【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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130話を投稿させて頂きます。

昔の高津おばちゃんに戻して。
高津おばちゃんが無罪放免なのはおかしい。

という意見がアニメ本編中に散見されましたので、できる限りその要望に応えようとしました。
    
    


夢と現実

    

    

「可奈美ちゃんもどうぞ。」

 

舞衣がそう言って差し出されている多くのお菓子。

 

チョコミント味、星型、ドーナツ、チョコチップといった舞衣が作った菓子が並べられ、そして喉の渇きを潤すオレンジジュースも添えられていた。

 

それが並べられていた理由は、維新派との決戦に備えてのこともあるが、優のことで傷付いているであろう可奈美を励ますべく舞衣、薫、エレンの三人が部屋に集まって行われた……。(なお、姫和と沙耶香が欠席しているが、その理由はタギツヒメがとある病室へと向かう際の護衛として沙耶香が抜擢されたこと、そして姫和は気分が悪いと言って欠席していた。)

 

「う~ん……悩むなぁ。」

 

そんな可奈美は、顎に手を当てながら悩みつつ、どれに手に付けるべきかという素振りを見せるだけでなく、

 

「全部食べたいけど食べ過ぎると明日の任務に障りそうだし……。」

 

可奈美は明日の任務に差し障りそうだと言っていた。

 

「心配するな。そん時は俺が代わりに出てやるから。」

「!?」

「って、何だよ……。」

 

可奈美が明日の任務に差し障ると言うと、意外にも任務に不真面目な薫が『代わる』と述べたことに驚く舞衣とエレン。

 

「あの……薫、平気デスか?」

「おい、どういう意味だエレン?…って、ドーナツ食った手でデコを触るなよ!わざとだろっ!」

 

そうして始まるのは、エレンと薫の二人による漫才のようなやりとり。それを見た可奈美は"片方だけ口角を"僅かに上げて微笑みながら、笑顔でチョコミント味のお菓子を手に取るのであった。

 

「じゃあ私これにしよーっと、これチョコミント味?結構いけるかも、歯磨き粉みたいな味とか言ってたけど、これなら姫和ちゃんがこだわる気持ちもわかるなー。これは、姫和ちゃんに誤らないとなー。」

「あっ……うん。」

「舞衣ちゃんお手製のチョコミント味のお菓子があったのに、姫和ちゃん今日は具合が悪くて来れなかったのは、運が悪かったなー。」

 

可奈美はエレンと薫の漫才染みた物を見て察したのか、手に取ったチョコミント味のお菓子を使って、笑顔でチョコミント味もバカにできないとか、こだわる気持ちも分かると言って、場を和ませようとしていた。その可奈美の姿を見たエレンと舞衣はいたたまれない思いで見ていたうえ、舞衣だけが沈痛な面持ちで返事をしていた。

 

「……可奈美、本気で俺達が気付いてないと思ってるのか?」

「え?……ああ、こっちのお菓子?バレちゃったか~。」

 

薫の追及に、可奈美は笑いながらもう一方のお菓子を手に取って、誤魔化そうとする。

……しかし、

 

「もうやめよう可奈美ちゃん。」

「カナミンがいっぱい我慢してること、私達みんな知ってマス。」

 

可奈美の空元気には、薫だけでなく舞衣とエレンも気が付いており、可奈美に無理に取り繕う必要は無いと言うのであった。

 

「えっ、……え~?やめようって何?我慢って何?やだな~皆、私がそんなにおかしく見えるかな?」

 

そして、舞衣達にそう言われた可奈美は、いつもと変わらない片方だけ口角を上げた笑顔で、且つ早口で捲し立てるように言っているところから、明らかに動揺していることが伺えた。

 

「笑いたくないなら笑うな!」

 

故に、薫は可奈美に伝える。

無理して取り繕う様に笑うなと。……しかし、

 

「ハハ、そうか笑ってるんだ。……ねぇ、私笑ってる?」

 

可奈美はいつもと変わらない笑顔でそう答えた。

 

