128話を投稿させて頂きます。
和御霊=最終話で朱音様が言っていたこと。
今のタギツヒメの状態は、ひみつ道具ではのび太くん達を助けられないことに歯痒さを感じるドラえもんみたいなものだと思って頂ければ。
『そりゃあ、人間とは違うなんかスゲェのなんだろ?そんなスゲェのになりたいからだよ。』
タギツヒメの目の前の光景は内閣府ではなく、初めてジョニー等と出会った頃の光景に変わっていた。
(これは……これは、そう、龍眼が見せてくれる物……。私の心が見せてくる光景だ。)
その光景を見ながら、タギツヒメは嫌な顔をするどころか、和やかな顔となる。そして、もう会えないかもしれない思いからか、タギツヒメの瞳から雫が落ちそうになるが、どうにかそれを堪えながらジョニーの答えに返答するのである。
……あのときは、答えられなかった答えを。
「ううん。ちがう、違うよ。……私が『神様』とか名乗ったのは、周りの人に怖がって、噛み付くことで強がっただけの言葉だったんだよ。……本当は『神様』なんかじゃ無かった。」
目の前に映るジョニーに向かって、タギツヒメは自分が『神様』と名乗った理由は、周りの人間を怖がって噛み付いていただけだと、タギツヒメが答えるのであった。
『オイオイ、まさか自分は『我は神ぞ。』とか思っちゃっていたら、違ってたから恥ずかしいのか?キャーワタシ、タギツヒメは『我は神ぞ。』とか言っちゃって恥ずかしいわって。』
タギツヒメの答えにジョニーの幻は優しげな声と表情でそう返すのであった。
そのジョニーの表情を見て、声を聞いたタギツヒメは、
「そうだね。……神様を名乗ることがこんなに辛いことだったら、言わなかったよ。本当はみんなと……みんなと同じ子供になりたかった。……だから今はこう思うんだ。」
できる限り自分の言葉で、自分が思ったことを素直な気持ちで返していた。
「皆と一緒に扱ってくれるだけで、……きっとそれだけのことでも幸せなんだって教えてくれたんだよ。……私は貴方のお陰で、みんなのお陰で一人じゃなくなったんだから。」
涙を一滴零しながらも、子供の様な満面の笑みでタギツヒメはジョニーに返答していた。
本当は神様ではなく、皆と一緒で在りたかったと。皆がそれを気付かせてくれたと。
「……あの、何の話をしているのでしょうか?」
内閣府に居る記者の声を聞いたタギツヒメは、急に現実に戻ったかのようにジョニー達が居た光景ではなく、記者が大勢居る内閣府のとある一室の光景へと戻っていた。
……龍眼が見せてくれたものから、記者の声で現実にもどったのだと理解したタギツヒメは、
「我の名は……いや、私の名前はタギツヒメ。私は荒魂と呼ばれている者です。」
慇懃な態度を辞めて、正直な気持ちで、自分自身のことを荒魂と名乗るのであった。
――――我の名はタギツヒメ。お前達人間が言う所の荒魂である。――――
嘗ての彼女であれば、そう答えたであろう。
しかし、神を辞めようとすることで禍神では無くなりつつあるタギツヒメは、自分が思ったことを嘘偽り無く記者達に話し続けるのであった。
「私は……人との共存を目指して、それを実現するために神としてではなく、あの人達の友達の一人として此処に居ます!!」
人を見ようとしなかった彼女は、大勢の記者を前にしても臆することなく大きな声で答えた。
神と名乗ることなく、禍神としてではなく、ただ一人の彼等の友人として現れたのだと。
「だって、こんな私を見ても“荒魂になりたい”と言ってくれた人達が居たからっ!」
だから私は言える。
人間と荒魂の共存を目指していると、それを実現してくれたであろう友人達が居たことを。
