアンプルを手に入れようとするが。
「!」
何かの気配を感じたエレンは後ろを振り向きながら一閃。昨夜襲ってきた蛾のような荒魂を斬っていた。
「人が悪いデスネ~。気付いていたならそういってクダサイ。」
「紫様に仇なす輩にそのような配慮の必要を認めません。」
「じゃあこっちも遠慮はいりませんね?手先は器用なんデスヨ~。」
そう言って、エレンは夜見と対峙し、いつの間に取ったのかノロのアンプルを一つ見せ、器用にも軽く手首を捻らせるとノロのアンプルを消したように見せていた。
「……では、こちらも遠慮はいりませんね、真希さん?」
今、何て言った?ここに居ないはずの真希の名前を呼んだことにエレンは驚愕する。
「ああ、遠慮はいらんぞ、狐が尻尾を出してくれたからな。」
「彼女の場合は狸の方がお似合いと思いますけど?」
御刀を構えたまま後ろを振り向くと、そこには居ないはずの既に御刀を抜いている寿々花と真希が居た。
「……なっ、ナンデ?」
「何でいるのかって言う顔だな?当てが外れたな、御刀さえ持っていれば刀使一人どうということはないと思っていたか。」
「何時から疑っていたンデ?」
「最初からだよ、最初から、自分の女の勘でこいつは怪しいと思っただけだ。」
実際は、山岳装備を持たずに単独で行こうとしたことに疑問を抱いただけだが。
「あなたが言うと、説得力有りませんネェ~。」
そうは知らないエレンは女っ気の無い真希に挑発目的で言うが、
「そうだろ?そんなこと言う奴からチャチな罠に引っ掛かる。」
真希に挑発し返された。
「……ハッ!」
エレンはこの場から脱するため、夜見に斬りかかるが防がれてしまい、代わりに真希の突きと袈裟斬りを受け、そして何とか踏ん張り写シを再度張るが、夜見の足払いの斬撃でバランス崩され、最後に寿々花の突き技を受け、ダウンしてしまう。
「グッ……。」
「ご愁傷様、機動隊員は全員カカシだ。殴られたら気絶するように伝えている。で、お前がホイホイ此処に来た所を捕えるって寸法だったんだが、…聞こえてるか?」
エレンはまどろみの中で、真希のそのような言葉を聞きながら、気を失っていった。
「で、撮れたか?」
「ええ、バッチリ。」
真希の問いに寿々花は隠しカメラを取り出し見せた。エレンが親衛隊に斬りかかったという証拠を得るために。
「それが無いと色々と面倒になるからな、大事にしとけよ?」
「で、この狸が持っているカメラと御刀はどうします?」
「カメラは破壊しておけ、御刀は…事情聴取に使えるからこっちで管理して置こう。」
こうして、エレンは親衛隊の手に落ちてしまった。
「やべぇな、やべぇ。」
遠くから仮野営地を望遠鏡で監視していた薫はそうぼやく。
「?……何が?」
可奈美は薫のぼやきに疑問の声を上げる。
「エレンが捕まったかも知んねぇ。」
「どうして?」
「…車両が俺のタレコんだ場所に行かずに直ぐ帰りやがった。」
「……ということは。」
「ああ、確実にエレンは今危険な場所にいる。」
薫の計画では“制服のまま山の中を走り回る女子中学生と子供を見た”という匿名のタレコミで仮野営地に居る部隊を分散したあと、エレンを救出しようとしたが、車両部隊が目撃情報のところへ行かず、直ぐ帰って来たのである。
「どっ、どうするの?このままじゃ!」
「慌てるな、……あの数じゃ無理だ。…少し、頼りになる援軍を呼ぶから待ってくれ。」
刀使が五名、STTの隊員が大勢居るところに、いくら腕が立つとは言え刀使が三名で特攻すれば、袋叩きにされるのは目に見えていた。
「おい、そいつらは誰だ?」
姫和は誰が来るのか問い質していた。
「お前等が良く知っている奴等だよ。」
薫はそう言って、無線機で連絡を取っていた。
次回、“暴力”がメインテーマ。