「ねぇ、私笑えてるのかな?……もうよく分からないんだ。何て言うか、心と身体が一致していないと言うか、今自分が本当に笑っているのか、それとも変な顔をしているのか、もしかしたら氷ったように固まった表情しているのか……よく分かんないんだ。」

 

そして、可奈美は薫達に捲し立てる様に言う。……自分は、笑っているのかと、

 

「……ねえ、最近分かったんだ〜。どんなに苦しくても、どんなに辛くても、どんなことが遭っても、笑えばそんな感情が消えて無くなるんだ〜。」

「だから、……無理して笑うなって……。」

 

更に可奈美は言う。

どんなに苦しいことが遭っても笑うだけで苦しいと思う気持ちが紛れると。

 

それを聞いた薫は、それを無理して笑っていると指摘するが、

 

「……でもね、薫ちゃん。優ちゃんがあんな状態になった後で、何でか知らないけど、部屋の中で笑ったの。何の感情も抱くことなく笑ったの。今も何であの時大きな声で笑えたのか……本気で理解できないんだ。」

 

可奈美は薫にあることを話した。

優が様々な障害を負って今も病院から出れない状態になっているにも関わらず、そのことで一人部屋で意味も無く大きく笑えた理由が自己防衛反応なのかどうなのか……分からなかった。

 

「……でもね。部屋の中で一人で笑った時は本当に苦しさとか無くなって、心地良さを感じたんだ。……殆どの人はそれは自己防衛反応だと答えるかもしれないけど、本当はさ、私は優ちゃんのことを邪魔に感じてて、それで居なくなると思うと、心の何処かでモヤモヤが晴れた気分になれる嫌な自分が居るんだよね。そんなこと考える自分が居るんだよね。……でも!それを否定する考えが過ぎるんだけど、それはほんの一瞬だけで終わるんだよね。後の言葉が続かないんだ。」

 

可奈美は“いつもと変わらない笑顔で”告げる。

 

優が居なくなることで、自分が苦しまずにすむと考える自分が居ること。だけど、それを必死に否定する自分も心の中に居ること。だが、その否定する自分は後の言葉も紡ぐことなく、一瞬で霧散してしまうこと。

 

それらの考えがグルグルと何度も意味も無く頭の中で延々と回ることで可奈美は疲弊し、遂には自分は本当の感情を出しているのか、それとももう感情は死んでいるのか、それか本当は自分は嫌な部分が出ているときが本性なのかと悩んでいた。

 

「……お、おい。可奈美?」

「だから、私は笑っているのかな?それとも、嗤っているのかな?」

 

――――可奈美は、本当の自分の笑顔が見れなくなりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お菓子を食べる集まりに出席できなかった沙耶香は、とある病室に向かうタギツヒメの護衛として同行していた。

 

「……タギツヒメ。」

「ん?何か用、沙耶香?」

「どうして私を選んだの?」

 

そして、その病室に向かう途上の廊下で沙耶香は口調が変わったタギツヒメに何故私を護衛として選んだのかと問うのであった。

 

「……どうしてそう思ったの?」

「えっと……護衛なら私一人でなく、可奈美やエレンと薫も呼んだ方が良いと思ったから。」

「そうだね。護衛の人数は多い方が良いかもしれない。……けれど、貴女が今から向かう病室に居る人と話すことができたら良いなと思って連れて来たのが理由の一つで、もう一つの理由は他の人に見せたくなかったというのも理由かな。」

 

沙耶香に自分を護衛として選んだ理由は、今から向かう病室に居る人と話しをするために必要だから呼んだとタギツヒメは答えるのであった。

それを聞いた沙耶香は、自分と関わりのある人物の可能性が高いと考えていた。そうして、自分と関わりのある人間を虱潰しに思い当って行く内にある人物のことを思い浮かべるのであった。

 