『俺が南アフリカで少年兵になった理由は、家族を殺した政府側の人間に復讐するためで、人殺しやら略奪やらをしまくったから、俺はお前とどう違うんだ?』
不意にタギツヒメはジョニーの言葉を思い起こしてしまう。
だから私は、人を殺したことがある少年兵だったジョニーのことをこう思える。
(……違うよね。人を憎んだり、恨んだり、殺したりできるのは化け物だけじゃない。……貴方は、貴方はバカでデリカシーも無かったけど、私を気遣ってくれる優しい子だったよ。)
こんな私にも対等に接してくれたから、私は一人じゃなくなった。……優しい子だったと。
「だってもう私は、神様でも何でも無いからっ!!そう言ってくれた人達の友達として来たからっ!!」
私は神様でも何でもないと、そう答えるだけで居ないはずのジョニーが微笑んで此処に居るような気がした。
『私、相手をさせられた大人に汚れた女とか売女とか言われたことあるから私って荒魂?』
その次は、ミカの声がタギツヒメの心の中で聞こえた。
(そんな事ないよ。……私にとってみれば、貴女は何時だって…………。)
こんな私相手でも優しくしてくれたし、心が綺麗な人だと何時も思っていた。
「……荒魂になろうとした子は、何時でも私に優しくしてくれた。その子は荒魂になろうとしていても、何時でも穢れていなかったと言える子が居たからっ!!」
私は貴女のことを穢れているとは思っていない。
何時だって、私に優しくしてくれた綺麗な女の子だったよ。と私は答えていた。
『ニキータは足と腕が片っ方が無かったり、両目が潰されていたわたしのことをみんな気持ち悪がっていたから、……わたし荒魂だ、やったー。』
そして今度は、ニキータの声がタギツヒメの心の中で過ぎる。
(……違うよね。姿形で……人と違うからって化け物になんて簡単になれないよね。)
だから、私はニキータのことをどう思ったのかを答えられる。答え続ける。
「人と違うからと言って、神様になれるものでも化け物になれるものでもないと教えてくれた人が居たからっ!!」
貴女は化け物じゃないと。そして貴女は私のことを化け物と言わなかったし、扱わなかったと答えることができた。
『……私さ、小さい頃に御刀に認められて、それで後先考えずに剣術を始めて、神童だと持て囃された………。』
次はタギツヒメの心の中には結芽の姿が過った。
『でも、病気で私は神童になれなくなって、神童とか言われて有頂天になった過去の自分に頼って、それに縋って、みんなに凄いところを見せて、自分を憶えてもらおうとしたんだ。……けれど、考えれば考えるほど、私が凄いんじゃなくって、御刀の方が凄いんじゃないかって、身体に宿る荒魂のお陰なんじゃないかって思う時があったんだ。』
その結芽は、過去の自分を頼って、縋って、自分の凄いところを見て憶えてもらおうとしていたと告げていた。そして、荒魂や御刀に頼る自分が他者を凄いと思わせることができるのかと思い悩んでいたことも告白していた。
『……ねえ、タギツヒメ。過去の自分に縋って、御刀に頼って、刀使である事に拘った私でも、タギツヒメは凄いって言ってくれる?思ってくれる?……そんな私がこの先も生きていたとして、みんなに凄いと思わせることができたかな?』
そして、結芽はタギツヒメに、過去を羨むばかりのそんな自分に人を凄いと思わせることができるのかと尋ねてくるのであった。
(……凄いと思わせることは出来たよ。……それを探すことも見つけることも、生きてさえいれば、生きてさえいれば誰だって出来た!!……私も最初はみんなから不要な存在だと思われ続けた。……けど、みんなが私を必要としてくれたように、結芽だって!!!!)
