138話を投稿させて頂きます。
しぬどんどん
――――時は遡り、維新派達が集まる東京ホテルにて、ソフィアの演説が始まった後の話。
「冗談じゃない。……犬死になんて御免だ。」
若い刀使達の指揮官であった彼女等は維新派の思想に賛同したこともそうだが、その後の昇進と利益も含めて維新派のクーデターに参加し、その後は刀使の仕事に誇りを持つ若い刀使達を焚きつけて(というより、騙してと言う方が正確だが……。)維新派のクーデターに参加させたのだが、タキリヒメの討伐とタギツヒメの演説以降、急速に支持を失いつつある維新派を見誤ったとして見限り、彼女等は刀剣類管理局本部へと鞍替えする機会を伺っていた。
そんなとき、折神家支給の携帯端末が振動したことで、彼女は慌てながらも携帯端末を取り出すと、通話ボタンを押す。
『失礼、私は刀剣類管理局の者ですが。少しお時間よろしいでしょうか?』
「……何の用だ?私たちは維新派側の刀使だぞ?」
彼女はそう言うものの、内心ではチャンスだと思っていた。
上手く立ち回れば、今や急速に支持を失いつつある維新派から刀剣類管理局本部へと帰ることができると思ったからである。
『実は、朱音様が冥加刀使ではない貴女方まで罰するのは偲びないと申されていまして、それ故に、朱音様の宸襟を悩ますのは得策ではないという結論に至りましたので、降伏する意志がお有りでしたら、刀剣類管理局に戻れるようにするつもりですが?』
彼女はその話しを聞き、今すぐにでも飛びつきたい衝動に駆られるが、出来る限り、平然を装いながらも、相手側から好条件を絞り出すために自分達が維新派のクーデターに参加するように煽った若い刀使達を引き合いに出して渋る。
「……だがなぁ、維新派に属していた私もそうだが、特に私の部下達が本部の人間に後ろ指を突かれるような状況に陥りたくはないのだ。……もし、手助けしてくれるというのなら、私は部下を預かる身としては私とその部下達も問題無く戻れれることが一番なのだが?」
『ええ、貴女達の部下は維新派の幹部達に騙されただけだとして、復職できるように取り計らっておきますわ。……ですがその場合ですと、貴女方は第一席の部隊と戦い、自衛隊の爆発音で意気消沈したという理由で、部下の刀使達と共に降伏していただかないといけません。……ですので、貴女方の居る場所と維新派の作戦内容を聞かせていただきますが、それでよろしいですわね?』
「……わかった。」
彼女は電話の主の話しの中にあった自衛隊の爆発音、恐らくは爆撃(実際は、誘導砲弾による砲撃とドローンによる爆撃だが、維新派に属する彼女等にそこまで教える必要性は無い。)を見れば部下達も意気消沈し、降伏することに異論は挟まないだろうと納得し、彼女は維新派の作戦と自分達が居る場所を刀剣類管理局に漏らすことを決意するのであった。
『それに、我々の指示に従えば、その忠勤振りを考慮し、元居た地位に復職することをお約束致しますわ。』
「……ああ、そうしてくれ。」
……全ては、自分達が生き残るために。
彼女達は降伏した後のことを考えながら、指示に従い冥加刀使達が自衛隊の砲撃とドローンによる爆撃された後は、直ぐに降伏したのであった。
そういったこともあり、ソフィア達が居る維新派はクーデターを起こす前に兵数だけでなく、装備の質や兵の練度に差があり、更には内部に裏切り者を出されていたという状況にあったのである。……つまりは、元々から維新派は、刀剣類管理局に勝てる状況ではなかったのである。
神の恩恵を授かった子供兵士。所謂冥加刀使や神性なる御刀の加護を受けた刀使が何人刀を振り回しても、銃や無人機といった機械仕掛けの力に踊らされた大人……いや、大きな身体を持ち、子供にも容赦なく食らう狼達には敵わなかった。そんな狂った戦場が、現実がそこにあった。
「それでは、宜しくお願いします。」
「……了解しました。それでは、護送任務に向かいます。」