「……沙耶香。荒魂と人間は共存できるかな?」

「私はできると思う。……私は、任務さえ達成できれば良いと考えていた。けど、薫が戦う前によく考えろって言ってた。だから、今はこうやって人と荒魂の共存を考える貴女を守ることができれば荒魂と人間は共存できるような気がした。……だから、私はタギツヒメ……いや、違うよね。ヒメちゃんって呼んでいい?」

「…………良いよ。」

 

タギツヒメに荒魂と人間は共存できるかと問われた沙耶香は、荒魂と人間の共存を考えるタギツヒメを知り、信じることにしたと、荒魂と人間は共存できると答え、それを証明するかの如く、タギツヒメにヒメちゃんと呼んで良いかと尋ねると、タギツヒメは「良いよ。」と返すのであった。

 

「……魂のこもってない剣じゃ何も斬れない。戦う前によく考えろ。っていうのを教えてもらったら、空っぽだった私を満たしてくれた。だから、それを大事にしたい。」

 

タギツヒメはそれを聞いて、あることを思い出していた。

それは、沙耶香と可奈美が二度目に累の自宅で邂逅したときのこと、沙耶香が可奈美に御刀を奪い取られ、無力化されたときに言われた『魂のこもってない剣じゃ何も斬れない。』という言葉。

 

「……魂のこもってない剣か。」

 

それを思い起こすとタギツヒメは、不意に結芽の顔が思い浮かべるのであった。

 

「……できたら、貴女から話しかけてくれる?」

 

そして、沙耶香とタギツヒメが話している内に目的地に到着していたらしく、沙耶香はタギツヒメに病室に居る人物に話しかけてくれるかと頼まれるのであった。

 

「……分かった。」

 

タギツヒメを信じることを決めた沙耶香は、目的地の病室の扉を開けるのであった。

そして、病室に居たのは……。

 

「……えっ?」

 

見知った顔の女がベッドに腰掛けて居た。……しかし、どこか雰囲気が違うことに違和感を感じた沙耶香は名前をつい呼んでしまう。

 

「……高津……学……長?」

 

名前を呼ばれたことに反応したのか、その女は振り向いて声を発した。

 

「……?貴女は誰?……高津学長って誰?」

 

今までの雪那とは思えない口調に沙耶香は違和感を感じ、ベッドに腰掛けている女を見つめていた。

 

……彼女は本当に……高津 雪那なのかと?

 

「!……ああ、貴女なの?私の妙法村正を代わりに持ってくれる人は。」

「……え?」

 

だが、沙耶香の疑問に答えるかのようにベッドに腰掛けている女は嘗て自分が使っていた妙法村正を沙耶香が携えているところを見て、貴女が使っているのかと尋ねられたため、沙耶香は目の前に居るこのベッドに腰掛けている女が高津 雪那だと確信する。

 

「……そうなんだ。仕方ないか。私はもう歩けないみたいだし、そもそも私の実力は高くないみたいだから、刀使としてはもう使えないと判断されて、違う人に妙法村正が渡っても仕方ないか。……もうちょっと、刀使を続けたかったなぁ。」

 

雪那にそう言われた沙耶香は、更に違和感を感じていた。

雪那は元刀使であるため、年齢を重ねた女性に御刀は反応しないことは知っているはずである。……なのに、彼女は今も刀使であるかのように述べているのである。

 

「……でも、仕方ないよね。……だから、私の分まで頑張って。」

 

それだけでなく、沙耶香のことを知らないのか、嘗て自分が使っていた妙法村正を渡すから私の分まで頑張って欲しいと述べながら、顔を背ける雪那。

……これはどういうことなのだろうか?と疑問に思う沙耶香。

 

「あ……あの、……雪那さん?」

「何かしら?」

 

沙耶香は薫に言われたことを思い出す。よく考えろという言葉を。この状況はどういうことかと。

 

「……ごめんなさい。少し離れます。」

 

そのため、事情を知っているであろうタギツヒメに沙耶香は聞きに行くのであった。

 

「……タギツヒメ、学長は?」

「沙耶香。雪那は今の維新派達に捕らわれていたことは知っているか?」

 