それに応えるかのようにタギツヒメは答えた。荒魂を斬って祓う存在である刀使に生きてさえいれば幸せになれたと、生きていて欲しかったと答えていた。
けれど、タギツヒメは貴女は色んな人に「凄い」と思わせることが"出来たよ。"ではなく、"出来た。"と言えない歯痒さも感じていた。それと同時に自分はそんな友人達を救えないちっぽけな存在であるとも再認識していた。
「結芽は私のために、この御刀をくれた。みんなみんな、私を必要としてくれた人が居たっ!!だから私もそれに応えたい!!みんなが生きていたこの素晴らしい世界を守りたいと!!!!」
そして、タギツヒメは心の中で聞こえた結芽の声に応えるようにニッカリ青江を見せながら答えた。
私もみんなが必要だったと。だから、そんな人達と逢えたこの世界を守りたいと。
「……だけど、そんな私を必要としてくれた人達を否定するかのように、荒魂との共存を望まない人達もいる。だからこそ私はイチキシマヒメを、いや荒魂を自らの力として利用し、力を手にしようとしている者達である維新派を……私は断じて許すことができないっ!!」
だから、タギツヒメは宣言した。
「……だから私は、維新派を討つ。」
……刀剣類管理局維新派を討つと。
――――言えたじゃないですか。
タギツヒメはその宣言をした後、何処かから自分が考えた言葉を隠すことなく、正直に言えたことに対する称賛の声が聞こえていた。
……誰かは分からないが、その声は風の様に過ぎ去ると、消えて行った。
(…………ありがとう、みんな。……みんなのお陰で、もう外の世界は怖くないよ。)
こうして、自分を偽り、自分の心をひた隠しにしていた子供は自分を偽ることなく、自分の意志を言葉に乗せて自分を表現することが出来た。
そうして、その子供は知らない人が多く居る外の世界を怖れることがなくなったのである。
――――東京駅のホテルにて、維新派はテレビでタギツヒメの声明を聞いていた。
『――――タギツヒメが語ったことは全て事実であり、維新派なる集団が述べることは事実無根であるということを、私と総理が保証致します。』
そして、テレビの中に居る官房長官は政府が維新派を否定し、タギツヒメの言うことを保証すると宣言すると、
『加えて、タギツヒメ氏の証言、並びに防衛省の監視カメラからタギツヒメ氏と同じ大荒魂の一部であるイチキシマヒメを維新派も隠匿しているという事実が判明致しました。』
荒魂の殲滅を掲げる維新派もタギツヒメと出自を同じくするイチキシマヒメを保有していると述べていた。
その官房長官の話に「バカなっ!!」と叫ぶ維新派に属する刀使。
『証拠はあるのですか?』
『証拠は、維新派なる集団が市ヶ谷基地を襲撃した際に監視カメラが捉えた映像を解析した結果、タギツヒメ氏並びにタキリヒメ氏と同じ反応をする刀使が居りましたことを確認致しました。……恐らく、この刀使に取り憑いているものだと思われます。』
証拠はあるのか?という記者の質問に官房長官は、維新派が市ヶ谷基地を襲撃した際に静をタキリヒメに反応する監視カメラで捉えたことにより、イチキシマヒメと融合した静にタギツヒメとタキリヒメの両名と同様の反応を計測したことを説明し、それが判明したと説いていた。……静の顔写真も公開して。
それを見た維新派の刀使と変革派の人達は明らかに動揺し、ざわついていた。
そもそもからして、維新派の全員がソフィアに付き従っていた訳ではない。
タキリヒメに支配されつつある社会に直訴したいと思う者、荒魂に怨みを抱く者が多く集まっていたのが実情であり、それがこうして維新派の重鎮が大荒魂と融合していると分かれば、動揺してしまうものである。
大義を失った集団は脆い物である。
事実、荒魂の殲滅を謳い政府の施設ごとタキリヒメを襲撃した集団が実は大荒魂の力を使っていたということは信用を失い、支持する者が居なくなってしまい、反乱の成功率は著しく下がってしまううえ、反乱成功後の統治も上手く行かないものである。
