134話を投稿させて頂きます。
人や組織を追い詰めると死に救いを求める無敵の人になる。
そんなことも分からない……いや、気付いていないフリをしている世の中になったんだなって思うわ。
荒魂を守ろうとする特別祭祀機動隊第二班。荒魂のために道を作ろうとする維新派。
その両者の戦いは第二班が圧されるという熾烈を極める戦いへとなっていった。
その理由は、大坂夏の陣にて活躍した真田信繁といったの豊臣側の諸将による決死の突撃により、慌てふためいた徳川軍の如く維新派の突然の猛攻に驚いた特別祭祀機動隊第二班は対応が遅れ、苦戦を強いられていたからである。
無論、それだけでなく冥加刀使達は、頭や腕といった自分達が負傷した箇所に包帯をわざと相手に見えやすい様に大きく巻いて第二班の刀使達の同情心を煽ったことも一因していた。
「イチキシマヒメは私がやる!他の人は冥加刀使をお願い!!」
可奈美がイチキシマヒメを取り込んだ静を“御刀による会話”でもう一度説得するべく、周りに居る第二班の刀使達にそう言って激を飛ばすが、
「くそっ!……私達はっ!」
頭や腕といった自分達が負傷した箇所に包帯をわざと相手に見えやすい様に大きく巻いて同情心を煽る冥加刀使達の行動は、特別祭祀機動隊第二班に属する刀使達に対して効果は絶大であった。
理由は、刀使同士で戦い合っているのだということを再認識させるだけでなく、第二班の刀使達の中には刀使同士の戦いの中で荒魂であるタギツヒメを守っているという事実が受け入れ難いという考えの者もあり、それ故に自然と剣先が鈍る者が現れ、部隊全体の勢いと士気の低下に繋がったのである。
「今だっ!敵は怯んだぞっ!!」
相手の勢いが弱まったことに気付いた冥加刀使の一人が今が押し時であると皆に告げる。
その言葉を聞いた他の冥加刀使達は鬨の声を上げ、更に気迫を上げるのであった。その人とは思えぬ奇声を出す鬨の声と気迫に乗った勢い、鋭い剣先が特別祭祀機動隊第二班に襲い掛かってくる。
「ぐっ!……こなくそ!!」
「待って!相手は写シを張っていないから、峰打ちで応対して!!」
冥加刀使の凶刃を写シで受けた第二班の刀使は、返す刀で反撃を試みるが分隊長の言葉で止まり、直ぐに命令に従い峰打ちで対応していた。
(!……あんなボロボロの姿で。)
しかし、所々に血の跡と包帯が巻かれ、満身創痍となった冥加刀使を見た刀使は、これ以上打ったり、斬ったりすれば本当に死んでしまうのではないのか?という疑念を強く抱いてしまったが故に、峰打ちで強く打つことに躊躇してしまう。
……それだけでなく、イチキシマヒメの力を取り込んだ静の姿が一番酷かった。左目はくさったしたいのように飛び出ていて、尚且つ、右脇腹が切り裂かれているのか、その部分から腸が這い出ていた。その壮絶な姿を見ただけで第二班の刀使は戦意を喪失しそうになり、第二班の刀使達の士気は下がり、勢いは失われつつあった。
「今だ!押せ!押せぇーーーーっ!!!!」
「死んだとしても、イチキシマヒメがみんなの命を拾ってくれる!命を惜しまないでっ!!!!」
「もう少し。後もう少しで!!!!」
反して、維新派の冥加刀使達は、自衛隊のりゅう弾砲による砲撃と東京ホテルでも襲撃されたこと。政府の維新派と冥加刀使の荒魂殲滅の思いを否定されたこと。そして、荒魂であるタギツヒメを支持したこと。……そんな刀剣類管理局にも戻れない四面楚歌のような状況下に遭っても、自分達が死に自らの体内に在る荒魂をイチキシマヒメに捧げることでイチキシマヒメの力を強め、この荒魂を認めつつある世界に一矢だけでも報いることができればという思いが強くなってしまった冥加刀使達は、自分達が生きていく現世に希望が見いだせなくなったことも起因して、自ら進んで囮となって命を散らすことも構わなくなっていくのであった。
そうして、死の崇拝を求めるようになった彼女等は進んで死をも恐れぬ無謀な突撃を狂ったように何度も繰り返すのであった。
