125話を投稿させて頂きます。
9000文字超えたので時間があるときに。
あっ、結月さんは最後まで生存します。
最近の世の中を見ていると、しがないルサンチマンでも、いや、誰でも"荒魂"になれる社会になったんだなぁ……。
『……どうして人はこんなにも簡単に消えて逝くのだろうか。類稀れなる天稟の才を持つ者が現れても、なぜ世界はこんなにも理不尽なのだと。』
『しかし尊いと信じたその願いの正体は、醜くも歪んだだけのただのエゴの極みでしかなかった。……私は、自分のエゴをあの子らに押し付けた。君達にも押し付けた。』
『……ああ、そうだな。結芽といった私の親愛なる人達が多く死んだ。……だが、だからこそ私が言うのだ。邪道に手を染めようと叶えたい願いがあったが、所詮は邪道であり、何も叶うことが出来なかった私だからこそ!』
――――和樹は信じたくなかった。
……何故なら、和樹は結月が述べたエゴの極みであるノロのアンプルを使って、半ば荒魂と化した醜い姿でも刀使を救おうと頑張ったのだ。
なのに結月は、自分に向けて銃を発砲したり、人殺しも難なくしようとするうえ、結月を裏切り、管理局本部の犬に成り下がった結芽を未だに思い続けているのだ。……目の前には結月のことを信じている綾小路の刀使達が居るというのに、刀使を救おうと頑張った僕が居るというのに、そんな彼女達よりも僕よりも、結芽なんかを大切にしている様に見えた和樹は、結月に対して憎悪の感情を向け始めるのであった。
そうして、結芽のことを思い出した和樹は、刀使という才能を知り、結月が天然理心流を教えてくれる道場から逃げた後に結芽と再び出会ったときのことを思い出していた。
『ちょっと!そこどいて!!』
ドン、と突き飛ばすかのようにぶつかっておいて、年上である自分に一言も謝りもせずに走り去っていく結芽の後ろ姿を見ながら、強く注意することもできない自分を恥じた。謝りもしない結芽に憎悪した。
――――持たざる者と、持たざる者の埋めがたい格差を感じた。
そして結月が言っていた"類稀れなる天稟の才を持つ者"とは、穂積が言っていた"貴女の愛弟子であった結芽さん"という声と更には"結芽といった私の親愛なる人達が多く死んだ"と述べていたことから、結月は目の前に居る綾小路の生徒よりも結芽の方が大切であると思ってしまった。それらの事実から、結月は自分のことなんか何一つ見てくれなかったし、何も思っていなかったということに気付いた。それどころか、自分が天然理心流を学んだ理由が結月さんに近付きたかったということにすら気付いていないかもしれない。
――――そうして、和樹はやっと気付いた。……自分は既に頼れる人も居ない孤独、独りぼっちだったことに。誰も、自分を愛してくれる人は居ないということに。
和樹は、刀使の子供を持ったことで近所に自慢しまくる実の親からも、刀使になって有頂天になっている妹からもまるで最初から存在しないかのように扱われてきた。それだけでなく、色んな辛い職場で様々な辛い目に遭っても結月さんが見てくれていると、愛してくれていると思っただけで何でも耐えれた。
……でも、それが偽りで、自分自身を慰めるための嘘でしかなく、自分自身が心地良いと思えたものでしかなかったという事実は、今の和樹には耐えられなかった。
(……ヒドイネ?アノ人達ハ純粋ナ君ノ気持チヲ踏ミ躙ッタンダ。)
和樹の中から、ダレかの声が聞こえた瞬間、プツンと何かが切れたような感触がした。
職が見つからず、今もフリーターであることを蔑むような目で見る刀使の妹。福利厚生はばっちりで国家公務員である刀使の妹を自慢気に近所の人に話す両親。自分のことを年上扱いしないどころか居もしないかのように扱う結芽といった刀使。僕達のことを穢れた物のように言う元刀使の結月。どんなに天然理心流を憶えても刀使である結芽に勝てないという現実。そんな刀使の中でも天稟の才を持つ結芽のことを溺愛する結月。