それだけでなく、大半の人間は理由無く人を殴るのは躊躇するものであり、大抵の人は何かしらの理由を述べてから攻撃したりするものである。そうでなければ、ただ暴力を振り回す危険な集団としか思われないだけなのであり、最悪の場合維新派は、己の都合で政府の施設を襲撃する危険な集団であると国民に認識される恐れがあるのだ。
「うっ、うろたえるなっ!敵のデマゴーグだっ!!」
「で、でも隊長達に事の仔細を確かめるべきでは?」
「……お前!敵のスパイか!!?」
「いや、私は確認すべきだと言っているだけで「黙れスパイ!!」」
そうして、維新派の刀使同士の言い争いが発生してしまうことになってしまった。
それだけでなく、この刀使同士の争いを見た変革派の中には、刀剣類管理局本部にどう降伏するべきかを考えていた者が現れ始めたのである…………。
『そして維新派等は市ヶ谷基地を襲撃し、基地の警護をしていた刀使と自衛官等に少なからずの死傷者を出しただけでなく、維新派に属するソフィア氏は織田防衛事務次官の殺害及び、元親衛隊である夜見氏と結芽氏だけでなく、一般人にも甘言を用いて荒魂を投与したこと、鎌倉での大規模停電、国会前の暴動の扇動にも関与したことが判明致しました。よって、我々政府は維新派なる集団の降伏を促すと共に、タギツヒメ氏を支持するものであると日米両政府は此処で宣言致します。』
この官房長官の一言で、維新派は国民からの支持を完全に失うことになってしまった。
理由は、自衛隊の基地を襲撃したことが一番の要因ではあるが、殺害、人を荒魂化したこと、鎌倉での大規模停電だけでなく、国会前の暴動にも関与していることが暴露されたことで、維新派の者達が恐れていた事態、国民が維新派なる集団を危険なテロリストみたいな物であると認識し始めることが現実の物となり始めていた。
それだけでなく、荒魂と刀使達の戦いに国民が疲弊していたこともそうだが、人との共存を目指すことで国民の支持を得ていたタキリヒメが荒魂に対する悪いイメージを払拭したことで、国民は人型の荒魂に対して嫌悪感を持つ者が減っていたのである。そのタキリヒメの行動が土壌となって、涙を浮かべそうな表情で情を訴えるタギツヒメに共感を抱いた者が続出したことも相まって、政府の施設を襲撃し荒魂の殲滅を掲げる維新派を支持する者は殆ど現れなかったのである。
――――かくして維新派は、神であることを捨てた和御霊の声によって、一気に窮地に立たされることになる。
――――一方、優が居る病室。
そこでは、4.6㎜口径の弾を使うMP7をジャケットの懐に隠し持ち、腰のホルスターには使い古された45口径のガバメントを持つトーマスが、体内のノロの影響により弱った優の護衛をしていた。
「……トーマスおじいちゃん……大丈夫なの?」
しかし、優は弱弱しい声を出しながら、トーマスの安否を気遣うような発言をしていた。それを聞いたトーマスはどうしてそのような事を聞くのか気になり、尋ねるのであった。
「……どうしてそんな事を聞く?」
「だって、僕の護衛は誰にも頼まれていないんじゃないの?」
優に自分の護衛をすることは誰にも頼まれていないのではないか?と尋ねられたトーマスはピクリと反応してしまう。
事実、トーマスはCIA長官から優を見捨てるように本国に帰る指示を受けていたのだ。……だが、トーマスは何故か勝手に優の護衛をしていた。
「…………。」
――――トーマスは優の護衛をしている理由を問われた際、トーマスは優の銃を取得するときのことを思い出していた。
「やあ、トーマス。」
「ああ、お前こそ大丈夫なのか?」
「まあな、お前さんのお陰でそれなりには儲かっている。……しかし、なんだってまた、HK416Cのフルカスタムと9mm仕様のP938が必要なんだ?お前さんが使うM4カービン銃は比較的手に入り易かったが、HK416Cなんざ、もう販売されてないから手に入れるのに苦労したぞ。」
優が使う銃の入手先は、知り合いの武器商人からであった。
「まあ、9歳のガキに使う物が必要だったからな。世話掛けた。」
「にしては、少し過保護じゃないか?」
