【完結】刀使ノ巫女+α   作:tatararako

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137話を投稿させて頂きます。
   
   




    

    

「師匠が来ないなんて…そんなの初めて。」

 

鳥居と階段だけが見えるだけの霧に包まれた空間で、可奈美が一人だけ居た。

いつもなら、師匠である美奈都が居るはずなのだが、可奈美以外は誰一人として居なかった。

 

「お母さん……。」

 

そのため、一人だけの空間に居ることに孤独を感じ、お母さんと一人、霧と共に消え入りそうなほどの小さな声で呟くのであった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そうして、気を失っていた可奈美は目を覚ますと、見慣れない緑の天井を見て、何処かの医療テントの中にあるベッドの上で寝ていたと直ぐに理解した。

そして、どうして此処に居るのかを思い出していた。

 

…………確か、東京23区で維新派が起こしたクーデターを鎮静化するべく出動して、そして、

 

『これは私のお母さんとお父さんが唯一くれたもので、唯一遺してくれたもので、唯一の教訓で愛してくれた証なんだっ!!』

 

“暴力“を“愛情“だと誤認することで、今まで生きてこられた刀使と戦い、

 

『……身体はもう荒魂化が進んでいる。この国は、この世は出自が全てなのか!!?自分達の子供に使命を、自分のエゴを嫌でも受け継がせる……いや、押し付けるのが正しいのか!!?その両方を持ち合わせていない僕は生きている資格でも無いと言いたいのかぁっ!!!!

年収500万以下のボクは人生の落伍者なのか……?』

 

そしてこの世を儚んで、荒魂になることを望んだ者と出会ってしまったこと。

 

「…………。」

 

可奈美は、荒魂になることを望んだ者である和樹のことを思い出すと、刀使は、本当に『正義の味方』であるのか?本当に人を……人を守って、感謝されて、剣術も学べるのだろうか?最高なのだろうか?

 

『……ねぇ可奈美。刀使って素敵だと思わない?人を守って、感謝されて、剣術も学べる。最高だよね。』

 

……誰の言葉か分からない。大切なことだったと思う。

でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ……。

 

『……そうなんだ。だったら僕もそんな大好きでカッコイイお姉ちゃんの助けになりたい。』

『……そう、ならおねえちゃんに任せようかな、……お願いね、おねえちゃん。』

 

……小さい子との約束も、母との約束も守れなかった。

 

『お前等が!おねえちゃんを……僕に唯一優しかった人を刀使に仕立て上げて、奪っただけでなく殺したんだ!!』

 

その言葉が可奈美の心に反駁されながら、傍に置かれてあった千鳥を見て可奈美は怨みの籠もった目で睨みながら、ふと呟いてしまう。

 

「………何で、何で神様は御刀なんて創ったの?……何で刀みたいな姿になってんの?何で男の子でも刀使になれるようにしてくれなかったの?何で珠鋼とかいう訳分かんない石ころが有るの?何で荒魂と刀使を斬り合う関係にしたの?……ホントにさぁ、ホントに本当の……お母さんも優ちゃんも……何でそんなに私の家族の命を奪うの?……怨むよ神様?バカじゃないの神様?何考えてるの神様?」

 

母の美奈都を刀使にし、死に追いやった千鳥に対して、御刀の材質である珠鋼から出て来たノロが弟の優に取り憑いたことに対して、千鳥に文句を言っていた。

まるで意味が無く、何一つ意味の無いことをやっているのだと可奈美は自覚していた。……だが、言わないと気が済まなかった。

 

「……聞いてるの?ねえ、不純物とか言われている荒魂は喋れるのに、あなたは母親みたいなものなのに何で喋ることすら出来ないの?……何か喋ってよ!!」

 

可奈美は千鳥に向かって叫んだ。

不純物、負の神性を帯びていると言われているノロは結合すれば、やがては人語を解するまでに知性を獲得するというのに、正の神性を帯びた珠鋼から創られた御刀は人語を解する知能も無ければ、自分達が気に入った少女でなければ、何もしない身勝手で我侭な神様であることに怒りの感情を抱いた。

 

『それってまるで母親に抱かれて安心する子供のようだとは思わないかい?』

 