『……どうして人はこんなにも簡単に消えて逝くのだろうか。類稀れなる天稟の才を持つ者が現れても、なぜ世界はこんなにも理不尽なのだと。』
そうして和樹は、結月の言葉を心の中で反復させるだけで自身の怒りの矛先が変わって行くのを感じた。
『――――荒魂事件に巻き込まれて遅れただぁ!?こんなご時世にお前は何を刀使さんのせいにしてんだよっ!!』
『貴方お兄さんなんでしょ?刀使の妹さんを見習って、もっとしっかりしないと駄目だぞ!』
僕に責任転嫁をする会社。いや、この刀使というクソガキばかりを第一に考える狂った社会であり、僕が生きている世界。
その刀使という子供達は国家公務員扱いされ、待遇なんか僕の数十倍も良いということに、口に出せない苛立ちを感じていた。
『ウチより全然大きい会社だからさ、大丈夫だから。』
『刀使の妹さんが居るから、ウチみたいな会社じゃなくても良いだろ?』
僕だけでなくミンといった外国人労働者を足蹴にする社会。いや、この刀使というクソガキを、勝ち組だけを何でも有り難がるクソみたいな社会。
だから僕が死んでも誰にも気付かれないどころか、死体をネットに上げて如何にバズるかという事にしか興味を抱かない。……一方の刀使や上級国民という奴が死んだらそれだけでニュースにもなるし、お悔みの言葉も貰える。
――――それだけじゃない。
刀使という国家公務員という立場だけでなく、福利厚生も恵まれているという大人の様な扱いを受けられるが、困ったときは子供扱いも許される都合の良い存在。
何処から生まれ出たかは分からない珠鋼から創られた御刀という物は、少女にしか反応しないというまるで刀使を存在させるために創られたかの様な都合の良い代物。
S装備の投射もそうだが、どれだけ建物や交通機関が刀使や荒魂の戦いで壊されても、子供だからという理由だけで文句を言ってはならないという風潮を甘受する刀使。
僕等が銃を持つのは物騒だからという理由で所持できないのに、刀という物騒な物を持って何処へでも行ける刀使。
……そして、僕等の様な納税者や労働者を何とも思わない社会。
それだけじゃなく、綾小路武芸学舎という学校に居ることで自分が学校に居たときのことも思い出していた。
いつも刀使である妹と親に比べられて、根暗になった僕を学校の皆はイジメていた。
それでまともに学業に集中にできないから、先生に相談したら先生がこう言ってくれた。
「イジメは良くありません。イジメは悪い事です。」
と言ってくれた。……いや、言うだけだった。それ以上は取り合おうとすらしなかった。
だから、それでイジメは無くならなかった。
むしろ、先生に有る事無い事を吹き込んだ悪い奴ということでイジメは更に酷くなった。そうして、僕が志望していた学校へ入学する試験は落ちてしまった。
僕はこの時に悟ったけど、忘れていた。
善と悪は曖昧な基準な上に成り立っている物だということを。そういう狂った基準で善悪を、物事を判断する狂った社会なのだと。なら、この狂った社会が出す善悪の基準は間違っているのだから、僕が荒魂になって刀使を殺すことは何も間違っていないと断ずることができる。
そうして和樹は、刀使を救うことから、いや、刀使だけでなくこの狂った社会を壊したい、穢したい、滅茶苦茶にしたいという衝動に駆られる。
「……ハハ、ハハハハハハ。」
自分を踏み躙った妹や結芽といった刀使達とこの刀使を優先する狂った社会。子供を養育する機関なのに大人の保身が最優先される閉鎖的な世界。自身の身を案じてくれる綾小路の刀使達よりも結芽のことばかり話す結月。自分を粗略に扱う勤め先と親と……この狂った社会!