……そのため、相対する第二班の刀使とは対照的に冥加刀使の士気は大いに上がっていた。
「「「「――――!!」」」」
その鬼気迫る思いと先に進むことしか活路を見い出せない状況下によって死んだ冥加刀使達が紡いだ思いを受け継ぎ、その思いから怒りと嘆きを表現するかのように、獣のような雄叫びが入り混じったおおよそ人とは思えぬ不気味な声を出し、その人とは思えぬ奇声と共に生まれた決死の、第三者からすれば、死を求めているかのように見える狂気染みた突撃は徐々にではあるが、刀剣類管理局第二班の刀使達を臆させ、冥加刀使達はタギツヒメが居るところへと圧し進めていくことができたのである。
この状況を見た紫は、タギツヒメを維新派に渡される訳にはいかないと思い周囲に激を飛ばす。
「不味い……徐々に圧され始めているぞ!盛り返――――」
しかし、それに反して紫の言葉は最後まで紡がれることはなかった。
何故なら、紫の右肩に対刀使用の矢が刺さってしまったからである。
「……あっ……ぐぅ……。」
紫は痛むのか、足に膝を付けるものの、どうにかボウガンの矢を引き抜こうとするが、あることを咄嗟に思い付き、引き抜くことを中断、矢が刺さったままの状態で立ち上がる。
紫がボウガンの矢を引き抜かなかったのは、第二班の刀使達がタギツヒメ防衛に積極的ではないという芳しくない状況を好転させるためには、矢が刺さったままの状態である方が良いからである。
「………イチキシマヒメがタギツヒメを取り込めば、20年前以上の禍神となる!!……各員、タギツヒメの防衛に尽力せよ!!」
「りょ……了解!」
矢が刺さったままの状態で尚も立ち上がり、奮戦する自身の姿を指揮下にある刀使に見せること。
そうすることで、紫は指揮下にある刀使達の士気の上昇と周囲の刀使達がタギツヒメ防衛に積極的になるように仕向けたのである。……その結果、紫の尚も奮戦する姿を見た第二班の刀使達は尊敬する紫を守るべく勢いと喪った士気を取り戻し、冥加刀使達の決死の突撃の勢いは止まりつつあった。……それだけでなく、
「ギェッ!」
「がっ!」
銃声が鳴り響くと同時にボウガンの矢が冥加刀使達の横から襲いかかってきたのである。
特別祭祀機動隊が押され始めたのをようやく察し、味方である第二班の刀使達に銃弾が当たらない位置にやっと移動できた自衛隊の部隊が冥加刀使達に対して89式の銃撃と対刀使用のボウガンを織り交ぜた攻撃を冥加刀使達に加えたことで、決死の突撃で先程押していた冥加刀使達は砲兵という戦場の女神の罰を受けた呪いのせいか、一転して窮地に陥ることになるのであった……。
――――その一方で、可奈美は静と剣を交えることで説得を試みていた。
「もう戦いは決したよ!降伏してっ!!」
「イヤだよ!!……だって私はまだ動けるんだものっ!!」
可奈美は、身体中が紅い鮮血で染まっていることで綾小路武芸学舎の制服は白から朱い色になり、砲撃の破片で斬られたせいか、腸が這い出ているうえ、左目がブランブランと揺れながら飛び出ているという一目見ただけで重傷以上の傷を負い、イチキシマヒメが取り憑いたことで強化された身体のお陰でどうにか命を繋いでいるであろうことが分かる静の姿を見た可奈美は、静の身体を先ずは集中治療室に送れるよう降伏を促していた。
しかし、静は可奈美の説得に動じることなく「動ける」という理由で未だに可奈美相手でも御刀を振るい戦おうとしていた。
「……それに、この傷……この遺してくれた物が……お母さんと……お父さんの声を聴こえるようにしてくれるんだ!聴こえるんだ!!……全てはあなたのためだって!全ては私達のためだって言って……殴ってくれるんだ!!アイシテクレルンダッ!!」
そして静は叫ぶ。
このお母さんとお父さんが付けてくれた身体に遺る傷と痣、その古傷から生じる“痛み”からお母さんとお父さんの声を思い起こさせてくれると。母と父の愛を感じられると。