そして、ノロの母親であるのに何もしないことに不満を述べるのであった。

 

珠鋼をノロに近づけることで、ノロの穢れが距離と時間に比例して減少が計測されているため、ノロが徐々に清められているという実験の結果を理由にしたフリードマンの話しが本当なのであれば、珠鋼はノロの母親である。なのに、ノロの塊である荒魂に対して何も言わないことに、可奈美は苛立ちを覚える。

 

……まるで、静の母親のように親の責務を果たしていないように見えたことも一因して、可奈美は苛立ちが募った部分もあるが、その様は人によっては言うことを聞かない物に癇癪を起し、八つ当たりする子供の様に見えることであろう。

……だが、それでも可奈美は御刀が喋って欲しかった。母のように喋ってくれたら、この苦境にも何か助言を与えてくれるような気がするから人の言葉を出して欲しかった。

 

「私のお母さんを死なせておいて、そして今度は私が助けたかった人を斬ることしかできなかった。……ノロも珠鋼も、結局は人から何か奪うか、寄生するしか能が無いのに、何でこんなのが……何でこんな石ころを生んだの?神様?私達みたいな子が荒魂や私達が戦い合う姿がそんなに見たかったの?……酷い神様。酷い神様酷い神様酷い神様酷い神様酷い神様酷い神様。」

 

可奈美は御刀が人語を解し、喋らないことは頭で解っていても、可奈美は御刀に話しかけていた。

 

……狂っているのかもしれない。と可奈美は思った。……だが、"剣術を通じて相手を理解しようとする"のは、まともな人間の思考なのかと考えている可奈美も居た。

 

本当に理解できているのであれば、写シの上とはいえ御刀で斬った相手の痛みを理解できなかったのか?……いや、理解できていないのだ。私は今まで斬ってきた人に対して何か思うことでもあったであろうか?そんなことすらも考慮せず、斬り合いをすることを押し付けたのではなかろうか?

現に、姫和が御前試合の最初に戦った綾小路の代表との戦いで姫和が勝ったが、その綾小路の代表は姫和の鋭い一撃を受けて倒れ伏し、写シを張っていたにも関わらず、痛みにもがき苦しんでいた。

 

その一幕を思い出した可奈美は、結局のところは自分の得意分野で好き勝手にしたかっただけではないのか?と思い詰めてしまう。

 

それに、相手次第では剣術を通じて理解できるとは限らないのだ。

……もしも、嘗ての優のように、相手が剣術が出来ない場合は一生通じ合えなくて良いのだろうか?自分の最も得意な分野での会話は自分のペースでしか喋らない物であり、一方通行過ぎる会話は……独り善がりの会話は果たして"対話"と言えるのだろうか?という考えに可奈美は至ってしまう。

 

『――――優しいし友達思いだけど冷たくて自分本位。』

 

誰の言葉だったか思い出せないが、多分、恐らくはその誰かが私に向けたメッセージなのだろうと思う……。

しかし、今の可奈美にとって、その"誰"が述べたか判然としない言葉は冷たいナイフとなって可奈美の心にグサリと刺さったように感じられた。

 

優が言っていたのだろうか?父が言っていたのだろうか?……それとも、母が言っていたのだろうか?

 

「……答えてよ。…………ねえ、一つぐらい答えてよ!神様なんでしょう!!?ノロのお母さんなんでしょ!!?役立たずの神様!!!!」

 

優も救えない。静も救えない。荒魂化した人も救えない。……結局は荒魂化した和樹も斬ることしかできなかった。

 

可奈美は刀使になっても斬ることしかできない。

 

……剣術しか取り柄の無い自分に辟易していた。母の美奈都は20年前の大災厄が原因で早世し、弟の優も荒魂として死んでしまう。大切な存在も、守りたかった信条も、刀使としての誇りも全てを失うような気がしたのだ。可奈美の全てが荒魂や御刀によって奪われるような気さえしたのだ。

 

故に、可奈美は自身の御刀千鳥にあらん限りの怒号で叫んでいた。……役立たずの神様だと言って。

 

「可奈美ちゃん!?」

 