沙耶香に雪那の状態を問われたタギツヒメは、沙耶香に雪那が維新派に捕らわれていたことを知っているかと尋ねる。そのため、雪那が維新派に捕らわれていたという事を初めて聞いた沙耶香は、驚愕の表情を浮かべると同時に突然地面に穴が空いたかのような浮遊感と現実感の無さが心の中に襲ってきたのである。

 

「その顔を見る限り……知らされていなかったんだね。維新派の連中は鎌府が研究していたノロのアンプルのデータが欲しかった。……だから、大荒魂の精神支配を受けやすいノロのアンプルを使って、精神を操って無理矢理情報を引き出したの。人体に毒でしかないノロを打ち込んだことと精神を無理矢理操作しようとした影響もあるだろうけど……。」

「!!」

「……無理矢理精神を操って情報を引き出そうとすればどうなるか分かる?強力な自白剤で無理矢理情報を引き出したのと変わりないし、ノロの影響もあって、その人の精神も壊れやすくなる。」

 

更にタギツヒメは沙耶香に話す。

維新派に捕まった雪那は、大荒魂の精神支配を受けやすいノロのアンプルを打ち、無理矢理精神支配された状態でノロのアンプルの情報を引き出したことで雪那の精神は壊れてしまったとタギツヒメは説明していた。

 

「……それに、より精神支配を受けやすいようにするために、そのノロのアンプルを打つ前に爪を剥がすといった拷問もされたみたい。」

 

それだけでなく、大荒魂による精神支配を受けやすいよう精神を弱めさせるべく拷問された跡も残っていたと沙耶香に話していた。

 

「……それで、学長は……学長はどういう状態なの?」

 

タギツヒメの話を聞いた沙耶香は、今の雪那はどのような状態なのかとタギツヒメに訊くのであった。

 

「……拷問とノロのアンプルで無理矢理自白された影響で記憶が混濁していて……彼女は歩けなくなっただけでなく、記憶も20年前の大災厄後まで戻っていて、沙耶香のことも夜見のことも忘れている。」

 

それを聞いた沙耶香は、意気消沈していた。

……私が、私があのとき見捨てたからこうなってしまったのかと。

 

「……ねえ、沙耶香。夜見や結芽、優といった人達がああいう末路を遂げるノロの塊である荒魂と人間は本当に……それでも本当に共存できると思う?」

 

意気消沈した沙耶香を見たタギツヒメは、再度尋ねていた。

……ノロのアンプルに関わった人間は破滅していく、そんな事実があっても荒魂と人間は共存できるのかと。

 

「タギツヒメ……だとしたら、何で私を呼んだの?」

 

そう問われた沙耶香は、タギツヒメに問い返していた。

……なら、何故自分を呼んだのかと。

 

「……助けて欲しかったんだよね?一人じゃどうしようも無いから。だから、学長と話したことがある私を呼んで、それで学長と話をしやすくしたかったんだよね?」

 

そして、沙耶香に雪那と話をしやすくするために自分を呼んだのではないかとタギツヒメに尋ねるのであった。すると、タギツヒメは頭を縦に振りながら答える。

 

「……そうだよ。友達が……夜見が貴女の研究は無駄じゃなかったって、人を救ったって伝えたいんだけど、私はどうすれば良いのか分からないから……夜見が大切に想っていた学長は私のことを知らないから、驚かせて困らせたくないから……面識のある沙耶香が代わりにそれを伝えてくれたら……って思ったんだ。」

 

雪那に夜見の『貴女の研究は確かに人を救った。』という想いを雪那にとって面識の無いタギツヒメよりも、沙耶香が代わりに伝える方が良いと考え、此処に呼んだとタギツヒメは答えていた。

 

「……そっか、だったら、今度は私が助ける番。私は、私はできると思う。タギツヒメの言っていること。」

 

タギツヒメの返答を聞いた沙耶香は、荒魂と人間が共存できると答えると雪那の居る病室へと向かって行く。

 

「……ちょっと、お話……良いですか?……雪那さん。」

「?」

 