「この傷の痛みは神様からのギフトだって、神様が生きていて良いという宣告だと思えば……辛くなくなったんだ!!ありがとう、神様!私を荒魂と愛し合わせてくれる刀使にしてくれて!!!!」
そして静は叫ぶ。
このお母さんとお父さんが唯一与えてくれた身体に遺る傷と痣、その古傷から生じる“痛み”は神様が生きている証拠だということを告げるものだと思えば辛くなくなったと。
「……辛くなくなった?……え?どうして?私のこの傷は辛いものじゃなくって、でもでもでもそれだと何で辛くなくなったとか思ってるの?……私は、私はワタシはアタシは………お母さん!!お父さん!!」
静は、お母さんお父さんと言って助けを求めるように叫んでいた。
「……ああああアンタだねぇっ!!私の子をアレコレ言う子は!!私の教育方針に――――」
そして、静はまたも何かに取り憑かれたかのように表情が笑顔から憤怒に変わると、可奈美に向かって御刀を振り下ろそうとするが、可奈美に届くことはなかった。
何故なら、静は可奈美に近付く前に、可奈美の身に危険が迫っていると判断した自衛隊員の銃撃とボウガンの矢で可奈美を静から離そうとしていた。
………その結果、銃撃とボウガンの矢を一身に受けた静は、可奈美から距離を離されるようにどうっと倒れた。
「……アンタら……私の娘に何すんのおぉぉぉぉっ!!!」
「逃げて!!」
しかしイチキシマヒメを取り込んだ静は、大荒魂の力によって身体能力が大幅に強化されているせいか、左目が潰れ、右脇腹から腸が溢れ出ているだけでなく、綾小路の白い制服が朱い鮮血でほぼ全身が彩られ、89式の銃撃と対刀使用のボウガンの矢を受けたにも関わらず生きていた。……いや、どうにか生かされている。というべきであろうか。
そのため、静は強化された身体を無理矢理にでも動かし、自衛隊員達に迫るが可奈美にそれを遮られる。
可奈美は静に近付くことで、静が自衛隊員達の銃撃に晒されることがないようにしていた。そうすることで、可奈美は静を死なせないようにしていた。
可奈美は静が死にかけの状態であることは分かっていた。だが、それでも、ほんの少しでも良いから、静を助けたかった。
静と剣を通じて分かったことがあるからである。
本当は、両親を殺したことで罪悪感を感じ、そのように振る舞っていること。
本当は、傷付けることも痛いのも辛いと感じているが、その辛さを覆い隠すためにそのように振る舞っていること。
本当は、両親を自分の手で殺したことが辛いから、そのように振る舞っていること。
(……けれど、悲しいよ。そんなの。)
今の可奈美は、それが痛いほど分かっていた。
だからこそ、彼女は静を助けたかった。救いたかった。
「もうやめて、その子のことを自由にして!」
だからこそ、可奈美は叫んだ。
「あぁ!!?この子のこと、何も知らない癖に!親でもない癖に!アンタ何様だよォおぉォオ!!!!」
「お母さんなら……お母さんなら、少しはその子を労って上げてよ!今まで、貴女のために頑張ったんだから!もうやめてよぉっ!!」
しかし、静に取り憑いたのか、それとも憑依芸でそうなりきったのかは不明であるが、静は可奈美の説得を聞き入れなかった。
「うるさいうるさいうるさあぁぁぁいっ!!私の娘なんだから私がどうしようと――――」
静はそう言って叫ぶと、イチキシマヒメによって強化された身体を使って可奈美を弾き飛ばす。そうして、可奈美を弾き飛ばし、騒ぐ静を見た自衛隊員等は可奈美が不利であると判断し、可奈美を救出するべく、静に向けて89式小銃と対刀使用のボウガンを放つのであった。
「!……待って、待ってください!!」
それを見た可奈美は必死で声を上げて止めようとする。
だが、自衛隊員達は死んだ目で、心を壊して静に銃弾とボウガンの矢による“痛み”を与え続けるのであった。
「……止めて……止めてよう…………。」
力無く項垂れながらも、可奈美は自衛隊員達を止めようとした。
親の呪縛に捕らわれた彼女を救いたかった。親の影響で苦しんでいる彼女を助けたかった。親の影響で刀使になった自分に通ずるものがあったから幸せになってほしかった。