刀剣類管理局本部と裏取引をした彼女は投降し、投降した際に御刀と携帯端末を没収され、今の自分が非力な女子中学生と変わらない状態に陥ったことに不安を感じ、己の無力感を感じていた。……そのため、少女は黙って事の成り行きを見ているしかなかった。
そうして、STT隊員に補導される自分達の部下と自分と同じく指揮する人とに分かれて乗車することに違和感を感じ、近くに居たSTT隊員にそれを訊くのであった。
「……おい、何で私は部下達と別れて乗車するんだ?」
「……お前達が結託して暴れられないようにするためと、維新派のことを全て答えてもらうためだ。」
STT隊員にそう冷たく返されるが、納得できなかった。
だが、不満を言う前にSTT隊員に車に押し込められたため、納得のいく答えを得ることができなかった。
そうして、彼女は無機質で殺風景な車の中でピリピリと張り詰めた空気と異様な雰囲気を感じる車内に連れ込まれたが、そんな彼女の心中を気にもすることなく護送車は、目的地へと動き出すのであった。
……護送車が動き出し、数分過ぎた頃に、脇に控えていたSTT隊員が彼女等に言う。
「……ここからは担当区域が変わるので、別のトラックに乗り換えてもらう。……降りろ。」
彼女等は銃を持つSTT隊員に"降りろ"と語気を強めて言われたため、素直に従う他なかった。
「前を向いて整列!」
車から降りた彼女達は、親の言いつけを守る素直な子供のようにSTT隊員の命令を守って、一列に整列していた。
「こんな所で乗り換えって……融通が利かないというか何というか……。」
彼女等は一列に整列させられ、そのままの状態にさせられたために横に居る同僚に気分転換か、それとも暇をつぶすためか話しかけられていた。
だが、彼女はたまたま横に居ただけの者の言葉に心の中で同意していた。……何故なら、幾らここら一帯が特別災害予想区域に指定され、車道に民間の車が通らないからとはいえ、車道の真ん中に一列で立たされることには、違和感しか感じないからである。
……しかし、彼女の違和感は確信へと変わる。
何故なら、両脇に居たSTT隊員がスッと彼女達から離れたためである。それを見た彼女は、周りの仲間に声を掛けようとするが、
――――ババババッ!!と、何か小さい炸裂音が発したと思った瞬間、自分達が刀使であるという証の綾小路武芸学舎採用の白い制服が朱く染まるのを見てしまう。
……ああ、これは撃たれたのだと維新派を裏切った彼女は理解した。
……これは本部が私達を裏切ったのだと彼女は分かってしまった。
……だとすれば元から生きて帰す気が無かったのだと、今更気付き、後悔していた。
「……あっ……ぐっ………!!」
彼女は痙攣し、呼吸が上手くできないことでもがき苦しみ、意識を朦朧とさせながらも、地面に赤い花を咲かせ、綺麗に彩られたと思える仲間の死体を見ていた。
『……殺して大丈夫なんですか?親御さん達に何て説明を?』
『テロリストに無惨に殺されたというだけで納得するはずだ。実際、コイツラ維新派が用意した銃で撃っている。……そうすることで、上は対テロ能力の向上を努めるそうだ。』
意識は朦朧としていたが、自分達を補導していたSTT隊員達の会話だけはハッキリと聞こえていた。
そして、これは死にゆく彼女等には分からないことであるが、彼女等を撃った者は寿々花が此花家の力を使って集めた人を工作員に仕立てた私的な諜報部隊の一員であり、そしてこの彼女等への銃撃事件は、表向きは維新派内部による私的な粛清か、もしくは今回の維新派を支援した敵性国家の勢力が自分達との繋がりを消すために消されたという話しが流布され、最終的には刀剣類管理局に在るSTT隊員達の対テロ能力の拡充をする"正当な理由"を得ることができ、今後訪れるであろう防衛省や警察を頼りとせずとも、独自で諸外国と敵性勢力との争いに対抗する手段を得ることができるという算段である。