その声を聴いた舞衣が、何事かと慌てた様子で可奈美の居るテントの中へと入って来る。それを横目で見た可奈美は、いつもの作った笑顔で応対する。

この笑顔という名の能面を被り続けている間は母と同じで、いつも明るくて元気な剣術好きの少女を演じることができるのだから。天国に居るであろう母の美奈都がその姿を見れば安心するだろうから。……だからこそ、可奈美は笑顔の仮面を作る。例え、本心が苦しくても。片方だけ口角を僅かに上げたとしても。

 

「……舞衣ちゃん。私が戦ってた人は?戦闘はどうなったの?」

 

可奈美が片方だけ口角を僅かに上げたのを見た舞衣は、可奈美の弟である"優"がどうなったのかを気取られぬように可奈美が戦っていた荒魂化した和樹の末路と東京23区で起きた冥加刀使達との戦闘がどのように終わったのかを可奈美に話すのであった。

 

「……可奈美ちゃんが戦っていた人はタギツヒメが討伐してくれたよ。タギツヒメが対処してくれたお陰で蝶型の荒魂が散らばることが防がれたみたい……。」

「そう……なんだ…………。」

 

舞衣から荒魂化した和樹が討伐されたことを知った可奈美は、自分の無力さを感じながらも気分が悪くなってしまう。

 

『いやだよ……もう、ツライよ。……この場所が、だから……助けて、タスケテ、たすけて……おねえちゃん、聞こえてるんでしょ!!おねえちゃーーーん!!!!

 

何故なら、和樹が今わの際に泣き叫んだ"おねえちゃん"という言葉が可奈美の中で何度も繰り返し反響することで、否が応でも優のことを思い出し、半ば荒魂化した人でもある弟の優にも同じようなことをするのかと自問自答してしまうからであり、……そして、自分が優を斬り、優の血かノロか分からない血糊をべったりと付けた己自身の姿も想像してしまう。

 

どう足掻いても自分は荒魂を斬ることが使命の刀使で、心の底から救いたいと思っている優は荒魂となる未来しか思い浮かべなかった。

それ故に、今度は自分自身の手で大切なものを斬らなければならないのかと思うと、可奈美は気分が悪くなり、精神が疲弊していくが、可奈美はその心苦しさを歯を食いしばって耐えていた。

 

何故なら、平静を装うために、冥加刀使達がどうなったかを聞かなければならないのだから……。

 

「……舞衣ちゃん。……維新派の人達は?みんな死んでないよね?」

「……うん。維新派の決起に参加した若い刀使の子達は砲撃の威力を見て殆どが投降したみたいだから……その子達も刀剣類管理局に残る意志があれば復帰できるみたい。」

「そうなんだ……よかった。」

 

舞衣の維新派の決起に参加した若い刀使の子達は投降すれば、許されたことに安堵した表情を見せる可奈美に、舞衣はその刀使達が罪滅ぼしという理由で、常に最前線送りとされることを知っているために何とも言えない気分となる。

 

「……舞衣ちゃん、余り元気が無いようだけど。どうかしたの?」

「え?……あ、うん、それは……その子達はこれから、罪滅ぼしの名目で常に最前線送りとなるそうだから……それが、ちょっと気がかりで……。」

 

が、舞衣は可奈美が維新派の決起のことについて深く追求し、維新派の一部の者達と優がどうなったかを気取られぬ様に、維新派の決起に賛同した若い刀使達は決起に賛同したことに対する罪滅ぼしの名目で常に最前線送りにされることを正直に話していた。

 

「……あっ、でも私がその子達の指揮監督をすることになったから……その子達が少しでも生き残れるように鍛えてもらって良い?」

「うーん、舞衣ちゃんの頼みなら……仕方ないかな………。」

 

そして舞衣は、今の可奈美のままで居て欲しいが故に、彼女の好きな剣術をずっと続けれる環境へ送ろうとしていた。……凄惨な戦場には、彼女に相応しくないのだから。

 

……そう、東京23区での戦闘は狂気が詰まったような場所だった。

 