それ故に、可奈美は自衛隊員達を止めたかった。しかし、突如として蝶形の荒魂が可奈美と静を銃撃していた自衛隊員達に襲いかかってきたのである。
「刀使は死ね!!みんな死んじまえ!!そしてノロだけを寄こせえエェえヱぇ!!!!」
その蝶形の荒魂を操っていたのは、声帯も荒魂化しつつあるせいか聞いているこちらの頭がおかしくなりそうな声を上げている和樹であり、和樹が蝶型の荒魂を使った理由は、周囲に居る刀使と自衛隊員達の視線を静から外し、静が持つ莫大な量のノロを奪うためであった。
それに気付いた可奈美は、静が殺されないようにするために和樹を八幡力の力で蹴飛ばすと、こちらに注意を向けさせることができるであろう言葉を和樹に放つのであった。
「特別祭祀機動隊所属の刀使です!荒魂から離れてください!!」
それを聞いた和樹は怒りの表情をしながら、可奈美に向かって叫ぶ。
「……御刀っていう生け贄を要求する悪魔の手先がっ!……偉そうに、偉そうに人を化け物扱いしやがってええエェえヱぇ!!!!」
悪魔の手先に人を化け物かどうかの選別はされたくはないと言って、刀使から奪った物なのかは判然としない御刀を手に持ちながら、可奈美に向かって罵詈雑言を放つ。
悪魔の手先。
今の和樹にとって"御刀"とは、それを手にする"刀使"とは、
年上で和樹にとって最大の理解者であり、刀使だった初恋の女性を冷たい骸に変え――――、
敬愛する結月を才も家庭環境も恵まれた刀使の結芽に奪い盗られ――――、
収入面から刀使となった妹に見下され続ける日々を送らされ――――、
そして馬鹿高い税金によって、それが刀使の給金となることに憤りを感じながら――――、
怒りと搾取の日々を送り、それに耐え続けていた。
『お前、刀使の妹と比べると全然ダメだなぁ!!』
学校でも自分の家でも刀使に選ばれた妹と比べられる日々を送らされ、
『お前、刀使の妹が居るのに剣術弱いじゃーん。』
学校でも職場でもそう嘲られ、それだけでなく刀使が家族に居るということで特別視され、精神的にも肉体的にも虐められる日々となり、
『お前、国家公務員の刀使の妹が居るんだから金持ってんだろ?』
学校でそう嘲られ、職場からもそう冷やかされ続けられ、相手の溜飲だけが下がる日々になっていた。
――――そうして、僕は生きてきた。いや、みんなのおもちゃとして虐げられ、罵られるためだけに生かされ続けてきていた。
親も誇りも尊厳も初恋も愛も金も体力も自身が望む環境も………いや、僕の中に在った全てを刀使と御刀という存在が社会を変え、そんなふうに変えられた社会が僕の全てを断りもなく勝手に奪っていったのだ。
和樹は、そう思うだけで、刀使と御刀が悪魔の手先に見えて仕方なかった。
それ故に和樹の中には、人と刀使に対する怒りや怨恨で満たされていき、それを原動力として、人として最早機能していない身体でも動かすことができた。……そして、力の限り叫ぶことができた。
「……僕の身体はもう荒魂化が進んでいる。この国は、この世は出自が全てなのか!!?自分達の子供に使命を、自分のエゴを嫌でも受け継がせる……いや、押し付けるのが正しいのか!!?その両方を持ち合わせていない僕は生きている資格でも無いと言いたいのかぁっ!!!!
年収500万以下のボクは人生の落伍者なのか……?」
嘗て、婚活活動している女性の声がネット上で広がった言葉、
『年収500万くらいの“普通の人”が良いです。』
その言葉は、今も不況でフリーターしかまともな働き口しかなく、とても到達できない額を提示させられた和樹にとってみれば、それは結婚すらもできないということでもあり、自分は『普通』という枠組みから外されたのと同意義であり、命の輪から外されたのと同じ様なものであった。
……だから和樹は叫ぶ。僕は人生の落伍者なのかと?僕はこの世界からも要らざる者として見られているのかと?