すると沙耶香は、雪那に話がしたいと言って、雪那の横に座るのであった。

 

「私のことを知らないかもしれ……ません。けど、私は貴女が居てくれたから……貴女は私に刀使のことや剣術のこと、色々大切なことを教えてくれたから……私は刀使になれました。」

 

そうして沙耶香は雪那に告げる。

酷いことも遭ったけど、貴女のお陰で刀使になれたと。

 

「……そして刀使になった私は、こんな私でも友達になってくれる人が居て、その人達からとても大切なことを学べました。……だから、私は貴女が居て……刀使になれたことをとても感謝しています。」

 

そして、貴女のお陰で刀使になれたから、私は友達や大切なことも学べる環境へ行かせてくれたことに感謝していると沙耶香は雪那に述べていた。

 

「それだけじゃない。……今は此処に来れない私の友達がみんな貴女のお陰で救われたことを伝えて欲しいと言っていました。……だから、自分のことを"使えない"とか、"役立たず"だとか卑下しないでください。私も……私だけでなく、私の友達も貴女のことを必要だと思っています!……だから、また私達の所に戻ってきて。」

 

そして、私だけでなく、私の友達も貴女にとても感謝し、必要だと思っている人は沢山居るから、自分のことを"使えない"とか、"役立たず"だとか卑下しないで欲しいと沙耶香は雪那に精一杯感情を込め、自分なりに考えて伝えるのであった。

 

「……そう…なんだ。何だか、嬉しいな。…………私、紫姉様からも、誰からも必要とされてないんじゃないかって思ってたから、……ありがとう。ごめんね。御刀しか渡せなくて……本当なら、私達の代で貴女達が怪我しなくて済むようにしなければならなかったのに……。」

 

沙耶香の、タギツヒメと夜見の思いを乗せた言葉を聞いた雪那は涙を流しながら、朗らかな笑顔で沙耶香に感謝の言葉を述べるのであった。

その憑き物が落ち、ノロのアンプルによって生じた苦痛から解放された雪那の姿を見た沙耶香は涙を堪えながら返答する。

 

「……ううん、大丈夫です。……糸見 沙耶香、任務に戻ります。」

 

雪那から受け継いだ妙法村正を携え、これからも刀使として活躍していくと。それを雪那に伝えた後、沙耶香は病室から退室して行こうとするが……、

 

「お務めご苦労様でした。沙耶香。……私も鳶が鷹を産んだようで誇らしいから、貴女も自身を持って励みなさい。」

 

背中から沙耶香は、雪那から幼げな声で激励の言葉を贈られるのであった。

 

それを聞いた沙耶香は、拷問とノロのアンプルで精神が壊された今の雪那を救うことができないという現実とノロのアンプルによって生じた苦痛しかない記憶を失ったことで幸せそうな雪那を想うだけで、感極まって涙を流し、雪那に悟られぬよう背中だけを見せて退室して行くのであった――――。

 

 

 

 

 

「これで良かったかな?タギツヒメ。……私、本当は学長と喧嘩別れしたことをずっと悔やんでた。……それで、私は今の学長を見て助けたいって思った。けど、あれしか方法が考えられなかった…………。」

 

退室した沙耶香は、入口で待っていたタギツヒメに問うのであった。

自分はこれぐらいしか解決方法が思い付かなかったと。

 

「……ううん、充分だよ。……きっと、あの人は誰かに必要とされたかっただけだったんだよ。……それを沙耶香が叶えたんだ。私こそ、ありがとう。……夜見の想いを、私の想いも伝えてくれて。」

 

沙耶香の出した答えにタギツヒメは認めていた。

こうして、人と荒魂は共存できると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――東京のホテルにて集まる維新派の刀使。

 

其処で彼女達は今後のことについて穂積達は語り合っていた。

 

「……どうですか?政府の方は?」

「ダメですね……二十年前の大災厄の真実を伝えたましたが……恐らく此方に付く気は無いでしょう。」

「となると、決起に参加してくれた若い子達には伏せて置かないと………。」

 