戦場の神様という砲兵に、いや、今やコンピューターによって砲撃の精度が上がった機械仕掛けの神様によって駆逐される神の恩恵を受けた名を持つ冥加刀使。

アメリカ製の無人機リーパー……いや、人造の死神によって、神の恩恵を受けた名を持ち人の手によって創られた御刀を持つ冥加刀使は殲滅されるという皮肉。

アメリカ製の誘導砲弾"エクスカリバー"というアーサー王が所持する聖剣によって駆逐される神性なる御刀を持つ刀使。

古来からの言い伝えを守る刀を持つ者達が近代兵器と数の暴力によって殺され、刀の時代の終末を告げて来たかのように幕府軍に思わせた鳥羽伏見の戦いを連想させるような戦場。

 

……もしも、土方歳三が東京23区の維新派の末路を見たら、「もはや刀や槍の時代ではなくなった」と嘆くであろうか?と思えるほどの凄惨な戦い。

 

そんなことを語っていたり、考えたせいであろうか?舞衣は、可奈美には言っていない若い刀使達を扇動した指揮官達の末路のことを思い出していた――――。

 

 

 

 

 

――――真希が第一班の援護へと向かうために、第二班が制圧した区域の維持と決起に参加した若い刀使達の処遇といったことを任された舞衣と早苗といった指揮官と沙耶香といった隊員、それに決起に参加し投降してきた若い刀使達が数名残っているという未だに年若い少女しか居ない甘ったるく、青い匂いがしてくるが、刀を持った少女が同じ制服を着ている少女を拘束し、引っ立てているという刀使以外の者が見れば、気味が悪いという感想しか出てこない現場にて厳つい警察護送車が何両か現れ、その警察護送車からバイザー付きのヘルメットと身体の至る所にボディアーマーを装着するという重武装をしているSTT隊員が何名か出て来たのである。

 

「柳瀬隊員と岩倉隊員でありますか?……私共は指令所からの勅命により、決起の参加を促した容疑者等の護送を任された者達です。彼女等の身柄をこちらに引き渡して頂きます。」

「……少々、お待ちください。」

 

その重武装をしているSTT隊員達が舞衣と早苗に近付くと、開口一番に維新派の決起に参加した若い刀使達の指揮官の身柄を渡して欲しいと言われた舞衣は、真偽を確かめるべく寿々花に確認を取るのであった。

 

「……此花さん。指令所からの勅命から来たとSTT隊員等が来ているのですが、間違いは無いでしょうか?」

『ええ、確認しましたが、それは私が出しましたので相違はございませんわ。そのSTT隊員に引き渡してくださいませ。』

「わかりました。」

 

そして、指令所に居る寿々花から確認を取った舞衣は部下に手で指示を出すと、部下の刀使が維新派の刀使を拘束し引っ立てているところをSTT隊員に見せることになり、その様を見たSTT隊員は怪訝な表情をするのであった。

 

「それでは、宜しくお願いします。」

「……了解しました。それでは、護送任務に向かいます。」

 

STT隊員の反応を見て、信用できると思った舞衣は若い刀使達の指揮官達を引き渡してしまうのであった。そして、補導される彼女等の後ろ姿を見ながら、彼女達の安否を祈るしかできなかった……。しかし、その数分後――――。

 

パン、パンという発砲音と共に通信が流れてきた。

 

『至急、至急!護送車輛が襲われ維新派の刀使が重傷のため、救急搬送が必要!繰り返す、維新派の刀使達が重傷のため、救急搬送が必要!』

 

舞衣が先程のSTT隊員等に渡した若い刀使達の指揮官達が重傷を負ったという通信を聞いた舞衣は肝を冷やしていた。

 

「ごめん!岩倉さん、お願いして良い!?」

「えっ、ちょっと……柳瀬さん!!?」

 

舞衣は早苗にそう言って……もしかして、という推測の域でしかないが、問い質す必要があると思い、寿々花の居る指令所へと向かおうとするが、

 

『柳瀬さん、お待ちなさい。貴女は第二班が残した現場の保持を任されているはず。……そこから離れることは許しませんわ。』

 

銃撃があったにも関わらず、普段通りの声音で舞衣にその場に留まるように言う寿々花に空寒さを感じながらも、その指示に従うのであった。

 

「……わかりました。ですが、少しよろしいですか?」

『ええ、よろしくてよ?』

 

だが、舞衣はその空寒さを感じながらも寿々花にあることを尋ねるのであった。

 