そう考えた和樹は、狂ったように嗤い出す。
それ故に、少し前に結月が述べた『荒魂と人体の融合はエゴの極みであり、ノロのアンプル自体も自分が最も毛嫌いする結芽のために作った』のだとする話は、和樹にとってみれば、存在そのものを否定しているようにも聞こえたため、和樹は心の中に溜めていたドス黒い『激昂』と『嫉妬』、そして『憎悪』の感情が零れ落ちそうになるほどに溢れていく。
そうして和樹の中に溢れるほど産まれ出たドス黒い感情で結月のことを思い返すと、結月の顔が嘗て勤めていた会社に居た自分のことをとにかく罵倒する上司と同じように見えてきたのである。
そうして和樹は、ドス黒い感情によって生じた衝動のままに、召喚した蝶の荒魂と共に結月の居る部屋へと突入するのであった。
「アンタは、勝手だよおぉぉーーーーっ!!!!!」
そうして、荒魂によって強化された身体能力を使って真っ直ぐに、結月の元へと周りの刀使がこちらに気付く前に素早く駆け付けると、結月の首を掴んで、そのまま前にあるガラス窓へと投げると、和樹は二階から落ちた結月を追う。すると地面に仰向けの状態で倒れたままの結月を見つけた和樹は、衝動のままに人ならざる雄叫びの声を上げると、結月の首を力強く絞め始めるのであった。
「オマエガァァァァァーーーーッ!!」
お前がノロのアンプルを作った。僕を見ないどころか、目の前に居る子供すら見ていなかった。
「オマエガァァァァァーーーーッ!!!」
お前はノロのアンプルを使った僕をエゴの極みだと卑下した。それだけでなく、僕を見下した!!
「オマエガァァァァァーーーーッ!!!!」
そんなお前が罪深いから裁いてくれ?……心を病んで、家族からも社会からもゴミのように扱われた孤独な人間がオマエの言葉をどのように受け取るか教えてやるよ!望み通りに報いを受けろっ!!
……和樹は、心の中で結月に向けて、心の中で何度も訴えながら、結月の首を絞め、そして結月の後頭部を地面に叩き付けた。そうして、何度も何度も叩きつけ、首を締めていく内に結月がピクリとも動かないうえ、一言も発しないことに気付いた和樹は今の結月を見た。
頭から血を流し、動かない、息もしてない、目も明後日の方向に向いている。
その結月の姿を見て、頭が冷えると。
「…………。」
鼓動が早くなり、身体に震えが出てくると、喉の奥が詰まる感覚がし始め、目に水が、涙が溢れ出て来た。
……僕は結月さんのために色々と頑張った。けれど、自分の手で殺してしまった。だから、結月さんのために頑張っていた僕は、目的すら無くなり、空っぽな自由を得て、人間以下となった僕はどうしたら良いのだろうと思い始める。すると、
(……"自由"ニナッタンナラ、何ヲシテモ良インダヨ?)
和樹の心の中で何かの声が聞こえた。
真の"自由"とは、野に放たれる野獣のように好き勝手して良いのだと。
(ソレニ、"不公平"ジャナイ?アイツラバカリ恵マレテイテ。アイツラノ存在ノ方ガ害悪デショ?)
君は被害者で、彼等こそが加害者なのだと。
……そうだ。アイツラの方が害悪だ。社会の中に巣くう癌だ!!
心の中の声が聞こえた和樹は、唯一この声だけが自分を肯定してくれるため、とても心地良かった。だから和樹は、誰も必要とされなかったために暴れた子供は、この声だけを信じてしまう。
……自分の身体の中に何が宿っているのかも忘れて。
……そこまで考えた和樹は、何かが解き放たれた感覚がしたのだ。
空っぽな自由になった。人間以下となった。つまりは、人から憚れるようなことを平然とやって良いのだ。もう我慢しなくても良いのだ。何をしても良いのだ。誰にも憚ることなく、争いを避けることなく不平不満を述べても良いし、気に入らない奴は殺したって良い。
そうだ。殺せば良いんだ。壊せば良いんだ。
自分を除け者にする刀使と人間も、刀使ばかり優遇するこの社会も、僕の好き勝手にして良いんだ。子供がオモチャの手足を引っこ抜くように壊しちまえば良いんだ。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
そう思うだけで、和樹は解放された様な心地良さに包まれながら、自由になれたと思った。
人間以下の怪物になることが、どれだけ心地良いかを知ったのだ。
「居たぞ!!学長の仇!!」