無論、敵性勢力といった外部の人間だけでなく、鎌倉での出来事で発覚した防衛省といった他の省庁からの横やり、所謂国内の者による政治工作にも対処すべく、刀剣類管理局内部の統制をより一層強固なものへとしなければならなかったため、若い刀使を維新派の決起に参加するように煽った彼女等を何時までも放置しておく訳にはいかなかった。…………何れは獅子身中の虫となるとしか見られていなかった。
……つまり、彼女等が何らかの形で始末されることは降伏する前から決まっていたのである。
しかし、彼女は自身がそんな状況下にあったことなど知らなかったが、最期の力を振り絞って仲間の方を見た。そして、彼女は仲間の死体を見た。それが妙に美しく見えた。そして彼女は、自分の血と仲間の血が合わさったことに言いようのない高揚感と最後にこんな裏切り者の自分でも一つになり、還れたことに感謝していた。
何故なら、彼女達にはもう、荒魂と戦う戦場しか居場所が無いのだから……。そんなことに、今更気付いてしまったのだ。
(……みんな………ゴメンね………。)
あの世に会えたら、先ずはそう言おう、そうしたら私はまた、一緒にみんなと戦える日々に戻れそうな気がするのだ。
それを想いながら、彼女は息を引き取った。味方を裏切り、最後は裏切られたが、死すらも利用されたことに何も知らずに逝けたことは、彼女にとって唯一の幸福であったのかもしれない――――。
――――そして時は戻り、可奈美が横になっていた医療テントの中。
維新派の刀使が寿々花の手の者に銃撃されたことを知っていても、撃たれた刀使達にそんな一幕があったことを知らない舞衣は、
「……だからさ、これから新しく来る刀使を……可奈美ちゃんが剣術で最も大切なことを教えてあげて?そうすれば、冥加刀使の人達も少しは浮かばれると私は思うから。」
殺された維新派達や醜い政争から、目が良く敏い可奈美を遠ざけることで、何も知ることなく、ただ剣術に打ち込んでもらうことで可奈美の心を守ろうとしていた。
……身勝手な理屈だと思いながらも、舞衣はこれが最善であり、それしか方法が無いと思っていた。
何故なら、剣術好きな少女である可奈美には、醜い政争に汚れていくのは似合わないから、ただ好きな剣術でいつもの様に居てくれればそれで良いと思っていたから、そう判断したのである。
……しかし、そんな彼女の願いを嘲笑うかのように、外では、テントの中でも聞こえるぐらいの罵声と怒号が響いていた。
「何処だ!?言えっ!!!!」
「ヒヨヨン落ち着いてクダサイ!!!!」
その二つ怒号の主は、姫和とエレンであった。
大きな怒号を飛ばす姫和を止めるべく、可奈美はベッドから立ち上がろうとするが、
「ダメッ!可奈美ちゃん!!」
舞衣に止められる。
だが、舞衣にも明確な理由があって止めた訳ではない。……何となく、何となくだが、此処で止めないと自分が知っている可奈美はもう戻って来ないような気がしたのだ。……だからこそ、
「……可奈美ちゃん。今は倒れるほど疲れているんだから……今まで任務を人一倍頑張ったんだから……姫和ちゃんのことはエレンちゃんに任せよう?」
だからこそ、引き止めた。
この医療テントという緑の籠から、可奈美という鳥が飛び出すことを許してしまえば、もう目の前に居る可奈美は居なくなってしまうような気がしたから止める。……だが、
「お前達が……優を殺した奴は何処に居る!!!!」
姫和の一際大きな声で全てが無駄骨となったと舞衣は、このとき確信した。
現に、目の前に居る可奈美の瞳には光が失いつつあった。そして、可奈美は舞衣の手を掴み、思わず叫んでしまった。
「舞衣ちゃん!優ちゃんを殺した奴ってどういう意味!?この狂った国!?管理局!?……ねえ!誰!!」
誰が優を殺したのか?この国の政府が刀剣類管理局に命じて優のことを殺したのか?それとも、不要になったから殺したのか?と舞衣に詰め寄っていた。