武器商人の問いにトーマスは、9歳の子供が使うのに適している物が必要だったと返答していた。
その答えに、武器商人はトーマスの子供を使った政権転覆といった裏工作のことを知っているのか、その9歳の子供に与える銃としては少し過保護過ぎやしないかと尋ねていた。
「……どこかだ?」
「そりゃ、お前さんが使うM4はACOGサイトを取り付けただけの物なのに、その9歳の子供が使うHK416Cはどうにか手に入れた物ていうだけでなく、フォアグリップとサプレッサーやらを装着しろというのは、どう考えても過保護だと思うし、お前さんだけ安上がりにしてるじゃないか。」
トーマスが使うM4は一般の米軍兵も使う物でもあり、そのM4にACOGという光学照準器を付けただけという代物である。
その一方で優が使うHK416Cは米軍の特殊部隊が使うHK416のショートカービンモデルのためM4よりも高額であり、そのうえ射撃時の安定性と操作性向上のためにフォアグリップと耳の保護のためにサプレッサーを装着するという仕上がりとなっている。
武器商人はそれを指摘していたのだ。被弾を考慮しなくて良い少年兵に持たせる武器としては、少々破格過ぎないかと。
「……もしかしてお前さん、別れた女房の息子の家族の事でも思い出したのか?」
「……関係無い。」
そうして武器商人は思い出したかのように、トーマスが嘗て別れた妻との間に出来た息子の家族に孫が居ることの影響なのかと尋ねられるのであった。
武器商人にそう尋ねられたトーマスは「関係無い。」と返すと、
「俺としては、その子供はこれからボディアーマーやらを着込んだ敵と交戦する確率が高いだろうから、ライフル弾で且つ俺が持つ銃とSTT隊員や自衛隊が持つ弾薬と共有できる5.56㎜のライフル弾を使う銃が適格であり、それと9歳の体格を考慮すればショートカービンのライフルが一番良いと思っただけのことだ。」
優にカスタムされたHK416Cを渡した理由を述べるのであった。
5.56㎜のライフル弾を使う物であれば、自分やSTT隊員と自衛隊員が持つ銃の弾薬と共有可能であることと、ボディーアーマーで武装した敵を排除し易いという理由と9歳の体格に合う様にしたと。
「……9mm仕様のP938を注文したのも、同じ理由か?」
「……ああ、手が小さいから9mmパラベラム弾を使うコンパクトサイズの自動拳銃が適当であると判断しただけだ。それに、SIG社のなら俺も使ったことあるから、信用できる。」
「それが理由だったら、何故ストライカー式以外の自動拳銃に拘ったんだ?9mmパラベラム弾を使うコンパクトサイズの自動拳銃なら、ストライカー式の方が更にコンパクトにされ、弾薬数も多い物が有ることぐらい分かるだろう?」
しかし、武器商人は尚も9mmパラベラム弾を使うコンパクトサイズの自動拳銃を求めるなら、ストライカー式の9㎜仕様の秘匿携行(コンシールド)用の自動拳銃の方がP938よりもコンパクトで弾薬数が多い物が有ると述べていた。
実際ストライカー式は小型化もしやすいというメリットが有るため、ストライカー式のコンパクトサイズの自動拳銃の中にはP938よりも小さく、装弾数が多いのがある。それに、9mmパラベラム弾に拘らなければ、同じSIG社製のP238の方が更に小さいのだが、トーマスが9㎜パラベラム弾と.45ACP弾以外を信用していない事もあったがために採用しなかったこと、トーマスがストライカー式を使ったことが無いこと、ストライカー式の拳銃を使った友人が事故を起こし死亡したということがあったために、ストライカー式の拳銃を信じていなかっただけでなく、怪我をさせたくなかったから、撃鉄式のP938にしたのである。
「……何が言いたい?」
武器商人にそう言われたトーマスはどういった意図で尋ねているのか訊いていた。
「お前、この仕事降りろ。……お前さんの商売がどんなものかは大体が想像付く。公に出来ないことだってな。お前さんの様な商売をする奴は情という隙を見せたら終わりなんだ。……お前さんが最初に言った言葉だ。」