そうして和樹は、彷徨うように歩いていたため、和樹を恩義の有る結月の仇として追っていた綾小路の刀使が抜刀し、写シを貼って向かってくるのが見えた。
「ハハハハハハ!!!」
和樹は高嗤いすると共に、失った右腕と左足から荒魂の腕と足が生えてきたのであった。
その異様な姿に、荒魂化した人間の様な姿に和樹を追ってきた綾小路の刀使達等は戦慄する。
「そこの荒魂!投降しろっ!!この綾小路内でお前が勝てると思っているのか!!?」
和樹は穂積の投降を促す声に反応し、自分のことを荒魂扱いしたことに憤るが、この刀使の訓練校の一つである綾小路内で戦うのは流石に数の上では不利であると悟ると、今は逃げるのが先であると理解した。
「……まだだ、まだ僕は見たいんだ。」
和樹はそれだけ言うと、蝶の荒魂を召喚し、綾小路の刀使達を怯ませると八幡力でも使ったのかと思えるほどの跳躍力で和樹は逃走するのであった。
「待てっ!!」
「いや、今は学長の治療が先だ。皆、相楽学長を医務室へ!!」
「はっ?……わ、分かりました!!」
穂積は、結月学長を医務室へと送るようにと綾小路の刀使達を指示することで、和樹の後を追わせないようにした。
そうして、綾小路の刀使達がバタバタと担架を持って来ると、結月を担架に乗せ、医務室へと向かって行くのを見届けていた穂積は、
「……もしもし、隊長ですか?」
ソフィアに携帯電話で連絡していた。
「ええ、学長が荒魂化した男に襲われました。恐らく、自衛隊か管理局本部からの刺客でしょう。」
穂積は、和樹がソフィア達の謀略によってノロのアンプルで荒魂化させた男であり、最終的には結月を始末するための捨て石として使う予定の一人であったことを知っていた。
……知っていながら、穂積は"自衛隊か管理局本部からの刺客"と述べたのである。そうすることで、こちらに嫌疑を掛けられないようにしたのである。
「……あとは、綾小路の刀使達に結月学長が刺客に襲われたということを公表する体裁を整えておきます。」
……ここまでは計画通り。
穂積はそう思いながら、次に行う維新派の結成の公表と結月学長を襲撃したことに対する批判。この二つで管理局本部と防衛省を政治上においても追い詰める積りでいた――――。
――――その一方、姫和は今日も優が居る病室の前で向かおうとしていた。
だが、姫和を追い抜き、我先にと優の居る病室へと向かう者が居た。
……それは、停職処分を受けている筈の寿々花であった。
「!!?」
姫和は驚いた。何故、此処に寿々花が居るのか、見当もつかなかったからである。
そのため姫和は、慌てて急ぎ足で優の居る病室へと入って行った。
「実は私もヒメちゃんとお友達になりたいので、お話しても宜しいでしょうか?」
「……うん、良いよ。」
そこで寿々花は、優にタギツヒメと友達となりたいと言って、意識をタギツヒメに代わるようにと話していた。優は、タギツヒメと友達になりたい者が増えたことに嬉しかったのか、二つ返事で了承していた。
「……お、おい「我に何用か?」」
優と寿々花の会話を聞いた姫和は、寿々花がタギツヒメを利用しようとしていることに気付き、それを止めようとするが一足遅く、優の意識はタギツヒメへと代わっていた。
「……貴女も知っていると思いますが、数週間前に市ヶ谷が襲撃され、タキリヒメはイチキシマヒメに取り込まれました。これが、その証拠映像です。」
優の身体で話すタギツヒメと謁見した寿々花は、数週間前に市ヶ谷が襲撃され、タキリヒメがイチキシマヒメに取り込まれたことを話すと、市ヶ谷にて、タキリヒメが静に取り込まれた時の映像をiPadで見せるのであった。
「……それは、確かなのか?」
「ええ、市ヶ谷基地の監視カメラはタキリヒメに反応する様にされておりますので。その結果、このタキリヒメを吸収した刀使にはタギツヒメに近い反応を示しましたので、イチキシマヒメを取り込んだ可能性が大いにあるという分析結果が出ました。」
タキリヒメの逃亡防止用のカメラが功を奏し、イチキシマヒメを取り込んだ静にタキリヒメに近い反応を計測したため、このタキリヒメを吸収している刀使がイチキシマヒメを体内に取り込んでいる可能性が充分な程に高いと述べていた。
「……何が言いたい?」