可奈美は、ここ最近の刀剣類管理局か政府が維新派のように優を始末しようとしていたことに気付いていた。故に、狂った国か管理局のどちらかが殺したのかと舞衣に問い詰めていた。
「私は優ちゃんを救いたかった!助けたかった!!でも、もうそれができない!!」
そうして、可奈美は涙混じりに訴える。
母に託された思いを遂げたかった。そのために剣術を頑張った。頑張り続けた。……そうすることで、優が荒魂じゃなくなり、元通りになると信じていた。だが、それが目の前で崩れてしまった。何もかも消え去った。
「私、わた……ワタシ、優ちゃ……おかあさんと……やく、約束……グスッ……うえぇぇ………。」
走馬灯のように思い浮かぶのは優との思い出。
まだ赤ん坊だった優の頬を突くと、優は小さな手で握り返してくれたこと。
幼かった頃の優は、小さな足でいつも可奈美の後について来てくれたこと。
私が無くした黒いリボンを優が傷だらけになってでも見つけてくれたこと。
それらの思い出が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返したあとに、次に頭に入りこんで来たものは、もう優に会えないという事実の痛み、その痛みを痛い、痛いと感じながらも、もう一度……もう一度だけ、ただ会いたいと願った。……願ったが、神様はもう一度チャンスは与えてくれないだろうということも何となくだが、理解していた。
これで、母に託された思いを守れなかったことになった。
これで、幼子との約束を守れなかったことになった。
これで、私は大切な者も想いも、何かも守れなかったことになった。
これで、私は正義の味方になれなくなった。
これで、私は刀使なのかどうかすら…………。
そこまで考えた可奈美は、
「可奈美っ!!?」
医療テントの中へ慌てて入って来た姫和の声で覚醒し、姫和に迫りながら告げる。
「……ねえ、姫和ちゃん。」
可奈美の姿を見た姫和は心の中で身構えた。
……きっと、優は誰に殺されたのかを尋ねてくるだろうことは容易に想像できたからこその行動であった。
「優ちゃんは"誰"に殺されたの?」
故に、姫和は答える。……ある一部を隠して。
「……ソフィアとかいう冥加刀使が殺した。………可奈美、復讐なんて馬鹿なことは考えるな。」
だが、近くで見る姫和の唾を呑んだ喉の動き、額から出る汗の量、姫和が可奈美から視線を外す瞳の動き、話した瞬間瞬きが多くなるという挙動、可奈美はそれら全てを見て、姫和は何かを隠していると判断し、更に詰問すべく可奈美は唐突にガッという音が鳴ったのではないかと思う程の勢いと力で姫和の胸倉を掴む。
「……それだけ?私、目が良くなって姫和ちゃんから出る汗の量や瞬きが多くなったとか良く見えるようになったから、嘘吐いているかどうか分かるから、正直に答えてね。」
「!……あ、ああ。」
胸倉を掴まれた姫和は、可奈美がこちらの顔をじっと見ていることに気付いたせいで、姫和は可奈美に心を見透かされているかのような錯覚を感じてしまう。
それ故に、無意識的に可奈美から視線を外しながら返答する。……しかし、
「……そうなんだ。でも、姫和ちゃん私に隠していることがあるよね?」
「!……な、何を根拠に。」
「根拠?……根拠はさっきからずっと、私から目を逸らし続けていることかな?」
「!!」
「後は、私に言われて、慌ててこっちを見るようにしたことも根拠の一つかな。」
可奈美に目を逸らしたからだと言われた姫和は、慌てて可奈美の方を見てしまう。だが、それが仇となったと心の中で後悔した。
「それで、何を隠しているの?」
「…………じ、実は。」
そして、姫和は可奈美の圧に負け、隠していたことを言いかける。
「ヒヨヨン!!」
「姫和ちゃん!!」
ヒヨヨンと言って遮ろうとするエレン、姫和ちゃんと言って吐かせようとする可奈美。
その両者に迫られた姫和は、
「……ソフィアを殺さずに捕らえることを刀剣類管理局上層部が決定した。」