トーマスに意図を問われた武器商人は、トーマスにこの仕事から足を洗えと言われるのであった。
「……お孫さんができたそうだな。」
「今、そんな話は関係無い。」
「いいや、俺は俺が親友だと思っている者には言わせてもらう。……良かったじゃないか、お前はもう充分戦ったんだ。過去の事を忘れて、只の好好爺になれるチャンスを得たんだ。もう齢なんだ。……そういう生き方も悪くないだろ?」
武器商人はトーマスの親友として忠告していた。
孫ができたのだから、もう軍属の真似事を辞めておけと。
「……ああ、考えとく。」
だが、トーマスは武器商人の忠告を聞くと、武器商人から離れるように歩くのであった――――。
「――――ガキが、面倒なこと考えてんじゃねえよ。お前はそんなこと考えなくて良いんだよ。」
トーマスは頼りにしている武器商人との会話を思い出すと、優に難しいことを考えるなと言って、誤魔化すのであった。
多分、別れた女房との間に出来た息子に子供ができ、孫と呼べる存在が現れたことで心境が変化した訳ではない。
多分、よく分からない教えのために、そんなことでロークやシェパード達が死んだことで心境が変化した訳ではない。
多分、俺が教官時代に育てた兵士が天使となって、天国の水先案内人になったことを思い出したことで心境が変化した訳ではない。
……多分、きっと、おそらく、俺の心はそんなことで心境が変化することは無い。
『――――トーマス君。タギツヒメがこちら側に付いた以上、もう彼の少年の利用価値は無くなった。後は彼女等が始末してくれることだろう。……君は何時も通りに痕跡を消し、本国に帰投したまえ。』
CIA長官にそんなことを言われたから、此処に居るのでは無いと、そんなものは関係無いと。
トーマスは、そんな呪詛を心の中で何度も反復して呟きながら、優を見据えていた。
そんなときに、誰かが扉をノックしたことに気付いたトーマスは素早く扉の横に陣取り、MP7を構えると同時に扉だけを開け、威嚇射撃をした後に入って来た者の頭に向けて、MP7を突き付けたのである。
「ぴゃああああああ!!?」
「手を上げろ!!誰だお前っ!?」
そうしてトーマスは優の居る病室に入って来た者に対して問い詰めるように言うのであった。
「えっ?いや、な、ななななな何ですかぁっ!!?」
優の病室入って来た者、内里 歩に対して述べるのであった。
「うるせぇっ!!とりあえず御刀を捨てろ、俺を見るな!壁の方を向け!壁に手を付けろっ!!」
トーマスに物凄い剣幕で迫られた歩は素直に御刀を捨てて、壁の方に手を付けるのであった。
「え?いや、あの、わた、私は、綾小路中等部1年、内里歩です!!」
「んなこと聞いてねえ!何しに来た!!?」
「あ、あの、……その。」
歩は慌てながらも、どうにか此処に来た理由を思い出し、どうにかそれを言葉にするのであった。
「あっ!あの、私、優ちゃんの知り合いです!……それで、優ちゃんと話がしたくて、それで此処に来ました!」
優の居る部屋に居るということは、この人は護衛の人なのでは?と当たりを付けて、優の知り合いだと話すのであった。
「……優、そうなのか?」
「……誰?」
しかし、当の優はノロの侵食が脳まで達してしまったため、歩のことをすっかり忘れていた。
「何でそんなこと言うのーーーー!!!!?」
それを聞いた歩は、優の今の状態を知らないため、泣きながら訴えるのであった。
……その歩の姿を見たトーマスは、戦意を失うのであった。
刀使であるソフィア嬢の罪状
織田防衛事務次官の殺害。(殺人)
結芽、夜見、和樹へ荒魂を注入するように仕向ける。(服毒行為)
鎌倉での大規模停電。(破壊行為)
国会前の暴動の扇動への外国人工作員の協力。(外患誘致)
自衛隊の基地を襲撃。(テロ行為)
政府にケンカ売る維新派を結成。(内乱罪)
あと、銃に詳しい方なら疑問に思ったことでしょうが、優が持つ拳銃を装弾数がP938の7+1発よりも10発+1と多く、P938よりも小さいマイクロコンパクト仕様のP365にしなかった理由は、トーマスがめんどくさい性格だったからです。