そう言いながら、穂積の政府に対して二十年前の大災厄の真実をネタにゆすることで、政府を此方側に付かせようとしたが、タギツヒメ側に付くということに変わりないことを聞いた冥加刀使達は意気消沈していた。

 

タキリヒメの活躍とタギツヒメの言葉により、荒魂を受け入れつつある世論。政府の施設を攻撃し、過激な行動を取る維新派。

 

この二つを比べればどちらを支持するかは明白であり、加えて交渉事において維新派は雪那といった交渉や根回しが得意な大人が居なかったがために政略において刀剣類管理局及び特務警備隊に全敗であった。

……そのため、維新派に味方する者は誰も居なかった。

 

(このままだと、私達は刀剣類管理局だけでなく、自衛隊と政府をも対立しなければならなくなる……。)

(そうなれば、私達40名程の新型S装備を装着した冥加刀使と80名程の決起に同意した若い刀使だけでは……数と火力の差が違い過ぎて勝ち目が無い。)

 

故に、維新派に属する冥加刀使達の中には動揺が走っていた。このままでは、40名程の冥加刀使と80名程の決起に同意した若い刀使(維新派になびく刀使が若い者しか居なかったというのが最大の理由ではあるが。)、それに刀剣類管理局に反旗を翻した元STT隊員と変革派の構成員という戦力のみで、日米両政府の支援を受けた特別祭祀機動隊と全面対決することになるのである。

こちらには、元STT隊員による銃の援護があるとはいえ、敵は陸上戦力と航空戦力が充分にある自衛隊と米軍の支援を受けているのであり、その差は歴然である。とても敵いそうにはなかった。加えて、最大の戦力である新型S装備を装着した冥加刀使が40名程居たところで敵はその倍の数で迫って来るうえ、衛藤 可奈美やタギツヒメといった実力の高い者が大勢居るため、どこまで勝機が有るか悩んでいたのである。

 

つまり、こちらは最大の戦力として新型S装備を装着した冥加刀使が40名程居るが、向こうは近代兵器と実力の高い兵と刀使が充実しているのである。兵の練度、戦力差、兵器の質、どれを取っても敵の方が上であった。

 

……認めたくはないが、かなり勝ち目は薄いとしか思えなかった。しかし――――、

 

「――――♪」

 

誰かが、刀使といった者達を称える綾小路武芸学舎の校歌を歌い始めたのである。すると、不思議なことに周りの冥加刀使達も感化され始めたのか、同じように謡い始める。

 

「――――♪」

「――――♪♪」

「――――♪♪♪」

 

そうして、彼女達は伍箇伝の校歌を謡うだけで、砂漠の上に泉が湧く様に勇気が彼女達の奥底に浮かび上がってきたのだ。不思議とどんな敵でも勝てるような気さえした。それ故に、綾小路武芸学舎の校歌を謡い終えると、次は自分達が所属し憶えている鎌府、美濃関、平城学館、長船女学園の校歌を謡い始めていた。

 

そうするだけで、皆が皆笑顔になった。所属する学校が違うが、それだけで一つになれた様な気がした。死ぬかもしれない戦いへ赴くことができるような気がした。

 

 

 

…………無謀な戦いへ向かうということを忘れて。

 

 

 

こうして、可奈美は笑っているかどうかも分からないままに、自分の心と肉体が分離した状態のままで。

沙耶香も自分の心を偽り、他者を励ますという、自分の精神と現実に在る物と剥離した状態で。

……そして、冥加刀使達も現実を忘れ、夢現の中で戦いに赴くという現実から最も遠退いた状態で。

 

 

精神と感情、感情と言葉、言葉と現実から剥離した少女達は、子供達はそんな狂った状態で子供達も戦う狂った戦場へと赴くのである。

     

      

      




     
     
昔の高津おばちゃんに戻して。(精神のみ)
高津おばちゃんが無罪放免なのはおかしい。(拷問+自白剤で精神崩壊)

……これ以上のことをお望みで?
     
     
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