「……今のには、何か心当たりがあるんじゃないですか?」

『……今、報告に上がっているのは護送車輛が何者かに襲われ、維新派の刀使等が重傷を負ったということだけですが……何か思う所でも?』

「本当に何も関りが無いのですか?前までは私達の仲間だった刀使が銃で重傷を負ったんですよ?なのに、どうしてそんなに平静で居られるんですか?」

『柳瀬隊員。』

 

舞衣の詰問に寿々花は「柳瀬隊員」とピシャリと言って黙らせた。

 

『私としましては、貴女が一部隊を率いる隊長となり、その隣には糸見隊員と衛藤隊員をと思っております。そこで、糸見隊員は中等部1年生の頃から鎌府女学院の主力として荒魂事件の対処をしていた経歴を買い戦闘の補佐を、衛藤隊員は貴女が指揮することになる新隊員の鍛錬を担当してもらおうと考えております。』

 

そして、舞衣は寿々花が舞衣のことだけでなく、急に沙耶香と可奈美のことを話に出してきたことに違和感を感じる。

 

『……それに、最近は世の中が物騒になり、物価が上がってきているというのに給料は上がらずに税だけは増えるという悪状況下においては荒魂事件と国内の凶悪犯罪はますます増える一方であり、政府与党は支持率の確保のためにそんな情勢下を払拭したという実績を得ようと、刀剣類管理局といった治安維持組織に対する政府予算は膨らみ、その政府予算を補填すべく税金を上げる。……そうなると、まともな職に就けずに自棄を起こす者が増えていく。舞衣さんには、幼い二人の妹さんが居ましたわね?自棄を起こした者は自分よりも力の弱い者を特にターゲットにするそうです。……それを考えれば、今はクーデターの鎮静化を目的とした任務に集中すべきではなくて?』

 

そして、寿々花の次の話しを舞衣は静かに聞き、確信する。……これは、脅しなのだと。

 

この不思議の国のアリスのウサギの穴に落ちていくかのように負のるつぼに嵌っていく世界においては、幼い少女や子供といった者を殺すことで怒りを鎮めようとする荒魂のような人間、所謂『無敵の人』というものが現れ続ける世界になりつつあると語る寿々花の話しを聞いた舞衣は、刀剣類管理局と特務警備隊、そして寿々花のある噂について思い出し、つい尋ねてしまうのであった。

 

「……ところで此花さん。刀剣類管理局内に朱音様直属の組織で、諸問題に対応すべく現場指揮のみならず諜報活動も行う部隊が在るとか。」

『ええ、そうですけど、それが何か?』

「此花さんが特務警備隊に配属されたのが、それが最大の理由だと聞き及んでいますが?」

 

寿々花の実家は京都の名家であり、その情報網を使えば、そんな幼い少女といった力の弱い者に怒りをぶつける理不尽な人間を見つけることは容易である。そんな人間を使って、舞衣の大事な者を奪うことは容易であると寿々花は言って脅しているのではと舞衣は遠回しに訊いていた。

 

『……フフフ、確か私が金に困った元警官や一般人を札束で叩いてこちらの諜報員だけでなく、鉄砲玉としても使っているとかいう醜聞ですか?もしそうだとしたら、それはそれは怖いことですわね?……ですが、昨今の刀剣類管理局に対する世間の目は厳しいですしね?貴女も、衛藤隊員と糸見隊員も夜道には気を付け、彼女等の身辺には特に注意なさってくださいね?』

 

だが、寿々花はそれは只の醜聞であると笑って返答すると、家の力を使って怒りに囚われた人間を見つけ、その人間を鉄砲玉にして舞衣達に送ることができると遠回しに返していた。

それを聞いた舞衣は、父と母、妹達のことを思い浮かべ、

 

「……分かりました。」

 

力無く返事するしかなかった――――。

 

 

 

喪失感から来る怒りの感情のままに人を襲う怪物のことを荒魂というのであれば、無敵の人、或いはルサンチマンと呼ばれる彼等もまた荒魂という怪物になるのであろうか?

 

そんな思いが今の舞衣に渦巻いていた。

     

      




    
   
これ以降も、

しぬどんどん
    
   
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