「恐らく、敵はイチキシマヒメを手に入れているということは二十年前の真実を知っている可能性が高く、それを利用してタギツヒメと融合している優さんを非難することでしょう。……このようにね。」
寿々花はそう言うと、iPadに映るタキリヒメを吸収する場面を映した映像から、ある映像に変えて見せるのであった。
『皆!!我々は遂に立ち上がった。変革すべき時が来たのだ!!新しい風を巻き起こし、刀剣類管理局並びに政府の中に蔓延する腐敗を一掃することで、この欺瞞に満ち溢れた世界を変える時が来たのだ!!』
その映像は、年若い刀使が何かを訴えているようであった。
『かつての特別刀剣類管理局は荒魂を討伐することによって秩序を保ち続けることを公言する組織であった。……しかし、真実は違う。それは彼等が特権を享受し、それを固持するための詭弁に過ぎなかったのだ!!!!』
そして年若い刀使は、刀剣類管理局が荒魂を討伐する真の理由は折神家が特権を享受するための物であったと訴えていた。
『二十年前の大災厄時には、タキリヒメ含む三つの大荒魂を管理局と政府が独占し、ノロのアンプルといった人を荒魂と融合させ、容易に荒魂化させるという危険な研究を我々刀使にも一般の方達にも投与させていたことをどれ程の人が知っていただろうか?……否、断じて否!舞草を中心とした管理局の秘密主義によって誰も知り得なかったのだ!!』
そうして年若い刀使は、次第に声に熱を入れ始め、刀剣類管理局と政府がノロのアンプルという人と荒魂を容易に融合させることができる危険な研究を極秘裏に舞草が行っていたかのように語るのであった。
『それだけでなく、刀使でもない子供に荒魂をノロのアンプルによって注入し、荒魂と同様になるまで強化することで数か月前に起きた安アパートにて外国人の殺害だけでなく、鎌倉でのノロの漏出事件以前にも舞草の活動員として数多くの戦闘行為に参加させていたことが我々の極秘の内偵によって判明した!!』
年若い刀使はそれだけでなく、優のことについて話し始めるのであった。
「!!」
これには、タギツヒメの顔に動揺の色を見せ始める。
優が今まで行ったこと、潜水艦へと逃げ込む際に発生したSTT隊員等への殺人。半ば荒魂化した自衛隊員の殺害。暴動の残党によって殺されたかのように装ったソフィアの同志である刀使の暗殺。
それら全てが公表される恐れがあったのだ。
「……それだけでなく、政府や舞草の重鎮内には優さんを処分して、何もなかったことにしようとする者が漸増の一途を辿っているようですわ。」
寿々花はそれだけ言うと、更に動画を進め、年若い刀使が述べている演説の一部を聞く。
『――――そして、その少年に取り憑いているのはタギツヒメという大荒魂であり、彼女の目的は人間への復讐。それのみである!』
それは、自身のこと、タギツヒメが人間への復讐を望んでいると話す内容であった。
『それだけでなく、政府と刀剣類管理局の重鎮は今まで討伐してきた荒魂のノロをタギツヒメへの強化に使っていたのだ!!もし、彼女が力を解放したら、これまで以上の災厄がもたらされることになる!!』
そして、タギツヒメはこれまで以上の災厄を撒き散らす存在であると。
『そんな危険な存在を管理局や政府上層部はいまだに手放そうとしていないのだ!目を覚ませ、同志達よ!!そのような惨劇を防ぐには討伐して、ノロに還すしかないのだっ!!』
そのため、タギツヒメを討伐しなければならないと。
『そのためにも、我々刀剣類管理局維新派は、ここ東京を拠点に決起することを決意した!!……かつて、刀使は荒魂を討伐することで人々に畏敬の念を送られていたのだ。同志達よ!それを取り戻すべき時が来たのだっ!!……そのうえで要求する!政府並びに刀剣類管理局は一刻も早くタギツヒメを我々に引き渡せ!これ以上国民を危険にさらすというのであれば、我々は実力を持って対処することをここに宣言する!!』
……そうして、タギツヒメは理解した。
この維新派の元へ向かうことになれば、優は殺されてしまうことに。
「そういったことがあり、あなたの協力が必要なのです。お分かりで?」
寿々花は維新派の演説を聴いていたタギツヒメに対して、自分達に協力しなければお前の大事な者は失うぞと、笑顔で詰め寄るのであった。
「……しばし、待て。」