「……僕の全てを奪った刀使と御刀を優遇するこの世界が正しくて、生まれや環境で全て決まるっていう世界に僕が不要だというなら、子供を残せない命の輪から外れた僕が、その世界に背を向けて普通じゃない人間以外の怪物となって何が悪いって言うんだ!!税金ばっか取って来るお前達がこうなることを望んだろうがっ!!!!」
だから和樹は叫んだ。
この社会が僕に"人生の落伍者"という怪物の役を押し付けるように与えたのだと。この社会が僕を命の輪から外れた存在にしたのだと。
「人間の世界から排除された人は、他の人と同じように扱われなかった者は、怪物以外になるしかないだろうがぁァあぁアっ!!!!」
そう言って和樹は手にした御刀を持って、可奈美に向かって走り出すのであった。
人間の世界に排斥された者は、みんなと同じように扱われなかった者は、怪物になるしかないと。
計らずも和樹は、荒魂化が進んだことで、身も心も異形と呼ぶに相応しいほどに歪み、最初に抱いた喪失感を怒りに変え、その怒りを以って人を襲う怪物となった。
そして、人はノロを体内に入れる以外にも人を襲う怪物になれることを和樹は可奈美の目の前で証明してしまうのであった……。
形勢が逆転したことを見届けた紫は、ボウガンの矢を引き抜くと、力を温存すべく写シを解除する。すると、右肩に激痛が走り、何事かと思い自分の手に持つボウガンの矢を見る。すると、そのボウガンの矢には矢尻がなかったのである。
……ということは、写シの身体の中に矢尻が残るように細工が施された対刀使用のボウガン。今回の作戦にて、刀剣類管理局が防衛省に提供し、使うことになった自衛隊員が使っていた物を東京ホテルで冥加刀使達が鹵獲し使ったというところであろう。
「紫様、如何しましたか?」
しかし、傍に控えている刀使に自身が重傷であることを明かし、やっと形勢が逆転したこの戦闘をまた崩壊させる訳にはいかないと判断すると、紫は何事も無いかのように振る舞うのであった。
「……いや、何でもない。……ただ、疲れた。……歳なのかもしれんな。」
……そう、疲れた。
紫はそう思いながら、親友を救いたかったがために大荒魂の提案を受け入れ、一騒乱を起こしてしまったこと。
ノロのアンプルを製作したせいで親友である美奈都の息子と自身のことを信頼していた親衛隊をノロ漬けにしたこと。
そのノロのアンプルの製作に協力した二人が重傷と精神が崩壊したこと。……それに、刀使に対して致命傷を齎すであろう対刀使用のボウガンを作ったこと。
………そう考えるだけで、紫は対刀使用のボウガンを受けることになってしまったのは天罰のようなものなのだろうと一人で納得していた。
故に、痛みで顔をしかめ、後ろに下がる訳にはいかないと思い、悟られぬよう両の足で立ち続けていた。
「獅童の隊はどうなっている?」
そのため、真希にこの場を引き継いでもらうため、付近にいる通信担当の刀使に尋ねていた。
「はっ!真希隊長の方は、砲撃の爆発音と衝撃に畏怖を抱いた若い刀使達が続々と投降の意思を示しているようです。その後は柳瀬、岩倉隊員といった刀使とSTT隊員数名に投降した若い刀使達のことを任せ、真希隊長は自ら隊を率いて、こちらに向かっているとのことです。」
「……そうか、……助かる。と伝えておいてくれ。」
「分かりました。」
真希が『革命』という血気に逸った若い刀使達を早期に降伏させ、冥加刀使達との戦闘が続くこちらを掩護すべく、指示も無しに来てくれていることに紫は右肩を負傷させてしまったこともあって、素直に真希に感謝の言葉を述べるのであった。
やはり、自身の不在も考慮し、真希には剣術だけでなく、異性同性問わずに人気がある部分を将器として昇華すべく作戦指揮能力も伸ばすために寿々花を付かせて作戦指揮を主にさせたのは正解だった。
紫はそう思いながら、安堵する。……だが、
「……紫様、蝶型の荒魂が現れたとのことですっ!!」
まだゆっくりできない事態に発展したと判断し、紫は直ぐ様近くに居る刀使達に続けて指示を飛ばすのであった。
でも、
大学の奨学金を返せず自己破産。
ボケてしまった親の介護。
精神病を含む病気による実家帰り。
コロナによるリストラ。
ガクチカ無しの就職難。
親の死。
とかを和樹くんに体験させてないから、酷い目に遭わせるとか言ってたけど少し甘かったかな?