「……は?」
可奈美に全てを打ち明けた。
刀剣類管理局が優を殺したソフィアを殺すことなく捕らえろと命じたことに、何故そうなったのかと呆然とするが、気を取り直して姫和に問い詰める可奈美。
「何で?何がどうなって、どうしてそうなったの!?」
「上層部が言うにはソフィアは中国とロシアの両国の情報部と繋がっている可能性が高いらしい。………それに……それに、優は荒魂だからという理由で殺人に当てはまらないとも言っていた。」
姫和の言葉を聞き、目の前が真っ暗になりそうになる可奈美。
……荒魂を身に宿す冥加刀使を"荒魂"として殺し尽くし、その冥加刀使であるソフィアは優を殺しても"優が荒魂だったから"という理由だけで殺人罪にならないだけでなく、荒魂を身に宿す冥加刀使であるソフィアは殺してはならないという大きな矛盾と理不尽さに怒りの感情しか湧き出てこなかった。
「……私、本部長や朱音様に会って来る!!」
「可奈美ちゃん!?」
それ故に、可奈美は本部長の紗南と話しをして、優を殺したソフィアの捜索に加えてもらおうとする。
そのため、可奈美は千鳥のことすら見ずに、本部長等が居るであろうテントの中へと走っていた。
戦場かそうでないかの境目
平和とそうでないかの境目
御刀と銃の違いの境目
この世に神が居るかどうかの境目
そんな
「真庭本部長!」
「一体何だ?騒々しい。」
「どうして……どうして優ちゃんを……優ちゃんを殺した人が無罪放免になるんです!!優ちゃんが殺した人は冥加刀使なんですよね!?さっきの戦いで冥加刀使の人達は荒魂扱いされて……みんな殺したのに、何でその人だけは…………。」
可奈美が優を殺した人が、何故殺人者として裁かないのかと紗南等に問い詰めてくるのであった。
「………どうして……どうして………。」
それを横で聞いていた甲斐陸将補は、
「衛藤隊員、単純な理屈ですよ。……ソフィア某という維新派の幹部……いや、頭目は我々の内偵により中国とロシアの情報部と繋がりがあるという情報を得ましてね。そこから、防衛省としましても刀剣類管理局としても……そして、米国と我が国としても彼女から中国とロシア側の内情の情報を少しでも得たかったというのが理由の一つです。」
中国とロシアの情報部と繋がりを持つソフィアを捕らえることで中国とロシアの内情を少しでも知りたいというのが理由の一つと答え、
「そして、彼女を捕らえることで中国とロシア双方が我が国に対して、どのような工作活動をしたかという情報を得ることができ、その両国に対して外交上のイニシアチブ……まあ、外交上で我が国が優位に立てるということです。その証拠に、中国もロシアもアメリカでさえも、彼女の身柄を『重要参考人』として確保することに今や躍起ですよ。」
工作活動の痕跡を可能な限り消したいがために、ソフィアの身柄を手に入れたい中国とロシア。
そして、その両国の工作活動と国の内情が知りたいアメリカ。
……それら三国から、上手い汁だけを啜ろうとする自分が生まれ育った国。
可奈美は自分の弟を犠牲にして、上手い汁を啜りたいという考えを持つ国が、自分の両足の土台となっている国であるということに気付くと、土台が崩れたような感触が下と共に、気が狂いそうになるだけでなく、可奈美の弟を犠牲にする方がメリットがあると当然の様に答える甲斐の姿も……いや、このテントに集まっている真庭 紗南と刀剣類管理局と防衛省の重役達が不気味に見えた。……そして、歪んでも見えた。そして、理解した。
この社会が、優が殺されることを望んだのだと。
人間が天賦の権利として持ちうる自然権を国家に対して全部譲渡するべきである。
――――『リヴァイアサン』(Leviathan) トマス・ホッブズ著より、
あっ、もちろん甲斐さんと米国さんもソフィア嬢を殺そうとしていますが、可奈美にその情報を公開することができません。理由は後々に語ろうと思います。