タギツヒメはそう言って、優の中に居る者達と話しに行ったのか、優は眠ったかのようにベッドに横たわるのであった。
そして、タギツヒメと寿々花の会話を聞いていた姫和は、寿々花に詰め寄るのであった。
「お前、停職中だったろ?ここで何をしているんだ!!?」
「あら、いやですわね。私はご友人の弟さんのお見舞いに来ただけですわ。今回は公務ではありませんので、そこのところはご了承下さい?」
「嘘を吐くな!!現にこうやってタギツヒメに会っているじゃないか!!?」
優の見舞いに来たと嘯く寿々花に大きな声で、最初からタギツヒメに会うのが目的ではなかったのかと詰め寄る。
「あら?タギツヒメさんはここに居ると貴女は証明できるのですか?」
姫和の詰め寄りに対して、寿々花は事も無げに両手を広げると、姫和にタギツヒメがここに居ると言えるのかと迫るのであった。
「!!」
「できないことは言わない方が貴女のためになると思いますわよ?貴女の大好きな優ちゃんのために。」
寿々花は姫和にそう言って、黙らせようとしていた。
しかし、姫和はそれで止まることなく、更に寿々花に対して詰め寄るのであった。
「……全部、全部謀っていたんだな。タキリヒメの時から、全て!!」
「ええ、タキリヒメは政治家や国民からの支持を広げつつありましたので厄介な相手でありました。……ですので、折神 紫派といった朱音様に対して反感を持つ者達を一掃するのに良い手とは思いませんこと?あとは、国会前での暴動を起こした残党も折神 紫派に協力して下されば良いのですが。」
姫和に詰め寄られた寿々花は、何食わぬ顔をしてタキリヒメと旧変革派でもある折神 紫派だけでなく、国会前で暴動を起こした残党の処分も考慮していたと述べるのであった。
「それに、荒魂の討伐を優先する旧折神 紫派がどのような行動を取るか、想像し易いですものね。……タキリヒメの討伐だけでなく、タギツヒメが取り憑いている優くんも殺される可能性が高いですし。となれば、タギツヒメがどのような行動を取るか。」
それだけでなく、タギツヒメにこちら側に協力するように仕向けたと何食わぬ顔をして、答えるのであった。
「……我が協力すれば、優は助かるのか?」
「ええ、"お約束"しますわ。」
優が助かるのかと尋ねるタギツヒメに対して、寿々花は"約束"すると答えるのであった。
「……分かった。」
寿々花の"約束"を聞いたタギツヒメは、優に意識を返すと、
「うっ……ぐぅ……あぁぁぁぁっ!!」
優は苦痛を訴えながらも、優の身体の中からタギツヒメを這い出て来るのであった。
「……これで良いのだろう?」
タギツヒメは寿々花を真っ直ぐ見据えながら、返答を迫る。しかし、それを見た寿々花は新たな疑問を抱くのであった。
「……ええ、しかし、確か優さんから抜けると命が無かったのでは?」
「ああ、確かに前まではそうだった。……だが、ノロを多く吸収し、体内にあるノロの量が増えたお陰で、大事な臓器は荒魂化したまま残すことができた。……それに、我が抜けたことで体内にあるノロの量は減ったから、症状は和らぐはず。……だから、今は大丈夫だ。」
新たな疑問とは、タギツヒメが優の体内から抜け出すと、短命化し、死に至るのではないのかと。それについて、タギツヒメは重要な臓器を形成するのに必要なノロは残しているから今は無事であると答えていた。
「……大丈夫だよ。……ヒメちゃん…………おねーちゃん達をよろしくね。」
優はそれだけ言うと、荒魂化した残った左腕で手を振ると、可奈美達のことをよろしく頼むと言うのであった。
「……ああ、任せてくれ。まだノロを注入すれば、助かる筈じゃ。」
タギツヒメは優にそう言って手を振ると、寿々花と姫和と共に優の病室から退室するのであった。
そして、寿々花は優とタギツヒメを見て新たな疑問を抱くのであった。
それは、体内にあるノロの量を減らせば、症状が緩和されるのであれば、何故初めからそれを行わなかったのか?ということであった。
キャラクター紹介!【紫+親衛隊】
刀剣類管理局の偉い人とその周りの強い方たちです!
https://twitter.com/tojinomiko/status/951069255159627776?s=20&t=kQh2GRLfGTgkNYGmzx1oyA
此花寿々花(CV;M.A.O)
親衛隊の司令塔